スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
956 / 1,044

九百五十四話 強要はしない

しおりを挟む
SIDE アッシュ、シルフィー

「アッシュ、シルフィー。ちょっと良いかな」

「? なんですか、アレク先生」

訓練場へ向かおうとしていた二人は、アラッドの担任を務めていたアレクに声を掛けられた。

「二人にある物が送られてきてな」

「ある物、ですか?」

「そうだ。だから、ちょっと付いてきて欲しい」

「分かりました」

シルフィー……ではなく、大して訓練に興味がないアッシュが即答。

シルフィーとしても、特に断ろうとは思っていなかったため、一緒に訓練場に向かおうと思っていたメンバーに後で行くと伝え、アッシュと共にアレクに付いて行く。

「アレク先生、その贈り物って私たちが喜ぶような物ですか?」

アラッドと少し似ており、そこまで社交界という場が好きではないシルフィーだが、決して無知な元気ハツラツ令嬢ではない。

贈り物と言えど、全てが自分にとって嬉しい贈り物ではないことを知っている。

「そうだね……多分、二人にとって嬉しい贈り物だと思うよ」

「良かったね、シルフィー」

「うん!!」

社交界という場があまり好きではないシルフィーだが、学園に入学するまで珍獣状態だったアラッドと違い、それなりに他の令嬢や令息たちと交流があった。

そんなシルフィーには……侯爵家の令嬢という立場もあるが、本人の性格や外見なども含めて、令息たちからアプローチされることがあった……というより、今でもある。

故に、贈り物が婚約の申し込みなどであれば、即座に破り捨てたい。
恋に興味がないという訳ではないが、現段階では……特に顔も知らない人物たちからのそういったアプローチは、非常に煩わしいと感じる。

「そういえば、またアラッドが冒険者として暴れてる様だね」

「アラッド兄さんらしいですね。しかし、暴れてるというのは……誰かと衝突したんですか?」

「衝突……したんじゃないかな。どうやら、他の冒険者たちに被害を出しているモンスターと遭遇して、結果的に倒したは倒したらしいんだけど、最終的にそのモンスターは今アラッドと共に行動してる冒険者、ガルーレという女性冒険者の従魔になったんだよ」

「なるほど…………それは確かに、もしかしたら衝突してるかもしれませんね」

実際に、大喧嘩……ガチバトルにまで発展することはなかったものの、アラッドが頭の固い連中に対し、実力で解らせる戦いが行われた。

「ん~~~~……でも、それに関してとやかく言う人って、負け犬の遠吠えになるんじゃないのかな?」

「「…………」」

サラッと面識のない人物たちに特大ナイフを投げつけるシルフィー。

「シルフィー、間違ってはいないと思うけど、その件に関して意見する人には、その人たちなりの理由があると思うよ」

「アレク先生の言う通りだと思うよ、シルフィー」

「ふ~~~ん……じゃあ、私はそうならないように、もっともっと強くならないと!!」

アッシュとアレク、二人に揃って理由があるんだよと言われてしまうと、そこまで語彙力が高くないシルフィーとしては、大火傷をする前に切り上げるのが正解だった。

「それはそれで期待してるよ、シルフィー。このままシルフィーが高等部に上がれば、高等部のトーナメントで三連覇も夢じゃないからね」

生徒に勝利を強要するタイプではないアレクだが、それはそれとして学園の生徒が他学園の生徒たちを打ち破り、勝利するのは非常に嬉しい。

「任せてください!!!」

(アラッドの時の様に、高等部から入学してくる生徒次第ではあるけど、シルフィーはレイが中等部にいた時と同じぐらい……もしかしたら、それ以上の強さを持ってるかもしれない)

加えて、これはシルフィーにとって不本意ではあるものの、レイの世代と比べて、シルフィーとアッシュたちの世代には、あまり原石が多くない。

まだ研磨を行っている最中であるため、数年後にはどうなっているか解らない。

だが、少なくとも今のシルフィーにとって最大のライバルは……トーナメントには一切興味がないアッシュなのは間違いない。

「ところでアッシュ、まった騎士団のスカウトを蹴ったらしいね」

「はい」

誇る、自慢気な様子は一切なく、即答でその通りですと答えた。

あのフールの子供でありながら、戦闘に関して非常に興味が薄いという稀有な存在として知られている。

だが……騎士団の中でも情報通な者たちは、あのアッシュがアルバース王国の学生を代表し、ナルターク王国の学生代表と戦い、見事勝利を収めたという情報を得ていた。

一度は諦めていた者たちも、そんな通常ではあり得ない功績を達成したとなれば、再度条件を吊り上げてスカウトしたくなるというもの。

「まぁ、騎士になるのは君の本来の目標にとって、縛りにしかならないから、当然と言えば当然だね」

「理解していただいてる様でなによりです」

一般的に、パロスト学園の上層部たちとしては、卒業後は騎士や魔導士としての道に進んで欲しい。

だからこそ、アッシュの様な優秀な戦闘力を有している学生は、是非とも騎士の道に進んで欲しいが……アッシュの実家や、アッシュの兄であるアラッドの存在が恐ろしいということもあり、騎士団からのスカウトに関しては本人まで通すものの、強要することは一切なかった。
しおりを挟む
感想 466

あなたにおすすめの小説

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...