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九百六十五話 違和感
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「うは~~~~……やっぱり半端じゃないね」
「そうだね…………予想していた動きよりも、もう一段上ってところかな」
戦闘が始まって約二分。
アラッドとディーナはあまり蹴り技は使わず、主に拳や肘を使って格闘戦を繰り広げていた。
最初からディーナが強いと認めていた二人ではあるが、実際にディーナの戦いっぷりを観て、二人の中での評価が一段上がった。
スティームとガルーレもアラッドと同じく、虎竜という四足歩行のモンスターを狙っているのであれば、あまり対人戦の技術は高くないのではと予想していた。
だが、その予想はあっさりと裏切られ、素手をメインで戦うガルーレから見ても、半端ではない技術力を有していた。
「冒険者としては、全然良いことなんだろうけど、なんで狙ってるモンスターが四足歩行なのに、あそこまで対人戦の技術を高めたんだろうね」
「……冒険者として活動していれば、人型のモンスターと戦うこともある。強くなる為には、強い人型のモンスターと戦うこともある筈だから……じゃないかな」
優れた技術を持つ人間の力が、凄まじい身体能力を持つモンスターに刺さることは多い。
身体能力を高めることを意識している戦闘者が愚かというわけではないが、技術というのは間違いなく人間がモンスターより優れている力である。
「あぁ~~、なるほど。確かに、本命の虎竜に勝つ前に、強敵とはいえ他のモンスターに負けられないって話か。でもさ……今の状態ではあるけど、アラッド……結構本気?」
「ん~~~~~~~………………本気で遊んでる、ってところかな」
まだ一年ほどの間ではあるが、スティームはアラッドと何度も模擬戦を行っており、アラッドがモンスターと戦う姿を間近で何度も観てきた。
だからこそ、今現在ディーナと戦っているアラッドが……試合という状況で、本気で楽しんでいると解る。
「本気で遊んでる、か~~~……それってさ、普通に考えてかなり凄いよね。だって、多分ディーナはディーナで、まだ色々と隠してそうじゃん」
「だね。もう少し、アラッドの手札を探りたいんだろうけど、現時点であそこまで肉迫してるって考えると……今回のアラッドとの試合どころか、虎竜との戦いも全然あり得そうじゃない?」
スティームだけではなく、ガルーレもアラッドの体質について聞いていた。
レベルが上がり辛い代わりに、レベルアップの際の上昇幅が大きい。
故に、アラッドは同レベルの他種族戦闘者と比べても、全体的に見て身体能力で劣ることはなく、寧ろ上回ることは
珍しくない。
だが、二人から観て、スキルという手札をまだ隠した状態ではあるが、ディーナの身体能力は十分アラッドに迫ってる様に感じた。
「……どういう切り札を持っているのかは解らないけど、切り札を使って賭けに出る価値は……十分にあると、感じるね」
二人ともまだ虎竜という特異モンスターの姿、戦いっぷりは観ていないが、それでも例えディーナがソロで挑んだとしても……一方的な戦いになるとは思えなかった。
(パワーは…………鬼人族ということもあって、アラッドを上回ってる? ……それだけなら、まだ理解出来るんだけどね)
バランスタイプである人族が、パワータイプである鬼人族に腕力、力で劣るのは理解出来るものの……スティームから視て、ディーナはスピードもアラッドに劣っていないように見えた。
「………………ねぇ、スティーム」
「なんだい」
「あのディーナって冒険者……本当に鬼人族なのかな?」
「? 見る限り、鬼人族にしか見えないけど……変装系のマジックアイテムを使って、種族を偽ってる可能性があるの?」
「偽ってるって言うか、ん~~~~…………どう、なんだろう」
上手く言葉に言い表せないガルーレ。
ただ、スティームはそんなガルーレが感じた違和感を、勘違いだろうと切り捨てることはなかった。
(種族を偽ってまで、アラッドを倒して自分の復讐の邪魔をさせない……っていう考えは解らなくはない、かな。でも、そういったタイプのフェイクを使う人なのかな?)
本当にディーナに関する情報は、友人知人でもない人でも知っている様な内容しか知らない。
しかし、スティームから視て……打撃戦のフェイク技術は上手くとも、盤外戦術に近いフェイクを使うようには見えない。
「ガルーレから見て、どういうところが普通の鬼人族と違うんだい」
「……速さ、かな。ぶっちゃけ、これまで関わったことがある鬼人族の中にも、動きが速い人はいた。でも、パワーとスピードが完全に……両立? してる人は見たことないかな……っていうか、もしかして速いっていうよりも、反応が良いかも」
「反応が良い……」
「判断が的確なのは戦闘経験の厚さからくるものかもしれないけど、でも反応速度が結構良いなって感じる」
(反応速度か…………言われてみれば、確かにそうかもしれない………………ん? そういえば、どこかで見たことあるような……)
改めてディーナの動きを見て、何かを思い出しそうになるスティーム。
だが、次の瞬間、試合に動きが訪れた。
「そうだね…………予想していた動きよりも、もう一段上ってところかな」
戦闘が始まって約二分。
アラッドとディーナはあまり蹴り技は使わず、主に拳や肘を使って格闘戦を繰り広げていた。
最初からディーナが強いと認めていた二人ではあるが、実際にディーナの戦いっぷりを観て、二人の中での評価が一段上がった。
スティームとガルーレもアラッドと同じく、虎竜という四足歩行のモンスターを狙っているのであれば、あまり対人戦の技術は高くないのではと予想していた。
だが、その予想はあっさりと裏切られ、素手をメインで戦うガルーレから見ても、半端ではない技術力を有していた。
「冒険者としては、全然良いことなんだろうけど、なんで狙ってるモンスターが四足歩行なのに、あそこまで対人戦の技術を高めたんだろうね」
「……冒険者として活動していれば、人型のモンスターと戦うこともある。強くなる為には、強い人型のモンスターと戦うこともある筈だから……じゃないかな」
優れた技術を持つ人間の力が、凄まじい身体能力を持つモンスターに刺さることは多い。
身体能力を高めることを意識している戦闘者が愚かというわけではないが、技術というのは間違いなく人間がモンスターより優れている力である。
「あぁ~~、なるほど。確かに、本命の虎竜に勝つ前に、強敵とはいえ他のモンスターに負けられないって話か。でもさ……今の状態ではあるけど、アラッド……結構本気?」
「ん~~~~~~~………………本気で遊んでる、ってところかな」
まだ一年ほどの間ではあるが、スティームはアラッドと何度も模擬戦を行っており、アラッドがモンスターと戦う姿を間近で何度も観てきた。
だからこそ、今現在ディーナと戦っているアラッドが……試合という状況で、本気で楽しんでいると解る。
「本気で遊んでる、か~~~……それってさ、普通に考えてかなり凄いよね。だって、多分ディーナはディーナで、まだ色々と隠してそうじゃん」
「だね。もう少し、アラッドの手札を探りたいんだろうけど、現時点であそこまで肉迫してるって考えると……今回のアラッドとの試合どころか、虎竜との戦いも全然あり得そうじゃない?」
スティームだけではなく、ガルーレもアラッドの体質について聞いていた。
レベルが上がり辛い代わりに、レベルアップの際の上昇幅が大きい。
故に、アラッドは同レベルの他種族戦闘者と比べても、全体的に見て身体能力で劣ることはなく、寧ろ上回ることは
珍しくない。
だが、二人から観て、スキルという手札をまだ隠した状態ではあるが、ディーナの身体能力は十分アラッドに迫ってる様に感じた。
「……どういう切り札を持っているのかは解らないけど、切り札を使って賭けに出る価値は……十分にあると、感じるね」
二人ともまだ虎竜という特異モンスターの姿、戦いっぷりは観ていないが、それでも例えディーナがソロで挑んだとしても……一方的な戦いになるとは思えなかった。
(パワーは…………鬼人族ということもあって、アラッドを上回ってる? ……それだけなら、まだ理解出来るんだけどね)
バランスタイプである人族が、パワータイプである鬼人族に腕力、力で劣るのは理解出来るものの……スティームから視て、ディーナはスピードもアラッドに劣っていないように見えた。
「………………ねぇ、スティーム」
「なんだい」
「あのディーナって冒険者……本当に鬼人族なのかな?」
「? 見る限り、鬼人族にしか見えないけど……変装系のマジックアイテムを使って、種族を偽ってる可能性があるの?」
「偽ってるって言うか、ん~~~~…………どう、なんだろう」
上手く言葉に言い表せないガルーレ。
ただ、スティームはそんなガルーレが感じた違和感を、勘違いだろうと切り捨てることはなかった。
(種族を偽ってまで、アラッドを倒して自分の復讐の邪魔をさせない……っていう考えは解らなくはない、かな。でも、そういったタイプのフェイクを使う人なのかな?)
本当にディーナに関する情報は、友人知人でもない人でも知っている様な内容しか知らない。
しかし、スティームから視て……打撃戦のフェイク技術は上手くとも、盤外戦術に近いフェイクを使うようには見えない。
「ガルーレから見て、どういうところが普通の鬼人族と違うんだい」
「……速さ、かな。ぶっちゃけ、これまで関わったことがある鬼人族の中にも、動きが速い人はいた。でも、パワーとスピードが完全に……両立? してる人は見たことないかな……っていうか、もしかして速いっていうよりも、反応が良いかも」
「反応が良い……」
「判断が的確なのは戦闘経験の厚さからくるものかもしれないけど、でも反応速度が結構良いなって感じる」
(反応速度か…………言われてみれば、確かにそうかもしれない………………ん? そういえば、どこかで見たことあるような……)
改めてディーナの動きを見て、何かを思い出しそうになるスティーム。
だが、次の瞬間、試合に動きが訪れた。
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