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九百七十八話 不完全燃焼
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(あ~~~あ………………まぁ、あれだな。どちらが悪いとは、言えないな)
ガルーレは、グレーターマンティスとの戦いを楽しんだ。
この世界に戦いを楽しんではいけないという法律はなく、人間同士が決めたルールの中ではなく……法律など意味をなさない野性の中で戦っているからこそ、モラルに反している訳でもない。
対してグレーターマンティスは……ただただ、自身が挑んだ敵を倒そうと、必死に動いていただけである。
挑んだ敵は終始笑っており、戦闘の中でその笑みは不気味さを増し……本能が早く殺せと叫ぶ中、グレーターマンティスは叫ぶ本能通り、ガルーレという名の冒険者を殺そうとした。
一方は戦いを楽しみ、一方はただ挑んだ相手を殺そうとした。
そんな中……グレーターマンティスから魔力が消えた。
(こうなると、いくらあの鎌が鋭くてもって感じだね)
体内の魔力を使い切り、魔力切れの状態に陥ったグレーターマンティス。
しかし人間とは違い、モンスターであるグレーターマンティスはそこまで疲労感を感じていなかった。
故に、まだまだ戦える。
自慢の鎌はまだまだ健在であり、羽も壊されていないので、飛行も可能。
だが……魔力切れを起こせば、魔力を纏うことによる身体強化だけではなく、スキルによる身体強化も行えない。
鋭い鎌は健在だが、魔力を纏っていた時と比べて、確実に切れ味は落ちてしまう。
明らかな……戦力の低下。
「…………はぁ~~~~~~~~~……もういいや」
「ッ!!!!!!!」
再び、グレーターマンティスに芽生えた恐怖という感情が全身に襲い掛かる。
それでも、グレーターマンティスは鎌を振るった。
最後の最後まで、ガルーレという冒険者を相手に戦おうとした。
それは……ガルーレの強さを知る者からすれば、よく戦ったと思われるかもしれない。
だが、無慈悲にも一切の躊躇いを持たれず、振るわれた二つの鎌を躱し……ロングソードがグレーターマンティスの頭を斬り落とした。
「あ~~~あ、折角楽しかったのに」
「…………」
通常、一般的なモンスターと比べて非常にしぶとい昆虫系モンスターたちは、首を切断されたぐらいでは直ぐに死なない。
それが昆虫系モンスターの恐ろしいところなのだが……ガルーレのロングソードによって頭を斬り落とされたグレーターマンティスは、十秒も経たず……力なくその場に崩れ落ちた。
「お疲れ様、ガルーレ。とりあえず、ポーションを飲んでね」
結局致命傷になりえる斬撃を食らうことはなかったが、ガルーレの体にはいくつもの切傷が刻まれていた。
塵も積もれば山となり、浅くとも切傷が増えれば出血量も割とバカにならない。
「うん…………ぷはーーー……はぁ~~~~~~、な~~~んであそこで魔力切れを起こしちゃうかな~~~」
スティームの言う通り、素直にポーションを飲んで切傷を治したガルーレ。
だが、当然ながらグレーターマンティスに対する不満が消えることはなかった。
「かなり長引いてたからね……多分、五分以上は戦ってたんじゃないかな」
「へぇ~~~。割と戦ってたんだね」
ガルーレとしては本当に最後の最後までは楽しく戦えていたため、そこまで長い間戦っていたとは思っていなかった。
「グレーターマンティスは、魔力量が多いモンスターじゃないから、それぐらいの間……本気で戦ってたら、魔力量がゼロになってもおかしくないよ」
「それって……私がやっちゃったってことよね」
「やっちゃったって言うのは少し違うと思うけど……まぁ、ガルーレが自分から楽しい戦いを終わらせてしまったとは言えるのかな」
「………………はぁ~~~~。そうだね、そうなっちゃうよね~~~」
期限が悪いガルーレに対し、スティームはガルーレ自身がグレーターマンティスとの楽しい戦いを終わらせてしまったと、臆することなく伝えた。
その事実を伝えられた本人は、いきなりキレてスティームに暴言を吐くことはなく、今日何度目になるか解らない溜息を吐いた。
「でもさ~~、楽しかったんだよ~。ずっと続けば良いのにって思うじゃん」
「……ガルーレ。どうせなら、お前も身体強化とか使わずに戦ったら、まだ楽しい戦いを出来たんじゃないのか?」
今更ではあるが、アラッドはふと楽しい戦いの継続方法を思い付いた。
「あぁ~~~……ん~~~~…………それは、多分、ちょっと違うかな~~」
「そうか」
「うん。私の気分が超上がってたからっていうのもあるけど、途中からそれをやっても、結局グレーターマンティスが魔力切れになってパワーダウンしちゃったら、その時感じてた圧を感じられなくなっちゃうじゃん」
「……そうだな。それは解らなくもない」
体感、同じなのではないかとツッコむ者はいるだろうと思いながらも、アラッドはガルーレの気持ちは理解出来た。
「今回は仕方なかったが、次はBランクモンスターと遭遇するかもしれない。だからそう落ち込むな」
リーダーとしてパーティーメンバーを励ますアラッド。
ただ、Bランクモンスターと戦う時は、是非ともロングソードを使うのではなく、普段通り徒手格闘で戦ってほしかった。
ガルーレは、グレーターマンティスとの戦いを楽しんだ。
この世界に戦いを楽しんではいけないという法律はなく、人間同士が決めたルールの中ではなく……法律など意味をなさない野性の中で戦っているからこそ、モラルに反している訳でもない。
対してグレーターマンティスは……ただただ、自身が挑んだ敵を倒そうと、必死に動いていただけである。
挑んだ敵は終始笑っており、戦闘の中でその笑みは不気味さを増し……本能が早く殺せと叫ぶ中、グレーターマンティスは叫ぶ本能通り、ガルーレという名の冒険者を殺そうとした。
一方は戦いを楽しみ、一方はただ挑んだ相手を殺そうとした。
そんな中……グレーターマンティスから魔力が消えた。
(こうなると、いくらあの鎌が鋭くてもって感じだね)
体内の魔力を使い切り、魔力切れの状態に陥ったグレーターマンティス。
しかし人間とは違い、モンスターであるグレーターマンティスはそこまで疲労感を感じていなかった。
故に、まだまだ戦える。
自慢の鎌はまだまだ健在であり、羽も壊されていないので、飛行も可能。
だが……魔力切れを起こせば、魔力を纏うことによる身体強化だけではなく、スキルによる身体強化も行えない。
鋭い鎌は健在だが、魔力を纏っていた時と比べて、確実に切れ味は落ちてしまう。
明らかな……戦力の低下。
「…………はぁ~~~~~~~~~……もういいや」
「ッ!!!!!!!」
再び、グレーターマンティスに芽生えた恐怖という感情が全身に襲い掛かる。
それでも、グレーターマンティスは鎌を振るった。
最後の最後まで、ガルーレという冒険者を相手に戦おうとした。
それは……ガルーレの強さを知る者からすれば、よく戦ったと思われるかもしれない。
だが、無慈悲にも一切の躊躇いを持たれず、振るわれた二つの鎌を躱し……ロングソードがグレーターマンティスの頭を斬り落とした。
「あ~~~あ、折角楽しかったのに」
「…………」
通常、一般的なモンスターと比べて非常にしぶとい昆虫系モンスターたちは、首を切断されたぐらいでは直ぐに死なない。
それが昆虫系モンスターの恐ろしいところなのだが……ガルーレのロングソードによって頭を斬り落とされたグレーターマンティスは、十秒も経たず……力なくその場に崩れ落ちた。
「お疲れ様、ガルーレ。とりあえず、ポーションを飲んでね」
結局致命傷になりえる斬撃を食らうことはなかったが、ガルーレの体にはいくつもの切傷が刻まれていた。
塵も積もれば山となり、浅くとも切傷が増えれば出血量も割とバカにならない。
「うん…………ぷはーーー……はぁ~~~~~~、な~~~んであそこで魔力切れを起こしちゃうかな~~~」
スティームの言う通り、素直にポーションを飲んで切傷を治したガルーレ。
だが、当然ながらグレーターマンティスに対する不満が消えることはなかった。
「かなり長引いてたからね……多分、五分以上は戦ってたんじゃないかな」
「へぇ~~~。割と戦ってたんだね」
ガルーレとしては本当に最後の最後までは楽しく戦えていたため、そこまで長い間戦っていたとは思っていなかった。
「グレーターマンティスは、魔力量が多いモンスターじゃないから、それぐらいの間……本気で戦ってたら、魔力量がゼロになってもおかしくないよ」
「それって……私がやっちゃったってことよね」
「やっちゃったって言うのは少し違うと思うけど……まぁ、ガルーレが自分から楽しい戦いを終わらせてしまったとは言えるのかな」
「………………はぁ~~~~。そうだね、そうなっちゃうよね~~~」
期限が悪いガルーレに対し、スティームはガルーレ自身がグレーターマンティスとの楽しい戦いを終わらせてしまったと、臆することなく伝えた。
その事実を伝えられた本人は、いきなりキレてスティームに暴言を吐くことはなく、今日何度目になるか解らない溜息を吐いた。
「でもさ~~、楽しかったんだよ~。ずっと続けば良いのにって思うじゃん」
「……ガルーレ。どうせなら、お前も身体強化とか使わずに戦ったら、まだ楽しい戦いを出来たんじゃないのか?」
今更ではあるが、アラッドはふと楽しい戦いの継続方法を思い付いた。
「あぁ~~~……ん~~~~…………それは、多分、ちょっと違うかな~~」
「そうか」
「うん。私の気分が超上がってたからっていうのもあるけど、途中からそれをやっても、結局グレーターマンティスが魔力切れになってパワーダウンしちゃったら、その時感じてた圧を感じられなくなっちゃうじゃん」
「……そうだな。それは解らなくもない」
体感、同じなのではないかとツッコむ者はいるだろうと思いながらも、アラッドはガルーレの気持ちは理解出来た。
「今回は仕方なかったが、次はBランクモンスターと遭遇するかもしれない。だからそう落ち込むな」
リーダーとしてパーティーメンバーを励ますアラッド。
ただ、Bランクモンスターと戦う時は、是非ともロングソードを使うのではなく、普段通り徒手格闘で戦ってほしかった。
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