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八百九十話 何の黒?
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「………………」
「クルゥ?」
「……ワゥ」
やや険しい顔をするクロを見て、声を掛けるファル。
そんなファルに対し、クロはサラマンダーを……正確には、サラマンダーが放つ炎を指さした。
『あいつの炎……少しおかしいと思う』
『少しおかしい、ですか…………私にはあまり普通の炎と違いがあるようには思えませんが、クロさんがそう言うという事は……炎以外の属性が、混ざっていると』
『勘が外れてなかったら、多分……何かが混ざってる』
といった感じの会話を行う二体の従魔たち。
ブラックウルフから、Aランクモンスターであるデルドウルフに進化したクロ。
デルドウルフは、大雑把に分類すると闇属性の巨狼。
そんなクロだからこそ、サラマンダーが放つ炎に、僅か異変を感じ取った。
『……まぁでも、赤雷を本気で使ったスティームさんとバチバチに戦り合えたヴァジュラなら、問題無いかな』
『それもそうですね』
敵が強い、もしくは普通ではない。
それはヴァジュラという、ここ最近仲間になった同じ従魔の性格を考えれば、戦闘欲を刺激するスパイスでしかないと、クロとスティームは理解していた。
「ホキャァ…………ホキャキャキャキャキャキャキャキャっ!!!!」
「っ!!!!????」
クロとスティームが考えている通り、まず実際にサラマンダーと戦っているヴァジュラは、敵が放つ炎が普通の炎とは違うと感じ取っていた。
何だかんだで手数は向こうの方がやや多いと感じ、一旦距離を取り…………伸縮効果を持つ棒をフル活用し、小出しのブレスも火の攻撃魔法、炎の爪斬も全て突き落していく。
「ッ、ァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
驚いた。
多数の遠距離攻撃を全て落す目の前の大猿が放つ攻撃に、確かに驚いた。
だが、頭の回転が早く……その突きでは、小出しのブレスはともかく……通常のブレスは防げないだろうと判断。
「ウキャアアアアアアッ!!!!!」
しかし……ヴァジュラにとって、それは想定内の攻撃だった。
不意打ちで渾身のブレスを食らったのであればまだしも、喉の動きなどから、危険なブレスが飛来してくると直ぐに察知し、棒を全力で回転させながら霧散させていく。
熱い、熱い、割と熱い。
既に魔力を纏ってはいるが、それでも割と熱いと感じたヴァジュラ。
魔力を纏ってるのに、これまでの何度も遠距離攻撃を霧散させてきた防御技で防いでるのに、熱さを感じる。
ただ、その熱さはヴァジュラの闘争心を更に熱くさせた。
「ッ!!!!!」
「ホキャッ!!!!!!!!」
ブレスの勢いが弱まった……そう思った瞬間、ヴァジュラは宙に向かって棒を伸ばした。
「っ!? ギイイィ…………」
「ウキャ? ウキャッキャッキャ!!」
ブレスで視界を塞ぎ、敵が防御に手一杯になっている隙を狙い、上から爪撃をブチかまそうとしたサラマンダーだったが、ヴァジュラはその動きを呼んでいた。
攻撃方法が炎爪というところまでは読めていなかったが、それでも自分の視界が炎で覆われている状況を考えれば、次に攻撃してくる場所は真上だと予想を立てていた。
そして、見事に的中させ、炎爪を防ぐことに成功。
上機嫌になったヴァジュラはウキャウキャと笑みを浮かべながら、サラマンダーを煽る。
「…………ッ!!!!!!!!」
次の瞬間、サラマンダーは体の一部だけではなく、全身に炎を纏った。
サラマンダーはヴァジュラ、アラッドたちが思っているよりも頭が回る……思考力を持つ個体。
目の前の大猿だけを相手に出来ていることは、絶好のチャンスだと理解していた。
だからこそ、余力を残して白毛のクソ猿を倒したかった。
しかし……思っていた以上に自身の攻撃を対処されてしまう。
サラマンダーはサラマンダーで今のところヴァジュラからの攻撃で大ダメージを受けてはいないが、それでもこのままでは自身が大猿を殺すイメージが浮かばない。
故に……逃走することはなく、まずは目の前のクソ猿を全力で殺すことにした。
「っ、スティーム。ガルーレ」
「うん……あのサラマンダー、多分だけど、普通じゃないよね」
「だね~~~。もしかして……スティームの赤雷とかと、似てる感じ?」
後方で観戦と警戒をしてる三人も、ようやくクロが感じた違和感に気付いた。
サラマンダーが全身に炎を纏った……その炎はただの炎ではなく、所々に黒さがあった。
「っていうか、もしかして……ギーラスさんと同じ、黒炎?」
ガルーレが零した言葉に対し、二人は否定の言葉を口にしなかった。
何故なら、以前ソルヴァイパーという白蛇が、白雷を会得し……実際に自分たちの前で使うところを見たことがある。
だからこそ、絶対にそれはないと口にはしなかったが……少しして、アラッドはおそらく黒炎ではないと感じた。
「…………いや、あれはおそらく黒炎じゃない」
「じゃあ、なんで所々黒いの?」
「確かに、不完全な黒炎とも捉えられるが、あの黒は……多分、闇の黒だ」
「闇? 闇なら……確かに…………でも、それじゃあ、あのサラマンダーは火属性のドラゴンなのに、闇属性まで持ってるってこと?」
「……それは、どうだろうな。何はともあれ、非常に珍しい個体であるのは間違いない筈だ」
アラッドはここにきて、ようやくサラマンダーに対して鑑定を使用したが、サラマンダーが持つスキルの中に……闇魔法はなかった。
「クルゥ?」
「……ワゥ」
やや険しい顔をするクロを見て、声を掛けるファル。
そんなファルに対し、クロはサラマンダーを……正確には、サラマンダーが放つ炎を指さした。
『あいつの炎……少しおかしいと思う』
『少しおかしい、ですか…………私にはあまり普通の炎と違いがあるようには思えませんが、クロさんがそう言うという事は……炎以外の属性が、混ざっていると』
『勘が外れてなかったら、多分……何かが混ざってる』
といった感じの会話を行う二体の従魔たち。
ブラックウルフから、Aランクモンスターであるデルドウルフに進化したクロ。
デルドウルフは、大雑把に分類すると闇属性の巨狼。
そんなクロだからこそ、サラマンダーが放つ炎に、僅か異変を感じ取った。
『……まぁでも、赤雷を本気で使ったスティームさんとバチバチに戦り合えたヴァジュラなら、問題無いかな』
『それもそうですね』
敵が強い、もしくは普通ではない。
それはヴァジュラという、ここ最近仲間になった同じ従魔の性格を考えれば、戦闘欲を刺激するスパイスでしかないと、クロとスティームは理解していた。
「ホキャァ…………ホキャキャキャキャキャキャキャキャっ!!!!」
「っ!!!!????」
クロとスティームが考えている通り、まず実際にサラマンダーと戦っているヴァジュラは、敵が放つ炎が普通の炎とは違うと感じ取っていた。
何だかんだで手数は向こうの方がやや多いと感じ、一旦距離を取り…………伸縮効果を持つ棒をフル活用し、小出しのブレスも火の攻撃魔法、炎の爪斬も全て突き落していく。
「ッ、ァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
驚いた。
多数の遠距離攻撃を全て落す目の前の大猿が放つ攻撃に、確かに驚いた。
だが、頭の回転が早く……その突きでは、小出しのブレスはともかく……通常のブレスは防げないだろうと判断。
「ウキャアアアアアアッ!!!!!」
しかし……ヴァジュラにとって、それは想定内の攻撃だった。
不意打ちで渾身のブレスを食らったのであればまだしも、喉の動きなどから、危険なブレスが飛来してくると直ぐに察知し、棒を全力で回転させながら霧散させていく。
熱い、熱い、割と熱い。
既に魔力を纏ってはいるが、それでも割と熱いと感じたヴァジュラ。
魔力を纏ってるのに、これまでの何度も遠距離攻撃を霧散させてきた防御技で防いでるのに、熱さを感じる。
ただ、その熱さはヴァジュラの闘争心を更に熱くさせた。
「ッ!!!!!」
「ホキャッ!!!!!!!!」
ブレスの勢いが弱まった……そう思った瞬間、ヴァジュラは宙に向かって棒を伸ばした。
「っ!? ギイイィ…………」
「ウキャ? ウキャッキャッキャ!!」
ブレスで視界を塞ぎ、敵が防御に手一杯になっている隙を狙い、上から爪撃をブチかまそうとしたサラマンダーだったが、ヴァジュラはその動きを呼んでいた。
攻撃方法が炎爪というところまでは読めていなかったが、それでも自分の視界が炎で覆われている状況を考えれば、次に攻撃してくる場所は真上だと予想を立てていた。
そして、見事に的中させ、炎爪を防ぐことに成功。
上機嫌になったヴァジュラはウキャウキャと笑みを浮かべながら、サラマンダーを煽る。
「…………ッ!!!!!!!!」
次の瞬間、サラマンダーは体の一部だけではなく、全身に炎を纏った。
サラマンダーはヴァジュラ、アラッドたちが思っているよりも頭が回る……思考力を持つ個体。
目の前の大猿だけを相手に出来ていることは、絶好のチャンスだと理解していた。
だからこそ、余力を残して白毛のクソ猿を倒したかった。
しかし……思っていた以上に自身の攻撃を対処されてしまう。
サラマンダーはサラマンダーで今のところヴァジュラからの攻撃で大ダメージを受けてはいないが、それでもこのままでは自身が大猿を殺すイメージが浮かばない。
故に……逃走することはなく、まずは目の前のクソ猿を全力で殺すことにした。
「っ、スティーム。ガルーレ」
「うん……あのサラマンダー、多分だけど、普通じゃないよね」
「だね~~~。もしかして……スティームの赤雷とかと、似てる感じ?」
後方で観戦と警戒をしてる三人も、ようやくクロが感じた違和感に気付いた。
サラマンダーが全身に炎を纏った……その炎はただの炎ではなく、所々に黒さがあった。
「っていうか、もしかして……ギーラスさんと同じ、黒炎?」
ガルーレが零した言葉に対し、二人は否定の言葉を口にしなかった。
何故なら、以前ソルヴァイパーという白蛇が、白雷を会得し……実際に自分たちの前で使うところを見たことがある。
だからこそ、絶対にそれはないと口にはしなかったが……少しして、アラッドはおそらく黒炎ではないと感じた。
「…………いや、あれはおそらく黒炎じゃない」
「じゃあ、なんで所々黒いの?」
「確かに、不完全な黒炎とも捉えられるが、あの黒は……多分、闇の黒だ」
「闇? 闇なら……確かに…………でも、それじゃあ、あのサラマンダーは火属性のドラゴンなのに、闇属性まで持ってるってこと?」
「……それは、どうだろうな。何はともあれ、非常に珍しい個体であるのは間違いない筈だ」
アラッドはここにきて、ようやくサラマンダーに対して鑑定を使用したが、サラマンダーが持つスキルの中に……闇魔法はなかった。
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