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九百四十六話 疎まれるだけ

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「……もしかして、フローレンスさんって冒険者になりたいな~とかって思ってます?」

「っ…………冒険者になりたいと言うか、そういった冒険者の身軽さは羨ましいとな思いますね」

ガルーレの質問に、ちょっと言葉を詰まらせながらも、フローレンスは思ったことを口にした。

正直なところ、フローレンスも報告は手紙だけで知らせ、早く別のドラゴンの元へと向かい、討伐したい。
だが、基本的に手紙だけで終わりましたよと伝えることは出来ず、キッチリ拠点まで戻ってから仕事完了を報告しなければならない。

「ですが、冒険者になりたいとは思っていませんよ。私の目的として、冒険者として活動するのは……どう考えても浮いてしまいますし、悪い意味で目立ってしまうでしょう」

フローレンスは騎士として、民に被害を与えるモンスターや盗賊を討伐し、現在は手に入れた金の一部を孤児院などで暮らしている子供たちが本当の意味で前に進めるようにするために支援に使っている。

非常に立派な活動……それは間違いない。
立派な活動であり、称賛されるべき活動であることは、間違いない。

だが……冒険者たちは、基本的にそんな事を考えながら活動しているわけではない。

基本的に冒険者になろうと登録し、活動を始める者たちは成り上がる為に冒険者としての道を選び、活動している。
そう簡単に成り上がれるものではないが、それでも実際に冒険者になる前と比べて、良い生活を出来るようになったと感じる者はそれなりにいる。

そんな彼らは……自身の欲の為に生きている。

「あぁ~~~……それは、そうなるかもしれないかな~~。多分だけど、フローレンスさんを見てたら、否が応でも自分たちの活動? が醜く、バカにされてる様に感じるかもしれないかな」

「やはり、そうですよね」

冒険者の中には、寧ろ騎士になりたいという目標を持って活動している者もいる。

騎士というのは誰でもなれるものではなく、平民であれば王道のルートで騎士になるのは難しい。
そのため、冒険者になって名声を高め、貴族に声を掛けられて騎士になる道を目指す者は、少なからず存在する。

だが、本当に少なからずといった人数。
大半の冒険者たちは己の欲の為に生きている。
フローレンスの民を襲うモンスターや盗賊を討伐し、自分の力だけでは道を選ぶという選択肢も取れない子供たちに支援するという気持ちも……もしかしたら、フローレンスの欲と捉えられるかもしれない。

ただ、その欲は明らかに善とした欲。
自分を優先する欲ではなく、他者を優先する欲である。

「ですので、私が活動する場はあくまで騎士団という場が適しています」

「ん~~~~~~~…………多分、そうなんだろうな~~」

「それに、仮に私が冒険者の世界に足を踏み入れようとすれば、アラッドはとんでもなく嫌な顔をするでしょう」

「……ふふ、あっはっは!!! 簡単に想像出来ちゃいますね」

絶対に不機嫌そうな顔を浮かべる。

二人はそんなアラッドの顔があっさりと想像出来てしまった。

(アラッドは……多分、そうなったらフローレンスを冒険者の世界に引きずり込んだ要因として、真っ先に疑われるのが嫌だから、超不機嫌そうな顔になりそうだよね~~~)

実際のところ、アラッドはフローレンスに冒険者の方が騎士よりも自由だと、楽しいぞと進めたことは一度もない。

なので、本当にフローレンスが血迷って冒険者としての道に進んだとしても、アラッドに一切の責任はない。
責任はないのだが……冒険者の中で、一番関りが深い者となると、必然的にアラッドという答えに辿りつく。

加えて、アラッドは今回や交流戦の時にフローレンスとの会話で、冒険者になってからの体験などを楽しげに話している。
そういった点が、フローレンスを冒険者の道へと引きずり込んだ……と言われれば、アラッドとしては「ふざけんなクソったれが!!!!! もっとまともな根拠を持ってこい!!!!!!!」と、絶対にブチ切れる。

ただ、第三者の視点から見てみると、そういう捉え方が出来る。

「でも、一回ぐらいアラッドと一緒に冒険してみたいとか思ったりします?」

「…………………………………そう、ですね。一度ぐらいは、彼と一緒に冒険してみたいですね」

十秒以上考え込んでから、本音を絞り出したフローレンス。
正直なところ、アラッドやガルーレ、スティームたちとの冒険というのは、非常に魅力的である。

彼等となら共に冒険してみたいと、心の底から思える。

ダンジョンか、それとも国外か……どちらも魅力的ではあるが、望んだからといって叶うものではない。

「ですが、あまりにも高望みです。今回の様に、共に共通の敵を相手に戦うことが出来た。それだけでも、私としては十分楽しかったです」

内容が内容なだけに、あまりその様な感想を口にするのは良くない。
それは解っていても……間違いなく、それがフローレンスの本音だった。

「フローレンスさん、諦めるにはまだ早いんじゃないですか」

そんなフローレンスに対し、ガルーレはニヤニヤとした表情を浮かべながらある提案をした。
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