962 / 984
九百六十話 それで許す
しおりを挟む
「ここだな」
門兵から聞いていた場所に向かい、冒険者ギルドの前に到着。
クロたちは表で待っててもらい、三人は中に入った。
(……? 暗い……という訳ではないが、そこまで明るくもない、な)
冒険者ギルドの中に入った三人には、ロビーにいる同業者や受付嬢たちから視線を向けられるも、アラッドはそれらの視線よりロビー内のなんとも言えない空気が気になった。
「……ちょっと暗い、って感じで合ってるかな」
「そうだな。葬式の様な空気ではないが、それでも明るいとは言い難いだろう」
アラッドだけではなく、スティームもあまり普通ではない空気を察していた。
「面倒なモンスターが現れたとか?」
「面倒、か…………蜘蛛系のモンスターか、ワーム系のモンスターか」
「あれじゃない、もしかしたらスティームが一回逃げられた白蛇の……ソルヴァイパーみたいなモンスターが現れたとか?」
「なるほど。そういう可能性もあるか」
強い。しかし、逃げる時は速攻で逃げるため、追い詰めても中々討伐出来ない。
そんなモンスターは、確かにソルヴァイパー以外にも存在する。
「まっ、クエストボードを見れば何か分かるでしょ」
三人は冒険者にとって一番解り易い情報源、クエストボードの前へと向かう。
すると……三人の視線は、一枚の張り紙に吸い寄せられた。
「……意外と、あっさり張られてるものだな」
「そう、だね」
三人の視線を吸い寄せた張り紙には、虎竜への懸賞金が記されていた。
「白金貨……五十枚、か。中々太っ腹な額だな」
「……多分、これは本当に虎竜が存在するのか否か、そこの真偽を判明させた点に関しても報酬が支払われるんじゃないかな」
「なるほど。確かに、未知のモンスターだからこそ、そういった部分の判明にも金が支払われるか」
「…………はぁ~~~~~~~~~~」
アラッドとスティームがあれこれ話している中、ガルーレが急に大きなため息を吐いた。
「? どうした、ガルーレ」
「こんな多額の懸賞金を掛けられたモンスターと戦えるクロが羨ましいな~~って思っただけよ」
先程、確かに順番的には仕方ないよね、と……今回の強敵、虎竜と戦う面子はクロと決定したことに、ガルーレは異論はなかった。
とはいえ、ただ強いだろうと予想出来る個体に加えて、非常に珍しい存在……殆どの戦闘者たちが見たことがない個体との戦いとなれば、どうしても戦闘欲が刺激されてしまう。
「……それなら、虎竜以外の強敵、Bランクモンスターと遭遇したら、まずはお前が戦るか、ガルーレ」
「っ! 良いの!!??」
「メインディッシュ以外なら、俺たちの誰かが戦っても構わないだろう」
ガルーレが我儘を言ったとしても、メインディッシュの相手をクロ以外に後退させるつもりはない。
だが、それ以外の相手であれば、話しは別である。
「ぃよし!!」
虎竜以外の強敵と遭遇出来れば、自分が戦える。
それだけ確約されただけでも、ガルーレとしては嬉しい限りだった。
「おいお前ら、随分面白い話してんな」
「? えぇ、そうかもしれませんね」
背後から話しかけてきた人物に対し、アラッドは振り返り……特に喧嘩腰になることなく、態度を変えずに答えた。
「実は、俺たち全員従魔がいるんですよ」
「あん?」
質問されてもいない事を口にし始めた青年に対し、大きな体格を持つ二十代半ばの男性冒険者は首を傾げる。
「言ってしまえば、六人パーティーで行動してる様なもので……外に行けば、待機してる従魔たちの姿が見れますよ」
そんなアラッドの言葉を耳にした男性冒険者の友人が、忍び足で移動しながらギルドの外へと向かった。
そして十秒も経たない内に慌てて戻って来た。
「や、やべぇってバルンガっ!!!」
「おいおい、なんだよみっともねぇ顔して」
自分をバカにする様な態度を無視し、戻って来た男は慌てて大柄な男、バルンガを掴んで少し離れた場所に連れて行き、ギルドの外で見たものを伝える。
「はっ!? そ、それってよ」
「多分……だろうな」
「………………」
外の従魔三体を確認した男から報告と推察を聞いたバルンガは、みるみるうちに顔が青くなっていき……それでも、その場からダッシュで逃げだす様な真似はせず、フラフラとした足取りでアラッドたちの方へ戻って来た。
「も、申し訳ありませんでした!!!!!!!」
「「「……」」」
清々しい程勢い良く土下座をかました。
バルンガはまだ、目の前の青年の一人があのアラッドであるとは確認していない。
それでも、最近ちょいちょい耳にする噂から、従魔の面子……パーティーの面子から、あのアラッドだと確信せざるを得なかった。
「ふふ、とりあえず頭を上げてくれ」
「し、しかし」
「これでも、もう冒険者として活動を始めて一年は経っている。冒険者がどういった行動を取ってしまうのかというのも理解している」
「………………」
「いきなり殴りかかってきた、侮辱してきたのであればともかく、あなたはただ絡んできただけだ。だから、とりあえず頭を上げてくれ。そして、もし知っていることがあれば、虎竜にかんして色々と教えてほしい」
「も、勿論です!!!」
バルンガは慌てて立ち上がり、三人を併設されている酒場の席へと案内した。
門兵から聞いていた場所に向かい、冒険者ギルドの前に到着。
クロたちは表で待っててもらい、三人は中に入った。
(……? 暗い……という訳ではないが、そこまで明るくもない、な)
冒険者ギルドの中に入った三人には、ロビーにいる同業者や受付嬢たちから視線を向けられるも、アラッドはそれらの視線よりロビー内のなんとも言えない空気が気になった。
「……ちょっと暗い、って感じで合ってるかな」
「そうだな。葬式の様な空気ではないが、それでも明るいとは言い難いだろう」
アラッドだけではなく、スティームもあまり普通ではない空気を察していた。
「面倒なモンスターが現れたとか?」
「面倒、か…………蜘蛛系のモンスターか、ワーム系のモンスターか」
「あれじゃない、もしかしたらスティームが一回逃げられた白蛇の……ソルヴァイパーみたいなモンスターが現れたとか?」
「なるほど。そういう可能性もあるか」
強い。しかし、逃げる時は速攻で逃げるため、追い詰めても中々討伐出来ない。
そんなモンスターは、確かにソルヴァイパー以外にも存在する。
「まっ、クエストボードを見れば何か分かるでしょ」
三人は冒険者にとって一番解り易い情報源、クエストボードの前へと向かう。
すると……三人の視線は、一枚の張り紙に吸い寄せられた。
「……意外と、あっさり張られてるものだな」
「そう、だね」
三人の視線を吸い寄せた張り紙には、虎竜への懸賞金が記されていた。
「白金貨……五十枚、か。中々太っ腹な額だな」
「……多分、これは本当に虎竜が存在するのか否か、そこの真偽を判明させた点に関しても報酬が支払われるんじゃないかな」
「なるほど。確かに、未知のモンスターだからこそ、そういった部分の判明にも金が支払われるか」
「…………はぁ~~~~~~~~~~」
アラッドとスティームがあれこれ話している中、ガルーレが急に大きなため息を吐いた。
「? どうした、ガルーレ」
「こんな多額の懸賞金を掛けられたモンスターと戦えるクロが羨ましいな~~って思っただけよ」
先程、確かに順番的には仕方ないよね、と……今回の強敵、虎竜と戦う面子はクロと決定したことに、ガルーレは異論はなかった。
とはいえ、ただ強いだろうと予想出来る個体に加えて、非常に珍しい存在……殆どの戦闘者たちが見たことがない個体との戦いとなれば、どうしても戦闘欲が刺激されてしまう。
「……それなら、虎竜以外の強敵、Bランクモンスターと遭遇したら、まずはお前が戦るか、ガルーレ」
「っ! 良いの!!??」
「メインディッシュ以外なら、俺たちの誰かが戦っても構わないだろう」
ガルーレが我儘を言ったとしても、メインディッシュの相手をクロ以外に後退させるつもりはない。
だが、それ以外の相手であれば、話しは別である。
「ぃよし!!」
虎竜以外の強敵と遭遇出来れば、自分が戦える。
それだけ確約されただけでも、ガルーレとしては嬉しい限りだった。
「おいお前ら、随分面白い話してんな」
「? えぇ、そうかもしれませんね」
背後から話しかけてきた人物に対し、アラッドは振り返り……特に喧嘩腰になることなく、態度を変えずに答えた。
「実は、俺たち全員従魔がいるんですよ」
「あん?」
質問されてもいない事を口にし始めた青年に対し、大きな体格を持つ二十代半ばの男性冒険者は首を傾げる。
「言ってしまえば、六人パーティーで行動してる様なもので……外に行けば、待機してる従魔たちの姿が見れますよ」
そんなアラッドの言葉を耳にした男性冒険者の友人が、忍び足で移動しながらギルドの外へと向かった。
そして十秒も経たない内に慌てて戻って来た。
「や、やべぇってバルンガっ!!!」
「おいおい、なんだよみっともねぇ顔して」
自分をバカにする様な態度を無視し、戻って来た男は慌てて大柄な男、バルンガを掴んで少し離れた場所に連れて行き、ギルドの外で見たものを伝える。
「はっ!? そ、それってよ」
「多分……だろうな」
「………………」
外の従魔三体を確認した男から報告と推察を聞いたバルンガは、みるみるうちに顔が青くなっていき……それでも、その場からダッシュで逃げだす様な真似はせず、フラフラとした足取りでアラッドたちの方へ戻って来た。
「も、申し訳ありませんでした!!!!!!!」
「「「……」」」
清々しい程勢い良く土下座をかました。
バルンガはまだ、目の前の青年の一人があのアラッドであるとは確認していない。
それでも、最近ちょいちょい耳にする噂から、従魔の面子……パーティーの面子から、あのアラッドだと確信せざるを得なかった。
「ふふ、とりあえず頭を上げてくれ」
「し、しかし」
「これでも、もう冒険者として活動を始めて一年は経っている。冒険者がどういった行動を取ってしまうのかというのも理解している」
「………………」
「いきなり殴りかかってきた、侮辱してきたのであればともかく、あなたはただ絡んできただけだ。だから、とりあえず頭を上げてくれ。そして、もし知っていることがあれば、虎竜にかんして色々と教えてほしい」
「も、勿論です!!!」
バルンガは慌てて立ち上がり、三人を併設されている酒場の席へと案内した。
443
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる