スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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八百九十六話 欲しいのは……

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「「「「「「…………」」」」」」

なんとか吹き出さず、マナー最悪な光景をフローレンスに見せずに済んだソルたち。

ただ……リアクションが追い付かない。そんな顔をして固まってしまっていた。

「ふ、ふっふっふ。寒さが増す時期に、寒い場所へ向かって……雪竜と対面したとは…………話から推察する限り、その雪竜は普通の雪竜ではないのでしょう」

「そうなんですよ~。元々特別な雪竜がいるって噂だったんですけど、会ってみたら人の言葉を喋れて、もうそこら辺の冒険者より紳士的な対応をしてくれましたね!!」

「雪竜は基本的にBランクですが、僕たちが出会った雪竜は、おそらくAランククラスの実力を持っていました」

まだまだ自分は未熟だと思っているスティームではあるが、アラッドと出会って共に行動するようになってから、Aランクモンスターと遭遇する機会があり、それもあってBランクモンスターとAランクモンスターの差を、なんとなく解るようになっていた。

「なるほど。そういう事があったのですね……? アラッド、渋い顔を浮かべてどうしたのですか」

「いや、まぁ……雪竜とは関係無いが、してやられた事を思い出してな」

「してやられた、ですか……アラッドがですか?」

物理的な実力だけではなく、アラッドは思考力も並ではないと思っているフローレンスにとって、それは予想外の内容だった。

「そうだよ」

「あぁ……は、はは。そんな事も、あったね」

アラッドがなんの事を言っているのか思い出したスティームの口から、乾いた笑いが零れた。

確かに、してやられたというアラッドの表現は間違ってはいない。
だが、その後アラッドの取った行動を知れば、誰であっても手を出してはいけない者に手を出してしまったと、後悔すると断言出来る。

「まぁ、それはどうでも良いだろ。とにかく、俺たちはウィラーナの雪山に生息していた雪竜のグレイスさんと出会って、色々と教えてもらったんだよ」

「色々教えてもらって、そこからカルトロッサに行って、アラッドのお父さんが倒した暴風竜の息子の風竜を倒したんですよ。あっ、その時にヴァジュラとも出会たんです!!」

「暴風竜の息子、ですか……そういえば、以前にアラッドのお兄さんがソロで討伐したとお聞きしましたが」

「ん? あぁ、そうだな。ギーラス兄さんが一人で討伐したよ」

自慢げな表情を浮かべている事に関してはスルーし、フローレンスは話しを続ける。

「……その風竜も、同じくワイバーンを従えていたのですか?」

「あぁ。そいつはギーラス兄さんが討伐した風竜、ストールとは違ってワイバーンに狩りを教えてたんだ」

「狩り方を、ですか…………それは、恐ろしいですね」

フローレンスは前衛で戦う騎士だが、狩猟的な戦い方がどういった戦い方なのかは理解している。

だからこそ、一般的に強い戦闘力を持っているワイバーンが狩りの仕方を覚えたという事実に……決して小さくない衝撃を受けた。

「そうだろ。その際、三人で風竜の奴が一応同じ種のワイバーンだけじゃなく、他のモンスターにも教えて、支配下に置いたら……本当に恐ろしいなって話してたんだよ」

「今回、少し形は違うけど、似た様な恐ろしさを感じたよね」

話し合ってる内容が全て当たっていると仮定した場合、闇竜は狩りの方法などは教えていないが、単純に闇の力を付与して他種族のモンスターを強化している。

完全に支配下に置いているのか否かに関しては、まだ正確に解っていないものの、アラッドたちは支配下に置いていると考えていた。

「とりあえず、今後は闇竜の発見、討伐もそうだが……闇の力を持つモンスターが何体いるのか、それを確認するのも重要な問題だと俺は思う」

「そうですね……それで、この話に関してはそこまでですか?」

「………………」

今回の件に関して、アラッドは風竜ルストの件よりも危険度が高いと思っている。

スティームが、ガルーレが……クロやファル、ヴァジュラがいれば問題無い。
ただ、それでも万が一を感じさせるほど、今回の討伐に危険度を感じ始めたため、フローレンスと共に探索するのはありだと思った。

しかし……ほしい戦力はフローレンス一人であり、他の面子に関しては正直必要ない。

決して弱い訳ではないが、欲を言えばソロでBランクモンスターを倒せる戦力好ましく……悪い言い方をすれば、緊急時に守らなければならない足手纏いが増えてしまう。

自身の事を嫌っていると、身を持って解っているソルとルーナであっても、二人が本当に死にそうになれば、アラッドは動く。

「……あぁ、そうだな。また追加で情報が解れば、その都度伝える」

「分かりました。私たちの方も何かしらの情報が入れば伝えます」

その後は闇竜とは関係無い話で盛り上がり、ソルたちの内……数名が満腹感と酔いで潰れてしまった。





「お、お会計の金額、こ、こちらに、なります」

「……分かりました」

従業員はぷるぷると震えながら、あのアラッドに今回の食事で積み重なった金額を提示する。

その金額を見たアラッドは……いたって冷静な表情で確認し、懐から白金貨と金貨を取り出し、丁度ピッタリ……クロたちも含めて計十三人分の金額を支払った。
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