上 下
924 / 1,033

九百二十二話 背負えば良い。それだけの話

しおりを挟む
「ッ!! 破ッ!!!!」

「っ! ッ!! ッ!!!」

(……本当に、堅い。純粋な防御力は、ヴァジュラが戦っているハードメタルゴーレムの方が、上だとは思いますけど、このグレータースケルトンの防御力も、決して負けてませんね)

白熱した攻防を繰り広げること約二分。

黒色グレータースケルトンの攻撃は一度もフローレンスに当たっておらず、逆にフローレンスの攻撃は黒色グレータースケルトンに何度かヒットしていた。

しかし、今のところ属性的な相性では有利であるにもかかわらず、それなりのダメージを与えられた気がしない。

(骨が黒く、なっている……そういえば、人体の中で、一番堅い物は、骨……だったでしょうか。黒く変色し、更に硬度が増したとなれば……もっと踏み込まないと、倒せそうにありませんね)

骨が黒く変色したからという理由だけではなく、黒色グレータースケルトンは黒色リザードマンと同じく、闇竜デネブからマジックアイテムなどを受け取っていた。

人型だからこそ装備できる特権であり、それもあって属性的には有利なはずのフローレンスの攻撃が、思ったよりも効いていなかった。

(ウィリアスにソルたちの戦場を任せたのが、ここまで心細く感じるとは……私もまだまだですね)

フローレンスも、薄々勘付いていた。

現在自分と戦闘中である黒色グレータースケルトンは、あまり自分を攻めるつもりはない。
戦意はあるものの、死に物狂いで殺すといった殺気が感じられない。

それでも、攻める場面では攻めてくる。
現状のフローレンスでは、その攻撃を食らえば一気に形勢がひっくり返されてしまう。
黒色グレータースケルトンには、それだけの技術と攻撃力がある。

(……四の五の言ってられませんね)

頼れる相棒であるウィリアスがいない。
だからといって、今のフローレンスに手札がないわけではない。

「フンッ!!!!!!!」

「っ!!!!????」

聖光雄化。

フローレンスの切り札であり、フローレンスを麗しき聖女から筋肉聖女へと進化させる。

「ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

「っ!? っ! ッ!! っ!!!???」

筋肉が肥大化する。
そうなるとパワーは上がるが、スピードも落ちる? 答えは否。

聖光雄化は、全身体能力を向上させる。

フローレンスが放つ閃光の突きは更に速く、更に重くなる。

黒色グレータースケルトンにとって、どの攻撃も完全に無視出来なくなった。
加えて……聖光雄化を発動したことで、フローレンスが纏う属性は光から聖光に変化。

相性面では、更に黒色グレータースケルトンが不利になった。

(っ!! このグレータースケルトン……本当に、恐ろしいですね)

フローレンスは……確かに強い。
同じ世代というくくりを抜きにしても、戦闘者として、トップレベルの強さを持っている。

ただ……ガルーレやアラッドの様に、柔軟な……野性的な動きは得意ではない。

対して、グレータースケルトンもそういった得意ではない。
基礎的な動きの方が対処しやすい。
聖光雄化を使用し、更に強く、速くなったフローレンスではあるが、それでも基本的な動きに大幅な変化はなかった。

故に、飛来する攻撃に対し、ワンテンポ速く対処すれば良い。

言うは易く行うは難し。
それらを忠実に実行するのは、容易な事ではない。
黒色グレータースケルトンの身体能力と技術、スケルトンになる前の……スケルトンになった以降の戦闘経験があってこそ、初めて実行出来る対処方法。

(さて、どうしましょうか)

フローレンスの聖光雄化は、スティームの赤雷ほど魔力の消費は激しくなく、アラッドやソルが使う様に、リミットはない。

まだまだ数分以上が戦い続けられる。
しかし、まだ他の場所で激しい戦いが続いている以上、あまり魔力は消耗したくない。

(細剣を捨て、肉弾戦に切り替える? …………斬り裂かれるイメージしか湧きませんね)

黒色グレータースケルトンの剣技、右手に持つ……確実にランク五以上の名剣。
見るからに闇属性の名剣であり、聖光雄化を使用することで防御力も強化されたフローレンスではあるが……受け方を間違えれば、容易に斬り裂かれるイメージが浮かんでしまう。

加えて、聖光雄化によって向上する身体能力を活かす為に、徒手格闘も学んではいるが……本職にはまだ届かない。
そんな状態で放つ攻撃で、あの黒色グレータースケルトンを仕留められるのか。

(っ!! ……ダメですね。本当に……私は、まだまだですね)

結果として、アラッドたちと組んで良かった。
それはフローレンスたちだけではなく、アラッドたちも同じことを思っている。

仮にフローレンスたちと組んでいなければ、クロを温存する余裕などなく、それぞれが最初から切り札を解放している。

だが……元々は、自分たちだけで仕留める筈だった。

(ウィリアスがいないからと、日和っていい理由にはなりません)

魔力量を気にするのであれば、さっさと戦闘を終わらせればいい。
さっさと戦闘を終わらせるには、どうすれば良い?

答えは、至極単純。
ただ……リスクを背負えば良いだけの話である。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

処理中です...