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八百七十六話 日和れない
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(強いというのは、解っていましたが……これほど、基礎戦闘力が、高いとは)
決して……決してフローレンスはスティームの事を、赤雷頼りのクソ雷野郎などとは思っていなかった。
そもそも自分をトーナメントの決勝戦で倒したアラッドと共に行動しているという情報だけで、並みの冒険者ではないことは明白。
それでも……現時点では、油断しなければ負けないだろう。
驕りと思えなくもない油断が、心の中にあった。
それが原因で形勢逆転され、現在敗北に追い込まれかけている……というわけではない。
ただ、互いに赤雷を……聖光雄化を使ってない状態で戦い続けて数分間、何度かヒヤッとする場面があった。
あの時の一振りで、斬撃刃で、意表を突いた逆手持ちの斬撃が起点となり、明らかに不利と断言出来る戦況に追い込まれていた可能性があった。
とはいえ、それに関してはスティームも同じだった。
(強いのは、解ってたけど、この人、本当に、上手い!!!)
フローレンスは細剣、スティームは双剣。
手数は一と二と、どう見てもスティームの方が有利である。
扱う魔力の属性が雷ということもあり、スピードに関してはスティームの方がやや有利であった。
にもかかわらず、いけると……良い一撃が決まると思った時、必ず対処されてしまっていた。
逆に、スティームがこれは食らったらヤバい!!! と思う場面もあり、徐々に呼吸が浅くなっていく。
(あと一歩……あと、一歩踏み込まないと!!!)
(中々、終わりが、見えません、ね!!!)
互いに限られた条件下で戦っており、両者とも「今、あれが使えたら勝負を決められたのに!!」と思う瞬間がなんどもあった。
しかし、今回二人が行っているのは、互いに何かを懸けて戦っている試合、決闘ではない。
ただの模擬戦であり、別に勝敗を決めなくとも構わない。
仮に二人が途中で合意し、ここまでにしましょうと決めても、周りはなんとも言わない。
アラッドやガルーレは「あぁ、なるほどな。あのまま戦い続けてたら、多分模擬戦や試合の範疇に収まらなかったんだろうな」と直ぐに納得する。
ソルたちもそれを聞かされれば、納得せざるを得ない。
「シッ!! ハッ!!! ッ、セヤ!!!!」
「ッ、ッ、くっ! ぬぅあああッ!!!!」
だが、今のところ……二人は「まぁ、決着つけなくても良いよね」という思いはなかった。
スティームだけではなく、フローレンスも珍しく太い声を上げながら雷閃を躱し、光閃を放つ。
(今、ここで……勝てれば、少しは、近付けるかも、しれないッ!!!!)
スティームには、目標がある。
いつまで、アラッドと共に冒険するか解らない。
ただ……今はまだ、万が一の最悪の機会に遭遇した際、自分はアラッドにとって守られる存在に変わってしまうと、解っている。
それは、嬉しいと思うと同時に、自分に対して許せないという気持ちが湧き上がる。
自分は、おまけとしてアラッドと共に行動してるのではない。
アラッドの隣に立ち、対等な仲間として、戦友として……共に強敵に立ち向かいたい。
そんな思いを抱くスティームにとって、フローレンスというのは、ある種の目標となりえた。
過去、本気のアラッドと激突した人物。
クロが本気を出していたかは一旦置いておき、狂化を使用したアラッドとたった数秒ではなく、何十秒と激突し続けた。
そして、最後はあのアラッドが気迫の差で、なんとか勝利を掴み取ることが出来た。
アラッドと歳が近い者たちの中で、実力で言えば間違いなくライバルと言える存在。
その様な存在に縛りのある条件下と言えど、勝利を掴み取ることが出来れば……間違いなく、自分は目標に向かって進めているのだと、実感できる。
(レイさんや、ジャンから向けられていた、戦意に似てるでしょうか)
これまで対峙してきた騎士、騎士候補の者たちの中に、負けても良いやと思いながら挑んできた者は一人もいなかった。
全員、戦意をぶつけてきたが……記憶の中にある二人が向けてきた戦意には、ライバル心……自分以外の理由を含む勝利への欲を感じることがあった。
そんな戦意を、思いを……現在激闘中のスティームから感じられた。
(どうして、でしょうね…………おそらく、今私が、抱いている、気持ちと。スティームさんが、抱いてる、気持ちは……同じだと、解る)
互いに恨みを持ってはいない。
因縁がある腐れ縁でもない。
現在の目標を達成する上で、邪魔な存在……でもない。
ただ、スティームは本当の意味で仲間であり、友人であるアラッドの隣に立って戦いたい。
フローレンスは人間として気になり、つい声を掛けてしまう知人と……対等な目線で、これからも語り合いたい。
スティームも……どうして、冷静な判断が出来そうな人物が、まだ勝敗を着けない終戦を提案せず、本気で勝利を奪い取ろうと細剣を振るうのか……なんとなく理解してきた。
((ここで日和ったら、負けだ(ですね)!!!!!))
アラッドに言われたことは勿論忘れてない。
しっかり頭の片隅に置きながら……更に激闘は加熱し始めた。
決して……決してフローレンスはスティームの事を、赤雷頼りのクソ雷野郎などとは思っていなかった。
そもそも自分をトーナメントの決勝戦で倒したアラッドと共に行動しているという情報だけで、並みの冒険者ではないことは明白。
それでも……現時点では、油断しなければ負けないだろう。
驕りと思えなくもない油断が、心の中にあった。
それが原因で形勢逆転され、現在敗北に追い込まれかけている……というわけではない。
ただ、互いに赤雷を……聖光雄化を使ってない状態で戦い続けて数分間、何度かヒヤッとする場面があった。
あの時の一振りで、斬撃刃で、意表を突いた逆手持ちの斬撃が起点となり、明らかに不利と断言出来る戦況に追い込まれていた可能性があった。
とはいえ、それに関してはスティームも同じだった。
(強いのは、解ってたけど、この人、本当に、上手い!!!)
フローレンスは細剣、スティームは双剣。
手数は一と二と、どう見てもスティームの方が有利である。
扱う魔力の属性が雷ということもあり、スピードに関してはスティームの方がやや有利であった。
にもかかわらず、いけると……良い一撃が決まると思った時、必ず対処されてしまっていた。
逆に、スティームがこれは食らったらヤバい!!! と思う場面もあり、徐々に呼吸が浅くなっていく。
(あと一歩……あと、一歩踏み込まないと!!!)
(中々、終わりが、見えません、ね!!!)
互いに限られた条件下で戦っており、両者とも「今、あれが使えたら勝負を決められたのに!!」と思う瞬間がなんどもあった。
しかし、今回二人が行っているのは、互いに何かを懸けて戦っている試合、決闘ではない。
ただの模擬戦であり、別に勝敗を決めなくとも構わない。
仮に二人が途中で合意し、ここまでにしましょうと決めても、周りはなんとも言わない。
アラッドやガルーレは「あぁ、なるほどな。あのまま戦い続けてたら、多分模擬戦や試合の範疇に収まらなかったんだろうな」と直ぐに納得する。
ソルたちもそれを聞かされれば、納得せざるを得ない。
「シッ!! ハッ!!! ッ、セヤ!!!!」
「ッ、ッ、くっ! ぬぅあああッ!!!!」
だが、今のところ……二人は「まぁ、決着つけなくても良いよね」という思いはなかった。
スティームだけではなく、フローレンスも珍しく太い声を上げながら雷閃を躱し、光閃を放つ。
(今、ここで……勝てれば、少しは、近付けるかも、しれないッ!!!!)
スティームには、目標がある。
いつまで、アラッドと共に冒険するか解らない。
ただ……今はまだ、万が一の最悪の機会に遭遇した際、自分はアラッドにとって守られる存在に変わってしまうと、解っている。
それは、嬉しいと思うと同時に、自分に対して許せないという気持ちが湧き上がる。
自分は、おまけとしてアラッドと共に行動してるのではない。
アラッドの隣に立ち、対等な仲間として、戦友として……共に強敵に立ち向かいたい。
そんな思いを抱くスティームにとって、フローレンスというのは、ある種の目標となりえた。
過去、本気のアラッドと激突した人物。
クロが本気を出していたかは一旦置いておき、狂化を使用したアラッドとたった数秒ではなく、何十秒と激突し続けた。
そして、最後はあのアラッドが気迫の差で、なんとか勝利を掴み取ることが出来た。
アラッドと歳が近い者たちの中で、実力で言えば間違いなくライバルと言える存在。
その様な存在に縛りのある条件下と言えど、勝利を掴み取ることが出来れば……間違いなく、自分は目標に向かって進めているのだと、実感できる。
(レイさんや、ジャンから向けられていた、戦意に似てるでしょうか)
これまで対峙してきた騎士、騎士候補の者たちの中に、負けても良いやと思いながら挑んできた者は一人もいなかった。
全員、戦意をぶつけてきたが……記憶の中にある二人が向けてきた戦意には、ライバル心……自分以外の理由を含む勝利への欲を感じることがあった。
そんな戦意を、思いを……現在激闘中のスティームから感じられた。
(どうして、でしょうね…………おそらく、今私が、抱いている、気持ちと。スティームさんが、抱いてる、気持ちは……同じだと、解る)
互いに恨みを持ってはいない。
因縁がある腐れ縁でもない。
現在の目標を達成する上で、邪魔な存在……でもない。
ただ、スティームは本当の意味で仲間であり、友人であるアラッドの隣に立って戦いたい。
フローレンスは人間として気になり、つい声を掛けてしまう知人と……対等な目線で、これからも語り合いたい。
スティームも……どうして、冷静な判断が出来そうな人物が、まだ勝敗を着けない終戦を提案せず、本気で勝利を奪い取ろうと細剣を振るうのか……なんとなく理解してきた。
((ここで日和ったら、負けだ(ですね)!!!!!))
アラッドに言われたことは勿論忘れてない。
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