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九百七十三話 どちらが勝る?
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「それじゃあ、探しに行くか」
ディーナとの激しい試合を終えた翌日、全員二日酔いにはならずに済み、朝から虎竜を探して探索を始めた。
「………………ねぇ、アラッド」
「なんだ、スティーム」
「物凄い今更な話なんだけど、虎竜が先に僕たちの存在に気付いたら、逃げないかな」
ディラーズフォレストに入ってから、ふと思い出した事をリーダーに尋ねたスティーム。
ランクが上がれば、モンスターは自分の実力に自信を持つようになる。
とはいえ、ランクが高くないEやFのモンスターであっても、本能的にその差が解らないのであれば、バカみたいに突っ込んで殺されることもある。
虎竜は情報から予測するに、最低でもBランク。
今現在……表示上はBランクであっても、実力はAランク並みに成長している可能性は十分にあり得る。
それらを考えると、そもそも虎竜に逃走という選択肢があるのかと思える。
ただ、アラッドたち全員の戦闘力を纏めると……割と洒落にならない。
「えぇ~~~~、普通逃げる?」
「可能性としては、ゼロじゃないんじゃないかなって思ってる」
「うっそ~~~~。だって、虎とドラゴンが混ざった個体でしょ。これまで何人もの冒険者を殺ってきた個体でしょ。そんなモンスターが逃げたりする? 闇竜だって、最終的に逃げなかったんだよ」
ガルーレの言う通り、闇竜デネブはアラッドたちと全面戦争という形を取り、自分が戦う相手はこれまで対峙してきた人間の中でもトップクラスにヤバい存在。
闇の力を与えたモンスターと戦っている人間、従魔たちも並の力以上の戦闘力を有しており、一番後ろにはAランクモンスター、デルドウルフことクロが待機している。
人の言葉を話し、着実に着実に戦力を増やすことが出来る知能を持つ闇竜デネブでも……そんな状況を前にしても、逃げずにアラッドと最後まで戦い続けた。
「そうだな。でも、闇竜も……その前に戦った風竜も、一応一体だけではなかったでしょ」
「まぁ、そう」
「けど、話を聞く限り虎竜は一体で活動してる。対して僕たちはファルたちも入れれば合計六人。数では圧倒的に有利。ドラゴンには他のモンスターよりもプライドが高い面があるけど、それでも……生物であることに変わりはないでしょ」
「…………少なからず、生存本能はあるだろうな」
アンデットの様に生と死の狭間で生きているモンスターではないため、アラッドの言う通りドラゴンという生物ピラミッドの頂点に立っているモンスターであっても、少なからず生存本能というのは存在する。
「またアラッドは難しい言葉を使うね」
「そんなに難しくないと思うんだが……ガルーレは、あまり納得いかないって感じの顔だな」
「だってさ~~~……いや、あれだよ。スティームとアラッドが言う事は間違ってはないだろうとは思うよ。私バカだからあんまりちゃんと理解は出来ないけど、正しい事言ってるんだとは思う。けどさ、あのディーナがあそこまで強くならなきゃって思うモンスターが、その生存本能? が発揮……発動? して、逃げるってのは……なんかな~~~~って思うんだよね」
ガルーレが二人の考えを一応解る様に、アラッドとスティームも私情強めなガルーレの思いは理解出来る。
「それにさ、ドラゴンとかって生存本能とかよりも、戦闘欲の方が強そうじゃない?」
「あぁ~~~~…………どう、思う。スティーム」
「ん~~~~~…………ギーラスさんが戦った風竜、ストールもギーラスさんが黒炎を体得しても逃げなかったのを考えると……プライド関係になりそうだけど、確かにドラゴンとかは特にその特徴が強いのかもしれないね」
逃げる可能性もあるんじゃないかと考えていたスティームだが、ガルーレの考えを聞くうちに、やっぱりその可能性は薄いかもと思い始めた。
「でしょでしょ。だから、クロと戦うにしろ、逃げたりしない筈!!!」
「ふふ……ガルーレの言う通りだと良いな、クロ」
「ワゥ!!」
アラッドの従魔であるクロとしては、主人であるアラッドを……アラッドの仲間、友達であるスティームやガルーレを優先するべきという思いを持っている。
だが、クロもそこそこ戦闘好き狼であるため、今回アラッドたち三人が強い強いと話しているモンスターと戦えるかもしれないのは、非常にワクワクしていた。
「…………」
「クルル……」
「ウキャ、キャキャキャ」
クロを羨ましそうな眼で見るヴァジュラに対し、ファルは普段通りクールな眼で「解ってるでしょうね」と声を掛ける。
さすがにヤンチャ猿であるヴァジュラも解っているため「解ってるっすよ」と返し、基本的に思いは言葉にせず、ギリ表情に零れるだけに留まっている。
(……とはいえ、クロが確実に戦えるわけではない。そうなった場合…………ディーナさんが負けるにしろ、勝つにしろ……場所が把握出来れば、気付かれない位置まで向かった方が良いな)
間に合うのであれば、アラッドとしてもディーナを死なせたくない。
加えて、ディーナが勝利をもぎ取ったとしても、虎竜との戦いを終えて無事でいられる可能性は低く、他のモンスターによって漁夫の利を取られるかもしれない。
その可能性も踏まえ、アラッドは普段以上に索敵に力を入れて探索を行った。
ディーナとの激しい試合を終えた翌日、全員二日酔いにはならずに済み、朝から虎竜を探して探索を始めた。
「………………ねぇ、アラッド」
「なんだ、スティーム」
「物凄い今更な話なんだけど、虎竜が先に僕たちの存在に気付いたら、逃げないかな」
ディラーズフォレストに入ってから、ふと思い出した事をリーダーに尋ねたスティーム。
ランクが上がれば、モンスターは自分の実力に自信を持つようになる。
とはいえ、ランクが高くないEやFのモンスターであっても、本能的にその差が解らないのであれば、バカみたいに突っ込んで殺されることもある。
虎竜は情報から予測するに、最低でもBランク。
今現在……表示上はBランクであっても、実力はAランク並みに成長している可能性は十分にあり得る。
それらを考えると、そもそも虎竜に逃走という選択肢があるのかと思える。
ただ、アラッドたち全員の戦闘力を纏めると……割と洒落にならない。
「えぇ~~~~、普通逃げる?」
「可能性としては、ゼロじゃないんじゃないかなって思ってる」
「うっそ~~~~。だって、虎とドラゴンが混ざった個体でしょ。これまで何人もの冒険者を殺ってきた個体でしょ。そんなモンスターが逃げたりする? 闇竜だって、最終的に逃げなかったんだよ」
ガルーレの言う通り、闇竜デネブはアラッドたちと全面戦争という形を取り、自分が戦う相手はこれまで対峙してきた人間の中でもトップクラスにヤバい存在。
闇の力を与えたモンスターと戦っている人間、従魔たちも並の力以上の戦闘力を有しており、一番後ろにはAランクモンスター、デルドウルフことクロが待機している。
人の言葉を話し、着実に着実に戦力を増やすことが出来る知能を持つ闇竜デネブでも……そんな状況を前にしても、逃げずにアラッドと最後まで戦い続けた。
「そうだな。でも、闇竜も……その前に戦った風竜も、一応一体だけではなかったでしょ」
「まぁ、そう」
「けど、話を聞く限り虎竜は一体で活動してる。対して僕たちはファルたちも入れれば合計六人。数では圧倒的に有利。ドラゴンには他のモンスターよりもプライドが高い面があるけど、それでも……生物であることに変わりはないでしょ」
「…………少なからず、生存本能はあるだろうな」
アンデットの様に生と死の狭間で生きているモンスターではないため、アラッドの言う通りドラゴンという生物ピラミッドの頂点に立っているモンスターであっても、少なからず生存本能というのは存在する。
「またアラッドは難しい言葉を使うね」
「そんなに難しくないと思うんだが……ガルーレは、あまり納得いかないって感じの顔だな」
「だってさ~~~……いや、あれだよ。スティームとアラッドが言う事は間違ってはないだろうとは思うよ。私バカだからあんまりちゃんと理解は出来ないけど、正しい事言ってるんだとは思う。けどさ、あのディーナがあそこまで強くならなきゃって思うモンスターが、その生存本能? が発揮……発動? して、逃げるってのは……なんかな~~~~って思うんだよね」
ガルーレが二人の考えを一応解る様に、アラッドとスティームも私情強めなガルーレの思いは理解出来る。
「それにさ、ドラゴンとかって生存本能とかよりも、戦闘欲の方が強そうじゃない?」
「あぁ~~~~…………どう、思う。スティーム」
「ん~~~~~…………ギーラスさんが戦った風竜、ストールもギーラスさんが黒炎を体得しても逃げなかったのを考えると……プライド関係になりそうだけど、確かにドラゴンとかは特にその特徴が強いのかもしれないね」
逃げる可能性もあるんじゃないかと考えていたスティームだが、ガルーレの考えを聞くうちに、やっぱりその可能性は薄いかもと思い始めた。
「でしょでしょ。だから、クロと戦うにしろ、逃げたりしない筈!!!」
「ふふ……ガルーレの言う通りだと良いな、クロ」
「ワゥ!!」
アラッドの従魔であるクロとしては、主人であるアラッドを……アラッドの仲間、友達であるスティームやガルーレを優先するべきという思いを持っている。
だが、クロもそこそこ戦闘好き狼であるため、今回アラッドたち三人が強い強いと話しているモンスターと戦えるかもしれないのは、非常にワクワクしていた。
「…………」
「クルル……」
「ウキャ、キャキャキャ」
クロを羨ましそうな眼で見るヴァジュラに対し、ファルは普段通りクールな眼で「解ってるでしょうね」と声を掛ける。
さすがにヤンチャ猿であるヴァジュラも解っているため「解ってるっすよ」と返し、基本的に思いは言葉にせず、ギリ表情に零れるだけに留まっている。
(……とはいえ、クロが確実に戦えるわけではない。そうなった場合…………ディーナさんが負けるにしろ、勝つにしろ……場所が把握出来れば、気付かれない位置まで向かった方が良いな)
間に合うのであれば、アラッドとしてもディーナを死なせたくない。
加えて、ディーナが勝利をもぎ取ったとしても、虎竜との戦いを終えて無事でいられる可能性は低く、他のモンスターによって漁夫の利を取られるかもしれない。
その可能性も踏まえ、アラッドは普段以上に索敵に力を入れて探索を行った。
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