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八百五十九話 挨拶ぐらいしておかないと
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(ひとまず、標的の一体は討伐することが出来た。だが…………俺たちがカルトロッサで活動している間に、他の候補のドラゴンに接触してるかもしれない)
祝勝会を終えた日の夜、アラッドはベッドに寝転がりながら、今後のことについて考えていた。
(グレイスさんに教えてもらった風竜は他にもいるが……次に警戒すべきは、風竜以外のドラゴンか?)
アルバース王国の内部事情を知られていると仮定すれば、時機にアラッドたちが主に風竜の討伐を目標に活動していることがバレてしまう。
(そうなると…………次、狙うはあのドラゴンか)
正直なところ、アラッドはもう少しロッサの密林を探索したかった。
まだ遭遇したことのないモンスターに遭遇できるかもしれない。
ヴァジュラの様な強敵が潜んでいる可能性もある。
だが……無視出来ない国際問題を知っているアラッドとしては、どうしても可能な限り危機となる存在を排除しておきたい。
(…………俺の勝手なエゴ、だよな)
これから狩るであろうドラゴンたちに、特に謝意がある訳ではない。
今、自分と共に活動しているスティームとガルーレに対して、申し訳ないと感じていた。
スティームはアラッドと同じ貴族の令息ではあるが、アルバース王国ではなく、ホットル王国の貴族。
わざわざ、アルバース王国の危機に関する問題の為に動く必要はない。
ガルーレに関しても出身はアルバース王国であるものの、貴族令嬢ではない。
戦争が始まれば戦争に参加するのを求められるが、まだ決定もしてない段階でその為に戦う必要はなかった。
(今度、謝っておくか)
翌日、アラッドは本当に二人に頭を下げ、自分のエゴに付き合わせてしまって申し訳ないと伝えた。
「ぶふっ!! あっはっは!!! アラッドってそういうところ、本当に真面目だよね~~~」
「ガルーレ、そこがアラッドの良いところだよ」
「解ってる解ってるって」
「……二人とも、不満に思ってないのか?」
二人に信用はされている。
そこを疑ってはいないが、それはそれでこれはこれと言える問題だとアラッドは思っていた。
「だって、結局は強いモンスターと戦えて、刺激的な冒険が出来るってことでしょ。不満を感じる要素なんて、全くないじゃん。別に二度とカルトロッサに来れない訳じゃないんだし」
「ガルーレの言う通りだよ」
「そうか…………二人とも、ありがとう」
だから、別にありがとうなんて言わなくてもいいって……と言いかけたガルーレ。
しかし、自分たちに本当に感謝していると伝えたい。それがアラッドのエゴなのだと感じ、素直にその気持ちを受け入れた。
「とはいえ、本当に始まることが決定したら、スティームの実家に伺わないとな」
「…………えっ」
予想外過ぎるアラッドの言葉に、スティームは珍しく面白い表情で固まった。
「あ、アラッド……えっと。なんで、そんな事を?」
「なんでって、スティームはホットル王国の人間だろ。仮にアルバース王国の問題に巻き込むことになれば、こう……挨拶ぐらいしておかないとあれだろ」
「しっかり戦争で死ぬことがないように、なんとかします! 的なことを伝える感じ?」
「そういう感じだ」
ガルーレは何故アラッドがそんな事をしようと考えているのか、なんとなく解るため、先程と同じく真面目だな~~とからかうことはなかった。
「スティームとしては、甘い覚悟で冒険者として活動してる訳ではないというのは解ってる。ただ、それとはまた別の問題なんだ」
「ッ、いや、でもなぁ……」
アラッドのエゴ、とはまた違うと……逆にアラッドと同じことを考える者の方が多いというのは、スティームも解っていた。
(もし僕がアラッドの立場なら………………同じ事、するだろうな~~~)
何も、アラッドはスティームにとって迷惑になる事をしようとしてるわけではない。
ただ、スティームの家族に一応貴族の一員として、戦争で死ぬような真似は起こさないと伝えに行くだけ。
「…………解ったよ。でもさ、手紙じゃダメなの?」
「そういうわけにもいかないだろ。それに、ファルたちに乗って移動すれば、そこまで時間は掛からない筈だ」
ゴリディア帝国が通常の戦争ではなく、侵略戦争を起こさない限り、戦争を行うと決めてから実際に始まるまで、ある程度の猶予がある。
その際にクロたちの移動スピードであれば、ホットル王国まで行って戻ってくるのは不可能ではない。
「ねぇねぇ、時が来たらスティームの実家に行くとして、これからどこに行くの? どんなドラゴンをぶっ倒すの」
「俺としては、アンドーラ山岳に向かおうかと考えている」
「アンドーラ山岳、アンドーラ山岳…………確か、最寄り街がゴルドスだっけ?」
「そうだ」
「次も、風竜を狙わなくて良いの?」
どのドラゴンと戦おうとも、ガルーレ的にはウェルカムであるが、狙うならなるべく風竜の方が良いのではと思っていた。
「向こうが、どのドラゴンに接触するかは解らない。そこまで距離が離れてないというのもあるが、単体の戦闘力であれば、アンドーラ山岳に潜む個体の方が上だと思ってな」
「なるほど~~……オッケー、オッケー。んじゃ、今日準備して、明日にはレッツゴーだね!!」
スティームも異論はなく、三人の次の目的地はアンドーラ山岳の最寄り街、ゴルドスに決まった。
祝勝会を終えた日の夜、アラッドはベッドに寝転がりながら、今後のことについて考えていた。
(グレイスさんに教えてもらった風竜は他にもいるが……次に警戒すべきは、風竜以外のドラゴンか?)
アルバース王国の内部事情を知られていると仮定すれば、時機にアラッドたちが主に風竜の討伐を目標に活動していることがバレてしまう。
(そうなると…………次、狙うはあのドラゴンか)
正直なところ、アラッドはもう少しロッサの密林を探索したかった。
まだ遭遇したことのないモンスターに遭遇できるかもしれない。
ヴァジュラの様な強敵が潜んでいる可能性もある。
だが……無視出来ない国際問題を知っているアラッドとしては、どうしても可能な限り危機となる存在を排除しておきたい。
(…………俺の勝手なエゴ、だよな)
これから狩るであろうドラゴンたちに、特に謝意がある訳ではない。
今、自分と共に活動しているスティームとガルーレに対して、申し訳ないと感じていた。
スティームはアラッドと同じ貴族の令息ではあるが、アルバース王国ではなく、ホットル王国の貴族。
わざわざ、アルバース王国の危機に関する問題の為に動く必要はない。
ガルーレに関しても出身はアルバース王国であるものの、貴族令嬢ではない。
戦争が始まれば戦争に参加するのを求められるが、まだ決定もしてない段階でその為に戦う必要はなかった。
(今度、謝っておくか)
翌日、アラッドは本当に二人に頭を下げ、自分のエゴに付き合わせてしまって申し訳ないと伝えた。
「ぶふっ!! あっはっは!!! アラッドってそういうところ、本当に真面目だよね~~~」
「ガルーレ、そこがアラッドの良いところだよ」
「解ってる解ってるって」
「……二人とも、不満に思ってないのか?」
二人に信用はされている。
そこを疑ってはいないが、それはそれでこれはこれと言える問題だとアラッドは思っていた。
「だって、結局は強いモンスターと戦えて、刺激的な冒険が出来るってことでしょ。不満を感じる要素なんて、全くないじゃん。別に二度とカルトロッサに来れない訳じゃないんだし」
「ガルーレの言う通りだよ」
「そうか…………二人とも、ありがとう」
だから、別にありがとうなんて言わなくてもいいって……と言いかけたガルーレ。
しかし、自分たちに本当に感謝していると伝えたい。それがアラッドのエゴなのだと感じ、素直にその気持ちを受け入れた。
「とはいえ、本当に始まることが決定したら、スティームの実家に伺わないとな」
「…………えっ」
予想外過ぎるアラッドの言葉に、スティームは珍しく面白い表情で固まった。
「あ、アラッド……えっと。なんで、そんな事を?」
「なんでって、スティームはホットル王国の人間だろ。仮にアルバース王国の問題に巻き込むことになれば、こう……挨拶ぐらいしておかないとあれだろ」
「しっかり戦争で死ぬことがないように、なんとかします! 的なことを伝える感じ?」
「そういう感じだ」
ガルーレは何故アラッドがそんな事をしようと考えているのか、なんとなく解るため、先程と同じく真面目だな~~とからかうことはなかった。
「スティームとしては、甘い覚悟で冒険者として活動してる訳ではないというのは解ってる。ただ、それとはまた別の問題なんだ」
「ッ、いや、でもなぁ……」
アラッドのエゴ、とはまた違うと……逆にアラッドと同じことを考える者の方が多いというのは、スティームも解っていた。
(もし僕がアラッドの立場なら………………同じ事、するだろうな~~~)
何も、アラッドはスティームにとって迷惑になる事をしようとしてるわけではない。
ただ、スティームの家族に一応貴族の一員として、戦争で死ぬような真似は起こさないと伝えに行くだけ。
「…………解ったよ。でもさ、手紙じゃダメなの?」
「そういうわけにもいかないだろ。それに、ファルたちに乗って移動すれば、そこまで時間は掛からない筈だ」
ゴリディア帝国が通常の戦争ではなく、侵略戦争を起こさない限り、戦争を行うと決めてから実際に始まるまで、ある程度の猶予がある。
その際にクロたちの移動スピードであれば、ホットル王国まで行って戻ってくるのは不可能ではない。
「ねぇねぇ、時が来たらスティームの実家に行くとして、これからどこに行くの? どんなドラゴンをぶっ倒すの」
「俺としては、アンドーラ山岳に向かおうかと考えている」
「アンドーラ山岳、アンドーラ山岳…………確か、最寄り街がゴルドスだっけ?」
「そうだ」
「次も、風竜を狙わなくて良いの?」
どのドラゴンと戦おうとも、ガルーレ的にはウェルカムであるが、狙うならなるべく風竜の方が良いのではと思っていた。
「向こうが、どのドラゴンに接触するかは解らない。そこまで距離が離れてないというのもあるが、単体の戦闘力であれば、アンドーラ山岳に潜む個体の方が上だと思ってな」
「なるほど~~……オッケー、オッケー。んじゃ、今日準備して、明日にはレッツゴーだね!!」
スティームも異論はなく、三人の次の目的地はアンドーラ山岳の最寄り街、ゴルドスに決まった。
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