956 / 1,058
九百五十四話 強要はしない
しおりを挟む
SIDE アッシュ、シルフィー
「アッシュ、シルフィー。ちょっと良いかな」
「? なんですか、アレク先生」
訓練場へ向かおうとしていた二人は、アラッドの担任を務めていたアレクに声を掛けられた。
「二人にある物が送られてきてな」
「ある物、ですか?」
「そうだ。だから、ちょっと付いてきて欲しい」
「分かりました」
シルフィー……ではなく、大して訓練に興味がないアッシュが即答。
シルフィーとしても、特に断ろうとは思っていなかったため、一緒に訓練場に向かおうと思っていたメンバーに後で行くと伝え、アッシュと共にアレクに付いて行く。
「アレク先生、その贈り物って私たちが喜ぶような物ですか?」
アラッドと少し似ており、そこまで社交界という場が好きではないシルフィーだが、決して無知な元気ハツラツ令嬢ではない。
贈り物と言えど、全てが自分にとって嬉しい贈り物ではないことを知っている。
「そうだね……多分、二人にとって嬉しい贈り物だと思うよ」
「良かったね、シルフィー」
「うん!!」
社交界という場があまり好きではないシルフィーだが、学園に入学するまで珍獣状態だったアラッドと違い、それなりに他の令嬢や令息たちと交流があった。
そんなシルフィーには……侯爵家の令嬢という立場もあるが、本人の性格や外見なども含めて、令息たちからアプローチされることがあった……というより、今でもある。
故に、贈り物が婚約の申し込みなどであれば、即座に破り捨てたい。
恋に興味がないという訳ではないが、現段階では……特に顔も知らない人物たちからのそういったアプローチは、非常に煩わしいと感じる。
「そういえば、またアラッドが冒険者として暴れてる様だね」
「アラッド兄さんらしいですね。しかし、暴れてるというのは……誰かと衝突したんですか?」
「衝突……したんじゃないかな。どうやら、他の冒険者たちに被害を出しているモンスターと遭遇して、結果的に倒したは倒したらしいんだけど、最終的にそのモンスターは今アラッドと共に行動してる冒険者、ガルーレという女性冒険者の従魔になったんだよ」
「なるほど…………それは確かに、もしかしたら衝突してるかもしれませんね」
実際に、大喧嘩……ガチバトルにまで発展することはなかったものの、アラッドが頭の固い連中に対し、実力で解らせる戦いが行われた。
「ん~~~~……でも、それに関してとやかく言う人って、負け犬の遠吠えになるんじゃないのかな?」
「「…………」」
サラッと面識のない人物たちに特大ナイフを投げつけるシルフィー。
「シルフィー、間違ってはいないと思うけど、その件に関して意見する人には、その人たちなりの理由があると思うよ」
「アレク先生の言う通りだと思うよ、シルフィー」
「ふ~~~ん……じゃあ、私はそうならないように、もっともっと強くならないと!!」
アッシュとアレク、二人に揃って理由があるんだよと言われてしまうと、そこまで語彙力が高くないシルフィーとしては、大火傷をする前に切り上げるのが正解だった。
「それはそれで期待してるよ、シルフィー。このままシルフィーが高等部に上がれば、高等部のトーナメントで三連覇も夢じゃないからね」
生徒に勝利を強要するタイプではないアレクだが、それはそれとして学園の生徒が他学園の生徒たちを打ち破り、勝利するのは非常に嬉しい。
「任せてください!!!」
(アラッドの時の様に、高等部から入学してくる生徒次第ではあるけど、シルフィーはレイが中等部にいた時と同じぐらい……もしかしたら、それ以上の強さを持ってるかもしれない)
加えて、これはシルフィーにとって不本意ではあるものの、レイの世代と比べて、シルフィーとアッシュたちの世代には、あまり原石が多くない。
まだ研磨を行っている最中であるため、数年後にはどうなっているか解らない。
だが、少なくとも今のシルフィーにとって最大のライバルは……トーナメントには一切興味がないアッシュなのは間違いない。
「ところでアッシュ、まった騎士団のスカウトを蹴ったらしいね」
「はい」
誇る、自慢気な様子は一切なく、即答でその通りですと答えた。
あのフールの子供でありながら、戦闘に関して非常に興味が薄いという稀有な存在として知られている。
だが……騎士団の中でも情報通な者たちは、あのアッシュがアルバース王国の学生を代表し、ナルターク王国の学生代表と戦い、見事勝利を収めたという情報を得ていた。
一度は諦めていた者たちも、そんな通常ではあり得ない功績を達成したとなれば、再度条件を吊り上げてスカウトしたくなるというもの。
「まぁ、騎士になるのは君の本来の目標にとって、縛りにしかならないから、当然と言えば当然だね」
「理解していただいてる様でなによりです」
一般的に、パロスト学園の上層部たちとしては、卒業後は騎士や魔導士としての道に進んで欲しい。
だからこそ、アッシュの様な優秀な戦闘力を有している学生は、是非とも騎士の道に進んで欲しいが……アッシュの実家や、アッシュの兄であるアラッドの存在が恐ろしいということもあり、騎士団からのスカウトに関しては本人まで通すものの、強要することは一切なかった。
「アッシュ、シルフィー。ちょっと良いかな」
「? なんですか、アレク先生」
訓練場へ向かおうとしていた二人は、アラッドの担任を務めていたアレクに声を掛けられた。
「二人にある物が送られてきてな」
「ある物、ですか?」
「そうだ。だから、ちょっと付いてきて欲しい」
「分かりました」
シルフィー……ではなく、大して訓練に興味がないアッシュが即答。
シルフィーとしても、特に断ろうとは思っていなかったため、一緒に訓練場に向かおうと思っていたメンバーに後で行くと伝え、アッシュと共にアレクに付いて行く。
「アレク先生、その贈り物って私たちが喜ぶような物ですか?」
アラッドと少し似ており、そこまで社交界という場が好きではないシルフィーだが、決して無知な元気ハツラツ令嬢ではない。
贈り物と言えど、全てが自分にとって嬉しい贈り物ではないことを知っている。
「そうだね……多分、二人にとって嬉しい贈り物だと思うよ」
「良かったね、シルフィー」
「うん!!」
社交界という場があまり好きではないシルフィーだが、学園に入学するまで珍獣状態だったアラッドと違い、それなりに他の令嬢や令息たちと交流があった。
そんなシルフィーには……侯爵家の令嬢という立場もあるが、本人の性格や外見なども含めて、令息たちからアプローチされることがあった……というより、今でもある。
故に、贈り物が婚約の申し込みなどであれば、即座に破り捨てたい。
恋に興味がないという訳ではないが、現段階では……特に顔も知らない人物たちからのそういったアプローチは、非常に煩わしいと感じる。
「そういえば、またアラッドが冒険者として暴れてる様だね」
「アラッド兄さんらしいですね。しかし、暴れてるというのは……誰かと衝突したんですか?」
「衝突……したんじゃないかな。どうやら、他の冒険者たちに被害を出しているモンスターと遭遇して、結果的に倒したは倒したらしいんだけど、最終的にそのモンスターは今アラッドと共に行動してる冒険者、ガルーレという女性冒険者の従魔になったんだよ」
「なるほど…………それは確かに、もしかしたら衝突してるかもしれませんね」
実際に、大喧嘩……ガチバトルにまで発展することはなかったものの、アラッドが頭の固い連中に対し、実力で解らせる戦いが行われた。
「ん~~~~……でも、それに関してとやかく言う人って、負け犬の遠吠えになるんじゃないのかな?」
「「…………」」
サラッと面識のない人物たちに特大ナイフを投げつけるシルフィー。
「シルフィー、間違ってはいないと思うけど、その件に関して意見する人には、その人たちなりの理由があると思うよ」
「アレク先生の言う通りだと思うよ、シルフィー」
「ふ~~~ん……じゃあ、私はそうならないように、もっともっと強くならないと!!」
アッシュとアレク、二人に揃って理由があるんだよと言われてしまうと、そこまで語彙力が高くないシルフィーとしては、大火傷をする前に切り上げるのが正解だった。
「それはそれで期待してるよ、シルフィー。このままシルフィーが高等部に上がれば、高等部のトーナメントで三連覇も夢じゃないからね」
生徒に勝利を強要するタイプではないアレクだが、それはそれとして学園の生徒が他学園の生徒たちを打ち破り、勝利するのは非常に嬉しい。
「任せてください!!!」
(アラッドの時の様に、高等部から入学してくる生徒次第ではあるけど、シルフィーはレイが中等部にいた時と同じぐらい……もしかしたら、それ以上の強さを持ってるかもしれない)
加えて、これはシルフィーにとって不本意ではあるものの、レイの世代と比べて、シルフィーとアッシュたちの世代には、あまり原石が多くない。
まだ研磨を行っている最中であるため、数年後にはどうなっているか解らない。
だが、少なくとも今のシルフィーにとって最大のライバルは……トーナメントには一切興味がないアッシュなのは間違いない。
「ところでアッシュ、まった騎士団のスカウトを蹴ったらしいね」
「はい」
誇る、自慢気な様子は一切なく、即答でその通りですと答えた。
あのフールの子供でありながら、戦闘に関して非常に興味が薄いという稀有な存在として知られている。
だが……騎士団の中でも情報通な者たちは、あのアッシュがアルバース王国の学生を代表し、ナルターク王国の学生代表と戦い、見事勝利を収めたという情報を得ていた。
一度は諦めていた者たちも、そんな通常ではあり得ない功績を達成したとなれば、再度条件を吊り上げてスカウトしたくなるというもの。
「まぁ、騎士になるのは君の本来の目標にとって、縛りにしかならないから、当然と言えば当然だね」
「理解していただいてる様でなによりです」
一般的に、パロスト学園の上層部たちとしては、卒業後は騎士や魔導士としての道に進んで欲しい。
だからこそ、アッシュの様な優秀な戦闘力を有している学生は、是非とも騎士の道に進んで欲しいが……アッシュの実家や、アッシュの兄であるアラッドの存在が恐ろしいということもあり、騎士団からのスカウトに関しては本人まで通すものの、強要することは一切なかった。
479
お気に入りに追加
6,126
あなたにおすすめの小説


追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる