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九百七話 お前だけの狂気
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「………………………………お前は、まだ俺のことが嫌いだろ」
「はっ!? いや、それは今の話と、関係ないだろ」
「別に正直に答えたところで、怒りはしない。いきなり殴りかかったりもしない」
「…………あぁ、そうだな。嫌いだよ」
本当に正直に答えたソルに対し、ただ小さく笑うだけで、アラッドは起こりも殴りもしなかった。
「そうだろうな。その感情自体にどうこう言うつもりはないが、それが……狂化を、狂気をコントロールする足枷になってるかもしれないな」
「? どういう、ことだ」
「先に言っておくが、狂化というスキルは俺以外にも持っている人間はいる。特別珍しいスキルというわけでもない。だからこそ、お前は俺と被ってるから、なんて思いを持ちながら使うべきじゃない」
「切り分けて考えろ、ということか」
本当にそれとこれは関係があるのか? とツッコミたいところだが、ソルが狂化というスキルを使う度に……アラッドの存在がチラついているのは事実だった。
「そうだ。狂気、と聞けば聞こえは悪いかもしれないが、それは人によって異なるだろう。誰かを守る、何かを成し遂げる、何かを解明する……その思いを突き詰めていけば、それもある種の狂気と言える」
「…………」
解るような解らない様な感覚であるも、ソルはひとまずアラッドの話を聞き続けた。
「お前の狂気は、お前だけのものだ。お前の狂気に、俺は関係無い。そこを認めるところから始めるべきかもな」
「私の狂気は、私だけの物…………」
結局は気の持ちよう。
本当にそんな精神性、根性でコントロール出来るようになるのかという疑問はあるが、どちらかと言えばソルはそちら寄りでもあるため……まだ自分が上手く制御出来てない件に関しては、ある程度納得は出来た。
だが、それでもまだ、ソルの心の重く残り続けている不安は消えない。
「………………」
「まだ、悩みや不安が消えた訳じゃなさそうだな」
「そうだな……この先、狂気を上手くコントロールしたとしても、ルーナとの連携が……上手くいく保証は、ないだろ」
戦況を変えられる一手。
それは実戦でも実感できており、否定したくても出来ない。
「…………うちは、基本的にフルアタッカーだから、その辺りはあまり気にしてないが……タッグを組んでるとはいえ、お前が前衛でルーナが後衛なのは間違いないだろ」
「? そりゃ勿論」
「前衛二人のタッグとなれば、片方のみが身体能力が向上し、荒々しい戦いになったら困ると思うが……前衛と後衛のタッグなら、前衛であるお前はそこまで連携に関して気にしなくても良いんじゃないか」
「……は?」
目の前の人間は、自分にアドバイスを伝えてくれている。
それは……なんとなく解る。
解るのだが、それはこれまでソルが悩み続けていた理由に対し、そんな事悩むなんて無意味じゃね? というアドバイスだった。
悩みそのものを否定され、感情がぐちゃぐちゃになりかけるも、大きな深呼吸を一回、二回……三回行い、冷静さを取り戻した。
「ふぅーーーーー……それは、どういうことなの」
「前衛と後衛のタッグで戦うってことは、基本的に後衛の人が前衛の人をサポートするのが一般的だろ」
「だから、前衛がどう動こうが勝手ってことかい」
「完全な後衛の人間とタッグを組んだことがないから解らないが、前衛は後衛からあまり離れすぎない。守らなければならない時は、攻めよりもそっちを優先する。それが頭に入ってれば、問題無いんじゃないか」
本人も口にしてる通り、アラッドは完全な後衛職の人間とタッグを組んで戦った事がない。
そんな人間が語られたところで、こいつは何を言ってるんだと……一度冷静になったことで怒りこそ湧き上がらないが、もやもやが消えない。
「お前らのことを細かくは知らないが、一番火力があるのはお前だろ」
「…………そうだな」
「それなら、パーティーの花形はお前だ。それなら、もうちょいエゴイストになっても良いと思うぞ」
「エゴイスト…………今でも、迷惑掛けてるルーナに、何かを頼むのか」
「これから先、度々狂気が暴走するかもしれない、これまで以上に動きが荒々しくなるかもしれない。そうやって伝えておくだけど、ルーナもどうサポートすれば良いのか見えてくるだろ」
アラッドの中で、ソルだけではなくルーナからも嫌われていく自覚はあるが、アラッドはルーナの事を割と高く評価していた。
なので、それだけの技量があると思っている。
「というか、お前の相方はお前が何かを頼んだだけで、ふざけんなって怒鳴り散らかして、全く理解しようとしてくれないほど、心が狭い人間なのか?」
「っ!!! そんな訳ないだろ!!!!!」
「なら、頼み込んでみろよ。お前も理解してるとは思うが、扱えれば狂化を劣勢を覆せる切り札になる。ただ、それだけ優秀なスキルでも、使い手が向き合わなければ宝の持ち腐れで終わるぞ」
伝えたい事は伝え終えた。
そう言い、アラッドは自身のテントへと戻った。
「……腹を割って、か」
ほんの少しだけ夜風に当たった後、ソルも自身の宿へと戻り、眠りについた。
「はっ!? いや、それは今の話と、関係ないだろ」
「別に正直に答えたところで、怒りはしない。いきなり殴りかかったりもしない」
「…………あぁ、そうだな。嫌いだよ」
本当に正直に答えたソルに対し、ただ小さく笑うだけで、アラッドは起こりも殴りもしなかった。
「そうだろうな。その感情自体にどうこう言うつもりはないが、それが……狂化を、狂気をコントロールする足枷になってるかもしれないな」
「? どういう、ことだ」
「先に言っておくが、狂化というスキルは俺以外にも持っている人間はいる。特別珍しいスキルというわけでもない。だからこそ、お前は俺と被ってるから、なんて思いを持ちながら使うべきじゃない」
「切り分けて考えろ、ということか」
本当にそれとこれは関係があるのか? とツッコミたいところだが、ソルが狂化というスキルを使う度に……アラッドの存在がチラついているのは事実だった。
「そうだ。狂気、と聞けば聞こえは悪いかもしれないが、それは人によって異なるだろう。誰かを守る、何かを成し遂げる、何かを解明する……その思いを突き詰めていけば、それもある種の狂気と言える」
「…………」
解るような解らない様な感覚であるも、ソルはひとまずアラッドの話を聞き続けた。
「お前の狂気は、お前だけのものだ。お前の狂気に、俺は関係無い。そこを認めるところから始めるべきかもな」
「私の狂気は、私だけの物…………」
結局は気の持ちよう。
本当にそんな精神性、根性でコントロール出来るようになるのかという疑問はあるが、どちらかと言えばソルはそちら寄りでもあるため……まだ自分が上手く制御出来てない件に関しては、ある程度納得は出来た。
だが、それでもまだ、ソルの心の重く残り続けている不安は消えない。
「………………」
「まだ、悩みや不安が消えた訳じゃなさそうだな」
「そうだな……この先、狂気を上手くコントロールしたとしても、ルーナとの連携が……上手くいく保証は、ないだろ」
戦況を変えられる一手。
それは実戦でも実感できており、否定したくても出来ない。
「…………うちは、基本的にフルアタッカーだから、その辺りはあまり気にしてないが……タッグを組んでるとはいえ、お前が前衛でルーナが後衛なのは間違いないだろ」
「? そりゃ勿論」
「前衛二人のタッグとなれば、片方のみが身体能力が向上し、荒々しい戦いになったら困ると思うが……前衛と後衛のタッグなら、前衛であるお前はそこまで連携に関して気にしなくても良いんじゃないか」
「……は?」
目の前の人間は、自分にアドバイスを伝えてくれている。
それは……なんとなく解る。
解るのだが、それはこれまでソルが悩み続けていた理由に対し、そんな事悩むなんて無意味じゃね? というアドバイスだった。
悩みそのものを否定され、感情がぐちゃぐちゃになりかけるも、大きな深呼吸を一回、二回……三回行い、冷静さを取り戻した。
「ふぅーーーーー……それは、どういうことなの」
「前衛と後衛のタッグで戦うってことは、基本的に後衛の人が前衛の人をサポートするのが一般的だろ」
「だから、前衛がどう動こうが勝手ってことかい」
「完全な後衛の人間とタッグを組んだことがないから解らないが、前衛は後衛からあまり離れすぎない。守らなければならない時は、攻めよりもそっちを優先する。それが頭に入ってれば、問題無いんじゃないか」
本人も口にしてる通り、アラッドは完全な後衛職の人間とタッグを組んで戦った事がない。
そんな人間が語られたところで、こいつは何を言ってるんだと……一度冷静になったことで怒りこそ湧き上がらないが、もやもやが消えない。
「お前らのことを細かくは知らないが、一番火力があるのはお前だろ」
「…………そうだな」
「それなら、パーティーの花形はお前だ。それなら、もうちょいエゴイストになっても良いと思うぞ」
「エゴイスト…………今でも、迷惑掛けてるルーナに、何かを頼むのか」
「これから先、度々狂気が暴走するかもしれない、これまで以上に動きが荒々しくなるかもしれない。そうやって伝えておくだけど、ルーナもどうサポートすれば良いのか見えてくるだろ」
アラッドの中で、ソルだけではなくルーナからも嫌われていく自覚はあるが、アラッドはルーナの事を割と高く評価していた。
なので、それだけの技量があると思っている。
「というか、お前の相方はお前が何かを頼んだだけで、ふざけんなって怒鳴り散らかして、全く理解しようとしてくれないほど、心が狭い人間なのか?」
「っ!!! そんな訳ないだろ!!!!!」
「なら、頼み込んでみろよ。お前も理解してるとは思うが、扱えれば狂化を劣勢を覆せる切り札になる。ただ、それだけ優秀なスキルでも、使い手が向き合わなければ宝の持ち腐れで終わるぞ」
伝えたい事は伝え終えた。
そう言い、アラッドは自身のテントへと戻った。
「……腹を割って、か」
ほんの少しだけ夜風に当たった後、ソルも自身の宿へと戻り、眠りについた。
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