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九百二話 世界は広い、けど
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「俺は、今のところ特に婚約とか結婚とか、そういうのは全く考えてないんだよ」
「そ、そう、か…………」
ガルーレの「こう見ると、アラッドとフローレンス様って、新婚夫婦に見えなくもないよね」という言葉が発端となり、ソルやルーナの怒りを爆発してしまった。
だが、アラッドは直ぐにそのつもりはないと、何故ならばという理由をしっかり説明した。
自分が仮にそういう関係になろうものなら、多くの令息たち……はたまた王子が黙ってないと。
俺はそんな連中の相手をするのは嫌だ。
それに、そもそも今はそういう事に一切考えてないと……そこまで言われてしまうと、ソルたちの怒りも静まるというもの。
「確かに、アラッドは生涯冒険者! みたいな事言ってたもんね」
「二人も似た様なものだろ。幾つまでっていう具体的なあれは決めてないが、それでも……これから先、十年はそういう事に関わらないだろうな」
(ふむ…………多くの令嬢や女性騎士たちにとって、悲しいお知らせといったところか)
アラッドは、貴族としての品性云々は置いておき、騎士という王道の道には進まなかったが、それでも冒険者という
道に進み、若くして成功している。
そして、貴族たちにとって、確かに品性という要素は大事である。
ただ、やはり女性としては……自分を守ってくれる強さを持つ雄に惹かれるところがある。
それはそこら辺の男たちよりもよっぽど強い女性騎士であっても、そこら辺の男よりも強い自分……よりも強い雄で、人格も破綻していないとなれば、やはり惹かれる。
そういう意味では、アラッドは実力だけではなく財力まであるため、実はそういった憧れを抱いている令嬢や騎士が少なくなった。
(……もしかして、あの人のことを思い出してるのかな)
アラッドが普段通りではなく、何かを思い出す様な表情を浮かべているのを見て、以前アラッドが話してくれた初めての女性の事を思い出した。
(というか、割とこの話って……スキャンダルとまではいかなくても、かなりのビッグニュースなのかな?)
アラッドは一応侯爵家の令息であるが、対してアラッドの初めての女性となったマジットは、平民出身の女性である。
合体する…………その点だけ見れば、特におかしいことはない。
貴族の令息たちがお忍びで娼館に通うことは珍しくなく、王族の中にもこっそり……絶対にバレないように変装して
通う者もいる。
だが、マジットは娼館に勤務している嬢ではなく、冒険者ギルドの職員として勤務している元Bランク冒険者。
スティームの勝手な見解ではあるが、アラッドの中で彼女の存在はかなり大きいのでは? と思っている。
「十年ね~~~~~。十年もあったら、先にシルフィーちゃんや、アッシュ君の方が結婚したりするんじゃない?」
「そうだな……その可能性は十分あるだろうな」
「それで、まだシルフィーちゃんの相手は、親子揃って見定めるつもりなの?」
「当然だろ。前にも話したと思うが、俺や父さんに勝てとは言わない。いや、勝てるほどの実力を持っているなら、それに越したことはないが……あまり多くはないだろう」
フールは既に肉体的には全盛期を過ぎているが、それでもレベルによる恩恵は消えておらず、技術に関しては一切錆びていない。
そして、アラッドは肉体に関しては、まだまだこれから全盛期である。
世の中は広く、国を越えてきてくれなければ、スティームの様な同世代の強者と出会えなかった。
なので、世界の何処かに自分の様に転生者という生まれながらのアドバンテージがあるような人間ではなく、純粋で桁違いの才を、強さを持つ者がいてもおかしくないと、アラッドは思っている。
ただ……本当に世界は広く、そういった男とシルフィーが巡り合えるかは、また別問題である。
「まぁ、アッシュに関しては本当に十年後ぐらいまでには良い相手を見つけて……いや、無理か。良い女性が、アッシュの事を見つけてくれるのを祈るしかないか」
あの基本的に錬金術の虫であるアッシュに、兄たちや両親を安心させられる女性を見つけてほしいという願いは、まず敵わないと断言出来てしまう。
「というか、今そういうのはいいんだよ」
そう言いながら、アラッドは再び先程購入した物とは別の野菜を眺め始めた。
(十年……十五年、二十年ぐらい待ってみるのも、ありかもしれませんね)
フローレンスは特に結婚願望はなかった。
両親は当然の様に結婚してほしいとは思っているが、本人にはその願望がない。
ここ最近、更にその気持ちは大きくなっており……当然、理由は目の前にいる同じ貴族の令息。
アラッドとなら、しても良いと思える。
フローレンスはフローレンスで、世界は広いと認めている。
ただ、この令嬢は令嬢で……バーサーカーという訳ではないが、ある程度の強さを伴侶に求める。
それこそ……契約している光の精霊、ウィリアスと共に戦っても問題無いレベルの強さを。
十年後という時点で、貴族令嬢としての結婚適齢期は完全に過ぎている。
両親からすれば阿鼻叫喚ものであるが、アラッドにその気が起きないのであれば、それはそれで仕方ないと……他に気が惹かれる男性が現れれば別だが、現れなければ……生涯独身でも構わないと思っていた。
「そ、そう、か…………」
ガルーレの「こう見ると、アラッドとフローレンス様って、新婚夫婦に見えなくもないよね」という言葉が発端となり、ソルやルーナの怒りを爆発してしまった。
だが、アラッドは直ぐにそのつもりはないと、何故ならばという理由をしっかり説明した。
自分が仮にそういう関係になろうものなら、多くの令息たち……はたまた王子が黙ってないと。
俺はそんな連中の相手をするのは嫌だ。
それに、そもそも今はそういう事に一切考えてないと……そこまで言われてしまうと、ソルたちの怒りも静まるというもの。
「確かに、アラッドは生涯冒険者! みたいな事言ってたもんね」
「二人も似た様なものだろ。幾つまでっていう具体的なあれは決めてないが、それでも……これから先、十年はそういう事に関わらないだろうな」
(ふむ…………多くの令嬢や女性騎士たちにとって、悲しいお知らせといったところか)
アラッドは、貴族としての品性云々は置いておき、騎士という王道の道には進まなかったが、それでも冒険者という
道に進み、若くして成功している。
そして、貴族たちにとって、確かに品性という要素は大事である。
ただ、やはり女性としては……自分を守ってくれる強さを持つ雄に惹かれるところがある。
それはそこら辺の男たちよりもよっぽど強い女性騎士であっても、そこら辺の男よりも強い自分……よりも強い雄で、人格も破綻していないとなれば、やはり惹かれる。
そういう意味では、アラッドは実力だけではなく財力まであるため、実はそういった憧れを抱いている令嬢や騎士が少なくなった。
(……もしかして、あの人のことを思い出してるのかな)
アラッドが普段通りではなく、何かを思い出す様な表情を浮かべているのを見て、以前アラッドが話してくれた初めての女性の事を思い出した。
(というか、割とこの話って……スキャンダルとまではいかなくても、かなりのビッグニュースなのかな?)
アラッドは一応侯爵家の令息であるが、対してアラッドの初めての女性となったマジットは、平民出身の女性である。
合体する…………その点だけ見れば、特におかしいことはない。
貴族の令息たちがお忍びで娼館に通うことは珍しくなく、王族の中にもこっそり……絶対にバレないように変装して
通う者もいる。
だが、マジットは娼館に勤務している嬢ではなく、冒険者ギルドの職員として勤務している元Bランク冒険者。
スティームの勝手な見解ではあるが、アラッドの中で彼女の存在はかなり大きいのでは? と思っている。
「十年ね~~~~~。十年もあったら、先にシルフィーちゃんや、アッシュ君の方が結婚したりするんじゃない?」
「そうだな……その可能性は十分あるだろうな」
「それで、まだシルフィーちゃんの相手は、親子揃って見定めるつもりなの?」
「当然だろ。前にも話したと思うが、俺や父さんに勝てとは言わない。いや、勝てるほどの実力を持っているなら、それに越したことはないが……あまり多くはないだろう」
フールは既に肉体的には全盛期を過ぎているが、それでもレベルによる恩恵は消えておらず、技術に関しては一切錆びていない。
そして、アラッドは肉体に関しては、まだまだこれから全盛期である。
世の中は広く、国を越えてきてくれなければ、スティームの様な同世代の強者と出会えなかった。
なので、世界の何処かに自分の様に転生者という生まれながらのアドバンテージがあるような人間ではなく、純粋で桁違いの才を、強さを持つ者がいてもおかしくないと、アラッドは思っている。
ただ……本当に世界は広く、そういった男とシルフィーが巡り合えるかは、また別問題である。
「まぁ、アッシュに関しては本当に十年後ぐらいまでには良い相手を見つけて……いや、無理か。良い女性が、アッシュの事を見つけてくれるのを祈るしかないか」
あの基本的に錬金術の虫であるアッシュに、兄たちや両親を安心させられる女性を見つけてほしいという願いは、まず敵わないと断言出来てしまう。
「というか、今そういうのはいいんだよ」
そう言いながら、アラッドは再び先程購入した物とは別の野菜を眺め始めた。
(十年……十五年、二十年ぐらい待ってみるのも、ありかもしれませんね)
フローレンスは特に結婚願望はなかった。
両親は当然の様に結婚してほしいとは思っているが、本人にはその願望がない。
ここ最近、更にその気持ちは大きくなっており……当然、理由は目の前にいる同じ貴族の令息。
アラッドとなら、しても良いと思える。
フローレンスはフローレンスで、世界は広いと認めている。
ただ、この令嬢は令嬢で……バーサーカーという訳ではないが、ある程度の強さを伴侶に求める。
それこそ……契約している光の精霊、ウィリアスと共に戦っても問題無いレベルの強さを。
十年後という時点で、貴族令嬢としての結婚適齢期は完全に過ぎている。
両親からすれば阿鼻叫喚ものであるが、アラッドにその気が起きないのであれば、それはそれで仕方ないと……他に気が惹かれる男性が現れれば別だが、現れなければ……生涯独身でも構わないと思っていた。
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