948 / 1,023
九百四十六話 疎まれるだけ
しおりを挟む
「……もしかして、フローレンスさんって冒険者になりたいな~とかって思ってます?」
「っ…………冒険者になりたいと言うか、そういった冒険者の身軽さは羨ましいとな思いますね」
ガルーレの質問に、ちょっと言葉を詰まらせながらも、フローレンスは思ったことを口にした。
正直なところ、フローレンスも報告は手紙だけで知らせ、早く別のドラゴンの元へと向かい、討伐したい。
だが、基本的に手紙だけで終わりましたよと伝えることは出来ず、キッチリ拠点まで戻ってから仕事完了を報告しなければならない。
「ですが、冒険者になりたいとは思っていませんよ。私の目的として、冒険者として活動するのは……どう考えても浮いてしまいますし、悪い意味で目立ってしまうでしょう」
フローレンスは騎士として、民に被害を与えるモンスターや盗賊を討伐し、現在は手に入れた金の一部を孤児院などで暮らしている子供たちが本当の意味で前に進めるようにするために支援に使っている。
非常に立派な活動……それは間違いない。
立派な活動であり、称賛されるべき活動であることは、間違いない。
だが……冒険者たちは、基本的にそんな事を考えながら活動しているわけではない。
基本的に冒険者になろうと登録し、活動を始める者たちは成り上がる為に冒険者としての道を選び、活動している。
そう簡単に成り上がれるものではないが、それでも実際に冒険者になる前と比べて、良い生活を出来るようになったと感じる者はそれなりにいる。
そんな彼らは……自身の欲の為に生きている。
「あぁ~~~……それは、そうなるかもしれないかな~~。多分だけど、フローレンスさんを見てたら、否が応でも自分たちの活動? が醜く、バカにされてる様に感じるかもしれないかな」
「やはり、そうですよね」
冒険者の中には、寧ろ騎士になりたいという目標を持って活動している者もいる。
騎士というのは誰でもなれるものではなく、平民であれば王道のルートで騎士になるのは難しい。
そのため、冒険者になって名声を高め、貴族に声を掛けられて騎士になる道を目指す者は、少なからず存在する。
だが、本当に少なからずといった人数。
大半の冒険者たちは己の欲の為に生きている。
フローレンスの民を襲うモンスターや盗賊を討伐し、自分の力だけでは道を選ぶという選択肢も取れない子供たちに支援するという気持ちも……もしかしたら、フローレンスの欲と捉えられるかもしれない。
ただ、その欲は明らかに善とした欲。
自分を優先する欲ではなく、他者を優先する欲である。
「ですので、私が活動する場はあくまで騎士団という場が適しています」
「ん~~~~~~~…………多分、そうなんだろうな~~」
「それに、仮に私が冒険者の世界に足を踏み入れようとすれば、アラッドはとんでもなく嫌な顔をするでしょう」
「……ふふ、あっはっは!!! 簡単に想像出来ちゃいますね」
絶対に不機嫌そうな顔を浮かべる。
二人はそんなアラッドの顔があっさりと想像出来てしまった。
(アラッドは……多分、そうなったらフローレンスを冒険者の世界に引きずり込んだ要因として、真っ先に疑われるのが嫌だから、超不機嫌そうな顔になりそうだよね~~~)
実際のところ、アラッドはフローレンスに冒険者の方が騎士よりも自由だと、楽しいぞと進めたことは一度もない。
なので、本当にフローレンスが血迷って冒険者としての道に進んだとしても、アラッドに一切の責任はない。
責任はないのだが……冒険者の中で、一番関りが深い者となると、必然的にアラッドという答えに辿りつく。
加えて、アラッドは今回や交流戦の時にフローレンスとの会話で、冒険者になってからの体験などを楽しげに話している。
そういった点が、フローレンスを冒険者の道へと引きずり込んだ……と言われれば、アラッドとしては「ふざけんなクソったれが!!!!! もっとまともな根拠を持ってこい!!!!!!!」と、絶対にブチ切れる。
ただ、第三者の視点から見てみると、そういう捉え方が出来る。
「でも、一回ぐらいアラッドと一緒に冒険してみたいとか思ったりします?」
「…………………………………そう、ですね。一度ぐらいは、彼と一緒に冒険してみたいですね」
十秒以上考え込んでから、本音を絞り出したフローレンス。
正直なところ、アラッドやガルーレ、スティームたちとの冒険というのは、非常に魅力的である。
彼等となら共に冒険してみたいと、心の底から思える。
ダンジョンか、それとも国外か……どちらも魅力的ではあるが、望んだからといって叶うものではない。
「ですが、あまりにも高望みです。今回の様に、共に共通の敵を相手に戦うことが出来た。それだけでも、私としては十分楽しかったです」
内容が内容なだけに、あまりその様な感想を口にするのは良くない。
それは解っていても……間違いなく、それがフローレンスの本音だった。
「フローレンスさん、諦めるにはまだ早いんじゃないですか」
そんなフローレンスに対し、ガルーレはニヤニヤとした表情を浮かべながらある提案をした。
「っ…………冒険者になりたいと言うか、そういった冒険者の身軽さは羨ましいとな思いますね」
ガルーレの質問に、ちょっと言葉を詰まらせながらも、フローレンスは思ったことを口にした。
正直なところ、フローレンスも報告は手紙だけで知らせ、早く別のドラゴンの元へと向かい、討伐したい。
だが、基本的に手紙だけで終わりましたよと伝えることは出来ず、キッチリ拠点まで戻ってから仕事完了を報告しなければならない。
「ですが、冒険者になりたいとは思っていませんよ。私の目的として、冒険者として活動するのは……どう考えても浮いてしまいますし、悪い意味で目立ってしまうでしょう」
フローレンスは騎士として、民に被害を与えるモンスターや盗賊を討伐し、現在は手に入れた金の一部を孤児院などで暮らしている子供たちが本当の意味で前に進めるようにするために支援に使っている。
非常に立派な活動……それは間違いない。
立派な活動であり、称賛されるべき活動であることは、間違いない。
だが……冒険者たちは、基本的にそんな事を考えながら活動しているわけではない。
基本的に冒険者になろうと登録し、活動を始める者たちは成り上がる為に冒険者としての道を選び、活動している。
そう簡単に成り上がれるものではないが、それでも実際に冒険者になる前と比べて、良い生活を出来るようになったと感じる者はそれなりにいる。
そんな彼らは……自身の欲の為に生きている。
「あぁ~~~……それは、そうなるかもしれないかな~~。多分だけど、フローレンスさんを見てたら、否が応でも自分たちの活動? が醜く、バカにされてる様に感じるかもしれないかな」
「やはり、そうですよね」
冒険者の中には、寧ろ騎士になりたいという目標を持って活動している者もいる。
騎士というのは誰でもなれるものではなく、平民であれば王道のルートで騎士になるのは難しい。
そのため、冒険者になって名声を高め、貴族に声を掛けられて騎士になる道を目指す者は、少なからず存在する。
だが、本当に少なからずといった人数。
大半の冒険者たちは己の欲の為に生きている。
フローレンスの民を襲うモンスターや盗賊を討伐し、自分の力だけでは道を選ぶという選択肢も取れない子供たちに支援するという気持ちも……もしかしたら、フローレンスの欲と捉えられるかもしれない。
ただ、その欲は明らかに善とした欲。
自分を優先する欲ではなく、他者を優先する欲である。
「ですので、私が活動する場はあくまで騎士団という場が適しています」
「ん~~~~~~~…………多分、そうなんだろうな~~」
「それに、仮に私が冒険者の世界に足を踏み入れようとすれば、アラッドはとんでもなく嫌な顔をするでしょう」
「……ふふ、あっはっは!!! 簡単に想像出来ちゃいますね」
絶対に不機嫌そうな顔を浮かべる。
二人はそんなアラッドの顔があっさりと想像出来てしまった。
(アラッドは……多分、そうなったらフローレンスを冒険者の世界に引きずり込んだ要因として、真っ先に疑われるのが嫌だから、超不機嫌そうな顔になりそうだよね~~~)
実際のところ、アラッドはフローレンスに冒険者の方が騎士よりも自由だと、楽しいぞと進めたことは一度もない。
なので、本当にフローレンスが血迷って冒険者としての道に進んだとしても、アラッドに一切の責任はない。
責任はないのだが……冒険者の中で、一番関りが深い者となると、必然的にアラッドという答えに辿りつく。
加えて、アラッドは今回や交流戦の時にフローレンスとの会話で、冒険者になってからの体験などを楽しげに話している。
そういった点が、フローレンスを冒険者の道へと引きずり込んだ……と言われれば、アラッドとしては「ふざけんなクソったれが!!!!! もっとまともな根拠を持ってこい!!!!!!!」と、絶対にブチ切れる。
ただ、第三者の視点から見てみると、そういう捉え方が出来る。
「でも、一回ぐらいアラッドと一緒に冒険してみたいとか思ったりします?」
「…………………………………そう、ですね。一度ぐらいは、彼と一緒に冒険してみたいですね」
十秒以上考え込んでから、本音を絞り出したフローレンス。
正直なところ、アラッドやガルーレ、スティームたちとの冒険というのは、非常に魅力的である。
彼等となら共に冒険してみたいと、心の底から思える。
ダンジョンか、それとも国外か……どちらも魅力的ではあるが、望んだからといって叶うものではない。
「ですが、あまりにも高望みです。今回の様に、共に共通の敵を相手に戦うことが出来た。それだけでも、私としては十分楽しかったです」
内容が内容なだけに、あまりその様な感想を口にするのは良くない。
それは解っていても……間違いなく、それがフローレンスの本音だった。
「フローレンスさん、諦めるにはまだ早いんじゃないですか」
そんなフローレンスに対し、ガルーレはニヤニヤとした表情を浮かべながらある提案をした。
473
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる