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八百七十二話 向かうまでに出会った人物

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「シルフィー、アッシュ。少し良いか」

「? はい。なんでしょうか、レイ先輩」

休日に訓練を行っていたシルフィーと、シルフィーに付き合わされていたアッシュ。
訓練場には他にも二人を慕う同級生や戦闘面で指導、模擬戦の相手を行っている教師がいた。

「少し話がしたくてな」

「? 解りました」

良く解ってないが、先輩であるレイの表情が真剣であることから、急ぎの用時だと察した。

時間的にもそろそろ夕食を食べる時間だということもあり、二人は訓練から抜けた。

「それで、いったい話したいことって?」

「そうだな…………」

「……レイ先輩。僕たち、まだ夕食を食べてないんですよ。よかったら、奢ってくれませんか」

なんとも直球なたかり。
しかも……その言葉を口にした人物がアッシュということもあり、ベルたちは驚きを隠せなかった。

「ッ、そう……だな。声を掛けたのは私たちだ。どうせなら、外で食べようか」

レイはアッシュからの申し出に感謝しながら、本日に二度目の外出申請をし、何度か訪れたことがある店に入店し……個室に入った。

「二人は、ここ最近視線を感じてないから」

注文を頼み終わった後、レイは先程と同じく真剣な表情で二人に尋ねた。

「視線、ですか? そんなのしょっちゅうと言いますか……」

「…………もしかして、護衛者の様な視線、ですか?」

「ッ!! やはり、二人にも向けられてたか」

「???? アッシュ……何それ。私、聞いてないんだけど」

「シルフィーが特に気にすることじゃないかと思って。いつも通り、訓練に集中して強くなることをメインに考えてた方が良いでしょ」

「むっ!!」

アッシュがある視線について、自分に教えてくれなかったことに関して僅かに怒るも、自分の為と言われてしまえば、その怒りは直ぐに霧散してしまった。

「それで、レイ先輩たちもそれに気付いて……僕たちに声を掛けてきたってことは、答え合わせがしたかったという事でしょうか」

「あぁ、その通りだ。正確に言うと、一部ではあるが答え合わせがしたかった」

「ねぇ、アッシュ君。何故、私たちは誰かに守られると思う」

ヴェーラからの問いに対し、アッシュは少しの間考え込んだ。

(守られてる……守られてる…………僕やシルフィーだけじゃなく、先輩がたも守る理由……僕たちと先輩たちの関係、となると………………やっぱり、アラッド兄さん関係、だよね)

ほんの少し考え込み、アッシュはリオたちと同じ考えに至った。
自分たちの関係とは、アラッドと通じた後輩先輩であると。

だが、何故……陰から守る者が急に現れたのか。
その結論にも、直ぐに至った。

(そういう事、なのかな? だとしたら、納得出来る……というか、普通に有難い。でも…………これって、言っても良いのかな)

迷った。
おおよそ正解だろうと断言出来る内容に至ったアッシュだが、おそらくまだ機密事項。

自分だけでは判断しきれないと思い、先輩であるレイに投げた。

「………………レイ先輩。僕たちが、ナルターク王国に向かうまでに出会った人物を、覚えていますか」

「ナルターク王国で出会った人物、ではなくか?」

「はい。ナルターク王国に向かうまでに出会った人物です」

アッシュは敢えて、人物という言葉を強調した。

そしてレイは直ぐに、アッシュの言うナルターク王国に向かうまでに出会った人物、について思い出した。

「ッ!!!!!! ……そうか…………なるほど」

「レイ、何か思い出したの?」

「……そうだな」

思い出した。
レイにとって、衝撃度は過去一だったかもしれない人物。

『…………話す、べきだと思うか?』

『難しいですね。ですが、僕たちが感じてしまった以上、説明しなければ、納得しないかと』

二人は約数秒という短い時間の間に、アイコンタクトだけでやり取りを行う。

『だが、まだ決まってはいないだろう』

『かもしれませんね。ただ、僕たちを守る者が現れたということは、起こる可能性が高まっているのと、同義かと』

二人とも、容易に話してはならい事だと解っている。
だからこそ……直ぐに表情から驚きや焦りといった感情を消したが、ヴェーラやベルたちからすれば、それは不自然な変化だった。

「二人共、もしかして僕たちに隠してること……いや、言えないことがある、のかな?」

「っ!!! ……もしかしてアッシュ。あんた…………レイ先輩とできちゃったの!!!!????」

「「「「「「「………………」」」」」」」

「あれ、違った?」

なんとも的外れ過ぎる推測に、場の空気は一気に訳が分からない方向へ持っていかれた。

シルフィーとしては、二人が視線だけで会話してるようにも思え、もしやと感じ……個人的には名推理だと思った。

「ふっ、はっはっは!! 違うよ、シルフィー。私とアッシュはただの先輩と後輩さ」

「そうだよ、シルフィー。さすがに想像力が豊か過ぎるよ…………レイ先輩。個人的には、もう起こることは確定だと思います」

「そうか…………なら、仕方ないか」

「えぇ、仕方ないかと」

二人は頷き合い、個人的な推測を友人や家族に伝えた。
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