スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
893 / 1,058

八百九十一話 ナイスな判断

しおりを挟む
「黒炎になりかけてないならよし……とは、言えないよね」

「そう、だな……純粋な火力は、上がってると思う。ただ、ヴァジュラも炎は使える。それを考えれば、火に対する耐性はあるはずだ」

実際のところ、ややヴァジュラが圧され気味ではあるものの、それでも今だ一方的な戦いにはなっていない。

「ん~~~、ねぇアラッド。火以外の属性を持つサラマンダーって、そう簡単に現れないよね」

「現れない……というか、仮に現れるにしても、どうやって生まれるのか見当がつかない」

あり得ない、そんな事無理だと決めつけるのは早計であるのは解っている。

ただ、様々な可能性を考えるも、これかもしれない! と思える内容が思い付かない。

「……アラッド」

「なんだ、スティーム」

「強い力を持っているモンスターが、サラマンダーに自分の力の……一部? を付与した可能性は……ないかな」

「付与……そうか、付与か」

それならばあり得そうだと思ったアラッド。

だが、仮にそれが事実であるとするならば、一つ問題が発生する。
サラマンダーはBランクモンスターであり、世間一般的には十分強者に位置する存在。

それほどの存在に自身の力を付与する、サラマンダーが授かろうとした事実を考えると……バックにはどういったモンスターが潜んでいるのかという問題が浮かび上がる。

「単純に上位種と考えれば……俺とクロがこの前戦った轟炎竜か。でも、火と火なら付与するものは何もないか」

「もしかしなくても、私たちやフローレンスさんが狙ってる闇竜がAランクにランクアップしちゃってる感じ?」

「「………………」」

ガルーレがサラッと口にした言葉に対し、アラッドとスティームは直ぐに肯定も否定も口に出来なかった。

ソルヴァイパーが白雷を会得する瞬間、死にかけの火竜がもう一体の火竜を食らうことでAランクの轟炎竜へと進化した光景などを生で見た二人としては、肯定したくはないが……やはり安易に否定は出来なかった。

「あれ、なんか二人共渋そうな顔だね」

「……まぁな」

「なんで? スティームはともかく、アラッドなら凄い喜びそうって思ったけど」

アラッドは間違いなく自分よりの人間だと思っているガルーレにとって、今現在アラッドが渋い表情を浮かべているのは、意外過ぎると少し驚いていた。

「闇竜に関して色々と知ってる訳ではないけど、ただ……強いっていう予想よりも、厄介ってイメージが先に浮かぶんだよ」

「僕も同じかな」

スティーム、ガルーレの予想が当たっていれば、Aランクに進化した闇竜はただAランクという災害に近い戦闘力を手に入れただけではなく、他のモンスターに自身の力の一部を付与し、支配下に置くことが出来る。

(でも、それなら昼間ガルーレが戦ったラバーゴートはなんで闇の魔力? を持っていなかったんだ……突進、かち上げの威力が増加することを考えれば…………単純に出会ってなかった、ってことか?)

様々な可能性が頭の中に思い浮かび、どんどんどんどんアラッドの眉間にしわが寄っていく。

「アラッド、凄い顔になってるよ」

「あぁ…………まぁ、そうだな。悩み過ぎも良くはないな」

「そうだよ。なにも、アラッド一人だけで背負う必要はないんだから」

スティームの言葉を受け、アラッドは少し心が軽くなった気がした。

「だね~~。でもさ、でもさ。そうなると、もしかしたらフローレンスさんたちとも連携しておいた方が良い感じなる?」

「…………」

スティームの気遣い溢れる言葉を受け、表情が柔らかくなった筈だったが、また一気に渋い表情に戻ってしまった。

「あっはっは!!! もう~~~、笑わせないでよアラッド~~~」

「仕方ないだろ…………連携云々は別にして、一応闇竜にそういう力があるかもしれないという報告だけはしておいた方が良さそうだな」

「それはそうだね。それにしても、闇竜は……見境なく、自身の力を付与してる訳ではないのかな」

「……かもしれないな。どれだけ力量を持っているか、力を付与した後に自分の支配下に置けるのか……そういった事を考えてるかもしれないな」

BランクからAランクに昇格しているか否かはさておき、自身の力を付与する……それだけでも十分に厄介な能力である。

(仮に闇竜がAランクに進化していたら……ここに、フローレンスを派遣した上の人たちはナイス判断を下したと言えるな)

アラッドからすればまさかの再開ではあったが、アンドーラ山岳の最寄り街であるゴルドスのことなどを考えれば、間違いなく弱点を突けるフローレンスを派遣するのはベストな判断と言えた。

因みに……これだけサラマンダーに闇の力を付与したであろう存在に関してあれこれ話、多少の不安を感じているアラッドたちだが……現在、その闇の力付与されたであろうサラマンダーと戦闘しているヴァジュラに関しては、誰一人として心配していなかった。

何故なら……全員、ヴァジュラが乾いた笑みではなく、本気でバチバチに熱い戦い行っているからこそ零れてしまう笑みを浮かべていたから。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...