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九百五十八話 同じぐらい、大切
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「アッシュ、ちゃんと後で来なさいよ!!」
「分かってるよ」
贈り物を教え、ほんの少し話しを終えた後、シルフィーは友人たちが待つ訓練場へと向かう。
だが、アッシュは少し残ってアレク先生を話しをすると伝える。
シルフィーはほんの少し不機嫌になるも、後でちゃんと来るようにと伝えるだけで、それ以上何か文句をぶつけてくることなどもなかった。
「……アレク先生」
「戦争に関して、だね」
「そうですね……ある程度、もう起こる事が決まってるんですか?」
アラッドも行動しているとなれば、殆ど決まってると思える。
だが、今回の件に関しては国と国が了承した上で、戦いが始まる。
「…………八割方……いや、九割方、実際に起こると僕は思ってる」
「そうですか……そうなれば、アラッド兄さんたちは間違なく参加しますね」
「だろうね……やっぱり、心配かい?」
アラッドは、現在一応冒険者であり、最悪……どうにかこうにかすれば、戦争には参加せずに済む選択肢がある。
だが、あのアラッドがそんな選択肢を取るわけがないと、アッシュもアレクも解っていた。
「……そうですね」
「意外、という訳ではないけど、アッシュはアラッドに万が一が起こり得ると思ってるんだね」
「えぇ。勿論、アラッド兄さんの実力は知っています。アラッド兄さんが実家で生活している間に戦ってきた相手、冒険者になってから討伐してきたモンスターなどを考えれば、心配すれば無駄だと思います……ただ、世界は広いというものでしょう」
「ふふ、まぁそうだね」
まだ十四のアッシュが口にする言葉ではないと思いつつも、世界は広い……その広さをアレクも知っているからこそ、ツッコまずにアッシュの話の続きを待つ。
「代表戦に参加した時、それなりに衝撃を受けました」
「代表戦……アッシュは、向こうの学生のトップに勝ったと聞いてるよ」
「そうですね。確かに勝ちました。ただ、あれは油断と試合という状況を利用したからこそ得た勝利です。相手に油断がなければ……僕の自滅で終わってたでしょう」
「相変わらず謙虚だね」
「事実ですよ。それに、アラッド兄さんとフローレンスが戦った人も、僕の予想を超えた強さを持っていました」
世界が広がれば、まだ見ぬ強者はどこにでもいる。
あの代表選で、アッシュはそれを知った。
だからこそ、アッシュはアラッドがゴリディア帝国との戦争が起これば、絶対に無事に帰ってくる……とは断言しない。
「加えて、戦場での戦いとなれば、学生や冒険者になりたての方達ばかりではなく、熟練の戦闘者たちも参加するでしょう」
「……そうだね」
ゴリディア帝国との戦闘が確定した場合……アレクも戦争に参加する可能性もある。
先程、自分だけでは狂気が暴走したアラッドを自分だけで抑えるのは非常ん厳しいなど考えていたアレクではあるが、それでも本気の死合いとなれば……アラッドを殺せる可能性は、決して低くない。
戦場には、そういった猛者たちが多く参加する。
「まぁ、当たり前だけど、アッシュが招集されることはないから安心してくれ」
「それは良かったです。仮にそうなれば、父さんやアラッド兄さんに泣きつこうと思っていました」
「…………」
アッシュに戦闘者たる者、全員が持っているであろうプライドなどがなく、本当に招集されれば、父や兄を頼る。
基本的に優秀な戦闘力を有していようとも、中等部の学生を戦争に参加させようとするなど、異例中の異例。
そに対して異議を申し立てるのは当然の行動であり、フールとアラッドがブチ切れて抗議する姿など……想像するだけで卒倒ものである。
「で、でも……自分の兄がそういう場所に行くことに関して、少し思うところがあるって感じかな」
「さぁ、そうでしょう。アラッド兄さんは戦いが好きですからね。もしかしたら、死ぬなら老衰ではなく、強い人と
戦って戦死する方が良いとか考えてるかもしれません」
「ん~~~……否定は出来ない、ね」
「でしょう。とはいえ、今回起こるかもしれない戦いで死ぬのは、不本意なはずです……だからこそ、何かしらの手助けが出来ない状況に……少し、苛立ちます」
勿論、アッシュは戦闘面でアラッドの役立ちたいとは思っていない。
寧ろアラッドが自分やシルフィーをそういった戦場に立たせたくないだろうという気持ちを察しているからこそ、アッシュは錬金術で何かを造り出し、そういった面で役立てればと思っていた。
「それは……錬金術でアラッドをサポートしたかったってことかな」
「そうですね…………はぁ~~~~~。だからこそ、このまま錬金術室に行きたいんですけどね」
「後でシルフィーが怒るんじゃないかな」
「ですよね…………では、僕はそろそろ訓練場に向かいます」
アッシュにとって、錬金術は時間を惜しまずに費やせる趣味。
だが、そんな錬金術と同じく……アッシュにとって、シルフィーたち家族は大切な存在である。
後で絶対に怒るからというめんどくささがあるものの、アッシュは後者を優先し、自身のアイテムバッグにアラッドから貰った物をしまし、シルフィーたちが待つ訓練場へと向かった。
「分かってるよ」
贈り物を教え、ほんの少し話しを終えた後、シルフィーは友人たちが待つ訓練場へと向かう。
だが、アッシュは少し残ってアレク先生を話しをすると伝える。
シルフィーはほんの少し不機嫌になるも、後でちゃんと来るようにと伝えるだけで、それ以上何か文句をぶつけてくることなどもなかった。
「……アレク先生」
「戦争に関して、だね」
「そうですね……ある程度、もう起こる事が決まってるんですか?」
アラッドも行動しているとなれば、殆ど決まってると思える。
だが、今回の件に関しては国と国が了承した上で、戦いが始まる。
「…………八割方……いや、九割方、実際に起こると僕は思ってる」
「そうですか……そうなれば、アラッド兄さんたちは間違なく参加しますね」
「だろうね……やっぱり、心配かい?」
アラッドは、現在一応冒険者であり、最悪……どうにかこうにかすれば、戦争には参加せずに済む選択肢がある。
だが、あのアラッドがそんな選択肢を取るわけがないと、アッシュもアレクも解っていた。
「……そうですね」
「意外、という訳ではないけど、アッシュはアラッドに万が一が起こり得ると思ってるんだね」
「えぇ。勿論、アラッド兄さんの実力は知っています。アラッド兄さんが実家で生活している間に戦ってきた相手、冒険者になってから討伐してきたモンスターなどを考えれば、心配すれば無駄だと思います……ただ、世界は広いというものでしょう」
「ふふ、まぁそうだね」
まだ十四のアッシュが口にする言葉ではないと思いつつも、世界は広い……その広さをアレクも知っているからこそ、ツッコまずにアッシュの話の続きを待つ。
「代表戦に参加した時、それなりに衝撃を受けました」
「代表戦……アッシュは、向こうの学生のトップに勝ったと聞いてるよ」
「そうですね。確かに勝ちました。ただ、あれは油断と試合という状況を利用したからこそ得た勝利です。相手に油断がなければ……僕の自滅で終わってたでしょう」
「相変わらず謙虚だね」
「事実ですよ。それに、アラッド兄さんとフローレンスが戦った人も、僕の予想を超えた強さを持っていました」
世界が広がれば、まだ見ぬ強者はどこにでもいる。
あの代表選で、アッシュはそれを知った。
だからこそ、アッシュはアラッドがゴリディア帝国との戦争が起これば、絶対に無事に帰ってくる……とは断言しない。
「加えて、戦場での戦いとなれば、学生や冒険者になりたての方達ばかりではなく、熟練の戦闘者たちも参加するでしょう」
「……そうだね」
ゴリディア帝国との戦闘が確定した場合……アレクも戦争に参加する可能性もある。
先程、自分だけでは狂気が暴走したアラッドを自分だけで抑えるのは非常ん厳しいなど考えていたアレクではあるが、それでも本気の死合いとなれば……アラッドを殺せる可能性は、決して低くない。
戦場には、そういった猛者たちが多く参加する。
「まぁ、当たり前だけど、アッシュが招集されることはないから安心してくれ」
「それは良かったです。仮にそうなれば、父さんやアラッド兄さんに泣きつこうと思っていました」
「…………」
アッシュに戦闘者たる者、全員が持っているであろうプライドなどがなく、本当に招集されれば、父や兄を頼る。
基本的に優秀な戦闘力を有していようとも、中等部の学生を戦争に参加させようとするなど、異例中の異例。
そに対して異議を申し立てるのは当然の行動であり、フールとアラッドがブチ切れて抗議する姿など……想像するだけで卒倒ものである。
「で、でも……自分の兄がそういう場所に行くことに関して、少し思うところがあるって感じかな」
「さぁ、そうでしょう。アラッド兄さんは戦いが好きですからね。もしかしたら、死ぬなら老衰ではなく、強い人と
戦って戦死する方が良いとか考えてるかもしれません」
「ん~~~……否定は出来ない、ね」
「でしょう。とはいえ、今回起こるかもしれない戦いで死ぬのは、不本意なはずです……だからこそ、何かしらの手助けが出来ない状況に……少し、苛立ちます」
勿論、アッシュは戦闘面でアラッドの役立ちたいとは思っていない。
寧ろアラッドが自分やシルフィーをそういった戦場に立たせたくないだろうという気持ちを察しているからこそ、アッシュは錬金術で何かを造り出し、そういった面で役立てればと思っていた。
「それは……錬金術でアラッドをサポートしたかったってことかな」
「そうですね…………はぁ~~~~~。だからこそ、このまま錬金術室に行きたいんですけどね」
「後でシルフィーが怒るんじゃないかな」
「ですよね…………では、僕はそろそろ訓練場に向かいます」
アッシュにとって、錬金術は時間を惜しまずに費やせる趣味。
だが、そんな錬金術と同じく……アッシュにとって、シルフィーたち家族は大切な存在である。
後で絶対に怒るからというめんどくささがあるものの、アッシュは後者を優先し、自身のアイテムバッグにアラッドから貰った物をしまし、シルフィーたちが待つ訓練場へと向かった。
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