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八百四十五話 三流風ではあったが
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「中々見つからないね~~~」
エールを片手に退屈そうな顔を浮かべるガルーレ。
「やっぱり、もう別の場所に移っちゃったのかな」
「可能性は否定出来ないね。でも、本当に移動したなら……なんで属性持ちのドラゴンが移動したんだろうね」
「ん~~~~……あれじゃない。ヴァジュラ並みに強いモンスターがいて、そいつに勝てないと思って移動したとか?」
勝てないと思った相手が生息地一帯にいるという理由で、拠点地を変えることは決して珍しくない。
だが……ドラゴンというプライド高めのモンスターがそういった理由で拠点地を変えるのは少々珍しい。
「ヴァジュラ並みに強いモンスター、か。確かにあの棒を持ってるヴァジュラなら…………でも、あの棒は棒で結構特殊だから、そう簡単に手に入るとは思えないな」
「確かに~~~。ねぇねぇアラッド、アラッドはどんな理由で風竜が逃げたと思う?」
「……まだ、逃げたと決まった訳じゃないだろ。それに……今日ギルドで少し気になる話を耳にした」
「どんな話!?」
あのアラッドが気になる話と口にしたことで、ガルーレの顔から一気に退屈さが消えた。
「最近、ワイバーンに襲撃される冒険者が増えたらしい」
「ふ~~ん? でも、あの密林なら、ワイバーンぐらい生息しててもおかしくないんじゃない?」
「そうだな。ただ、問題は異常に戦い方が上手い個体が複数いるらしい」
戦い方が上手い。
その言葉を聞き、二人の脳内にパッと浮かんだのは、ハヌーマやハヌマーンことヴァジュラたち。
「戦い方が上手いワイバーンかぁ……? 面白そうな個体っぽいけど、なんかこう……上手くイメージ出来ないね」
ワイバーンはストームファルコンのファルと同じく、大きな翼を持っているものの、一部のドラゴンたちの様に手がない。
ここ最近、戦い方が上手いというイメージに当てはまるのがハヌーマたちであったため、スティームも直ぐにどういった戦い方をするのか考え付かなかった。
「戦い方が上手いと言うよりは、狩りが上手いと言うのかもしれないな」
「狩りが……ヒット&アウェイが上手いってこと?」
スティームの考えに、アラッドが同意するように頷く。
「狩りの理想は、それだと俺は思う。勿論、モンスター……俺たち人間にとっても同じ事だが、人によって得意不得意があるから、全員出来るとは限らない」
「……ワイバーンの空を飛べる翼や、ブレス、爪撃などがあれば、出来なくもないってこと?」
「無理ではない。加えて、生息している場所が密林だ。冒険者からの攻撃から身を隠す盾が多い」
手練れの冒険者が放つ攻撃であれば、密林の木々などスパッと切り裂いてしまうが、それでも一瞬とはいえ姿を消されるのは……万が一の可能性を引き起こす。
「ふ~~ん~~~~…………私たちからすれば厄介なモンスターっていうのは解ったけど、なんかあまりそそらないワイバーンね」
「正直なところ、そこには同意だ。ただ、問題なのは何故そういった行動を取るワイバーンが複数もいるのか、という話だ」
「あぁ、なるほど。確かにそれは……多分、何かしらの問題がありそうだね」
「?」
スティームのように直ぐに察することが出来ず、疑問符を頭の上に浮かべながら首を傾げるガルーレ。
「ねぇ、それってそんなに不味いことなの? 私たちにとって厄介なモンスターってのは解るけど、でもそれをどう対処するのかは、私たち側の問題じゃん」
「そうだな。それはそれで正しい。結局のところ、ロッサの密林で活動して、そこで起こることは全て自己責任だ。でもな、ガルーレ。ワイバーンたちも末端とはいえ、ドラゴンの端くれだ」
「端くれ…………つまり、普通のドラゴンと同じく、割と高めのプライドを持ってるってこと?」
「多分な。にもかかわらず、狩りの最適解と言える行動を……しかも複数体もそういった行動を取ってるのは、まず普通じゃない」
ガルーレは少々バカではあるが、正真正銘の超絶バカではない。
つまり、アラッドが何を言いたいのか、ある程度解ってきた。
「もしかしなくても、複数のワイバーンに冒険者の……効率の良い狩り方? を教えたってことだよね」
「内容はあれだが、それで間違ってないと俺は思う」
「それが、風竜かもしれないってことだね」
「俺の超個人的な予想だけどな。ほら……ストールって風竜を覚えてるだろ、スティーム」
「勿論覚えてるよ」
アラッドの父親であるフールが討伐した暴風竜ボレアス……その子供が風竜、ストールである。
「ストールってあれでしょ。意気揚々とアラッドのお兄さんの……ギーラスさんに喧嘩を吹っ掛けたのに、戦闘中に更に強くなったギーラスさんにソロでボコボコにされたダサ風竜のことだよね」
かなり悪辣な覚え方ではあるが、概ねガルーレの記憶に間違いはない。
「そのストールで合ってる。結果としてギーラス兄さん一人に負けたが、それなりに頭は使えた」
ただフールの息子であるギーラスを襲おうとするのではなく、同時に部下のアサルフワイバーンとワイバーンたちにフールが治める街へと向かわせ、襲撃を行った。
結果として事前に察知し、フールを含む多くの猛者たちが出陣して被害はゼロだったが、考える頭を持たないモンスターには取れない選択だったのは間違いない。
「グレイスさんが教えてくれた情報の風竜が、ワイバーンにあれこれ教えてる可能性がある……というのが、俺の予想だ」
ガルーレは「ドラゴンもアラッドみたいなことするんだ~~」と、衝撃は受けれど狼狽えてはいない。
だが、それに対してスティームは完全に食事に手を止め、口元を手で押さえながら固まってしまった。
エールを片手に退屈そうな顔を浮かべるガルーレ。
「やっぱり、もう別の場所に移っちゃったのかな」
「可能性は否定出来ないね。でも、本当に移動したなら……なんで属性持ちのドラゴンが移動したんだろうね」
「ん~~~~……あれじゃない。ヴァジュラ並みに強いモンスターがいて、そいつに勝てないと思って移動したとか?」
勝てないと思った相手が生息地一帯にいるという理由で、拠点地を変えることは決して珍しくない。
だが……ドラゴンというプライド高めのモンスターがそういった理由で拠点地を変えるのは少々珍しい。
「ヴァジュラ並みに強いモンスター、か。確かにあの棒を持ってるヴァジュラなら…………でも、あの棒は棒で結構特殊だから、そう簡単に手に入るとは思えないな」
「確かに~~~。ねぇねぇアラッド、アラッドはどんな理由で風竜が逃げたと思う?」
「……まだ、逃げたと決まった訳じゃないだろ。それに……今日ギルドで少し気になる話を耳にした」
「どんな話!?」
あのアラッドが気になる話と口にしたことで、ガルーレの顔から一気に退屈さが消えた。
「最近、ワイバーンに襲撃される冒険者が増えたらしい」
「ふ~~ん? でも、あの密林なら、ワイバーンぐらい生息しててもおかしくないんじゃない?」
「そうだな。ただ、問題は異常に戦い方が上手い個体が複数いるらしい」
戦い方が上手い。
その言葉を聞き、二人の脳内にパッと浮かんだのは、ハヌーマやハヌマーンことヴァジュラたち。
「戦い方が上手いワイバーンかぁ……? 面白そうな個体っぽいけど、なんかこう……上手くイメージ出来ないね」
ワイバーンはストームファルコンのファルと同じく、大きな翼を持っているものの、一部のドラゴンたちの様に手がない。
ここ最近、戦い方が上手いというイメージに当てはまるのがハヌーマたちであったため、スティームも直ぐにどういった戦い方をするのか考え付かなかった。
「戦い方が上手いと言うよりは、狩りが上手いと言うのかもしれないな」
「狩りが……ヒット&アウェイが上手いってこと?」
スティームの考えに、アラッドが同意するように頷く。
「狩りの理想は、それだと俺は思う。勿論、モンスター……俺たち人間にとっても同じ事だが、人によって得意不得意があるから、全員出来るとは限らない」
「……ワイバーンの空を飛べる翼や、ブレス、爪撃などがあれば、出来なくもないってこと?」
「無理ではない。加えて、生息している場所が密林だ。冒険者からの攻撃から身を隠す盾が多い」
手練れの冒険者が放つ攻撃であれば、密林の木々などスパッと切り裂いてしまうが、それでも一瞬とはいえ姿を消されるのは……万が一の可能性を引き起こす。
「ふ~~ん~~~~…………私たちからすれば厄介なモンスターっていうのは解ったけど、なんかあまりそそらないワイバーンね」
「正直なところ、そこには同意だ。ただ、問題なのは何故そういった行動を取るワイバーンが複数もいるのか、という話だ」
「あぁ、なるほど。確かにそれは……多分、何かしらの問題がありそうだね」
「?」
スティームのように直ぐに察することが出来ず、疑問符を頭の上に浮かべながら首を傾げるガルーレ。
「ねぇ、それってそんなに不味いことなの? 私たちにとって厄介なモンスターってのは解るけど、でもそれをどう対処するのかは、私たち側の問題じゃん」
「そうだな。それはそれで正しい。結局のところ、ロッサの密林で活動して、そこで起こることは全て自己責任だ。でもな、ガルーレ。ワイバーンたちも末端とはいえ、ドラゴンの端くれだ」
「端くれ…………つまり、普通のドラゴンと同じく、割と高めのプライドを持ってるってこと?」
「多分な。にもかかわらず、狩りの最適解と言える行動を……しかも複数体もそういった行動を取ってるのは、まず普通じゃない」
ガルーレは少々バカではあるが、正真正銘の超絶バカではない。
つまり、アラッドが何を言いたいのか、ある程度解ってきた。
「もしかしなくても、複数のワイバーンに冒険者の……効率の良い狩り方? を教えたってことだよね」
「内容はあれだが、それで間違ってないと俺は思う」
「それが、風竜かもしれないってことだね」
「俺の超個人的な予想だけどな。ほら……ストールって風竜を覚えてるだろ、スティーム」
「勿論覚えてるよ」
アラッドの父親であるフールが討伐した暴風竜ボレアス……その子供が風竜、ストールである。
「ストールってあれでしょ。意気揚々とアラッドのお兄さんの……ギーラスさんに喧嘩を吹っ掛けたのに、戦闘中に更に強くなったギーラスさんにソロでボコボコにされたダサ風竜のことだよね」
かなり悪辣な覚え方ではあるが、概ねガルーレの記憶に間違いはない。
「そのストールで合ってる。結果としてギーラス兄さん一人に負けたが、それなりに頭は使えた」
ただフールの息子であるギーラスを襲おうとするのではなく、同時に部下のアサルフワイバーンとワイバーンたちにフールが治める街へと向かわせ、襲撃を行った。
結果として事前に察知し、フールを含む多くの猛者たちが出陣して被害はゼロだったが、考える頭を持たないモンスターには取れない選択だったのは間違いない。
「グレイスさんが教えてくれた情報の風竜が、ワイバーンにあれこれ教えてる可能性がある……というのが、俺の予想だ」
ガルーレは「ドラゴンもアラッドみたいなことするんだ~~」と、衝撃は受けれど狼狽えてはいない。
だが、それに対してスティームは完全に食事に手を止め、口元を手で押さえながら固まってしまった。
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