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九百四十二話 思い出し笑い
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「ん~~~……どうかな。もしケルベロスと戦う時があれば、今度は剛柔を使わないつもりだからね」
使い心地は最高だった。
ロングソードという武器を使うことに、ちょっと興味が出てきた。
だが、それでも黒色オルトロス亜種との戦いの際、ガルーレは剛柔に助けられたという感覚が強かった。
剛柔自体に文句はない。
ただ……剛柔を使わなければ、勝てなかった可能性がある自分に文句があった。
「あの、少しいいですか」
「? なんだ、フローレンス」
「先程から話に出ている剛柔という……武器? は、もしやあの剛柔で合っていますか」
フローレンスの質問を聞いて、三人はようやく「しまった!!!!」という顔になった。
三人は自分たちが剛柔を持っている事を隠している訳ではないが、言いふらしているわけでもない。
何故なら……あまり知られて良いことはないと解っているからである。
「…………はぁ~~~~~~。気を付けてなかった俺らが悪いな。フローレンスの言う通り、俺たちが口にしてる剛柔は、かつての英雄エルス・エスペラーサが持っていた名剣だ」
アラッドの説明を聞き、ソルたちは大なり小なり差はあれど、全員驚いていた。
魔法使いであるルーナでさえも、まさかの事実に心底驚いた表情を浮かべている。
「やはりそうでしたか。それにしても……エスペラーサ家と喧嘩になりませんでしたね」
貴族界隈でも侯爵家ということもあり、基本的に殆どの貴族がその名を知っている。
同じ侯爵けど言えど、フールも敵に回したくない名家である。
「剛柔に関しては、俺たちが見つけたというか、倒した結果出現したっていうか……そんな感じだよな」
アラッドが話を振ると、二人は当時を思い出し、確かにそんな感じだったと頷き…………同時に、自分たちの前に並んでいた冒険者たちが中々剛柔を引き抜けないところを見て、思いっきり引き抜こうとしたアラッドがどうなたのかを思い出した。
「ふっ、ふっふっふ」
「おいおい、どうしたんだ急に」
「いや、ほら。アラッドが思いっきり剛柔を引き抜いた時を思い出して、さ」
「あ、あぁ……あれか」
言われてアラッドも当時のことを思い出し……同じく笑うことはなかった。
逆に、一気に背中から冷や汗が流れた。
「? やはり、何か問題があったのですか?」
「問題と言えば……問題だったかもしれないな」
当時、何があったのかを軽く説明。
すると……アラッドが思いっきり剛柔を引き抜こうとして、思いっきりのけ反り、あと一歩で頭から地面に激突しそうになった光景をイメージしたソルたちから……小さな笑いが零れる。
「そんな事があったのですね……本当に、大丈夫だったのですか?」
ただ、唯一フローレンスだけは本気で心配していた。
「あぁ、大丈夫だった。とはいえ、あのまま激突してれば……当然頭から血は流れて、もしかしたら意識が飛んでたかもしれないな」
「本当に笑い事ではありませんね……では、本当の問題があったのは、その後ですか?」
「いや、問題自体は、確かその前にあった気がする」
「そうだね。正直…………あの時のアラッドは怒ってたから当然のことなんだけど、怖いと感じたね」
「イシュドが怒ったのですか?」
「そうなんですよ、フローレンスさん。殺気や戦意を放つことはモンスター相手に何度もありましたけど、あんな感じで明確に怒ってる姿は超珍しかったですよ」
ガルーレの言葉を聞いて、どういう状況だったのか気になったフローレンスは、もっと詳しく尋ねた。
「…………といった感じで、アラッドは……あ、アマル? って侯爵家の令息の戦える力があるくせに、その他の部分に頼ろうとする腐った根性が気に入らなかったみたいです」
「なるほど……確かに、いかにもアラッドが嫌いになりそうな点ですね」
フローレンスの表情には単純な笑顔……ではなく、自身の過去を振り返り、反省するような表情が含まれていた。
「色々と流れ? は解ったけど、エスペラーサ家が良く剛柔をあんた達が持つことを許したな」
「先にアマルたちが手に入れられなかったのが悪いからな。それに、エスペラーサ家としても、うちの実家と揉め事は起こしたくなかったんだろ」
エスペラーサ家は確かに侯爵家ではあるが、同じくアラッドの実家も侯爵家。
現当主がAランクドラゴンをソロで討伐出来るほどの実力があり、アラッドはアラッドで冒険者になってから一年も経たない間に複数の功績を打ち立てていた。
正常な判断が出来る者であれば、どんな理由があろうとも、基本的に対立したくない相手である。
「って、そういう話は今いいんだよ。ソルたちはどうだったんだ?」
「私たちは…………とにかく、フローレンス様の相棒のウィリアスがいてくれて、本当にありがたかったって感じかな」
表情は様々であるが、他五人も同じ感想であった。
ソルたちが担当したモンスターたちは全員一応闇属性を持っていたため、ウィリアスの光属性を武器に付与する能力が非常に役に立っていた。
加えて、数が減り始めるまでウィリアスは本当に少し呼吸を整える間もなく防御とサポートに勤しんでいた。
その光景を全て観ていた訳ではないが、ある程度把握していたこともあり、ソルたちとしては本当に自分たちはまだまだだと……悔しくはあるが、アラッドたちがいなければ完全にフローレンスの足を引っ張ていたとしか思えなかった。
使い心地は最高だった。
ロングソードという武器を使うことに、ちょっと興味が出てきた。
だが、それでも黒色オルトロス亜種との戦いの際、ガルーレは剛柔に助けられたという感覚が強かった。
剛柔自体に文句はない。
ただ……剛柔を使わなければ、勝てなかった可能性がある自分に文句があった。
「あの、少しいいですか」
「? なんだ、フローレンス」
「先程から話に出ている剛柔という……武器? は、もしやあの剛柔で合っていますか」
フローレンスの質問を聞いて、三人はようやく「しまった!!!!」という顔になった。
三人は自分たちが剛柔を持っている事を隠している訳ではないが、言いふらしているわけでもない。
何故なら……あまり知られて良いことはないと解っているからである。
「…………はぁ~~~~~~。気を付けてなかった俺らが悪いな。フローレンスの言う通り、俺たちが口にしてる剛柔は、かつての英雄エルス・エスペラーサが持っていた名剣だ」
アラッドの説明を聞き、ソルたちは大なり小なり差はあれど、全員驚いていた。
魔法使いであるルーナでさえも、まさかの事実に心底驚いた表情を浮かべている。
「やはりそうでしたか。それにしても……エスペラーサ家と喧嘩になりませんでしたね」
貴族界隈でも侯爵家ということもあり、基本的に殆どの貴族がその名を知っている。
同じ侯爵けど言えど、フールも敵に回したくない名家である。
「剛柔に関しては、俺たちが見つけたというか、倒した結果出現したっていうか……そんな感じだよな」
アラッドが話を振ると、二人は当時を思い出し、確かにそんな感じだったと頷き…………同時に、自分たちの前に並んでいた冒険者たちが中々剛柔を引き抜けないところを見て、思いっきり引き抜こうとしたアラッドがどうなたのかを思い出した。
「ふっ、ふっふっふ」
「おいおい、どうしたんだ急に」
「いや、ほら。アラッドが思いっきり剛柔を引き抜いた時を思い出して、さ」
「あ、あぁ……あれか」
言われてアラッドも当時のことを思い出し……同じく笑うことはなかった。
逆に、一気に背中から冷や汗が流れた。
「? やはり、何か問題があったのですか?」
「問題と言えば……問題だったかもしれないな」
当時、何があったのかを軽く説明。
すると……アラッドが思いっきり剛柔を引き抜こうとして、思いっきりのけ反り、あと一歩で頭から地面に激突しそうになった光景をイメージしたソルたちから……小さな笑いが零れる。
「そんな事があったのですね……本当に、大丈夫だったのですか?」
ただ、唯一フローレンスだけは本気で心配していた。
「あぁ、大丈夫だった。とはいえ、あのまま激突してれば……当然頭から血は流れて、もしかしたら意識が飛んでたかもしれないな」
「本当に笑い事ではありませんね……では、本当の問題があったのは、その後ですか?」
「いや、問題自体は、確かその前にあった気がする」
「そうだね。正直…………あの時のアラッドは怒ってたから当然のことなんだけど、怖いと感じたね」
「イシュドが怒ったのですか?」
「そうなんですよ、フローレンスさん。殺気や戦意を放つことはモンスター相手に何度もありましたけど、あんな感じで明確に怒ってる姿は超珍しかったですよ」
ガルーレの言葉を聞いて、どういう状況だったのか気になったフローレンスは、もっと詳しく尋ねた。
「…………といった感じで、アラッドは……あ、アマル? って侯爵家の令息の戦える力があるくせに、その他の部分に頼ろうとする腐った根性が気に入らなかったみたいです」
「なるほど……確かに、いかにもアラッドが嫌いになりそうな点ですね」
フローレンスの表情には単純な笑顔……ではなく、自身の過去を振り返り、反省するような表情が含まれていた。
「色々と流れ? は解ったけど、エスペラーサ家が良く剛柔をあんた達が持つことを許したな」
「先にアマルたちが手に入れられなかったのが悪いからな。それに、エスペラーサ家としても、うちの実家と揉め事は起こしたくなかったんだろ」
エスペラーサ家は確かに侯爵家ではあるが、同じくアラッドの実家も侯爵家。
現当主がAランクドラゴンをソロで討伐出来るほどの実力があり、アラッドはアラッドで冒険者になってから一年も経たない間に複数の功績を打ち立てていた。
正常な判断が出来る者であれば、どんな理由があろうとも、基本的に対立したくない相手である。
「って、そういう話は今いいんだよ。ソルたちはどうだったんだ?」
「私たちは…………とにかく、フローレンス様の相棒のウィリアスがいてくれて、本当にありがたかったって感じかな」
表情は様々であるが、他五人も同じ感想であった。
ソルたちが担当したモンスターたちは全員一応闇属性を持っていたため、ウィリアスの光属性を武器に付与する能力が非常に役に立っていた。
加えて、数が減り始めるまでウィリアスは本当に少し呼吸を整える間もなく防御とサポートに勤しんでいた。
その光景を全て観ていた訳ではないが、ある程度把握していたこともあり、ソルたちとしては本当に自分たちはまだまだだと……悔しくはあるが、アラッドたちがいなければ完全にフローレンスの足を引っ張ていたとしか思えなかった。
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