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八百六十八話 事前にガード
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「ウキャッキャ! ホキャキャキャキャ!!!」
「ヌウウウウウアアアアアアアアッ!!!!」
炎を纏う大剣を力の限り振り回すソルに対し、余裕を取り戻したヴァジュラはケラケラと笑いながら躱していく。
当初、急激に上がったソルの身体能力には、確かに驚かされた。
放つ殺気の質も、これまで対峙してきた人間のものではなかった。
ただ……殺気に関しては、これまでに本気で自分を殺しにきたモンスターのものと同じだと把握。
加えて、身体能力が大幅に上がった分、技術力が落ちている。
ハヌーマ、ハヌマーンの厄介なところはナチュラルに敵対者を煽る才ではなく、対人戦に関する技術力の高さ。
ソルの身体能力の上昇幅には驚かされたものの、それは決して野性の勘に頼らなければならない程のものではなかった。
そして、先程から試合当初は少し面倒だなと思っていた連携が、全く上手くいってない。
殆どソルが前に前に出て大剣を振るっているだけ。
もう、これ以上遊べる要素はなさそうだ。
そうヴァジュラが思った時……一つの攻撃魔法が飛来。
「ウキャ?」
だが、その攻撃はヴァジュラに向けて放たれたものではなく、ソルに向けられて放たれた攻撃であった。
一人だけ暴走した仲間に向けられた、怒りの攻撃?
そんな考えが一瞬だけ浮かぶも、ヴァジュラは直ぐにその考えを捨て去った。
「ハァアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!」
後方のルーナが放ったウィンドジャベリンは、ソルの体ではなく、炎を纏っている大剣に命中。
普通なら、直撃した瞬間に大剣が弾かれ、大き過ぎる隙が生まれてしまう。
しかし、ウィンドジャベリンがソルの大剣に当たった瞬間、弾いたりソルの体を揺らすことはなく……一瞬にして大剣を纏っていた炎と混ざり合い、更に高火力な炎を生み出した。
「ッ! ウ、キャオ!!!!」
止めとけば良かった。
ヴァジュラの反応速度であれば、その一撃を躱すことが出来た。
もし食らえば、割と余裕が消えてしまうほどのダメージを受けてしまう。
それが解っていながら……ヴァジュラが取った選択は回避ではなく、相殺だった。
「「ッ!!!!!!!!!」」
二人の攻撃がぶつかり合った瞬間、訓練場に……ギルドのロビーにまで聞こえる衝撃音が発生。
多くの者たちが顔をしかめながら耳を両手で塞ぐも、なんとなくヴァジュラなら避けないだろうと思っていたアラッドは、他の者たちよりも早く耳を塞いだお陰でノーダメージだった。
(ルーナって奴……本当に戦況を良く見てたな)
ルーナはただソルの大剣目掛けてウィンドジャベリンを払ったのではなく、タイミング的にはこれ以上ないぐらいジャストな瞬間を狙って放った。
反応速度が高いヴァジュラであれば躱せるが、他のBランクモンスターが相手であれば……避けられず、勝負を決める一撃となっていた可能性が十分にある。
(後衛の中でも、相当レベルが高いな…………あんまり、がっつり後衛として本気で戦ってるところを見てないから断言は出来ないが、後衛としての技量は、ヴェーラに迫るか?)
ヴェーラ・グスタフは、アラッドが同世代の中で一番優秀な魔法使いは誰かと問われれば、真っ先に名前を上げる友人。
その実力は数歳程度の差など無意味。
そんなヴェーラと技量だけであれば迫るかもしれないという言葉は、アラッドにしては中々の称賛だった。
「…………まぁ、それでも、もう終わりだな」
轟炎を纏った大剣と魔力を纏う棒が激突した結果……勝者は、轟炎を纏った大剣だった。
だが、それはただ押し切っただけであり、ヴァジュラの体は後方に押し飛ばされるも、体勢を崩すことはなかった。
「ハアアアアア゛ア゛ア゛っ!!!!???? ッ」
一撃の攻撃力は上がったとしても、それは所詮攻撃力の話。
ソルの身体能力そのものが上がった訳ではないため、攻撃の軌道は相変わらず読みやすく、まだ素早さはヴァジュラの方が上回っていた。
その結果、腹に棒を叩きつけられ、体にあった酸素が全て強制的に吐き出された。
内臓がぐちゃぐちゃ……とまではいかないが、骨がいくつか折れ、内臓が損傷。
ソルは強制的に狂化が解除されてしまい、ダウン。
「くッ!!!!」
相方が倒れてもルーナは諦めず、まずは牽制の攻撃魔法を放ち、その後に本命の攻撃魔法を……っと、瞬時にそこまで考えられる思考力は悪くないが、ヴァジュラを相手に実行するには、圧倒的に移動速度が足りなかった。
「ホキャ、ホキャキャ、ホキャ!!」
「っ!!!!!!!???????」
飛来する攻撃魔法を全て弾き飛ばし、最後に全力…………ではなく、手加減しながら頭部に棒を振り下ろした。
絶妙に手加減されたため、頭蓋骨が割れることはなく、脳も無事である。
だが……その辺りを絶妙に加減された一撃だったからこそ、とんでもない鈍痛がルーナの頭を襲った。
「ふっ、ふっふっふ……フローレンス、決着で良いよな?」
「えぇ、そうですね。この戦いの勝者は、ヴァジュラです」
まだ呼吸を整えられてない前衛と、頭部を両手で抑えながらうずくまる後衛。
どう見ても、ここから続行するのは不可能だった。
「ヌウウウウウアアアアアアアアッ!!!!」
炎を纏う大剣を力の限り振り回すソルに対し、余裕を取り戻したヴァジュラはケラケラと笑いながら躱していく。
当初、急激に上がったソルの身体能力には、確かに驚かされた。
放つ殺気の質も、これまで対峙してきた人間のものではなかった。
ただ……殺気に関しては、これまでに本気で自分を殺しにきたモンスターのものと同じだと把握。
加えて、身体能力が大幅に上がった分、技術力が落ちている。
ハヌーマ、ハヌマーンの厄介なところはナチュラルに敵対者を煽る才ではなく、対人戦に関する技術力の高さ。
ソルの身体能力の上昇幅には驚かされたものの、それは決して野性の勘に頼らなければならない程のものではなかった。
そして、先程から試合当初は少し面倒だなと思っていた連携が、全く上手くいってない。
殆どソルが前に前に出て大剣を振るっているだけ。
もう、これ以上遊べる要素はなさそうだ。
そうヴァジュラが思った時……一つの攻撃魔法が飛来。
「ウキャ?」
だが、その攻撃はヴァジュラに向けて放たれたものではなく、ソルに向けられて放たれた攻撃であった。
一人だけ暴走した仲間に向けられた、怒りの攻撃?
そんな考えが一瞬だけ浮かぶも、ヴァジュラは直ぐにその考えを捨て去った。
「ハァアアアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!」
後方のルーナが放ったウィンドジャベリンは、ソルの体ではなく、炎を纏っている大剣に命中。
普通なら、直撃した瞬間に大剣が弾かれ、大き過ぎる隙が生まれてしまう。
しかし、ウィンドジャベリンがソルの大剣に当たった瞬間、弾いたりソルの体を揺らすことはなく……一瞬にして大剣を纏っていた炎と混ざり合い、更に高火力な炎を生み出した。
「ッ! ウ、キャオ!!!!」
止めとけば良かった。
ヴァジュラの反応速度であれば、その一撃を躱すことが出来た。
もし食らえば、割と余裕が消えてしまうほどのダメージを受けてしまう。
それが解っていながら……ヴァジュラが取った選択は回避ではなく、相殺だった。
「「ッ!!!!!!!!!」」
二人の攻撃がぶつかり合った瞬間、訓練場に……ギルドのロビーにまで聞こえる衝撃音が発生。
多くの者たちが顔をしかめながら耳を両手で塞ぐも、なんとなくヴァジュラなら避けないだろうと思っていたアラッドは、他の者たちよりも早く耳を塞いだお陰でノーダメージだった。
(ルーナって奴……本当に戦況を良く見てたな)
ルーナはただソルの大剣目掛けてウィンドジャベリンを払ったのではなく、タイミング的にはこれ以上ないぐらいジャストな瞬間を狙って放った。
反応速度が高いヴァジュラであれば躱せるが、他のBランクモンスターが相手であれば……避けられず、勝負を決める一撃となっていた可能性が十分にある。
(後衛の中でも、相当レベルが高いな…………あんまり、がっつり後衛として本気で戦ってるところを見てないから断言は出来ないが、後衛としての技量は、ヴェーラに迫るか?)
ヴェーラ・グスタフは、アラッドが同世代の中で一番優秀な魔法使いは誰かと問われれば、真っ先に名前を上げる友人。
その実力は数歳程度の差など無意味。
そんなヴェーラと技量だけであれば迫るかもしれないという言葉は、アラッドにしては中々の称賛だった。
「…………まぁ、それでも、もう終わりだな」
轟炎を纏った大剣と魔力を纏う棒が激突した結果……勝者は、轟炎を纏った大剣だった。
だが、それはただ押し切っただけであり、ヴァジュラの体は後方に押し飛ばされるも、体勢を崩すことはなかった。
「ハアアアアア゛ア゛ア゛っ!!!!???? ッ」
一撃の攻撃力は上がったとしても、それは所詮攻撃力の話。
ソルの身体能力そのものが上がった訳ではないため、攻撃の軌道は相変わらず読みやすく、まだ素早さはヴァジュラの方が上回っていた。
その結果、腹に棒を叩きつけられ、体にあった酸素が全て強制的に吐き出された。
内臓がぐちゃぐちゃ……とまではいかないが、骨がいくつか折れ、内臓が損傷。
ソルは強制的に狂化が解除されてしまい、ダウン。
「くッ!!!!」
相方が倒れてもルーナは諦めず、まずは牽制の攻撃魔法を放ち、その後に本命の攻撃魔法を……っと、瞬時にそこまで考えられる思考力は悪くないが、ヴァジュラを相手に実行するには、圧倒的に移動速度が足りなかった。
「ホキャ、ホキャキャ、ホキャ!!」
「っ!!!!!!!???????」
飛来する攻撃魔法を全て弾き飛ばし、最後に全力…………ではなく、手加減しながら頭部に棒を振り下ろした。
絶妙に手加減されたため、頭蓋骨が割れることはなく、脳も無事である。
だが……その辺りを絶妙に加減された一撃だったからこそ、とんでもない鈍痛がルーナの頭を襲った。
「ふっ、ふっふっふ……フローレンス、決着で良いよな?」
「えぇ、そうですね。この戦いの勝者は、ヴァジュラです」
まだ呼吸を整えられてない前衛と、頭部を両手で抑えながらうずくまる後衛。
どう見ても、ここから続行するのは不可能だった。
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