952 / 1,023
九百五十話 普段と違う
しおりを挟む
「…………遅いな」
「遅いね」
大浴場から上がり、髪を乾かし体も拭いて着替えたアラッドとスティーム。
二人もそれなりにだいよくじょうでのんびり湯に浸かっていたが、出てきた時にガルーレの姿はなかった。
「のぼせてるか、それとも昔出会った冒険者に再会して……のぼせたかのどっちかか」
「どちらにしろのぼせてる可能性が高いってことだね」
ガルーレもこの世界では一応大人の女性であり、彼女自身、そこら辺の冒険者よりも強いため、放っておいても問題無い。
とはいえ……だからといって本当に放っておけないのがアラッド。
「……仕方ない、待つか」
「そうだね」
雪原で起きた雪崩の一件もあるため、アラッドとしては大浴場から宿までそこまで遠くはないが、それでも本当に放っておくことは出来なかった。
「お待たせ~~~」
そして約十五分後、ようやくガルーレが店の外に出てきた。
「おぅ、随分と長く入ってた、な…………なんでフローレンスまで一緒なんだ?」
「偶々一緒になって、ちょっと話し込んじゃってたんだよね~~~」
「……そうか」
フローレンスと話し込めば、つい長く湯に浸かってしまうことは、一応理解出来るため、特に深くツッコむことはなかった。
「にしても二人共、さすがに湯に浸かり過ぎてたんじゃないか? 少し顔が赤いぞ」
「あっはっは! 確かにちょっとゆったりし過ぎたね~~~……っ!!」
ごめんごめんと軽く謝りながらも、何を思ったのか……ガルーレはダッシュでフローレンスから離れ、スティームの手を握った。
「んじゃ、私たちは先に帰るね!!」
「はっ!?」
「んじゃ!!!!!」
そのままスティームを引っ張って走るガルーレ。
突然のことで驚くも、ガルーレの行動をなんとなく把握したスティームは、やれやれと思いながらも引きずられない様に走って宿へと戻って行った。
「あいつ……本当に帰りやがった」
「も、申し訳ありません、アラッド」
「いや、別にお前が謝る事じゃねえよ」
そう言いながらフローレンスに目を向けるアラッドだが、その姿に……ほんの少し、ドキッとした。
「そうですか……? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
今のフローレンスは非常に軽装であり、長い髪も縛っている。
そのため……うなじがガッツリ見えていた。
(扇情的、って言えば良いのか?)
風呂上がりということもあり、普段のフローレンスとはまた別の魅力を感じさせる。
「とりあえず、宿まで送ってく」
「い、いえ。大丈夫ですよ。私一人でも戻れますから」
「気にするなら。それに……お前も、嫌な話は聞いてるだろ」
「っ………………では、お言葉に甘えさせてもらいます」
「おぅ」
物凄く細かい話までは聞いていないが、フローレンスはゴリディア帝国との戦争が確定すれば、参戦するのは確定していることもあり、ある程度上から聞いてた。
「「…………」」
そのため、アラッドの送りに関して、お言葉に甘えることにしたものの、二人とも特に適当な会話内容が思い浮かばなかった。
「……………………っ、なぁ」
「っ、なんでしょうか」
いきなり話しかけられたことで、ほんの少しフローレンスの声が上ずる。
「キャバリオンの素材が集まったら、戦争が始まる前の……できれば、十日ぐらい前に渡してほしい」
「あっ、はい。分かりました。出来る限り、余裕を持って渡すようにします」
「そうしてくれ……下手な物は、造りたくないからな」
その言葉に関して、特に深い意味はない。
ただ、どのキャバリオンに関してもアラッドは適当に造ってはいないが、それでもフローレンスが乗るキャバリオンとなれば、尚更丁寧に慎重に造りたいと思っている。
しかし……大浴場でガルーレとあんなことを話していたこともあり、フローレンスの心拍数はほんの少し上がっていた。
「……あ、アラッドたちは……これから、どうするのですか?」
「また、面倒なドラゴンを倒しに行くつもりだ」
「色々と決定するまでは、冒険はお休みということですね」
「まぁ、そうなるな。とはいえ、次の標的に関しては、存在を確かめるという点に関しては、ある意味冒険ではあるがな」
「存在を確かめることが冒険、ですか?」
「そうだ。次は、虎竜を討伐しに行こうと思ってる」
「古竜……古竜? もしや、虎の方の虎竜ですか?」
「あぁ、そっちの虎竜だ」
正確な情報は知らないものの、フローレンスも話だけは聞いたことがあった。
虎とドラゴンの特徴を併せ持つ、珍しい存在と言われるモンスターの中でも、特に珍しいモンスターだと。
「なるほど……それは確かに、存在を確かめることが冒険になりそうですね」
「そうなんだよ。俺に情報を教えてくれた人も、話には聞いたことがあるけど、実際に見たことはないらしくてな」
そんな情報を信用出来るのかとツッコまれるかもしれないが、雪竜グレイスに直接会った事があるアラッドは、直感的に信用出来ると思っていた。
「本当に遭遇したら、是非次会った時に話を聞かせて下さいね」
「……あぁ、解ったよ」
アラッドとしては、そう何度も何度も短期間のうちに会いたいとは思っていないが、状況的にそうなる可能性は十分あった。
「遅いね」
大浴場から上がり、髪を乾かし体も拭いて着替えたアラッドとスティーム。
二人もそれなりにだいよくじょうでのんびり湯に浸かっていたが、出てきた時にガルーレの姿はなかった。
「のぼせてるか、それとも昔出会った冒険者に再会して……のぼせたかのどっちかか」
「どちらにしろのぼせてる可能性が高いってことだね」
ガルーレもこの世界では一応大人の女性であり、彼女自身、そこら辺の冒険者よりも強いため、放っておいても問題無い。
とはいえ……だからといって本当に放っておけないのがアラッド。
「……仕方ない、待つか」
「そうだね」
雪原で起きた雪崩の一件もあるため、アラッドとしては大浴場から宿までそこまで遠くはないが、それでも本当に放っておくことは出来なかった。
「お待たせ~~~」
そして約十五分後、ようやくガルーレが店の外に出てきた。
「おぅ、随分と長く入ってた、な…………なんでフローレンスまで一緒なんだ?」
「偶々一緒になって、ちょっと話し込んじゃってたんだよね~~~」
「……そうか」
フローレンスと話し込めば、つい長く湯に浸かってしまうことは、一応理解出来るため、特に深くツッコむことはなかった。
「にしても二人共、さすがに湯に浸かり過ぎてたんじゃないか? 少し顔が赤いぞ」
「あっはっは! 確かにちょっとゆったりし過ぎたね~~~……っ!!」
ごめんごめんと軽く謝りながらも、何を思ったのか……ガルーレはダッシュでフローレンスから離れ、スティームの手を握った。
「んじゃ、私たちは先に帰るね!!」
「はっ!?」
「んじゃ!!!!!」
そのままスティームを引っ張って走るガルーレ。
突然のことで驚くも、ガルーレの行動をなんとなく把握したスティームは、やれやれと思いながらも引きずられない様に走って宿へと戻って行った。
「あいつ……本当に帰りやがった」
「も、申し訳ありません、アラッド」
「いや、別にお前が謝る事じゃねえよ」
そう言いながらフローレンスに目を向けるアラッドだが、その姿に……ほんの少し、ドキッとした。
「そうですか……? どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
今のフローレンスは非常に軽装であり、長い髪も縛っている。
そのため……うなじがガッツリ見えていた。
(扇情的、って言えば良いのか?)
風呂上がりということもあり、普段のフローレンスとはまた別の魅力を感じさせる。
「とりあえず、宿まで送ってく」
「い、いえ。大丈夫ですよ。私一人でも戻れますから」
「気にするなら。それに……お前も、嫌な話は聞いてるだろ」
「っ………………では、お言葉に甘えさせてもらいます」
「おぅ」
物凄く細かい話までは聞いていないが、フローレンスはゴリディア帝国との戦争が確定すれば、参戦するのは確定していることもあり、ある程度上から聞いてた。
「「…………」」
そのため、アラッドの送りに関して、お言葉に甘えることにしたものの、二人とも特に適当な会話内容が思い浮かばなかった。
「……………………っ、なぁ」
「っ、なんでしょうか」
いきなり話しかけられたことで、ほんの少しフローレンスの声が上ずる。
「キャバリオンの素材が集まったら、戦争が始まる前の……できれば、十日ぐらい前に渡してほしい」
「あっ、はい。分かりました。出来る限り、余裕を持って渡すようにします」
「そうしてくれ……下手な物は、造りたくないからな」
その言葉に関して、特に深い意味はない。
ただ、どのキャバリオンに関してもアラッドは適当に造ってはいないが、それでもフローレンスが乗るキャバリオンとなれば、尚更丁寧に慎重に造りたいと思っている。
しかし……大浴場でガルーレとあんなことを話していたこともあり、フローレンスの心拍数はほんの少し上がっていた。
「……あ、アラッドたちは……これから、どうするのですか?」
「また、面倒なドラゴンを倒しに行くつもりだ」
「色々と決定するまでは、冒険はお休みということですね」
「まぁ、そうなるな。とはいえ、次の標的に関しては、存在を確かめるという点に関しては、ある意味冒険ではあるがな」
「存在を確かめることが冒険、ですか?」
「そうだ。次は、虎竜を討伐しに行こうと思ってる」
「古竜……古竜? もしや、虎の方の虎竜ですか?」
「あぁ、そっちの虎竜だ」
正確な情報は知らないものの、フローレンスも話だけは聞いたことがあった。
虎とドラゴンの特徴を併せ持つ、珍しい存在と言われるモンスターの中でも、特に珍しいモンスターだと。
「なるほど……それは確かに、存在を確かめることが冒険になりそうですね」
「そうなんだよ。俺に情報を教えてくれた人も、話には聞いたことがあるけど、実際に見たことはないらしくてな」
そんな情報を信用出来るのかとツッコまれるかもしれないが、雪竜グレイスに直接会った事があるアラッドは、直感的に信用出来ると思っていた。
「本当に遭遇したら、是非次会った時に話を聞かせて下さいね」
「……あぁ、解ったよ」
アラッドとしては、そう何度も何度も短期間のうちに会いたいとは思っていないが、状況的にそうなる可能性は十分あった。
452
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる