スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
934 / 1,058

九百三十二話 御し、駆ける

しおりを挟む
(祖先に鬼人族がいる……だからという理由で片付けられる変化かな)

祖先に鬼人族がいるからこそ、何かしらの条件が重なった結果、額の片側から角が生えてくる。
祖先に獣人族がいるからこそ、獣心解放を行うことが出来る。

そんな理屈を、闇竜デネブは即座に否定することはなかった。
突拍子もない……でも理屈はなんとなく解るような話をただの与太話だと切り捨てないからこそ、デネブはここまで厄介な闇竜へと進化した。

(角が生える。そこまでは解るけど、目の色まで変わるって…………もしかして、狂化の練度が関係してるのかな)

今のアラッドを表すなら、金色の夜叉。

先程……アラッド達と初めて対面した時、デネブは僅かにブルリと震えた。
何故なら……明らかに自分よりも格上の存在であるモンスターを人間たちが引き連れていたからである。

だが、今デネブは、その時よりも大きく震えた。
それほどまでに、アラッドの危険度は増していた。

「っ……とことん、容赦する気はないってことだね」

アラッドは羅刹を抜刀するだけではなく、亜空間からもう一つの切り札……迅罰を取り出し、左手に持った。

「お前が俺や俺たちを危険だと思う様に、闇竜デネブ……俺も、お前の事を危険だと思っている。だからこそ、完全にここで終わらせる。それに……身に付けてるのは、俺だけじゃないだろ」

「……ふふ、バレてたか」

闇の魔力を応用し、デネブは身に付けているマジックアイテムを見えないようにしていた。
当然……中には常時効果が発動するタイプの物もあるが、効果を任意で発動するタイプの物も存在する。

「認めたってことは……潔く死ぬ気はない、ってことで良いんだな」

「僕達ドラゴンの場合、最後まで暴れてこそ、寧ろ潔良いと思わないかい」

「そうだな…………ドラゴンらしい思考があるようで、なによりだ。お前ら……手を出すなよ」

狂化を使用しているからか、珍しく頼むのではなく、命令した。

「手を出す必要がないと信じてるよ、アラッド」

「ワゥ!!!!!」

「おぅ」

友の、相棒の声を背に受け、一歩……また一歩、目の前の強敵との距離を縮める。

「…………………………ッッッッッッ!!!!!!!!!」

以外にも、先に動いたのはデネブだった。
任意発動であった腕輪タイプのマジックアイテムを発動し、増幅された闇の爪撃刃を放った。

できることなら……ドラゴンとしての本能に身を任せ、爪撃を直接叩き込みたかった。
しかし、それが出来るとしても、叩き込むのは今ではなかった。

「シッ!!!!!」

(ははっ!! 強敵三人を、同時に相手してるみたいだね!!!!!)

アラッド、羅刹、迅罰。
武器を持つ人間は一人だけであり、あくまで残り二つは武器。

それでも……二つとも、そこにあるだけで自身の命を貫くようなイメージを負わせてくる。
そんな存在感を持つ迅罰によって、増幅された闇の爪撃刃が粉砕。
だが、直後に闇のブレスと多数の闇の激槍が放たれた。

勿論……延長線上にスティームたちはおらず、アラッドにのみ向けて放たれた、

「ヌゥゥウウウアアアアアアアアッ!!!!!!」

弾き、掻き消し、切り裂く。

刀と木刀のような形状の武器、扱い方が異なる武器の二刀流でありながら、アラッドは一切振り回されず、雄叫びを上げながらブレスも激槍も粉砕。

「ジッ!!!!!!」

そして羅刹から放たれた斬撃波はデネブの意識を掻い潜り、指の一つを切断。
しかし、切断された指は即座に再生された。

(関係、ないッ!!!!!!!!!)

闇による治癒。
それを更に向上させることは読めていた。

だからこそ、アラッドは慌てることなく自身の狂気を御し、戦場を駆け回る。




「いや~~~~、怪物対怪物って感じだね~~~」

「ガルーレ、せめて片方は傑物って言おうよ」

「あっはっは!! それもそうね。にしても……あんなた戦いを生で観られるなんて、私たちツイてるね~~~」

「それは……いつもの事なんじゃないかな」

目の前で行われている激闘に対し、ガルーレやスティームは慣れた様子で観ていた。

「「「「「「…………」」」」」」

そんな中、ソルたちだけは目玉が飛び出そうなほど……色々と驚きが隠せない表情を浮かべていた。

「ふふ。どうよ、うちの大将は。超凄いでしょ」

何故かガルーレが自慢気な表情を浮かべる。
スティームも口には出さなかったが、似た様な表情になっていた。

「す、凄いってか……その、まず……あれは、なんなの」

なんとか高速で動くアラッドを確認出来ているソルは、アラッドの額から生えている角に関して尋ねた。
狂化を使用していれば、額から角が生えてくるという話など、聞いたことがない。

「あれね。あれは………………なんなんだろうね」

答えそうで答えられなかったスティームの反応に、ソルたちはコントのようにズッコケそうになった。

「し、知らないのかよ!!!!!!」

「あまり良く解ってないのが正しいかな。あれ? って思ったのは、アラッドがナルターク王国の交流会でラディア・クレスターさんと戦った時。確実に生えてると確信したのは、ガルーレが雪崩に流された後、怒りを爆散させる形で天を斬り裂いた時」

「「「「「「……………」」」」」」

あまりのスケールの大きさに、もはやソルたちはどういった反応をすれば良いか解らなくなっていた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...