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八百八十五話 実力社会
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「「「ガルルゥアアアアアッ!!!!」」」
アラッドたちの目の前に現れたモンスターの名は、グレートウルフ。
ランクはCであり、他のCランクモンスターと比べて二回り……個体によっては、三回りほど大きな巨狼。
ブレスを吐くことはなく、基本的に爪や牙に属性魔力を纏うことはない。
ただ……身体能力が高いというのは、それだけで非常に厄介極まりない。
そんなモンスターを相手に、アラッドたちは相棒である従魔たちの力を借りず、一人で巨狼と激突。
「せやッ!!!!!」
「フンッ!!!!!」
「シッ!!!!!!」
しかも、今回は三人とも素手の状態である。
三人中二人……ではなく、三人とも徒手格闘でグレートウルフに挑んだ。
(なる、ほど!! これは、丁度良い緊張感、だね!!!!)
今回、三人はあまりモンスターとの戦闘を楽しみ過ぎず、目的の闇竜を討伐しようと考えていた。
とはいえ……それでもやはり、本当の意味で冒険が大好きな三人。
ガルーレはいつも通り素手で……アラッドも身体強化を使用した状態で、素手で挑んでいる。
そして、基本的に双剣で戦うスタイルのスティームだが、今回は素手で戦っているものの、しっかりと雷を纏って戦っている。
「ッ!? ッ、ァァアアアアッ!!!!」
「っと、っ! せやッ!!!!!」
「ギっ!!??」
連続で繰り出される爪撃を躱し、冷静にタイミングを読み切り、カウンターの蹴りを前足に叩きこむスティーム。
Cランクモンスターを相手に格闘戦を行うのは初めての経験であったスティームだが、実質グレートウルフとの戦闘はここで終わりだった。
グレートウルフはその巨体から繰り出されるパワーもイチオシだが、やはりウルフ系モンスター。
脚力、スピードこそ自慢の武器ではあるが、前足に良い雷蹴を貰ってしまったため、戦闘に支障が生まれた。
そしてスティームもステータスの中ではスピードが売りのタイプであるため、約数十秒後にはグレートウルフの咬み付きを躱し、脳天に拳骨を叩き込み、戦闘を終わらせた。
「ふぅ~~~」
「お疲れさん、スティーム。結構様になってたんじゃないか?」
「だよね~~。双剣士から武道家に転向しちゃう?」
「ありがとう、二人とも。でも、やっぱり僕は双剣士の方が合ってるよ。それに……今回の戦いで、改めて二人の凄さが良く解ったよ」
普段は双剣を使って戦っているスティーム。
双剣という得物を使っている分、素手よりもリーチがある。
リーチが短ければ短い程、相手の懐に潜り込むという危険を乗り越えなければならない。
「急にどうしたんだよ」
「思ったことを口にしただけだよ。相手が……グレートウルフだったからかもしれないけど、カウンターを入れたり、懐に潜って蹴りや拳を叩き込むことは、かなり勇気がいるって、思い知ったよ」
「あぁ…………モンスター相手だと、割とそういう感覚があるかな」
「? そうなの?」
一応メイン武器がロングソードであるアラッドはスティームの気持ちが解らなくはなかったが、元々殴って相手を倒すのが隙だったガルーレには一切その様な恐怖はなかった。
「寧ろ、自分の拳とか脚で相手をぶっ倒せるの、楽しくない?」
「…………双剣とは、また違った感覚があるとしか言えないかな」
スティームは割とそこそこ強い的との戦いに、高揚感を感じるところはある。
だが、敵を倒した時の感触云々に思うところはなく、そこに楽しさを感じると口にするガルーレを見て……ほんの少しだけ、これまで彼女にダル絡みした結果、ボコボコにされた野郎たちに同情した。
「それにしても、まだ山岳……ギリギリ脚を踏み入れてないかな? そんな辺りでグレートウルフが現れるのを考えると、予想してた以上に生息してるモンスターの戦闘力が高いかもしれないね」
「そうだな…………」
「……何か思うところでもあった?」
「グレートウルフって……群れで行動するタイプのウルフ系モンスターだったかと思ってな」
モンスター博士ではないアラッド。
全くもって確証はないが、これまで遭遇したことがあるグレートウルフは、殆ど一体で行動していた。
(三体の内、二体が平均的な強さを下回っているなら、残りの一体をリーダーとして付き従い、共に行動するのは解る。ただ……パッと見た限りでは、俺たちが戦ったあの三体に……差と言えるものはなかった)
これまで通り楽しんで戦っていたアラッドではあったが、対峙したグレートウルフは最後まで野性の闘志を迸らせながら自慢の爪を振るい、アラッドを殺そうとした。
ガルーレも似た様な感想であり、三体には大して差はないと感じていた。
「…………もしかして、グレートウルフよりも強いウルフ系のモンスターがいるとか!!!」
「それは……割と、ありだな」
縦社会であり、実力社会。
自分よりも強いモンスターに支配されては、そのモンスターの言う通り動くことは珍しくない。
「もしそんなモンスターがいるなら……戦ってみるか、クロ?」
「……ワゥ!!!」
自分に近い実力を持つかもしれない同じウルフ系のモンスター。
クロとしても、本当にそのようなモンスターが生息しているなら、是非とも戦ってみたかった。
アラッドたちの目の前に現れたモンスターの名は、グレートウルフ。
ランクはCであり、他のCランクモンスターと比べて二回り……個体によっては、三回りほど大きな巨狼。
ブレスを吐くことはなく、基本的に爪や牙に属性魔力を纏うことはない。
ただ……身体能力が高いというのは、それだけで非常に厄介極まりない。
そんなモンスターを相手に、アラッドたちは相棒である従魔たちの力を借りず、一人で巨狼と激突。
「せやッ!!!!!」
「フンッ!!!!!」
「シッ!!!!!!」
しかも、今回は三人とも素手の状態である。
三人中二人……ではなく、三人とも徒手格闘でグレートウルフに挑んだ。
(なる、ほど!! これは、丁度良い緊張感、だね!!!!)
今回、三人はあまりモンスターとの戦闘を楽しみ過ぎず、目的の闇竜を討伐しようと考えていた。
とはいえ……それでもやはり、本当の意味で冒険が大好きな三人。
ガルーレはいつも通り素手で……アラッドも身体強化を使用した状態で、素手で挑んでいる。
そして、基本的に双剣で戦うスタイルのスティームだが、今回は素手で戦っているものの、しっかりと雷を纏って戦っている。
「ッ!? ッ、ァァアアアアッ!!!!」
「っと、っ! せやッ!!!!!」
「ギっ!!??」
連続で繰り出される爪撃を躱し、冷静にタイミングを読み切り、カウンターの蹴りを前足に叩きこむスティーム。
Cランクモンスターを相手に格闘戦を行うのは初めての経験であったスティームだが、実質グレートウルフとの戦闘はここで終わりだった。
グレートウルフはその巨体から繰り出されるパワーもイチオシだが、やはりウルフ系モンスター。
脚力、スピードこそ自慢の武器ではあるが、前足に良い雷蹴を貰ってしまったため、戦闘に支障が生まれた。
そしてスティームもステータスの中ではスピードが売りのタイプであるため、約数十秒後にはグレートウルフの咬み付きを躱し、脳天に拳骨を叩き込み、戦闘を終わらせた。
「ふぅ~~~」
「お疲れさん、スティーム。結構様になってたんじゃないか?」
「だよね~~。双剣士から武道家に転向しちゃう?」
「ありがとう、二人とも。でも、やっぱり僕は双剣士の方が合ってるよ。それに……今回の戦いで、改めて二人の凄さが良く解ったよ」
普段は双剣を使って戦っているスティーム。
双剣という得物を使っている分、素手よりもリーチがある。
リーチが短ければ短い程、相手の懐に潜り込むという危険を乗り越えなければならない。
「急にどうしたんだよ」
「思ったことを口にしただけだよ。相手が……グレートウルフだったからかもしれないけど、カウンターを入れたり、懐に潜って蹴りや拳を叩き込むことは、かなり勇気がいるって、思い知ったよ」
「あぁ…………モンスター相手だと、割とそういう感覚があるかな」
「? そうなの?」
一応メイン武器がロングソードであるアラッドはスティームの気持ちが解らなくはなかったが、元々殴って相手を倒すのが隙だったガルーレには一切その様な恐怖はなかった。
「寧ろ、自分の拳とか脚で相手をぶっ倒せるの、楽しくない?」
「…………双剣とは、また違った感覚があるとしか言えないかな」
スティームは割とそこそこ強い的との戦いに、高揚感を感じるところはある。
だが、敵を倒した時の感触云々に思うところはなく、そこに楽しさを感じると口にするガルーレを見て……ほんの少しだけ、これまで彼女にダル絡みした結果、ボコボコにされた野郎たちに同情した。
「それにしても、まだ山岳……ギリギリ脚を踏み入れてないかな? そんな辺りでグレートウルフが現れるのを考えると、予想してた以上に生息してるモンスターの戦闘力が高いかもしれないね」
「そうだな…………」
「……何か思うところでもあった?」
「グレートウルフって……群れで行動するタイプのウルフ系モンスターだったかと思ってな」
モンスター博士ではないアラッド。
全くもって確証はないが、これまで遭遇したことがあるグレートウルフは、殆ど一体で行動していた。
(三体の内、二体が平均的な強さを下回っているなら、残りの一体をリーダーとして付き従い、共に行動するのは解る。ただ……パッと見た限りでは、俺たちが戦ったあの三体に……差と言えるものはなかった)
これまで通り楽しんで戦っていたアラッドではあったが、対峙したグレートウルフは最後まで野性の闘志を迸らせながら自慢の爪を振るい、アラッドを殺そうとした。
ガルーレも似た様な感想であり、三体には大して差はないと感じていた。
「…………もしかして、グレートウルフよりも強いウルフ系のモンスターがいるとか!!!」
「それは……割と、ありだな」
縦社会であり、実力社会。
自分よりも強いモンスターに支配されては、そのモンスターの言う通り動くことは珍しくない。
「もしそんなモンスターがいるなら……戦ってみるか、クロ?」
「……ワゥ!!!」
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