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九百三十二話 御し、駆ける
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(祖先に鬼人族がいる……だからという理由で片付けられる変化かな)
祖先に鬼人族がいるからこそ、何かしらの条件が重なった結果、額の片側から角が生えてくる。
祖先に獣人族がいるからこそ、獣心解放を行うことが出来る。
そんな理屈を、闇竜デネブは即座に否定することはなかった。
突拍子もない……でも理屈はなんとなく解るような話をただの与太話だと切り捨てないからこそ、デネブはここまで厄介な闇竜へと進化した。
(角が生える。そこまでは解るけど、目の色まで変わるって…………もしかして、狂化の練度が関係してるのかな)
今のアラッドを表すなら、金色の夜叉。
先程……アラッド達と初めて対面した時、デネブは僅かにブルリと震えた。
何故なら……明らかに自分よりも格上の存在であるモンスターを人間たちが引き連れていたからである。
だが、今デネブは、その時よりも大きく震えた。
それほどまでに、アラッドの危険度は増していた。
「っ……とことん、容赦する気はないってことだね」
アラッドは羅刹を抜刀するだけではなく、亜空間からもう一つの切り札……迅罰を取り出し、左手に持った。
「お前が俺や俺たちを危険だと思う様に、闇竜デネブ……俺も、お前の事を危険だと思っている。だからこそ、完全にここで終わらせる。それに……身に付けてるのは、俺だけじゃないだろ」
「……ふふ、バレてたか」
闇の魔力を応用し、デネブは身に付けているマジックアイテムを見えないようにしていた。
当然……中には常時効果が発動するタイプの物もあるが、効果を任意で発動するタイプの物も存在する。
「認めたってことは……潔く死ぬ気はない、ってことで良いんだな」
「僕達ドラゴンの場合、最後まで暴れてこそ、寧ろ潔良いと思わないかい」
「そうだな…………ドラゴンらしい思考があるようで、なによりだ。お前ら……手を出すなよ」
狂化を使用しているからか、珍しく頼むのではなく、命令した。
「手を出す必要がないと信じてるよ、アラッド」
「ワゥ!!!!!」
「おぅ」
友の、相棒の声を背に受け、一歩……また一歩、目の前の強敵との距離を縮める。
「…………………………ッッッッッッ!!!!!!!!!」
以外にも、先に動いたのはデネブだった。
任意発動であった腕輪タイプのマジックアイテムを発動し、増幅された闇の爪撃刃を放った。
できることなら……ドラゴンとしての本能に身を任せ、爪撃を直接叩き込みたかった。
しかし、それが出来るとしても、叩き込むのは今ではなかった。
「シッ!!!!!」
(ははっ!! 強敵三人を、同時に相手してるみたいだね!!!!!)
アラッド、羅刹、迅罰。
武器を持つ人間は一人だけであり、あくまで残り二つは武器。
それでも……二つとも、そこにあるだけで自身の命を貫くようなイメージを負わせてくる。
そんな存在感を持つ迅罰によって、増幅された闇の爪撃刃が粉砕。
だが、直後に闇のブレスと多数の闇の激槍が放たれた。
勿論……延長線上にスティームたちはおらず、アラッドにのみ向けて放たれた、
「ヌゥゥウウウアアアアアアアアッ!!!!!!」
弾き、掻き消し、切り裂く。
刀と木刀のような形状の武器、扱い方が異なる武器の二刀流でありながら、アラッドは一切振り回されず、雄叫びを上げながらブレスも激槍も粉砕。
「ジッ!!!!!!」
そして羅刹から放たれた斬撃波はデネブの意識を掻い潜り、指の一つを切断。
しかし、切断された指は即座に再生された。
(関係、ないッ!!!!!!!!!)
闇による治癒。
それを更に向上させることは読めていた。
だからこそ、アラッドは慌てることなく自身の狂気を御し、戦場を駆け回る。
「いや~~~~、怪物対怪物って感じだね~~~」
「ガルーレ、せめて片方は傑物って言おうよ」
「あっはっは!! それもそうね。にしても……あんなた戦いを生で観られるなんて、私たちツイてるね~~~」
「それは……いつもの事なんじゃないかな」
目の前で行われている激闘に対し、ガルーレやスティームは慣れた様子で観ていた。
「「「「「「…………」」」」」」
そんな中、ソルたちだけは目玉が飛び出そうなほど……色々と驚きが隠せない表情を浮かべていた。
「ふふ。どうよ、うちの大将は。超凄いでしょ」
何故かガルーレが自慢気な表情を浮かべる。
スティームも口には出さなかったが、似た様な表情になっていた。
「す、凄いってか……その、まず……あれは、なんなの」
なんとか高速で動くアラッドを確認出来ているソルは、アラッドの額から生えている角に関して尋ねた。
狂化を使用していれば、額から角が生えてくるという話など、聞いたことがない。
「あれね。あれは………………なんなんだろうね」
答えそうで答えられなかったスティームの反応に、ソルたちはコントのようにズッコケそうになった。
「し、知らないのかよ!!!!!!」
「あまり良く解ってないのが正しいかな。あれ? って思ったのは、アラッドがナルターク王国の交流会でラディア・クレスターさんと戦った時。確実に生えてると確信したのは、ガルーレが雪崩に流された後、怒りを爆散させる形で天を斬り裂いた時」
「「「「「「……………」」」」」」
あまりのスケールの大きさに、もはやソルたちはどういった反応をすれば良いか解らなくなっていた。
祖先に鬼人族がいるからこそ、何かしらの条件が重なった結果、額の片側から角が生えてくる。
祖先に獣人族がいるからこそ、獣心解放を行うことが出来る。
そんな理屈を、闇竜デネブは即座に否定することはなかった。
突拍子もない……でも理屈はなんとなく解るような話をただの与太話だと切り捨てないからこそ、デネブはここまで厄介な闇竜へと進化した。
(角が生える。そこまでは解るけど、目の色まで変わるって…………もしかして、狂化の練度が関係してるのかな)
今のアラッドを表すなら、金色の夜叉。
先程……アラッド達と初めて対面した時、デネブは僅かにブルリと震えた。
何故なら……明らかに自分よりも格上の存在であるモンスターを人間たちが引き連れていたからである。
だが、今デネブは、その時よりも大きく震えた。
それほどまでに、アラッドの危険度は増していた。
「っ……とことん、容赦する気はないってことだね」
アラッドは羅刹を抜刀するだけではなく、亜空間からもう一つの切り札……迅罰を取り出し、左手に持った。
「お前が俺や俺たちを危険だと思う様に、闇竜デネブ……俺も、お前の事を危険だと思っている。だからこそ、完全にここで終わらせる。それに……身に付けてるのは、俺だけじゃないだろ」
「……ふふ、バレてたか」
闇の魔力を応用し、デネブは身に付けているマジックアイテムを見えないようにしていた。
当然……中には常時効果が発動するタイプの物もあるが、効果を任意で発動するタイプの物も存在する。
「認めたってことは……潔く死ぬ気はない、ってことで良いんだな」
「僕達ドラゴンの場合、最後まで暴れてこそ、寧ろ潔良いと思わないかい」
「そうだな…………ドラゴンらしい思考があるようで、なによりだ。お前ら……手を出すなよ」
狂化を使用しているからか、珍しく頼むのではなく、命令した。
「手を出す必要がないと信じてるよ、アラッド」
「ワゥ!!!!!」
「おぅ」
友の、相棒の声を背に受け、一歩……また一歩、目の前の強敵との距離を縮める。
「…………………………ッッッッッッ!!!!!!!!!」
以外にも、先に動いたのはデネブだった。
任意発動であった腕輪タイプのマジックアイテムを発動し、増幅された闇の爪撃刃を放った。
できることなら……ドラゴンとしての本能に身を任せ、爪撃を直接叩き込みたかった。
しかし、それが出来るとしても、叩き込むのは今ではなかった。
「シッ!!!!!」
(ははっ!! 強敵三人を、同時に相手してるみたいだね!!!!!)
アラッド、羅刹、迅罰。
武器を持つ人間は一人だけであり、あくまで残り二つは武器。
それでも……二つとも、そこにあるだけで自身の命を貫くようなイメージを負わせてくる。
そんな存在感を持つ迅罰によって、増幅された闇の爪撃刃が粉砕。
だが、直後に闇のブレスと多数の闇の激槍が放たれた。
勿論……延長線上にスティームたちはおらず、アラッドにのみ向けて放たれた、
「ヌゥゥウウウアアアアアアアアッ!!!!!!」
弾き、掻き消し、切り裂く。
刀と木刀のような形状の武器、扱い方が異なる武器の二刀流でありながら、アラッドは一切振り回されず、雄叫びを上げながらブレスも激槍も粉砕。
「ジッ!!!!!!」
そして羅刹から放たれた斬撃波はデネブの意識を掻い潜り、指の一つを切断。
しかし、切断された指は即座に再生された。
(関係、ないッ!!!!!!!!!)
闇による治癒。
それを更に向上させることは読めていた。
だからこそ、アラッドは慌てることなく自身の狂気を御し、戦場を駆け回る。
「いや~~~~、怪物対怪物って感じだね~~~」
「ガルーレ、せめて片方は傑物って言おうよ」
「あっはっは!! それもそうね。にしても……あんなた戦いを生で観られるなんて、私たちツイてるね~~~」
「それは……いつもの事なんじゃないかな」
目の前で行われている激闘に対し、ガルーレやスティームは慣れた様子で観ていた。
「「「「「「…………」」」」」」
そんな中、ソルたちだけは目玉が飛び出そうなほど……色々と驚きが隠せない表情を浮かべていた。
「ふふ。どうよ、うちの大将は。超凄いでしょ」
何故かガルーレが自慢気な表情を浮かべる。
スティームも口には出さなかったが、似た様な表情になっていた。
「す、凄いってか……その、まず……あれは、なんなの」
なんとか高速で動くアラッドを確認出来ているソルは、アラッドの額から生えている角に関して尋ねた。
狂化を使用していれば、額から角が生えてくるという話など、聞いたことがない。
「あれね。あれは………………なんなんだろうね」
答えそうで答えられなかったスティームの反応に、ソルたちはコントのようにズッコケそうになった。
「し、知らないのかよ!!!!!!」
「あまり良く解ってないのが正しいかな。あれ? って思ったのは、アラッドがナルターク王国の交流会でラディア・クレスターさんと戦った時。確実に生えてると確信したのは、ガルーレが雪崩に流された後、怒りを爆散させる形で天を斬り裂いた時」
「「「「「「……………」」」」」」
あまりのスケールの大きさに、もはやソルたちはどういった反応をすれば良いか解らなくなっていた。
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