スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
892 / 1,058

八百九十話 何の黒?

しおりを挟む
「………………」

「クルゥ?」

「……ワゥ」

やや険しい顔をするクロを見て、声を掛けるファル。

そんなファルに対し、クロはサラマンダーを……正確には、サラマンダーが放つ炎を指さした。

『あいつの炎……少しおかしいと思う』

『少しおかしい、ですか…………私にはあまり普通の炎と違いがあるようには思えませんが、クロさんがそう言うという事は……炎以外の属性が、混ざっていると』

『勘が外れてなかったら、多分……何かが混ざってる』

といった感じの会話を行う二体の従魔たち。

ブラックウルフから、Aランクモンスターであるデルドウルフに進化したクロ。
デルドウルフは、大雑把に分類すると闇属性の巨狼。

そんなクロだからこそ、サラマンダーが放つ炎に、僅か異変を感じ取った。

『……まぁでも、赤雷を本気で使ったスティームさんとバチバチに戦り合えたヴァジュラなら、問題無いかな』

『それもそうですね』

敵が強い、もしくは普通ではない。
それはヴァジュラという、ここ最近仲間になった同じ従魔の性格を考えれば、戦闘欲を刺激するスパイスでしかないと、クロとスティームは理解していた。



「ホキャァ…………ホキャキャキャキャキャキャキャキャっ!!!!」

「っ!!!!????」

クロとスティームが考えている通り、まず実際にサラマンダーと戦っているヴァジュラは、敵が放つ炎が普通の炎とは違うと感じ取っていた。

何だかんだで手数は向こうの方がやや多いと感じ、一旦距離を取り…………伸縮効果を持つ棒をフル活用し、小出しのブレスも火の攻撃魔法、炎の爪斬も全て突き落していく。

「ッ、ァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!」

驚いた。
多数の遠距離攻撃を全て落す目の前の大猿が放つ攻撃に、確かに驚いた。

だが、頭の回転が早く……その突きでは、小出しのブレスはともかく……通常のブレスは防げないだろうと判断。

「ウキャアアアアアアッ!!!!!」

しかし……ヴァジュラにとって、それは想定内の攻撃だった。
不意打ちで渾身のブレスを食らったのであればまだしも、喉の動きなどから、危険なブレスが飛来してくると直ぐに察知し、棒を全力で回転させながら霧散させていく。

熱い、熱い、割と熱い。
既に魔力を纏ってはいるが、それでも割と熱いと感じたヴァジュラ。

魔力を纏ってるのに、これまでの何度も遠距離攻撃を霧散させてきた防御技で防いでるのに、熱さを感じる。
ただ、その熱さはヴァジュラの闘争心を更に熱くさせた。

「ッ!!!!!」

「ホキャッ!!!!!!!!」

ブレスの勢いが弱まった……そう思った瞬間、ヴァジュラは宙に向かって棒を伸ばした。

「っ!? ギイイィ…………」

「ウキャ? ウキャッキャッキャ!!」

ブレスで視界を塞ぎ、敵が防御に手一杯になっている隙を狙い、上から爪撃をブチかまそうとしたサラマンダーだったが、ヴァジュラはその動きを呼んでいた。

攻撃方法が炎爪というところまでは読めていなかったが、それでも自分の視界が炎で覆われている状況を考えれば、次に攻撃してくる場所は真上だと予想を立てていた。

そして、見事に的中させ、炎爪を防ぐことに成功。
上機嫌になったヴァジュラはウキャウキャと笑みを浮かべながら、サラマンダーを煽る。

「…………ッ!!!!!!!!」

次の瞬間、サラマンダーは体の一部だけではなく、全身に炎を纏った。

サラマンダーはヴァジュラ、アラッドたちが思っているよりも頭が回る……思考力を持つ個体。
目の前の大猿だけを相手に出来ていることは、絶好のチャンスだと理解していた。

だからこそ、余力を残して白毛のクソ猿を倒したかった。

しかし……思っていた以上に自身の攻撃を対処されてしまう。
サラマンダーはサラマンダーで今のところヴァジュラからの攻撃で大ダメージを受けてはいないが、それでもこのままでは自身が大猿を殺すイメージが浮かばない。

故に……逃走することはなく、まずは目の前のクソ猿を全力で殺すことにした。




「っ、スティーム。ガルーレ」

「うん……あのサラマンダー、多分だけど、普通じゃないよね」

「だね~~~。もしかして……スティームの赤雷とかと、似てる感じ?」

後方で観戦と警戒をしてる三人も、ようやくクロが感じた違和感に気付いた。

サラマンダーが全身に炎を纏った……その炎はただの炎ではなく、所々に黒さがあった。

「っていうか、もしかして……ギーラスさんと同じ、黒炎?」

ガルーレが零した言葉に対し、二人は否定の言葉を口にしなかった。
何故なら、以前ソルヴァイパーという白蛇が、白雷を会得し……実際に自分たちの前で使うところを見たことがある。

だからこそ、絶対にそれはないと口にはしなかったが……少しして、アラッドはおそらく黒炎ではないと感じた。

「…………いや、あれはおそらく黒炎じゃない」

「じゃあ、なんで所々黒いの?」

「確かに、不完全な黒炎とも捉えられるが、あの黒は……多分、闇の黒だ」

「闇? 闇なら……確かに…………でも、それじゃあ、あのサラマンダーは火属性のドラゴンなのに、闇属性まで持ってるってこと?」

「……それは、どうだろうな。何はともあれ、非常に珍しい個体であるのは間違いない筈だ」

アラッドはここにきて、ようやくサラマンダーに対して鑑定を使用したが、サラマンダーが持つスキルの中に……闇魔法はなかった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

処理中です...