スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
867 / 1,058

八百六十六話 ある程度強いからこそ、やってしまう?

しおりを挟む
「ウキャ~~~。ウキャッキャッ!!!」

「「ッ!!!!!!!!」」

「あいつ……どこであんな動作覚えたんだ?」

アラッドの視線の先では、ヴァジュラがあるポーズをし、そして今回はソルだけではなく、ルーナまでも怒りを感じずにはいられなかった。

そんなヴァジュラが取ったポーズとは…………お尻ぺんぺんのポーズだった。

(動物の……モンスターの世界に、っていうかこの世界では人間の世界でもそういうポーズはないと思うんだが……にしても、本当に良く似合うな)

アラッドは改めて思った。
猿ほど、お尻ぺんぺんのポーズが似合う生物はいないと。

「…………なんと、言いますか……ガルーレの従魔は、非常に相手を煽ることが上手いですね」

「元がそういうモンスターみたいだからな……まぁ、二人が丁度良い強さを持ってるから、って理由もあるかもしれないな」

「丁度良い強さを持ってるから、ですか?」

「煽るのが好きではあるが、強敵を相手に尻尾を巻いて逃げる性格ではない。寧ろ、主人のガルーレと同じく、強者との戦闘を好むタイプだ」

実戦でスティームとガルーレが戦り合った後、アラッドも冒険者ギルドの訓練場で、ある程度ガチで戦りあった。
結果としてその試合はアラッドの勝利で終わったが、ヴァジュラは試合中……ずっと笑っていた。
試合が終わり、自分が負けてしまったと解っても、楽しさを表すかのように盛大に笑った。

「ふむ? しかし、あのようにからかう時は全力でからかうと……」

「お前には、解らないだろうな」

「口ぶりから察するに、アラッドには理解出来ると?」

「理解は出来る。ただ、納得はしてないから、特に常日頃から行動を移そうとは思わない」

この時、アラッドは…………ある家庭用ゲームを思い出していた。
実情からして、その奥深さからとても家族で楽しむ様なゲームではないという考えを持つ者もそれなりにいた。

(そこまで熱中してプレイしてた訳じゃないけど……偶に遭遇した時、あれは本当にイラっとする)

そのゲームは、隣にいない……全国のプレイヤーと戦えるオンライン機能を備えており、基本的にどの時間でもプレイしている者がいる。
そして、その大乱闘ゲームには、プレイヤーが持つ戦闘力を示す数字がある。

その数字をもとに、数字が近い者とマッチングし、戦う。
数字上……実力が近いと判断された者同士と戦う。
そんな戦いで、そういったプレイを行うプレイヤーが一定数存在する。

「俺はあいつらの事が別に好きでもなんでもない……仮に俺がやられたとしても、それが出来るだけの強さを期待する……それで、倒せたらその時の快感も大きいだろ」

そこそこゲームが好きなアラッドは、そのゲームで煽られたとしてもある程度巻き返して画面越しに中指を立てていた。

とはいえ、毎回勝ててた訳ではない。

「とはいえ、勝てればの話だ。負ければ、それだけ不快感が高まり、爆発する」

「……ハヌーマ、ハヌマーンといった個体からすれば、その様が快感ということでしょうか?」

「さぁな。あいつらがそこまで考えて行動してるかは知らん。モンスターだから、そこまで発想力があるとは思えないが…………何はともあれからかう、煽るという行為は強さがあって初めて成立する行為だ」

「だから、彼女たちではその行為を後悔させることは出来ないと」

「あの二人が、本気になったスティームに勝つイメージが浮かぶか? 悪いが、俺には絶対に浮かばない。対象がガルーレでも構わないぞ。ペイル・サーベルスを使えば……良い戦いは出来るだろうが、それでもそこ止まりだ。絶対に勝てない」

パーティーのリーダーが、自分たちのことをベタ褒めしている。

二人からすれば、顔見知りが身内に煽られているという複雑な光景を見せられていても……なんとも嬉しそうな表情を浮かべてしまう。

「……アラッドは、やはりあの二人がここから覆せるとは、全く考えてないのですね」

「さっきも言っただろ。その可能性が絶対にないとは思ってない。ただ……お前ほど、そういうのに期待はしてねぇ。期待を飛び越えてくる何かを持ってるとは考えてない」

「そうですか……」

それはそれで嬉しい発現であったため、ほんの一瞬ではあるが表情が緩んでしまったフローレンス。

「それでも、今よりも良い試合にはなると思いますよ……ほら」

「ん? …………へぇ~~~~。なるほどな……確かに、面白い手札だな」

戦場に変化が起こった。

その変化を見て、アラッドは小さく笑った。
何故、フローレンスがこのままでは負わないと言いたかったのか、理解出来た。

ただ……それと同時に、別の考えも浮かんだ。

本当に本当に、皮肉が効いてるな、と。


(ふざけんな!!! ふざけんなふざけんな、ふざけんなよこのクソ猿がァアアアアアアアアアア!!!!!)

冷静にならなければ勝てない。
怒りだけで倒せるほど甘い相手ではない。

なにより……冷静さを失えば、相棒とのコンビネーションが上手く機能しないという事は、これまでの経験から痛いほど理解していた。

それでも…………まだ、修行が足りないのか……ソルは怒りを抑えきることが出来ず、爆発してしまった。

だが、結果としてそれは戦況を変える劇薬となった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...