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九百七十六話 絶えない笑み
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(あはっ!! この感じ……丁度、良いねっ!!!)
ロングソードを手にしたガルーレは相変わらず笑っていた。
ただ、戦況には明らかに変化が現れていた。
先程まで七対三か八対二でガルーレが有利に戦いを進めていた。
しかし……今は六対四……もしくは五分五分。
離れた場所から観ているアラッドたちからも解るぐらい、戦況が変化していた。
「…………すぅーーーー、はぁーーーー」
「急に深呼吸をしてどうしたんだ、スティーム」
「単純に、心を落ち着かせただけだよ」
「……驚いたり、怒らないんだな」
戦う時は、当然戦う。
無茶をしなければならない時は、躊躇わずに無茶をする。
冒険者としての胆力は十分に持ち合わせているスティームだが、アラッドやガルーレと比べれば常識人よりの感覚を持っている。
故に、扱う武器をロングソードに変更した途端、戦況が有利ではなくなったガルーレを見て、当然思うところはあった。
先程話していた通りの結果になるかもしれず、今すぐいつも通り素手で戦うんだと言いたい。
だが……それは意味がないと、自己満足な考えだと解っているからこそ、深呼吸をして心を落ち着かせ、その気持ちを飲み込んだ。
「正直、相変わらずこっちが心配するような戦い方をするな~とは思ってるよ」
「ふふ、それはそうだな」
以前もガルーレは突進攻撃が得意ならラバーゴートの渾身の突進を真正面から受け止めようとした。
結果としてガルーレはラバーゴートの突進を見事受け止め、逆に圧し返すことに成功したが、見守ってる側としては非常にハラハラさせられる戦いだった。
「でもさ……仮に僕やアラッドが注意したとして、多分素直に納得して受け入れてくれないでしょ」
「そう……だな」
自分にはそもそもそんな事を言う権利がないだろうと思いながらも、とりあえずスティームの言葉に賛同するアラッド。
「それに、あれがガルーレの成長に繋がるのかもしれないのなら、止めるべきじゃないよね」
「…………スティームも、だんだん染まってきたな」
「え? そ、染まってきたって……ど、どういう意味で?」
「さぁな」
はぐらかすアラッドに、どういう意味なのか知りたくて焦った表情を浮かべるスティーム。
(とはいえ、あれだな……スティームが心配するのも解る戦況だ)
ガルーレの身体能力は依然として健全であり、体力の心配も今のところ必要ない。
だが、普段から使っている五体ではなく、多少使える程度の腕しかないロングソードに武器を切り替えた瞬間、戦況が変わり……下手しなくても、ガルーレの腕がグレーターマンティスの鎌によって斬り飛ばされてしまう可能性が出てきた。
ロングソードを持つことで、ガルーレのメイン武器は基本的にロングソードのみとなる。
当然の事ながら、ガルーレはロングソードをもう一本取り出し、二刀流でグレーターマンティスと戦おうとはしない。
大して訓練も積んでない二刀流で戦おうとすれば、さすがにアラッドもちょっと待てとストップの声を掛ける。
(持ち前の身体能力と反応速度で、一応対応はしてるな…………ロングソードに慣れたいなら、あぁいった敵とも戦える様になっておかないとあれだが……ったく、本当に良く笑うな)
ガルーレ自身、ロングソードを持って戦うようになってから、先程まで有利に進めていた戦況が一気に変わったことに関しては理解していた。
同じ刃物であるロングソードを手にしている筈なのに、先程まで素手で戦っていた時よりもグレーターマンティスの鎌に対して、恐ろしさを感じる。
対応を間違えれば、今よりも更に戦況が傾いてしまう。
それを戦闘者であるガルーレは理解しつつも……笑みを絶やさない。
(は、ははっ!!! アラッドとか、スティームは、こんな感覚の、中で……戦ってたの、ねッ!!!!!)
現在ガルーレが使用しているロングソードは、一応魔剣の部類に入る物だが、耐久強化と切れ味強化の効果が付与された魔剣。
悪くない逸品ではあるが、英雄が使用していた名剣、剛柔と比べれば何段も格が落ちる。
剛柔と比べて、当然ながらどう動けば良いか、どう振れば良いのかという導きもない。
本来、素手で戦うのではなく、武器を持って戦った方が安心感があると思われるかもしれないが、素手での戦いに慣れていれば慣れているほど、持っている武器が自身の手足の延長にならず、寧ろ不安すら感じる。
「っと、あぶっ! ふんッ!!!!」
「っ、ッ!!!!!」
「よっ!!」
ロングソードを使って戦う練習相手にするには、グレーターマンティスは早過ぎた。
ただ……ガルーレにとって、ロングソードを使って戦うことによって感じる恐ろしさ、不安、強く感じる圧……それらはすべて、戦闘を楽しさを爆発させるスパイスでしかなかった。
「あは、あはっ! あっはっはっ!!!!」
「…………」
虫系モンスターであるグレーターマンティスには、基本的に感情がない。
それでも、生きている生物としての本能はある。
そんなグレーターマンティスの本能が告げる。
目の前の人間は……早く殺した方が良いと。
ロングソードを手にしたガルーレは相変わらず笑っていた。
ただ、戦況には明らかに変化が現れていた。
先程まで七対三か八対二でガルーレが有利に戦いを進めていた。
しかし……今は六対四……もしくは五分五分。
離れた場所から観ているアラッドたちからも解るぐらい、戦況が変化していた。
「…………すぅーーーー、はぁーーーー」
「急に深呼吸をしてどうしたんだ、スティーム」
「単純に、心を落ち着かせただけだよ」
「……驚いたり、怒らないんだな」
戦う時は、当然戦う。
無茶をしなければならない時は、躊躇わずに無茶をする。
冒険者としての胆力は十分に持ち合わせているスティームだが、アラッドやガルーレと比べれば常識人よりの感覚を持っている。
故に、扱う武器をロングソードに変更した途端、戦況が有利ではなくなったガルーレを見て、当然思うところはあった。
先程話していた通りの結果になるかもしれず、今すぐいつも通り素手で戦うんだと言いたい。
だが……それは意味がないと、自己満足な考えだと解っているからこそ、深呼吸をして心を落ち着かせ、その気持ちを飲み込んだ。
「正直、相変わらずこっちが心配するような戦い方をするな~とは思ってるよ」
「ふふ、それはそうだな」
以前もガルーレは突進攻撃が得意ならラバーゴートの渾身の突進を真正面から受け止めようとした。
結果としてガルーレはラバーゴートの突進を見事受け止め、逆に圧し返すことに成功したが、見守ってる側としては非常にハラハラさせられる戦いだった。
「でもさ……仮に僕やアラッドが注意したとして、多分素直に納得して受け入れてくれないでしょ」
「そう……だな」
自分にはそもそもそんな事を言う権利がないだろうと思いながらも、とりあえずスティームの言葉に賛同するアラッド。
「それに、あれがガルーレの成長に繋がるのかもしれないのなら、止めるべきじゃないよね」
「…………スティームも、だんだん染まってきたな」
「え? そ、染まってきたって……ど、どういう意味で?」
「さぁな」
はぐらかすアラッドに、どういう意味なのか知りたくて焦った表情を浮かべるスティーム。
(とはいえ、あれだな……スティームが心配するのも解る戦況だ)
ガルーレの身体能力は依然として健全であり、体力の心配も今のところ必要ない。
だが、普段から使っている五体ではなく、多少使える程度の腕しかないロングソードに武器を切り替えた瞬間、戦況が変わり……下手しなくても、ガルーレの腕がグレーターマンティスの鎌によって斬り飛ばされてしまう可能性が出てきた。
ロングソードを持つことで、ガルーレのメイン武器は基本的にロングソードのみとなる。
当然の事ながら、ガルーレはロングソードをもう一本取り出し、二刀流でグレーターマンティスと戦おうとはしない。
大して訓練も積んでない二刀流で戦おうとすれば、さすがにアラッドもちょっと待てとストップの声を掛ける。
(持ち前の身体能力と反応速度で、一応対応はしてるな…………ロングソードに慣れたいなら、あぁいった敵とも戦える様になっておかないとあれだが……ったく、本当に良く笑うな)
ガルーレ自身、ロングソードを持って戦うようになってから、先程まで有利に進めていた戦況が一気に変わったことに関しては理解していた。
同じ刃物であるロングソードを手にしている筈なのに、先程まで素手で戦っていた時よりもグレーターマンティスの鎌に対して、恐ろしさを感じる。
対応を間違えれば、今よりも更に戦況が傾いてしまう。
それを戦闘者であるガルーレは理解しつつも……笑みを絶やさない。
(は、ははっ!!! アラッドとか、スティームは、こんな感覚の、中で……戦ってたの、ねッ!!!!!)
現在ガルーレが使用しているロングソードは、一応魔剣の部類に入る物だが、耐久強化と切れ味強化の効果が付与された魔剣。
悪くない逸品ではあるが、英雄が使用していた名剣、剛柔と比べれば何段も格が落ちる。
剛柔と比べて、当然ながらどう動けば良いか、どう振れば良いのかという導きもない。
本来、素手で戦うのではなく、武器を持って戦った方が安心感があると思われるかもしれないが、素手での戦いに慣れていれば慣れているほど、持っている武器が自身の手足の延長にならず、寧ろ不安すら感じる。
「っと、あぶっ! ふんッ!!!!」
「っ、ッ!!!!!」
「よっ!!」
ロングソードを使って戦う練習相手にするには、グレーターマンティスは早過ぎた。
ただ……ガルーレにとって、ロングソードを使って戦うことによって感じる恐ろしさ、不安、強く感じる圧……それらはすべて、戦闘を楽しさを爆発させるスパイスでしかなかった。
「あは、あはっ! あっはっはっ!!!!」
「…………」
虫系モンスターであるグレーターマンティスには、基本的に感情がない。
それでも、生きている生物としての本能はある。
そんなグレーターマンティスの本能が告げる。
目の前の人間は……早く殺した方が良いと。
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