950 / 1,043
九百四十八話 焦った
しおりを挟む
貴族に奥さんが複数いることは珍しい事ではない。
当たり前……と言うほど当たり前でもないが、それでも正室以外の奥さん、側室が複数いたとしても、特に非難されることはない。
「アラッドも、父親であるフールさんが、えっと……奥さんが三人いるんだから、全然抵抗ないと思いますよ!」
「そ、そうかしら?」
今更ながら貴族の世界の常識を思い出し、確かにそういうパターンもあると思えたが……だとしても、アラッドが複数の嫁を持つタイプかというと……そうだと即答することは出来ない。
(寧ろ、どちらかと言えばイシュドは奥さんは一人……そういった一途の様なタイプだと思うのだけれど……違うのかしら?)
仮に夫婦になるのであれば、嫁は自分一人だけが良いと……決してそういう訳ではない。
ただ、フローレンスから見てアラッドは一人の女性だけを愛するタイプだと感じる。
「仮にアラッドがフローレンスさんよりも立場が上の人と結婚してせ、正室? じゃなくても、フローレンスさんは大丈夫ですよね」
「それは、そうですけど」
「じゃあ、問題ありませんね!!」
良い笑顔でグーサインを浮かべるガルーレ。
ただ、フローレンスの頭はまだやや戸惑っていた。
「…………」
「あれ? もしかして駄目でしたか?」
「駄目というか、そもそもアラッドは一人の女性しか愛さないタイプかと思って」
「ん~~~~…………ん~~~~~…………でも、英雄色を好むって言うじゃないですか!」
アマゾネスであるガルーレは、これまで多くの男性と肌を重ねてきた。
その中で、ある程度目の前の男が複数の女性をアイスタイプなのか、それとも一途に一人の女性だけを愛すタイプなのか、なんとなく解るようになった。
勿論、ガルーレとしては是非ともアラッドとはヤってみたいと思っているが、まだ一度もヤったことはない。
だが……なんとなく一途に一人だけを愛しそうなタイプの匂いがするため、苦し紛れの言葉を口にするしかなかった。
「アラッドは……そういうタイプでしょうか」
「割と下品な話にも乗ってくるタイプではありますよ」
ガルーレの言う通り、アラッドは割とそういう話に乗るタイプであり、下ネタがメインの会話は全く嫌いではない。
「そうなの?」
「そうですよ。だから、全然好まないタイプではありませんよ!」
背中を押すガルーレに、それでも悩むフローレンス。
二人はそんなやり取りを、のぼせてしまう少し前まで繰り返していた。
「ふーーーーーー……やっぱり、風呂は良いな」
前世が日本人であったアラッドにとって、風呂は全身の疲れが癒される最高の治癒。
スティームもアラッドほど風呂を愛しているわけではないが、それでも風呂に入っている時が一番癒されるという感覚に異論はなかった。
「そうだね~~~…………それにしても、今回は結構……本気で焦ったかな」
「ふふ、悪いな。焦らせてしまって」
スティームが何に関して焦ったのかを直ぐに察し、申し訳ない事をしたと伝えるアラッド。
「……闇竜の思考が一枚上手だったって考えるのが一番だと思ってるよ。正直、僕も闇竜があんな手札を持ってるとは思ってなかったからさ」
「俺もだよ。全く……本当に面倒な手札を持ってたもんだ」
仮に、仮にもった早く狂暴性を爆発させていれば……アラッドのマリオネットが間に合わず、本当に精霊同化を発動したフローレンスとクロが本気でアラッドを抑え込む事態に発展していてもおかしくなかった。
「でも、スティームがそんなに焦ってたとはな……雷獣や、轟炎竜を見た時以上の焦りだったみたいだな」
「だって、本気のアラッドが僕たちに牙を向けると思うと、ね…………うん、そりゃ焦るよ」
スティームには赤雷、ランク八の双剣である万雷という切り札がある。
一気に体力も魔力も持っていく大技ではあるが、赤雷で万雷を振らせれば……いくら多数の強化スキル、狂化をしようした状態のアラッドでも食らえば一発でアウトになる。
だが、本気のアラッドは速い。
速ければそれだけ攻撃を当てるのが難しく、無駄打ちで終わってしまう可能性が高い。
「そうか……一度は魔力感知で相手の攻撃を視ておくべきかもな」
「そうだね。まぁ、モンスターの中で今回アラッドが戦った闇竜みたいに頭が回る個体は早々現れないと思うけど」
「……俺もそう思うが、そう思ってるとまた足元を掬われる可能性があるからな」
精進するしかないなと、二人は顔を合わせて苦笑いを浮かべた。
「ところで、次はどれを狙うんだい」
「ん~~~~……そうだな…………」
風竜ルストに続いて、闇竜デネブを討伐したアラッドたち。
だが、まだ雪竜グレイスに教えてもらった、ヤバい竜リストには他のドラゴンがいる。
「……また今回みたいに被るかもしれないが、虎竜ってやつを確かめてみようと思う」
「っ、虎竜…………そうだね。まずは確かめることがメインになりそうだね」
古竜ではなく、虎竜。
雪竜グレイスから三人が教えてもらった要注意ドラゴンの中に、非常に……非常に珍しいドラゴンがいた。
当たり前……と言うほど当たり前でもないが、それでも正室以外の奥さん、側室が複数いたとしても、特に非難されることはない。
「アラッドも、父親であるフールさんが、えっと……奥さんが三人いるんだから、全然抵抗ないと思いますよ!」
「そ、そうかしら?」
今更ながら貴族の世界の常識を思い出し、確かにそういうパターンもあると思えたが……だとしても、アラッドが複数の嫁を持つタイプかというと……そうだと即答することは出来ない。
(寧ろ、どちらかと言えばイシュドは奥さんは一人……そういった一途の様なタイプだと思うのだけれど……違うのかしら?)
仮に夫婦になるのであれば、嫁は自分一人だけが良いと……決してそういう訳ではない。
ただ、フローレンスから見てアラッドは一人の女性だけを愛するタイプだと感じる。
「仮にアラッドがフローレンスさんよりも立場が上の人と結婚してせ、正室? じゃなくても、フローレンスさんは大丈夫ですよね」
「それは、そうですけど」
「じゃあ、問題ありませんね!!」
良い笑顔でグーサインを浮かべるガルーレ。
ただ、フローレンスの頭はまだやや戸惑っていた。
「…………」
「あれ? もしかして駄目でしたか?」
「駄目というか、そもそもアラッドは一人の女性しか愛さないタイプかと思って」
「ん~~~~…………ん~~~~~…………でも、英雄色を好むって言うじゃないですか!」
アマゾネスであるガルーレは、これまで多くの男性と肌を重ねてきた。
その中で、ある程度目の前の男が複数の女性をアイスタイプなのか、それとも一途に一人の女性だけを愛すタイプなのか、なんとなく解るようになった。
勿論、ガルーレとしては是非ともアラッドとはヤってみたいと思っているが、まだ一度もヤったことはない。
だが……なんとなく一途に一人だけを愛しそうなタイプの匂いがするため、苦し紛れの言葉を口にするしかなかった。
「アラッドは……そういうタイプでしょうか」
「割と下品な話にも乗ってくるタイプではありますよ」
ガルーレの言う通り、アラッドは割とそういう話に乗るタイプであり、下ネタがメインの会話は全く嫌いではない。
「そうなの?」
「そうですよ。だから、全然好まないタイプではありませんよ!」
背中を押すガルーレに、それでも悩むフローレンス。
二人はそんなやり取りを、のぼせてしまう少し前まで繰り返していた。
「ふーーーーーー……やっぱり、風呂は良いな」
前世が日本人であったアラッドにとって、風呂は全身の疲れが癒される最高の治癒。
スティームもアラッドほど風呂を愛しているわけではないが、それでも風呂に入っている時が一番癒されるという感覚に異論はなかった。
「そうだね~~~…………それにしても、今回は結構……本気で焦ったかな」
「ふふ、悪いな。焦らせてしまって」
スティームが何に関して焦ったのかを直ぐに察し、申し訳ない事をしたと伝えるアラッド。
「……闇竜の思考が一枚上手だったって考えるのが一番だと思ってるよ。正直、僕も闇竜があんな手札を持ってるとは思ってなかったからさ」
「俺もだよ。全く……本当に面倒な手札を持ってたもんだ」
仮に、仮にもった早く狂暴性を爆発させていれば……アラッドのマリオネットが間に合わず、本当に精霊同化を発動したフローレンスとクロが本気でアラッドを抑え込む事態に発展していてもおかしくなかった。
「でも、スティームがそんなに焦ってたとはな……雷獣や、轟炎竜を見た時以上の焦りだったみたいだな」
「だって、本気のアラッドが僕たちに牙を向けると思うと、ね…………うん、そりゃ焦るよ」
スティームには赤雷、ランク八の双剣である万雷という切り札がある。
一気に体力も魔力も持っていく大技ではあるが、赤雷で万雷を振らせれば……いくら多数の強化スキル、狂化をしようした状態のアラッドでも食らえば一発でアウトになる。
だが、本気のアラッドは速い。
速ければそれだけ攻撃を当てるのが難しく、無駄打ちで終わってしまう可能性が高い。
「そうか……一度は魔力感知で相手の攻撃を視ておくべきかもな」
「そうだね。まぁ、モンスターの中で今回アラッドが戦った闇竜みたいに頭が回る個体は早々現れないと思うけど」
「……俺もそう思うが、そう思ってるとまた足元を掬われる可能性があるからな」
精進するしかないなと、二人は顔を合わせて苦笑いを浮かべた。
「ところで、次はどれを狙うんだい」
「ん~~~~……そうだな…………」
風竜ルストに続いて、闇竜デネブを討伐したアラッドたち。
だが、まだ雪竜グレイスに教えてもらった、ヤバい竜リストには他のドラゴンがいる。
「……また今回みたいに被るかもしれないが、虎竜ってやつを確かめてみようと思う」
「っ、虎竜…………そうだね。まずは確かめることがメインになりそうだね」
古竜ではなく、虎竜。
雪竜グレイスから三人が教えてもらった要注意ドラゴンの中に、非常に……非常に珍しいドラゴンがいた。
494
お気に入りに追加
6,127
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる