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八百六十六話 ある程度強いからこそ、やってしまう?
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「ウキャ~~~。ウキャッキャッ!!!」
「「ッ!!!!!!!!」」
「あいつ……どこであんな動作覚えたんだ?」
アラッドの視線の先では、ヴァジュラがあるポーズをし、そして今回はソルだけではなく、ルーナまでも怒りを感じずにはいられなかった。
そんなヴァジュラが取ったポーズとは…………お尻ぺんぺんのポーズだった。
(動物の……モンスターの世界に、っていうかこの世界では人間の世界でもそういうポーズはないと思うんだが……にしても、本当に良く似合うな)
アラッドは改めて思った。
猿ほど、お尻ぺんぺんのポーズが似合う生物はいないと。
「…………なんと、言いますか……ガルーレの従魔は、非常に相手を煽ることが上手いですね」
「元がそういうモンスターみたいだからな……まぁ、二人が丁度良い強さを持ってるから、って理由もあるかもしれないな」
「丁度良い強さを持ってるから、ですか?」
「煽るのが好きではあるが、強敵を相手に尻尾を巻いて逃げる性格ではない。寧ろ、主人のガルーレと同じく、強者との戦闘を好むタイプだ」
実戦でスティームとガルーレが戦り合った後、アラッドも冒険者ギルドの訓練場で、ある程度ガチで戦りあった。
結果としてその試合はアラッドの勝利で終わったが、ヴァジュラは試合中……ずっと笑っていた。
試合が終わり、自分が負けてしまったと解っても、楽しさを表すかのように盛大に笑った。
「ふむ? しかし、あのようにからかう時は全力でからかうと……」
「お前には、解らないだろうな」
「口ぶりから察するに、アラッドには理解出来ると?」
「理解は出来る。ただ、納得はしてないから、特に常日頃から行動を移そうとは思わない」
この時、アラッドは…………ある家庭用ゲームを思い出していた。
実情からして、その奥深さからとても家族で楽しむ様なゲームではないという考えを持つ者もそれなりにいた。
(そこまで熱中してプレイしてた訳じゃないけど……偶に遭遇した時、あれは本当にイラっとする)
そのゲームは、隣にいない……全国のプレイヤーと戦えるオンライン機能を備えており、基本的にどの時間でもプレイしている者がいる。
そして、その大乱闘ゲームには、プレイヤーが持つ戦闘力を示す数字がある。
その数字をもとに、数字が近い者とマッチングし、戦う。
数字上……実力が近いと判断された者同士と戦う。
そんな戦いで、そういったプレイを行うプレイヤーが一定数存在する。
「俺はあいつらの事が別に好きでもなんでもない……仮に俺がやられたとしても、それが出来るだけの強さを期待する……それで、倒せたらその時の快感も大きいだろ」
そこそこゲームが好きなアラッドは、そのゲームで煽られたとしてもある程度巻き返して画面越しに中指を立てていた。
とはいえ、毎回勝ててた訳ではない。
「とはいえ、勝てればの話だ。負ければ、それだけ不快感が高まり、爆発する」
「……ハヌーマ、ハヌマーンといった個体からすれば、その様が快感ということでしょうか?」
「さぁな。あいつらがそこまで考えて行動してるかは知らん。モンスターだから、そこまで発想力があるとは思えないが…………何はともあれからかう、煽るという行為は強さがあって初めて成立する行為だ」
「だから、彼女たちではその行為を後悔させることは出来ないと」
「あの二人が、本気になったスティームに勝つイメージが浮かぶか? 悪いが、俺には絶対に浮かばない。対象がガルーレでも構わないぞ。ペイル・サーベルスを使えば……良い戦いは出来るだろうが、それでもそこ止まりだ。絶対に勝てない」
パーティーのリーダーが、自分たちのことをベタ褒めしている。
二人からすれば、顔見知りが身内に煽られているという複雑な光景を見せられていても……なんとも嬉しそうな表情を浮かべてしまう。
「……アラッドは、やはりあの二人がここから覆せるとは、全く考えてないのですね」
「さっきも言っただろ。その可能性が絶対にないとは思ってない。ただ……お前ほど、そういうのに期待はしてねぇ。期待を飛び越えてくる何かを持ってるとは考えてない」
「そうですか……」
それはそれで嬉しい発現であったため、ほんの一瞬ではあるが表情が緩んでしまったフローレンス。
「それでも、今よりも良い試合にはなると思いますよ……ほら」
「ん? …………へぇ~~~~。なるほどな……確かに、面白い手札だな」
戦場に変化が起こった。
その変化を見て、アラッドは小さく笑った。
何故、フローレンスがこのままでは負わないと言いたかったのか、理解出来た。
ただ……それと同時に、別の考えも浮かんだ。
本当に本当に、皮肉が効いてるな、と。
(ふざけんな!!! ふざけんなふざけんな、ふざけんなよこのクソ猿がァアアアアアアアアアア!!!!!)
冷静にならなければ勝てない。
怒りだけで倒せるほど甘い相手ではない。
なにより……冷静さを失えば、相棒とのコンビネーションが上手く機能しないという事は、これまでの経験から痛いほど理解していた。
それでも…………まだ、修行が足りないのか……ソルは怒りを抑えきることが出来ず、爆発してしまった。
だが、結果としてそれは戦況を変える劇薬となった。
「「ッ!!!!!!!!」」
「あいつ……どこであんな動作覚えたんだ?」
アラッドの視線の先では、ヴァジュラがあるポーズをし、そして今回はソルだけではなく、ルーナまでも怒りを感じずにはいられなかった。
そんなヴァジュラが取ったポーズとは…………お尻ぺんぺんのポーズだった。
(動物の……モンスターの世界に、っていうかこの世界では人間の世界でもそういうポーズはないと思うんだが……にしても、本当に良く似合うな)
アラッドは改めて思った。
猿ほど、お尻ぺんぺんのポーズが似合う生物はいないと。
「…………なんと、言いますか……ガルーレの従魔は、非常に相手を煽ることが上手いですね」
「元がそういうモンスターみたいだからな……まぁ、二人が丁度良い強さを持ってるから、って理由もあるかもしれないな」
「丁度良い強さを持ってるから、ですか?」
「煽るのが好きではあるが、強敵を相手に尻尾を巻いて逃げる性格ではない。寧ろ、主人のガルーレと同じく、強者との戦闘を好むタイプだ」
実戦でスティームとガルーレが戦り合った後、アラッドも冒険者ギルドの訓練場で、ある程度ガチで戦りあった。
結果としてその試合はアラッドの勝利で終わったが、ヴァジュラは試合中……ずっと笑っていた。
試合が終わり、自分が負けてしまったと解っても、楽しさを表すかのように盛大に笑った。
「ふむ? しかし、あのようにからかう時は全力でからかうと……」
「お前には、解らないだろうな」
「口ぶりから察するに、アラッドには理解出来ると?」
「理解は出来る。ただ、納得はしてないから、特に常日頃から行動を移そうとは思わない」
この時、アラッドは…………ある家庭用ゲームを思い出していた。
実情からして、その奥深さからとても家族で楽しむ様なゲームではないという考えを持つ者もそれなりにいた。
(そこまで熱中してプレイしてた訳じゃないけど……偶に遭遇した時、あれは本当にイラっとする)
そのゲームは、隣にいない……全国のプレイヤーと戦えるオンライン機能を備えており、基本的にどの時間でもプレイしている者がいる。
そして、その大乱闘ゲームには、プレイヤーが持つ戦闘力を示す数字がある。
その数字をもとに、数字が近い者とマッチングし、戦う。
数字上……実力が近いと判断された者同士と戦う。
そんな戦いで、そういったプレイを行うプレイヤーが一定数存在する。
「俺はあいつらの事が別に好きでもなんでもない……仮に俺がやられたとしても、それが出来るだけの強さを期待する……それで、倒せたらその時の快感も大きいだろ」
そこそこゲームが好きなアラッドは、そのゲームで煽られたとしてもある程度巻き返して画面越しに中指を立てていた。
とはいえ、毎回勝ててた訳ではない。
「とはいえ、勝てればの話だ。負ければ、それだけ不快感が高まり、爆発する」
「……ハヌーマ、ハヌマーンといった個体からすれば、その様が快感ということでしょうか?」
「さぁな。あいつらがそこまで考えて行動してるかは知らん。モンスターだから、そこまで発想力があるとは思えないが…………何はともあれからかう、煽るという行為は強さがあって初めて成立する行為だ」
「だから、彼女たちではその行為を後悔させることは出来ないと」
「あの二人が、本気になったスティームに勝つイメージが浮かぶか? 悪いが、俺には絶対に浮かばない。対象がガルーレでも構わないぞ。ペイル・サーベルスを使えば……良い戦いは出来るだろうが、それでもそこ止まりだ。絶対に勝てない」
パーティーのリーダーが、自分たちのことをベタ褒めしている。
二人からすれば、顔見知りが身内に煽られているという複雑な光景を見せられていても……なんとも嬉しそうな表情を浮かべてしまう。
「……アラッドは、やはりあの二人がここから覆せるとは、全く考えてないのですね」
「さっきも言っただろ。その可能性が絶対にないとは思ってない。ただ……お前ほど、そういうのに期待はしてねぇ。期待を飛び越えてくる何かを持ってるとは考えてない」
「そうですか……」
それはそれで嬉しい発現であったため、ほんの一瞬ではあるが表情が緩んでしまったフローレンス。
「それでも、今よりも良い試合にはなると思いますよ……ほら」
「ん? …………へぇ~~~~。なるほどな……確かに、面白い手札だな」
戦場に変化が起こった。
その変化を見て、アラッドは小さく笑った。
何故、フローレンスがこのままでは負わないと言いたかったのか、理解出来た。
ただ……それと同時に、別の考えも浮かんだ。
本当に本当に、皮肉が効いてるな、と。
(ふざけんな!!! ふざけんなふざけんな、ふざけんなよこのクソ猿がァアアアアアアアアアア!!!!!)
冷静にならなければ勝てない。
怒りだけで倒せるほど甘い相手ではない。
なにより……冷静さを失えば、相棒とのコンビネーションが上手く機能しないという事は、これまでの経験から痛いほど理解していた。
それでも…………まだ、修行が足りないのか……ソルは怒りを抑えきることが出来ず、爆発してしまった。
だが、結果としてそれは戦況を変える劇薬となった。
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