スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
846 / 1,058

八百四十五話 三流風ではあったが

しおりを挟む
「中々見つからないね~~~」

エールを片手に退屈そうな顔を浮かべるガルーレ。

「やっぱり、もう別の場所に移っちゃったのかな」

「可能性は否定出来ないね。でも、本当に移動したなら……なんで属性持ちのドラゴンが移動したんだろうね」

「ん~~~~……あれじゃない。ヴァジュラ並みに強いモンスターがいて、そいつに勝てないと思って移動したとか?」

勝てないと思った相手が生息地一帯にいるという理由で、拠点地を変えることは決して珍しくない。

だが……ドラゴンというプライド高めのモンスターがそういった理由で拠点地を変えるのは少々珍しい。

「ヴァジュラ並みに強いモンスター、か。確かにあの棒を持ってるヴァジュラなら…………でも、あの棒は棒で結構特殊だから、そう簡単に手に入るとは思えないな」

「確かに~~~。ねぇねぇアラッド、アラッドはどんな理由で風竜が逃げたと思う?」

「……まだ、逃げたと決まった訳じゃないだろ。それに……今日ギルドで少し気になる話を耳にした」

「どんな話!?」

あのアラッドが気になる話と口にしたことで、ガルーレの顔から一気に退屈さが消えた。

「最近、ワイバーンに襲撃される冒険者が増えたらしい」

「ふ~~ん? でも、あの密林なら、ワイバーンぐらい生息しててもおかしくないんじゃない?」

「そうだな。ただ、問題は異常に戦い方が上手い個体が複数いるらしい」

戦い方が上手い。
その言葉を聞き、二人の脳内にパッと浮かんだのは、ハヌーマやハヌマーンことヴァジュラたち。

「戦い方が上手いワイバーンかぁ……? 面白そうな個体っぽいけど、なんかこう……上手くイメージ出来ないね」

ワイバーンはストームファルコンのファルと同じく、大きな翼を持っているものの、一部のドラゴンたちの様に手がない。

ここ最近、戦い方が上手いというイメージに当てはまるのがハヌーマたちであったため、スティームも直ぐにどういった戦い方をするのか考え付かなかった。

「戦い方が上手いと言うよりは、狩りが上手いと言うのかもしれないな」

「狩りが……ヒット&アウェイが上手いってこと?」

スティームの考えに、アラッドが同意するように頷く。

「狩りの理想は、それだと俺は思う。勿論、モンスター……俺たち人間にとっても同じ事だが、人によって得意不得意があるから、全員出来るとは限らない」

「……ワイバーンの空を飛べる翼や、ブレス、爪撃などがあれば、出来なくもないってこと?」

「無理ではない。加えて、生息している場所が密林だ。冒険者からの攻撃から身を隠す盾が多い」

手練れの冒険者が放つ攻撃であれば、密林の木々などスパッと切り裂いてしまうが、それでも一瞬とはいえ姿を消されるのは……万が一の可能性を引き起こす。

「ふ~~ん~~~~…………私たちからすれば厄介なモンスターっていうのは解ったけど、なんかあまりそそらないワイバーンね」

「正直なところ、そこには同意だ。ただ、問題なのは何故そういった行動を取るワイバーンが複数もいるのか、という話だ」

「あぁ、なるほど。確かにそれは……多分、何かしらの問題がありそうだね」

「?」

スティームのように直ぐに察することが出来ず、疑問符を頭の上に浮かべながら首を傾げるガルーレ。

「ねぇ、それってそんなに不味いことなの? 私たちにとって厄介なモンスターってのは解るけど、でもそれをどう対処するのかは、私たち側の問題じゃん」

「そうだな。それはそれで正しい。結局のところ、ロッサの密林で活動して、そこで起こることは全て自己責任だ。でもな、ガルーレ。ワイバーンたちも末端とはいえ、ドラゴンの端くれだ」

「端くれ…………つまり、普通のドラゴンと同じく、割と高めのプライドを持ってるってこと?」

「多分な。にもかかわらず、狩りの最適解と言える行動を……しかも複数体もそういった行動を取ってるのは、まず普通じゃない」

ガルーレは少々バカではあるが、正真正銘の超絶バカではない。

つまり、アラッドが何を言いたいのか、ある程度解ってきた。

「もしかしなくても、複数のワイバーンに冒険者の……効率の良い狩り方? を教えたってことだよね」

「内容はあれだが、それで間違ってないと俺は思う」

「それが、風竜かもしれないってことだね」

「俺の超個人的な予想だけどな。ほら……ストールって風竜を覚えてるだろ、スティーム」

「勿論覚えてるよ」

アラッドの父親であるフールが討伐した暴風竜ボレアス……その子供が風竜、ストールである。

「ストールってあれでしょ。意気揚々とアラッドのお兄さんの……ギーラスさんに喧嘩を吹っ掛けたのに、戦闘中に更に強くなったギーラスさんにソロでボコボコにされたダサ風竜のことだよね」

かなり悪辣な覚え方ではあるが、概ねガルーレの記憶に間違いはない。

「そのストールで合ってる。結果としてギーラス兄さん一人に負けたが、それなりに頭は使えた」

ただフールの息子であるギーラスを襲おうとするのではなく、同時に部下のアサルフワイバーンとワイバーンたちにフールが治める街へと向かわせ、襲撃を行った。

結果として事前に察知し、フールを含む多くの猛者たちが出陣して被害はゼロだったが、考える頭を持たないモンスターには取れない選択だったのは間違いない。

「グレイスさんが教えてくれた情報の風竜が、ワイバーンにあれこれ教えてる可能性がある……というのが、俺の予想だ」

ガルーレは「ドラゴンもアラッドみたいなことするんだ~~」と、衝撃は受けれど狼狽えてはいない。

だが、それに対してスティームは完全に食事に手を止め、口元を手で押さえながら固まってしまった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

処理中です...