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九百四十七話 盲点
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「アラッドって、いつまでも冒険がしたいって思いそうなタイプじゃないですか」
「……ふふ、そうですね」
四十代、五十代になっても「っし、ちょっと冒険してくる」と軽く言う光景が容易に想像出来る。
「だから、フローレンスさんはアラッドと結婚した後、生まれた子供とかが……成人? になった後、アラッドと一緒に冒険すれば良いんですよ」
「……………………が、ガルーレ。その……その一緒に冒険をする前の言葉は、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味ですよ。アラッドと結婚しちゃえば、その後アラッドと一緒に冒険しても全然おかしくないじゃないっですか」
四十、五十にもなれば多くの騎士が引退……もしくは後進の育成を行うようになる。
結婚すれば尚更である。
だが、ガルーレがあまりにもあっさりと結婚と口にするため、フローレンスは少し脳の処理が追い付かないでいた。
「それは……そうかもしれませんけど、私は…………私は、アラッドから好かれていません」
現在冒険者として活動しているとはいえ、一応騎士の爵位を有している。
加えて、冒険者としてルーキーながらに大活躍している侯爵家の令息と公爵家の令嬢……政略結婚としては申し分ない。
ただ、フローレンスはあまりそういった形で誰かと婚約したいとは思っていなかった。
アラッドに好意を持っているかと尋ねられれば、その通りだと答える。
しかし、政略的な結婚を望んでいないからこそ、互いに想いを重ねて結婚したい。
だからこそ、自分とアラッドは結婚できない……と、フローレンスは思っている。
「私はそうは思いませんけどね~~。アラッドが本当にその人の事を好いていない、嫌いであればそもそも話そうとしないと思いますよ」
アラッドは所々大人びている部分、思考がある。
だが、それでも歳相応に人を嫌うところも存在する。
「そうなのでしょうか?」
「そうですよ。だから、まずフローレンスさんの事が嫌いってのはあり得ませんし……私から見て、フローレンスは割とアラッドの好みの部類に当てはまると思うんですよね」
ガルーレが言っているのは、見た目の話ではない。
まず、第一に強い。
トーナメントの決勝戦ではアラッドが最後にクロを退かせたとはいえ、本当にあと一歩の……気力の勝負に追い込んだ。
騎士として活動を始めてからも、着実に力を付けている。
そして更にもう一つ……公爵家の令嬢という高い地位を持っているにもかかわらず、アラッドの言葉を受け……これまで自分が思っていた考えは、無意味なものだと……何かを変えるには至らないと思い、切り替えることが出来た。
間違いを認め、考え方を変え……前に進むことが出来る。
それは間違いなく、アラッドの好みと言えるタイプである。
「スティームに聞いた話なんですけど、アラッドはまだ私が出会う前にあるクランに所属している冒険者に絡まれた? らしいんですよ。でも、その冒険者は目の前でアラッドが火竜と……クロと共に轟炎竜と戦う姿を見たんですよ」
「……話の流れからして、絶望に打ちひしがれたという訳ではないのですね」
「みたいですよ。夜、アラッドの元を訪れて、どうすれば今から自分を強くなれるのか、ちゃんと対価を用意して尋ねて来たらしいですよ」
「それで、アラッドはその冒険者に、強くなる方法を教えたと」
「割と無茶な方法を教えたらしいですけど、それでもアラッドとかスティームに追い付きたいなら、確かにそれぐらい無茶しないとな~~って納得出来る感じの内容でしたね」
基本的にアラッドはバカ絡みされた相手の事を好きになることはないが、どういったバカ絡みしたかにもよるが、反省出来る者は嫌いではない。
「ちょっと話が逸れちゃいましたけど、だから割とフローレンスさんとアラッドはお似合いだと思うんですよ」
「…………その気持ちは嬉しいです。しかし、アラッドを想う人は他にもいるでしょう」
フローレンスは第三王女であるフィリアスと友人関係であり、彼女のアラッドに対する思いを何となく察していた。
そして……アラッドはあまり社交界には顔を出さないタイプだったが、それでも令息や令嬢たちの中に彼と腐れ縁と呼べる人物たちがいる。
その中でも、レイ・イグリシアスはフローレンスから見て、間違いなくアラッドに対して異性としての気持ちを持っていると感じていた。
私では、釣り合わない、似合わない。
フローレンスほどの女性がそんな事を言えば、他はどうなるのかとツッコミの嵐が起こる。
それでも、フローレンスは本当にアラッドには自分よりも似合う女性たちがいると思っていた。
「それは……どうなんですかね?」
アラッドの友好関係を全て把握しているわけではにため、安易にそんなことはないとは言えない。
しかし、ガルーレはある事を知っていた。
それは当然フローレンスも知っている事ではあるが、改めて言われてみなければ、確かにそれはそうだ!! と思い出せない。
「でも、アラッドのお父さんのフールさんは、奥さんが三人もいるんですよ。だから、アラッドに他の奥さんがいても全然大丈夫じゃないですか!」
「………………」
貴族として、非常に盲点過ぎることを伝えられ、思わずフローレンスは固まってしまった。
「……ふふ、そうですね」
四十代、五十代になっても「っし、ちょっと冒険してくる」と軽く言う光景が容易に想像出来る。
「だから、フローレンスさんはアラッドと結婚した後、生まれた子供とかが……成人? になった後、アラッドと一緒に冒険すれば良いんですよ」
「……………………が、ガルーレ。その……その一緒に冒険をする前の言葉は、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味ですよ。アラッドと結婚しちゃえば、その後アラッドと一緒に冒険しても全然おかしくないじゃないっですか」
四十、五十にもなれば多くの騎士が引退……もしくは後進の育成を行うようになる。
結婚すれば尚更である。
だが、ガルーレがあまりにもあっさりと結婚と口にするため、フローレンスは少し脳の処理が追い付かないでいた。
「それは……そうかもしれませんけど、私は…………私は、アラッドから好かれていません」
現在冒険者として活動しているとはいえ、一応騎士の爵位を有している。
加えて、冒険者としてルーキーながらに大活躍している侯爵家の令息と公爵家の令嬢……政略結婚としては申し分ない。
ただ、フローレンスはあまりそういった形で誰かと婚約したいとは思っていなかった。
アラッドに好意を持っているかと尋ねられれば、その通りだと答える。
しかし、政略的な結婚を望んでいないからこそ、互いに想いを重ねて結婚したい。
だからこそ、自分とアラッドは結婚できない……と、フローレンスは思っている。
「私はそうは思いませんけどね~~。アラッドが本当にその人の事を好いていない、嫌いであればそもそも話そうとしないと思いますよ」
アラッドは所々大人びている部分、思考がある。
だが、それでも歳相応に人を嫌うところも存在する。
「そうなのでしょうか?」
「そうですよ。だから、まずフローレンスさんの事が嫌いってのはあり得ませんし……私から見て、フローレンスは割とアラッドの好みの部類に当てはまると思うんですよね」
ガルーレが言っているのは、見た目の話ではない。
まず、第一に強い。
トーナメントの決勝戦ではアラッドが最後にクロを退かせたとはいえ、本当にあと一歩の……気力の勝負に追い込んだ。
騎士として活動を始めてからも、着実に力を付けている。
そして更にもう一つ……公爵家の令嬢という高い地位を持っているにもかかわらず、アラッドの言葉を受け……これまで自分が思っていた考えは、無意味なものだと……何かを変えるには至らないと思い、切り替えることが出来た。
間違いを認め、考え方を変え……前に進むことが出来る。
それは間違いなく、アラッドの好みと言えるタイプである。
「スティームに聞いた話なんですけど、アラッドはまだ私が出会う前にあるクランに所属している冒険者に絡まれた? らしいんですよ。でも、その冒険者は目の前でアラッドが火竜と……クロと共に轟炎竜と戦う姿を見たんですよ」
「……話の流れからして、絶望に打ちひしがれたという訳ではないのですね」
「みたいですよ。夜、アラッドの元を訪れて、どうすれば今から自分を強くなれるのか、ちゃんと対価を用意して尋ねて来たらしいですよ」
「それで、アラッドはその冒険者に、強くなる方法を教えたと」
「割と無茶な方法を教えたらしいですけど、それでもアラッドとかスティームに追い付きたいなら、確かにそれぐらい無茶しないとな~~って納得出来る感じの内容でしたね」
基本的にアラッドはバカ絡みされた相手の事を好きになることはないが、どういったバカ絡みしたかにもよるが、反省出来る者は嫌いではない。
「ちょっと話が逸れちゃいましたけど、だから割とフローレンスさんとアラッドはお似合いだと思うんですよ」
「…………その気持ちは嬉しいです。しかし、アラッドを想う人は他にもいるでしょう」
フローレンスは第三王女であるフィリアスと友人関係であり、彼女のアラッドに対する思いを何となく察していた。
そして……アラッドはあまり社交界には顔を出さないタイプだったが、それでも令息や令嬢たちの中に彼と腐れ縁と呼べる人物たちがいる。
その中でも、レイ・イグリシアスはフローレンスから見て、間違いなくアラッドに対して異性としての気持ちを持っていると感じていた。
私では、釣り合わない、似合わない。
フローレンスほどの女性がそんな事を言えば、他はどうなるのかとツッコミの嵐が起こる。
それでも、フローレンスは本当にアラッドには自分よりも似合う女性たちがいると思っていた。
「それは……どうなんですかね?」
アラッドの友好関係を全て把握しているわけではにため、安易にそんなことはないとは言えない。
しかし、ガルーレはある事を知っていた。
それは当然フローレンスも知っている事ではあるが、改めて言われてみなければ、確かにそれはそうだ!! と思い出せない。
「でも、アラッドのお父さんのフールさんは、奥さんが三人もいるんですよ。だから、アラッドに他の奥さんがいても全然大丈夫じゃないですか!」
「………………」
貴族として、非常に盲点過ぎることを伝えられ、思わずフローレンスは固まってしまった。
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