スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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八百三十七話 面白いと感じたから

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「ある程度回復したハヌマーンとガルーレが戦い、結果は両者ともノックアウト。相打ちといった形になりました」

「な、なるほど」

ある程度回復した状態とはいえ、相打ちという結果まで持っていったガルーレ。
これまたギルドとしては、評価を改めなければならない結果だった。

「その後…………何を思ったか、俺はハヌマーンに今しがた戦ったガルーレの従魔にならないかと提案しました」

「………………て、テイマーの方達というのは、そういった方法でモンスターを従魔にするのですか?」

「それは解らない」

「そ、そうでしたか」

できれば……できれば、受付嬢としてはそこで「その可能性が高い」といった内容を答えてほしかった。
自身の常識で測れる人物ではない解っていても、全く考えが読めないのは、それはそれで問題である。

「いや、そうだな。理由、理由…………理解出来ない感覚かもしれないが、まずスティームと戦っている時に、ハヌマーンからスティームに対して殺意が感じられなかった」

「なるほど? つまり、戦意だけをスティームさんに向けていたと」

「その通りです。本当に純粋な戦意、闘気を向けていました。そこで俺は思いました……とりあえず、普通のモンスターとは違うと」

相変わらず頭の上に疑問符が浮かぶ受付嬢だが、ハヌマーンが普通のモンスターではない、その点に関してはなんとなく把握出来た。

「これまで遭遇したモンスターの中でも、面白い個体だと感じた…………だからという理由はおかしいのだろうが、そこで俺は三人の中で従魔がいないガルーレの従魔として勧誘するのはどうかと」

「……戦力増強、ということでしょうか」

「そういった捉え方が一般的でしょうが……上手く言葉に表すのが難しいですね。先程言った通り、面白い個体だと感じたんです」

「私も同じく、超面白いモンスターだって感じたね!!」

「面白いというか、珍しい個体ではありますね。アラッドやガルーレ、同業者たちとの模擬戦や試合以外で、あそこまで爽快感のある戦いを体感したことはありませんでした」

実力者二人が面白いと感じ、もう一人の実力者がモンスターとの戦闘に爽快感を感じたと答えた。

それらの感想を聞いて、改めてここ最近冒険者たちの悩みの種になっていたハヌマーンが普通のモンスターではないことを把握。

「そ、それでハヌマーンが、ガルーレさんの従魔になったと」

「流れはざっとこんなところです。他に何か聞いておきたいことなどはありますか?」

「そうですね……後で訊くことになるとは思いますが、ガルーレさんの従魔となったハヌマーン……ヴァジュラが扱う武器を教えていただけますか」

「オッケー!! えっとねぇ、やっぱりまずはあの棒だよね!!!」

自分の仕事が回って来たと思い、ヴァジュラが持つ武器について話し始めた。

ガルーレの説明を聞いている受付嬢は最初の伸縮自在で堅さもある棒に関してほんの少し驚くも、それ以外の武器、攻撃方法に関しては特に驚きを見せなかった。

「あっ、棒と同じで私の時には使ってこなかったけど、あの金の炎。あれも武器と言えば武器……だよね」

「だと思うが、実際に使われたスティームはどう感じた?」

「美しさと恐ろしさの両方を感じたね」

「き、金色の炎、ですか!?」

金色の炎という単語を聞き、受付嬢だけではなく解体士たちまで差はあれど驚きを隠せなかった。

「私たちの見間違いじゃなければ、あれは金色だったよね」

「そうだな。俺は金色に見えた」

「僕も同じく」

「金色の、炎ですか…………その報告は、初めて聞きましたね。しかし、ガルーレさんとの戦闘時には使われなかったと」

「そうなんだよね~~~~。ちょっと期待してたんだけど……やっぱり回復した魔力量が足りなかったかな?」

「……個人的にはその可能性もあると思うが、あの時偶々使えた。その可能性もあると思う」

一度自転車の漕ぎ方を覚えれば、数週間……数か月乗っていなくても、ある程度自由に漕げる。

だが、漕いだは良いが、たった数メートルで両足が地面に付いてしまった。
それを成功したと、会得したと言っても良いのか……怪しいところ。

アラッドはそんな怪しい状態の可能性もあると考えていた。

(とはいえ、ガルーレとの戦闘を楽しんでいれば、スキルの発動。体に魔力を纏っていれば、ごりごり魔力が削られていく。使おうと思った時には、使用に必要だけの魔力量がなかったという可能性も十分に考えられる)

どちらにしろ、ヴァジュラには普通のハヌマーンが持たない力を、武器を持っていることだけは確かだった。

「なるほど……では、その炎の性質などを把握出来たら、ギルドに教えてもらっても良いでしょうか」

「分かりました」

受付嬢も属性魔力に、色が存在するという知識は入っていた。
だが、金色の炎を扱う人間、モンスターがいるという話は一度も聞いたことがなく、どんな情報でも欲しかった。

(あっ、でもこれって…………おそらく、ギルドが情報金を払わなければならない案件よね………………うん、仕方ないよね)

私は悪くない、受付嬢の仕事をしたまでだと自分に言い聞かせ、無理矢理納得するしかなかった。
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