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八百九十二話 手は止まらない
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熱い、だけではなく……生物としての本能が、嫌悪感を感じていた。
だが……強い。
ヴァジュラにとっては、サラマンダーという生物が放つ攻撃に熱さだけではなく嫌悪感が混ざっていようとも、強ければ関係無い。
「ウキャオッ!!!!!!!!」
伸縮自在の棒を自由自在に操り、飛来する闇が混ざった攻撃を弾き、潰し、かき消す……それだけでは止まらず、気分が最高潮に達したヴァジュラは……無意識に、自身の得物である棒に炎を纏った。
「「「っ!!!!」」」
その光景を観た瞬間、アラッドたち三人の表情に驚きが生まれ……現在ヴァジュラと戦闘中のサラマンダーは苦い表情を浮かべた。
ヴァジュラがサラマンダーの闇が混ざった炎に嫌悪感を抱いたように、サラマンダーもヴァジュラが棒に纏った金色の炎に対し、本能的に嫌悪感を感じた。
「ッ!!! ッ、ァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」
まだ、後方には強大な力を持つ人間とモンスターがいる。
それを忘れてはいないが、サラマンダーは残っている魔力を全て消費するつもりで、渾身のブレスを放った。
「チッ!! 流石だな!!!!」
そのブレスを見た瞬間、アラッドはサラマンダーに賞賛を送りながら、突風を放つ準備をした。
サラマンダーが放った渾身のブレスは、ヴァジュラが弾けばなんとか出来る範囲のものではなく、ヴァジュラが無事であっても……後方にいるアラッドたちにまで被害が及ぶ可能性があった。
「ゥキャアアアアアアアアッ!!!!!」
ガルーレが、アラッドたちはなんとかする。
そう信頼してるからこそ、ヴァジュラは金色の炎を纏った棒を前に突き出し、そのまま突貫。
サラマンダーが放つブレスは、当初よりも黒い部分が……闇が広まっており、間違いなく火力が上昇していた。
にもかかわらず、ヴァジュラは一切臆することなく突き進み続けた。
「ウキャキャ」
「ッ!!?? っ!!!!????」
結果、ヴァジュラは闇炎のブレスを文字通り突き破り、所々白毛を焦がしながら……サラマンダーの前に現れた。
そして思いっきり棒を脳天に振り下ろされたサラマンダー。
「…………」
「……ウキャオ!!!!!!」
サラマンダーがピクリとも動かなくなったのを確認し、ヴァジュラは拳を天高く突き出し、勝ち名乗りを上げた。
「お疲れ、ヴァジュラ!!!」
「ウキャキャ!!」
頑張った従魔に飛びつき、ガルーレはヴァジュラを労う。
「本当にお疲れ様、ヴァジュラ。熱かったんじゃないか?」
「ウキャキャ、ウキャッキャッキャ!!!」
「……寧ろ、丁度良い熱さだった、か?」
「ウキャ!!!」
その通りだと何度も頷くヴァジュラ。
(丁度良い熱さだったか……解ってはいたことだが、やっぱり強いな)
改めてヴァジュラは強いと、紛れもない猛者だと感じた。
「そういえば、まだ食ってなかっただろ。失った血は、肉食って補充するのが一番だろ」
「ウキャキャ!!!」
丁度良い熱さで丁度良い運動を行ったこともあり、ヴァジュラは腹が四分目程まで下がっていた。
その為、たった数枚程度で満足出来る訳がなく、アラッドは何枚も何枚も焼き続け……足りなくなればまた肉を取り出して捌き、焼いて焼いて焼きまくるという作業の繰り返し。
その結果…………ガルーレが討伐したラバーゴートの肉は、その日のうちに全て消費されてしまった。
「うん、美味い!!!!」
闇の魔力を持つサラマンダーに襲撃を受けてから、九時間程が経ち……朝を迎えたアラッドたち。
朝食のメインは……先日の夜、ヴァジュラがソロで仕留めたサラマンダーの肉だった。
「だな。さすがBランクモンスターの肉だ」
「…………味は、問題無さそうだね」
「何か疑ってるのか、スティーム?」
「まぁ……普通のサラマンダーじゃないからね」
と言いながらも、スティームはサラマンダーの焼肉を堪能していた。
「それは、確かにそうだな……やっぱり、俺たちの標的である闇竜が、他者に力を与えているっていうのが妥当か」
「そうだね。サラマンダーの戦いを観てた限り、闇の力を付与されても、直ぐに扱いこなせる訳ではなさそうだね」
「……逆に言えば、闇の力を付与されてから時間が経ってる個体は、闇の力を扱い慣れてるってことだよね」
「俺たちの予想通りなら、な」
サラマンダーの肉は美味い。
それは変わらないが、ガルーレも含めて三人の表情は決して明るいとは言えなかった。
先日のサラマンダー戦、ヴァジュラは結果的に重症と言える傷は負わなかったが、それでも複数の傷を負い、白毛がところどころ焦げていた。
「あれだよね。仮に闇竜がAランクに……暗黒竜? みたいなやつに進化してなくても、Bランクのサラマンダーに力を付与してたって事は、Bランクの中でもトップレベルに強いってことだよね」
「……利害関係が一致したからこそ、手を借りたっていう可能性も否定出来ないが…………下手に淡い希望を持たない方が良いだろうな」
沈黙が流れる。
誰も喋らない……そんな時間が続くも、全員サラマンダーの焼肉だけは食べ続けた。
だが……強い。
ヴァジュラにとっては、サラマンダーという生物が放つ攻撃に熱さだけではなく嫌悪感が混ざっていようとも、強ければ関係無い。
「ウキャオッ!!!!!!!!」
伸縮自在の棒を自由自在に操り、飛来する闇が混ざった攻撃を弾き、潰し、かき消す……それだけでは止まらず、気分が最高潮に達したヴァジュラは……無意識に、自身の得物である棒に炎を纏った。
「「「っ!!!!」」」
その光景を観た瞬間、アラッドたち三人の表情に驚きが生まれ……現在ヴァジュラと戦闘中のサラマンダーは苦い表情を浮かべた。
ヴァジュラがサラマンダーの闇が混ざった炎に嫌悪感を抱いたように、サラマンダーもヴァジュラが棒に纏った金色の炎に対し、本能的に嫌悪感を感じた。
「ッ!!! ッ、ァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」
まだ、後方には強大な力を持つ人間とモンスターがいる。
それを忘れてはいないが、サラマンダーは残っている魔力を全て消費するつもりで、渾身のブレスを放った。
「チッ!! 流石だな!!!!」
そのブレスを見た瞬間、アラッドはサラマンダーに賞賛を送りながら、突風を放つ準備をした。
サラマンダーが放った渾身のブレスは、ヴァジュラが弾けばなんとか出来る範囲のものではなく、ヴァジュラが無事であっても……後方にいるアラッドたちにまで被害が及ぶ可能性があった。
「ゥキャアアアアアアアアッ!!!!!」
ガルーレが、アラッドたちはなんとかする。
そう信頼してるからこそ、ヴァジュラは金色の炎を纏った棒を前に突き出し、そのまま突貫。
サラマンダーが放つブレスは、当初よりも黒い部分が……闇が広まっており、間違いなく火力が上昇していた。
にもかかわらず、ヴァジュラは一切臆することなく突き進み続けた。
「ウキャキャ」
「ッ!!?? っ!!!!????」
結果、ヴァジュラは闇炎のブレスを文字通り突き破り、所々白毛を焦がしながら……サラマンダーの前に現れた。
そして思いっきり棒を脳天に振り下ろされたサラマンダー。
「…………」
「……ウキャオ!!!!!!」
サラマンダーがピクリとも動かなくなったのを確認し、ヴァジュラは拳を天高く突き出し、勝ち名乗りを上げた。
「お疲れ、ヴァジュラ!!!」
「ウキャキャ!!」
頑張った従魔に飛びつき、ガルーレはヴァジュラを労う。
「本当にお疲れ様、ヴァジュラ。熱かったんじゃないか?」
「ウキャキャ、ウキャッキャッキャ!!!」
「……寧ろ、丁度良い熱さだった、か?」
「ウキャ!!!」
その通りだと何度も頷くヴァジュラ。
(丁度良い熱さだったか……解ってはいたことだが、やっぱり強いな)
改めてヴァジュラは強いと、紛れもない猛者だと感じた。
「そういえば、まだ食ってなかっただろ。失った血は、肉食って補充するのが一番だろ」
「ウキャキャ!!!」
丁度良い熱さで丁度良い運動を行ったこともあり、ヴァジュラは腹が四分目程まで下がっていた。
その為、たった数枚程度で満足出来る訳がなく、アラッドは何枚も何枚も焼き続け……足りなくなればまた肉を取り出して捌き、焼いて焼いて焼きまくるという作業の繰り返し。
その結果…………ガルーレが討伐したラバーゴートの肉は、その日のうちに全て消費されてしまった。
「うん、美味い!!!!」
闇の魔力を持つサラマンダーに襲撃を受けてから、九時間程が経ち……朝を迎えたアラッドたち。
朝食のメインは……先日の夜、ヴァジュラがソロで仕留めたサラマンダーの肉だった。
「だな。さすがBランクモンスターの肉だ」
「…………味は、問題無さそうだね」
「何か疑ってるのか、スティーム?」
「まぁ……普通のサラマンダーじゃないからね」
と言いながらも、スティームはサラマンダーの焼肉を堪能していた。
「それは、確かにそうだな……やっぱり、俺たちの標的である闇竜が、他者に力を与えているっていうのが妥当か」
「そうだね。サラマンダーの戦いを観てた限り、闇の力を付与されても、直ぐに扱いこなせる訳ではなさそうだね」
「……逆に言えば、闇の力を付与されてから時間が経ってる個体は、闇の力を扱い慣れてるってことだよね」
「俺たちの予想通りなら、な」
サラマンダーの肉は美味い。
それは変わらないが、ガルーレも含めて三人の表情は決して明るいとは言えなかった。
先日のサラマンダー戦、ヴァジュラは結果的に重症と言える傷は負わなかったが、それでも複数の傷を負い、白毛がところどころ焦げていた。
「あれだよね。仮に闇竜がAランクに……暗黒竜? みたいなやつに進化してなくても、Bランクのサラマンダーに力を付与してたって事は、Bランクの中でもトップレベルに強いってことだよね」
「……利害関係が一致したからこそ、手を借りたっていう可能性も否定出来ないが…………下手に淡い希望を持たない方が良いだろうな」
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