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八百七十四話 可哀想?
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「とりあえず……戦争が起これば、アラッドだけじゃなくてスティームやガルーレも参加するんだよな」
夕食が到着した後、ポロっとリオが零した。
「……そうなるだろうな」
スティームとガルーレは、アラッドのパーティーメンバーである。
アラッドと同じく冒険者であり、基本的に他国との戦争などが起きれば、戦争に参加する。
スティームに限っては他国出身の冒険者であるため、戦う必要がないといえばないのだが、彼の性格を知っているレイたちは、スティームが参加を拒否するとは思えなかった。
ガルーレも同様に、戦争という普段とは違う戦場であったとしても……寧ろ参加しないと宣言する姿が想像出来なかった。
「はぁ~~~~~~~。なんか、あれだな。これまで目指してきた方向が間違ってるとは思わないし、いきなり変えようとも思わねぇけど……こういう時、なんつーか……まだ学生であるっていうのが、歯がゆく感じるな」
「リオの言う通りですわね」
「……話からして、おそらく後一年以内に始まるでしょう。それを考えると……私たちは、参加出来ないでしょう」
「…………」
先程、レイやヴェーラには特例で上から参加してほしいという特別指令がくるのではないかと話していたが、それも確定という話ではない。
寧ろこれから先、多くの騎士たちを引っ張ていく逸材を戦争で失ってはならないと、逆に絶対に参加させてはならないと考えるかもしれない。
(……そうだ。確定では、ないのだ……)
そもそもな話、ゴリディア帝国の者に内部でやられてはいるが、結果的に戦争が起こらなければそれに越したことはない。
だが、事情を知っている者たちからすれば、ふざけるなと……到底怒りが収まるものではない。
それでも、戦うべきは大人たち。
年齢的な意味では、既にレイたちは大人ではある。
だが……彼女たちは、まだ学生……守られるべき立場なのである。
「まぁ、あれだよな。俺らがゴネて無理矢理戦争に参加して……誰かが死んだりすれば、アラッドが悲しむだけだよな」
「そうだね……なんで、無理矢理にでも僕たちの参加を止めなかったんだって後悔しそうだ」
「……はぁ~~~~。もっと、早く強くなりたいですね」
まだ自分は幼い。
そんな事はシルフィーも解っている。
しかし……騎士の娘だからか、なんで私はその場に立てないんだという強い悔しさは、そう簡単に消えない。
(やっぱり、皆さんは僕と考え方のスタンスが違いますね)
そんな中、やはりと言うべきか……アッシュだけは、全く違う事を考えていた。
まず、アラッドや父であるフールが参加する戦争に、なんで自分は参加出来ないんだという悔しさは、一切なかった。
そして、以前久しぶりに出会った兄、そして兄の仲間たちの実力を肌で感じ、観戦した。
だからこそ思った。
アラッド兄さんたちと戦場で出会った人たちは、色んな意味で絶望しながら死んでいくのではないかと。
(アラッド兄さんより強い人はいるだろうけど、アラッド兄さんにはクロっていう頼れる相棒がいる。スティームさんはストームファルコンに乗って空から攻撃できるし、ガルーレさんは体の一部が潰れても攻め続けるアラッド兄さんにも負けない狂気がある)
まだアッシュの耳には入っていないが、今のガルーレには頼れる棒使いの白毛ボス猿という相棒がいる。
(ハッキリ言って、アラッド兄さんたちに戦場で遭遇する人たちが可哀想だよね……どう考えても歳下の人に、あっさりと殺されるんだから)
歳下の……まだ完全に大人になったとは言えない子供に殺される。
世の中には常識外れの怪物がいるという事実は、戦闘者であればなんとなく知っている。
だが、いざ戦争という戦場でその常識外れの怪物に……明らかに自分より歳下の冒険者に殺されるという事実に納得出来るのか。
答えは……ノーである。
(それに…………なぁ……うん。仮に僕が大人になったとしても、あまり参加したいとは思えないね)
アッシュは一度も人間を殺したことがない訳ではない。
しかし、罪のない人間を殺したことは、一度もない。
(皆さんは、それが解ってるのかな……まぁ、どちらでも良いか)
解っていようと、解っていまいと、結局のところ自分たちが戦場に参加することはない。
そう思っているからこそ、アッシュはいつも通りの表情で美味な夕食を口に入れていった。
「アッシュは、なんかいつも通りだな」
「アラッド兄さんたちや、父さんが死ぬとは思えないので」
「心配してないんじゃなくて、アッシュは信頼してるのね」
「シルフィーにしては、随分と冷静だね」
「うっさいわね。でも……さっき軽く話したけど、ドラング兄さんがこの事を知ったら、やっぱり暴れちゃうかな」
「多分ね。けど、まだ父さんほど強くないから守られてる、参加出来ないんだよって言われたら、さすがに引き下がるんじゃないかな」
ドラングは父親であるフールに強い憧れを抱いている。
それはドラングの家族、同世代の令息や令嬢であれば全員知っている事であり、リオたちは苦笑いを浮かべながら確かに、と頷くのだった。
夕食が到着した後、ポロっとリオが零した。
「……そうなるだろうな」
スティームとガルーレは、アラッドのパーティーメンバーである。
アラッドと同じく冒険者であり、基本的に他国との戦争などが起きれば、戦争に参加する。
スティームに限っては他国出身の冒険者であるため、戦う必要がないといえばないのだが、彼の性格を知っているレイたちは、スティームが参加を拒否するとは思えなかった。
ガルーレも同様に、戦争という普段とは違う戦場であったとしても……寧ろ参加しないと宣言する姿が想像出来なかった。
「はぁ~~~~~~~。なんか、あれだな。これまで目指してきた方向が間違ってるとは思わないし、いきなり変えようとも思わねぇけど……こういう時、なんつーか……まだ学生であるっていうのが、歯がゆく感じるな」
「リオの言う通りですわね」
「……話からして、おそらく後一年以内に始まるでしょう。それを考えると……私たちは、参加出来ないでしょう」
「…………」
先程、レイやヴェーラには特例で上から参加してほしいという特別指令がくるのではないかと話していたが、それも確定という話ではない。
寧ろこれから先、多くの騎士たちを引っ張ていく逸材を戦争で失ってはならないと、逆に絶対に参加させてはならないと考えるかもしれない。
(……そうだ。確定では、ないのだ……)
そもそもな話、ゴリディア帝国の者に内部でやられてはいるが、結果的に戦争が起こらなければそれに越したことはない。
だが、事情を知っている者たちからすれば、ふざけるなと……到底怒りが収まるものではない。
それでも、戦うべきは大人たち。
年齢的な意味では、既にレイたちは大人ではある。
だが……彼女たちは、まだ学生……守られるべき立場なのである。
「まぁ、あれだよな。俺らがゴネて無理矢理戦争に参加して……誰かが死んだりすれば、アラッドが悲しむだけだよな」
「そうだね……なんで、無理矢理にでも僕たちの参加を止めなかったんだって後悔しそうだ」
「……はぁ~~~~。もっと、早く強くなりたいですね」
まだ自分は幼い。
そんな事はシルフィーも解っている。
しかし……騎士の娘だからか、なんで私はその場に立てないんだという強い悔しさは、そう簡単に消えない。
(やっぱり、皆さんは僕と考え方のスタンスが違いますね)
そんな中、やはりと言うべきか……アッシュだけは、全く違う事を考えていた。
まず、アラッドや父であるフールが参加する戦争に、なんで自分は参加出来ないんだという悔しさは、一切なかった。
そして、以前久しぶりに出会った兄、そして兄の仲間たちの実力を肌で感じ、観戦した。
だからこそ思った。
アラッド兄さんたちと戦場で出会った人たちは、色んな意味で絶望しながら死んでいくのではないかと。
(アラッド兄さんより強い人はいるだろうけど、アラッド兄さんにはクロっていう頼れる相棒がいる。スティームさんはストームファルコンに乗って空から攻撃できるし、ガルーレさんは体の一部が潰れても攻め続けるアラッド兄さんにも負けない狂気がある)
まだアッシュの耳には入っていないが、今のガルーレには頼れる棒使いの白毛ボス猿という相棒がいる。
(ハッキリ言って、アラッド兄さんたちに戦場で遭遇する人たちが可哀想だよね……どう考えても歳下の人に、あっさりと殺されるんだから)
歳下の……まだ完全に大人になったとは言えない子供に殺される。
世の中には常識外れの怪物がいるという事実は、戦闘者であればなんとなく知っている。
だが、いざ戦争という戦場でその常識外れの怪物に……明らかに自分より歳下の冒険者に殺されるという事実に納得出来るのか。
答えは……ノーである。
(それに…………なぁ……うん。仮に僕が大人になったとしても、あまり参加したいとは思えないね)
アッシュは一度も人間を殺したことがない訳ではない。
しかし、罪のない人間を殺したことは、一度もない。
(皆さんは、それが解ってるのかな……まぁ、どちらでも良いか)
解っていようと、解っていまいと、結局のところ自分たちが戦場に参加することはない。
そう思っているからこそ、アッシュはいつも通りの表情で美味な夕食を口に入れていった。
「アッシュは、なんかいつも通りだな」
「アラッド兄さんたちや、父さんが死ぬとは思えないので」
「心配してないんじゃなくて、アッシュは信頼してるのね」
「シルフィーにしては、随分と冷静だね」
「うっさいわね。でも……さっき軽く話したけど、ドラング兄さんがこの事を知ったら、やっぱり暴れちゃうかな」
「多分ね。けど、まだ父さんほど強くないから守られてる、参加出来ないんだよって言われたら、さすがに引き下がるんじゃないかな」
ドラングは父親であるフールに強い憧れを抱いている。
それはドラングの家族、同世代の令息や令嬢であれば全員知っている事であり、リオたちは苦笑いを浮かべながら確かに、と頷くのだった。
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