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九百五十四話 強要はしない
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SIDE アッシュ、シルフィー
「アッシュ、シルフィー。ちょっと良いかな」
「? なんですか、アレク先生」
訓練場へ向かおうとしていた二人は、アラッドの担任を務めていたアレクに声を掛けられた。
「二人にある物が送られてきてな」
「ある物、ですか?」
「そうだ。だから、ちょっと付いてきて欲しい」
「分かりました」
シルフィー……ではなく、大して訓練に興味がないアッシュが即答。
シルフィーとしても、特に断ろうとは思っていなかったため、一緒に訓練場に向かおうと思っていたメンバーに後で行くと伝え、アッシュと共にアレクに付いて行く。
「アレク先生、その贈り物って私たちが喜ぶような物ですか?」
アラッドと少し似ており、そこまで社交界という場が好きではないシルフィーだが、決して無知な元気ハツラツ令嬢ではない。
贈り物と言えど、全てが自分にとって嬉しい贈り物ではないことを知っている。
「そうだね……多分、二人にとって嬉しい贈り物だと思うよ」
「良かったね、シルフィー」
「うん!!」
社交界という場があまり好きではないシルフィーだが、学園に入学するまで珍獣状態だったアラッドと違い、それなりに他の令嬢や令息たちと交流があった。
そんなシルフィーには……侯爵家の令嬢という立場もあるが、本人の性格や外見なども含めて、令息たちからアプローチされることがあった……というより、今でもある。
故に、贈り物が婚約の申し込みなどであれば、即座に破り捨てたい。
恋に興味がないという訳ではないが、現段階では……特に顔も知らない人物たちからのそういったアプローチは、非常に煩わしいと感じる。
「そういえば、またアラッドが冒険者として暴れてる様だね」
「アラッド兄さんらしいですね。しかし、暴れてるというのは……誰かと衝突したんですか?」
「衝突……したんじゃないかな。どうやら、他の冒険者たちに被害を出しているモンスターと遭遇して、結果的に倒したは倒したらしいんだけど、最終的にそのモンスターは今アラッドと共に行動してる冒険者、ガルーレという女性冒険者の従魔になったんだよ」
「なるほど…………それは確かに、もしかしたら衝突してるかもしれませんね」
実際に、大喧嘩……ガチバトルにまで発展することはなかったものの、アラッドが頭の固い連中に対し、実力で解らせる戦いが行われた。
「ん~~~~……でも、それに関してとやかく言う人って、負け犬の遠吠えになるんじゃないのかな?」
「「…………」」
サラッと面識のない人物たちに特大ナイフを投げつけるシルフィー。
「シルフィー、間違ってはいないと思うけど、その件に関して意見する人には、その人たちなりの理由があると思うよ」
「アレク先生の言う通りだと思うよ、シルフィー」
「ふ~~~ん……じゃあ、私はそうならないように、もっともっと強くならないと!!」
アッシュとアレク、二人に揃って理由があるんだよと言われてしまうと、そこまで語彙力が高くないシルフィーとしては、大火傷をする前に切り上げるのが正解だった。
「それはそれで期待してるよ、シルフィー。このままシルフィーが高等部に上がれば、高等部のトーナメントで三連覇も夢じゃないからね」
生徒に勝利を強要するタイプではないアレクだが、それはそれとして学園の生徒が他学園の生徒たちを打ち破り、勝利するのは非常に嬉しい。
「任せてください!!!」
(アラッドの時の様に、高等部から入学してくる生徒次第ではあるけど、シルフィーはレイが中等部にいた時と同じぐらい……もしかしたら、それ以上の強さを持ってるかもしれない)
加えて、これはシルフィーにとって不本意ではあるものの、レイの世代と比べて、シルフィーとアッシュたちの世代には、あまり原石が多くない。
まだ研磨を行っている最中であるため、数年後にはどうなっているか解らない。
だが、少なくとも今のシルフィーにとって最大のライバルは……トーナメントには一切興味がないアッシュなのは間違いない。
「ところでアッシュ、まった騎士団のスカウトを蹴ったらしいね」
「はい」
誇る、自慢気な様子は一切なく、即答でその通りですと答えた。
あのフールの子供でありながら、戦闘に関して非常に興味が薄いという稀有な存在として知られている。
だが……騎士団の中でも情報通な者たちは、あのアッシュがアルバース王国の学生を代表し、ナルターク王国の学生代表と戦い、見事勝利を収めたという情報を得ていた。
一度は諦めていた者たちも、そんな通常ではあり得ない功績を達成したとなれば、再度条件を吊り上げてスカウトしたくなるというもの。
「まぁ、騎士になるのは君の本来の目標にとって、縛りにしかならないから、当然と言えば当然だね」
「理解していただいてる様でなによりです」
一般的に、パロスト学園の上層部たちとしては、卒業後は騎士や魔導士としての道に進んで欲しい。
だからこそ、アッシュの様な優秀な戦闘力を有している学生は、是非とも騎士の道に進んで欲しいが……アッシュの実家や、アッシュの兄であるアラッドの存在が恐ろしいということもあり、騎士団からのスカウトに関しては本人まで通すものの、強要することは一切なかった。
「アッシュ、シルフィー。ちょっと良いかな」
「? なんですか、アレク先生」
訓練場へ向かおうとしていた二人は、アラッドの担任を務めていたアレクに声を掛けられた。
「二人にある物が送られてきてな」
「ある物、ですか?」
「そうだ。だから、ちょっと付いてきて欲しい」
「分かりました」
シルフィー……ではなく、大して訓練に興味がないアッシュが即答。
シルフィーとしても、特に断ろうとは思っていなかったため、一緒に訓練場に向かおうと思っていたメンバーに後で行くと伝え、アッシュと共にアレクに付いて行く。
「アレク先生、その贈り物って私たちが喜ぶような物ですか?」
アラッドと少し似ており、そこまで社交界という場が好きではないシルフィーだが、決して無知な元気ハツラツ令嬢ではない。
贈り物と言えど、全てが自分にとって嬉しい贈り物ではないことを知っている。
「そうだね……多分、二人にとって嬉しい贈り物だと思うよ」
「良かったね、シルフィー」
「うん!!」
社交界という場があまり好きではないシルフィーだが、学園に入学するまで珍獣状態だったアラッドと違い、それなりに他の令嬢や令息たちと交流があった。
そんなシルフィーには……侯爵家の令嬢という立場もあるが、本人の性格や外見なども含めて、令息たちからアプローチされることがあった……というより、今でもある。
故に、贈り物が婚約の申し込みなどであれば、即座に破り捨てたい。
恋に興味がないという訳ではないが、現段階では……特に顔も知らない人物たちからのそういったアプローチは、非常に煩わしいと感じる。
「そういえば、またアラッドが冒険者として暴れてる様だね」
「アラッド兄さんらしいですね。しかし、暴れてるというのは……誰かと衝突したんですか?」
「衝突……したんじゃないかな。どうやら、他の冒険者たちに被害を出しているモンスターと遭遇して、結果的に倒したは倒したらしいんだけど、最終的にそのモンスターは今アラッドと共に行動してる冒険者、ガルーレという女性冒険者の従魔になったんだよ」
「なるほど…………それは確かに、もしかしたら衝突してるかもしれませんね」
実際に、大喧嘩……ガチバトルにまで発展することはなかったものの、アラッドが頭の固い連中に対し、実力で解らせる戦いが行われた。
「ん~~~~……でも、それに関してとやかく言う人って、負け犬の遠吠えになるんじゃないのかな?」
「「…………」」
サラッと面識のない人物たちに特大ナイフを投げつけるシルフィー。
「シルフィー、間違ってはいないと思うけど、その件に関して意見する人には、その人たちなりの理由があると思うよ」
「アレク先生の言う通りだと思うよ、シルフィー」
「ふ~~~ん……じゃあ、私はそうならないように、もっともっと強くならないと!!」
アッシュとアレク、二人に揃って理由があるんだよと言われてしまうと、そこまで語彙力が高くないシルフィーとしては、大火傷をする前に切り上げるのが正解だった。
「それはそれで期待してるよ、シルフィー。このままシルフィーが高等部に上がれば、高等部のトーナメントで三連覇も夢じゃないからね」
生徒に勝利を強要するタイプではないアレクだが、それはそれとして学園の生徒が他学園の生徒たちを打ち破り、勝利するのは非常に嬉しい。
「任せてください!!!」
(アラッドの時の様に、高等部から入学してくる生徒次第ではあるけど、シルフィーはレイが中等部にいた時と同じぐらい……もしかしたら、それ以上の強さを持ってるかもしれない)
加えて、これはシルフィーにとって不本意ではあるものの、レイの世代と比べて、シルフィーとアッシュたちの世代には、あまり原石が多くない。
まだ研磨を行っている最中であるため、数年後にはどうなっているか解らない。
だが、少なくとも今のシルフィーにとって最大のライバルは……トーナメントには一切興味がないアッシュなのは間違いない。
「ところでアッシュ、まった騎士団のスカウトを蹴ったらしいね」
「はい」
誇る、自慢気な様子は一切なく、即答でその通りですと答えた。
あのフールの子供でありながら、戦闘に関して非常に興味が薄いという稀有な存在として知られている。
だが……騎士団の中でも情報通な者たちは、あのアッシュがアルバース王国の学生を代表し、ナルターク王国の学生代表と戦い、見事勝利を収めたという情報を得ていた。
一度は諦めていた者たちも、そんな通常ではあり得ない功績を達成したとなれば、再度条件を吊り上げてスカウトしたくなるというもの。
「まぁ、騎士になるのは君の本来の目標にとって、縛りにしかならないから、当然と言えば当然だね」
「理解していただいてる様でなによりです」
一般的に、パロスト学園の上層部たちとしては、卒業後は騎士や魔導士としての道に進んで欲しい。
だからこそ、アッシュの様な優秀な戦闘力を有している学生は、是非とも騎士の道に進んで欲しいが……アッシュの実家や、アッシュの兄であるアラッドの存在が恐ろしいということもあり、騎士団からのスカウトに関しては本人まで通すものの、強要することは一切なかった。
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