上 下
888 / 1,034

八百八十六話 魔性の令息?

しおりを挟む
「そういえばさ、アラッド」

「なんだ?」

「アッシュ君って、あれからリエラさんと何かしらの発展とかあったのかな」

昼食中、ガルーレはふとナルターク王国で出会った学生最強の貴族令嬢を思い出した。

「実家にいる間に、特に手紙は送られてきてないから、何も発展してないと思うぞ」

「そっか~~~……お兄ちゃんとしては、どうせなら発展してほしいと思う感じ?」

「…………そうだな。あいつはあいつで、目標を見つけたら突っ走るタイプだからな」

兄貴あるある。

妹の男関係には厳しいが、弟には寧ろそういう相手が出来てほしいと思う。

「とはいえ、仮にそういう関係になれたとしても、基本的に錬金術にしか興味がないアッシュに寄り添い続けられるか……それに、リエラ嬢は立場がある人間だろ」

「リエラさんは、確か侯爵家のご令嬢だったね」

「となると、交流戦に選ばれたことも考えれば、あの時点で就職する騎士団が決まってる筈だ」

「それもそっか……ってなると、是非ともアッシュ君をナルターク王国に連れていきたくなるな~~」

「……別に、バカで高飛車という印象は感じなかった。こっちも同じ侯爵家で、父さんの存在とかも考えれば、無理矢理連れていこうとはしないだろ」

「ん~~~~~……それなら、やっぱりリエラさんが色々蹴って、こっちに来る感じかな!!!」

ガルーレは普段通りの様子でもしもの流れを口にするが、それを聞いたアラッドはとてもとても渋い表情になり、同じ貴族であるスティームもアラッドの心情が理解出来てしまうため、同じくとても渋い表情を浮かべる。

「あっ…………やっぱりそうなると、不味い感じになるのかな」

さすがにそこまで渋い表情をされると、そういうのに疎いガルーレでもあまりよろしくない事だと解る。

「……リエラ嬢の実家、カルバトラ家だったか。まず、そこがどう考えるかにもよるな」

「アルバース王国のパーシバル家と縁を結べるのであればと、了承する可能性もあり得そうだけど……でも、貴族の中にも自分の娘を溺愛する人もいるからね」

「そうだな。後は……既に就職先が決まってるであろう、騎士団の人たちがどういう反応をするかだ」

交流戦が終わった後、交流戦ではアッシュのナイスな奇襲によって実力を発揮できなかったリエラの実力を確認出来たが、アラッドの眼から視ても……大抵の騎士団は欲するだろうと思える戦闘力を有していた。

「アラッドは、どう反応すると思う」

「当然、ふざけんなって反応を示すと思ってる…………それに、そもそもリエラ嬢は卒業すれば直ぐに就職だろ……アッシュは一応高等部を卒業するまで学園にいる訳だし、どうするんだろうな」

「「…………」」

アラッドの言う通り、リエラは半年も経てば学園を卒業して予定通りであれば、就職が決定している騎士団に入団する。

だが、アッシュは半年が経てば……中等部の二年生から三年生に上がるだけ。
仮に……本当にリエラがアッシュにぞっこんになってしまった場合、後四年は待つ必要がある。

「……リエラさんはアッシュ君が錬金術に強い興味を持ってるって解ってるから、冒険者として活動しながら、アッシュ君に質の高い素材を送り続ける……えっと……ぱ、パトロン? みたいになって活動するとか?」

「…………立場なんて関係無しに、行動力がある人は、本当に行動力を持ってそうだから……真面目に、それはないって断言は出来ないな」

侯爵家の令息でありながら、子供の頃から騎士ではなく冒険者を目指そうとして……結局半年も学園に通わずトーナメントで優勝して騎士の爵位を得たアラッドが何をおっしゃる。

という言葉を口には出さなかったものの、スティームは思わず顔で思いっ切り語ってしまった。

「全く会わないって言うのは無理だろうから、定期的にアッシュに会いに行きそうだな……」

「もしかして、通い妻ってやつ?」

「「ぶっ!!!!!!」」

通い妻というワードを聞き、二人は思わず昼食を吹き出してしまった。

「ゲホゲホっ……ガルーレ、いきなりそういう……衝撃的な言葉を言わないでくれ」

「ごめん? でも、大体合ってるよね」

「……かもしれないな」

侯爵家の令嬢が、通い妻となる。
普通に考えて……もう、色々とアウトである。

(あいつ、割と多くの令嬢から告白されてたと言ってたな…………無自覚な、魔性の令息、か…………やはり、色んな意味で末恐ろしいな)

恐ろしいと思うと同時に、アッシュ本人やシルフィーに話を聞いている限り、基本的にアッシュ本人から何かアクションを起こしている訳ではない。

鈍感ハーレム主人公の様に、そういう素振りを見せるだけ見せて、鈍感さを利用して好意をスルーするような極悪非道な真似はしてないため、アラッドも一応何かあれば守ってやりたいという思いはあった。

(……そういえば、ラディア嬢はリエラ嬢と仲が良かったな……聞いてみるか)

まずはリエラ嬢が、本当にアッシュに対してその気があるのかと調べようと決めた。

「ん? …………今夜の夕食は、羊肉か」

まだ昼食中のアラッドたちの元に、一体のモンスター猛ダッシュで突進してきた。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】王甥殿下の幼な妻

花鶏
ファンタジー
 領地経営の傾いた公爵家と、援助を申し出た王弟家。領地の権利移譲を円滑に進めるため、王弟の長男マティアスは公爵令嬢リリアと結婚させられた。しかしマティアスにはまだ独身でいたい理由があってーーー  生真面目不器用なマティアスと、ちょっと変わり者のリリアの歳の差結婚譚。  なんちゃって西洋風ファンタジー。  ※ 小説家になろうでも掲載してます。

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...