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九百六十六話 求める理由
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「ッ!! それが、噂の鬼火、かッ!!!」
「……チッ」
ディーナはここぞというタイミングで身体強化と剛腕のスキルを同時に発動。
そして、全身に魔力を纏い……一部の鬼人族だけが使える火、鬼火を四肢に纏った。
(この男も、ほぼ同時に、強化系スキルを発動、しやがった……こいつの眼は、どうなってんだい!!!!)
まだ……手札はある。
それでも、急に身体強化系のスキルを二つ同時に発動し、鬼火まで使えば一気に均衡を崩せると思っていたディーナ。
しかし、アラッドはディーナが自身を強化したタイミングとほぼ同時に、同じく身体強化系のスキルを発動し、魔力を纏い……鬼火に対抗するため、四肢に風を纏った。
ディーナからすれば、絶好のタイミングであり、これで崩せるという自信があった。
それでもアラッドはほぼ同タイミングで自身を強化し、見事対応。
ディーナは自身のどこから発動するタイミングを読まれたのか……ほんの少しだけ考えるも、直ぐに目の前の男に意識を集中させる。
(この男が、咄嗟に反応して、対応された。それが事実だ!!)
実際のところ……アラッドは持ち前の反応速度、もしくは勘でディーナの自己強化に対応したわけではなかった。
眼は雄弁に語る。
どこかしらのタイミングで強化系スキルを発動し、自身のリズムをつくろうとする。
その戦法を行うことは、身体強化による急加速に慣れている者でなければ実行できない戦法ではあるが……アラッドの実家に属する騎士たちの多くはそれが行える。
アラッドに忠誠を誓っているガルシアたちも同じようなことが出来る為、どういったタイミングで発動してくるか……上手く表情を隠していたとしても、目力や呼吸の変化などである程度は予想出来るようになっていた。
(これが、鬼火か…………なんとなく、対抗しようと、して、火を纏わなくて、正解だったな)
鬼人族が扱う火、鬼火に関してアラッドも少しは聞いたことがあった。
鬼の火は……他者の火を喰らうと。
普段のアラッドであれば本当にそうなのかと、喰い尽くせない炎を纏ってやると息巻いていたかもしれない。
だが、結果的にアラッドは火ではなく風を纏うという選択を取り、それで良かったと感じた。
(忌避感、っていうのか? そんな背筋に冷たさを、感じる何かが、あるな……地獄の炎、といったところか?)
幸いにも、鬼火が喰らうのは火のみで、風まで喰らうことはない。
ただ、身体強化だけではなく剛腕という腕力強化スキルまで発動したことで、ディーナの放つ一撃の威力が更に上昇。
アラッドから見て、今のディーナは鬼火という特殊技を除いても、無意識に笑みを零す……そんな攻撃を放っていた。
(スピードに関して、は……まだ、ガルーレの方が、上か? ただ、パワーは、完全にガルーレを、上回ってる、だろうな)
三人の中で、現時点で一番パワーが上なのはアラッドであり、その次にガルーレが入ってくる。
人は見た目によらないという言葉が相応しく、ガルーレは見た目以上のパワーを有しており、そこら辺の巨漢よりも腕力は上。
ただ、ガルーレと出会ってそれなりに模擬戦を行ってきたからこそ、解る。
ペイル・サーベルスというガルーレの切り札を除けば、現時点では間違いなくディーナ方がパワーは上だと。
(それに…………思ったより、中々、決まってくれない、な)
四肢に、脚に風を纏ったことで、アラッドの脚力が強化された。
まだ真正面から打撃戦を行ってはいるが、先程までとは異なり、アラッドはフットワークを生かしながら攻めていた。
それもあって、アラッドの打撃は徐々にディーナにヒットするようになっていったが……未だにクリーンヒットはなく、どれも太ももや腕でガードされている。
(野性の勘か……いや、野性の勘で済ませても良いものか?)
あからさまに左拳を強く握りしめながらハイキック……と見せかけ、ミドルキックを叩き込む。
「ッ!! ジッ!!!!!」
(っ!! また、か)
試合が始まったばかりの頃と比べて、ディーナがアラッドの攻撃を回避することが減るも、やはり未だにクリーンヒットはせず。
(何が違う……戦闘経験数、なら……俺は負けてない、筈だ)
積み重ねてきた努力、実戦の数。
それはアラッドにとって明確な自信である。
ベテラン、四十代に入ってもまだ現役の戦闘者であればともかく、同じ十代や二十代前半の者たちと比べれば、確かにアラッドが積み重ねてきた実戦数は勝っている。
では、アラッドとディーナ……二人にある明確な違いとは何か。
戦闘中であるアラッドは、ふと……何故自分とディーナが戦っているのを思い出し……小さな笑みを零した。
(そうか……そうだな。俺と、こいつとでは……そこが、明らかに違う)
アラッドがこれまで積み重ねてきたものは、他者と比べても分厚い。
だが、その積み重ねてきた理由は……好奇心からくるものが大半の理由だった。
しかし……ディーナは違う。
ディーナは両親の仇である虎竜を殺すという、明確な理由を持ち、強さを求めていた。
「ッ!! フンッ!!!!!!!!」
「っ!!!???」
なるほどなるほどとアラッドが感心していると、ここにきて鬼火の斬撃波を手刀から繰り出すという遠距離攻撃を放ち、アラッドが右側に回避するように誘導。
そのタイミングに合わせ、ディーナの渾身のハイキックが叩き込まれた。
「……チッ」
ディーナはここぞというタイミングで身体強化と剛腕のスキルを同時に発動。
そして、全身に魔力を纏い……一部の鬼人族だけが使える火、鬼火を四肢に纏った。
(この男も、ほぼ同時に、強化系スキルを発動、しやがった……こいつの眼は、どうなってんだい!!!!)
まだ……手札はある。
それでも、急に身体強化系のスキルを二つ同時に発動し、鬼火まで使えば一気に均衡を崩せると思っていたディーナ。
しかし、アラッドはディーナが自身を強化したタイミングとほぼ同時に、同じく身体強化系のスキルを発動し、魔力を纏い……鬼火に対抗するため、四肢に風を纏った。
ディーナからすれば、絶好のタイミングであり、これで崩せるという自信があった。
それでもアラッドはほぼ同タイミングで自身を強化し、見事対応。
ディーナは自身のどこから発動するタイミングを読まれたのか……ほんの少しだけ考えるも、直ぐに目の前の男に意識を集中させる。
(この男が、咄嗟に反応して、対応された。それが事実だ!!)
実際のところ……アラッドは持ち前の反応速度、もしくは勘でディーナの自己強化に対応したわけではなかった。
眼は雄弁に語る。
どこかしらのタイミングで強化系スキルを発動し、自身のリズムをつくろうとする。
その戦法を行うことは、身体強化による急加速に慣れている者でなければ実行できない戦法ではあるが……アラッドの実家に属する騎士たちの多くはそれが行える。
アラッドに忠誠を誓っているガルシアたちも同じようなことが出来る為、どういったタイミングで発動してくるか……上手く表情を隠していたとしても、目力や呼吸の変化などである程度は予想出来るようになっていた。
(これが、鬼火か…………なんとなく、対抗しようと、して、火を纏わなくて、正解だったな)
鬼人族が扱う火、鬼火に関してアラッドも少しは聞いたことがあった。
鬼の火は……他者の火を喰らうと。
普段のアラッドであれば本当にそうなのかと、喰い尽くせない炎を纏ってやると息巻いていたかもしれない。
だが、結果的にアラッドは火ではなく風を纏うという選択を取り、それで良かったと感じた。
(忌避感、っていうのか? そんな背筋に冷たさを、感じる何かが、あるな……地獄の炎、といったところか?)
幸いにも、鬼火が喰らうのは火のみで、風まで喰らうことはない。
ただ、身体強化だけではなく剛腕という腕力強化スキルまで発動したことで、ディーナの放つ一撃の威力が更に上昇。
アラッドから見て、今のディーナは鬼火という特殊技を除いても、無意識に笑みを零す……そんな攻撃を放っていた。
(スピードに関して、は……まだ、ガルーレの方が、上か? ただ、パワーは、完全にガルーレを、上回ってる、だろうな)
三人の中で、現時点で一番パワーが上なのはアラッドであり、その次にガルーレが入ってくる。
人は見た目によらないという言葉が相応しく、ガルーレは見た目以上のパワーを有しており、そこら辺の巨漢よりも腕力は上。
ただ、ガルーレと出会ってそれなりに模擬戦を行ってきたからこそ、解る。
ペイル・サーベルスというガルーレの切り札を除けば、現時点では間違いなくディーナ方がパワーは上だと。
(それに…………思ったより、中々、決まってくれない、な)
四肢に、脚に風を纏ったことで、アラッドの脚力が強化された。
まだ真正面から打撃戦を行ってはいるが、先程までとは異なり、アラッドはフットワークを生かしながら攻めていた。
それもあって、アラッドの打撃は徐々にディーナにヒットするようになっていったが……未だにクリーンヒットはなく、どれも太ももや腕でガードされている。
(野性の勘か……いや、野性の勘で済ませても良いものか?)
あからさまに左拳を強く握りしめながらハイキック……と見せかけ、ミドルキックを叩き込む。
「ッ!! ジッ!!!!!」
(っ!! また、か)
試合が始まったばかりの頃と比べて、ディーナがアラッドの攻撃を回避することが減るも、やはり未だにクリーンヒットはせず。
(何が違う……戦闘経験数、なら……俺は負けてない、筈だ)
積み重ねてきた努力、実戦の数。
それはアラッドにとって明確な自信である。
ベテラン、四十代に入ってもまだ現役の戦闘者であればともかく、同じ十代や二十代前半の者たちと比べれば、確かにアラッドが積み重ねてきた実戦数は勝っている。
では、アラッドとディーナ……二人にある明確な違いとは何か。
戦闘中であるアラッドは、ふと……何故自分とディーナが戦っているのを思い出し……小さな笑みを零した。
(そうか……そうだな。俺と、こいつとでは……そこが、明らかに違う)
アラッドがこれまで積み重ねてきたものは、他者と比べても分厚い。
だが、その積み重ねてきた理由は……好奇心からくるものが大半の理由だった。
しかし……ディーナは違う。
ディーナは両親の仇である虎竜を殺すという、明確な理由を持ち、強さを求めていた。
「ッ!! フンッ!!!!!!!!」
「っ!!!???」
なるほどなるほどとアラッドが感心していると、ここにきて鬼火の斬撃波を手刀から繰り出すという遠距離攻撃を放ち、アラッドが右側に回避するように誘導。
そのタイミングに合わせ、ディーナの渾身のハイキックが叩き込まれた。
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