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八百三十六話 予感して避難

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「あ、アラッドさん。い、今……な、なんと?」

「驚くのは解る。だから何度でも言いましょう。例のハヌマーンが、ガルーレの従魔になりました」

「えっ!!!!!?????」

受付嬢は「ええええぇぇええええええええええええええええ!!!!!?????」と大声量で叫びそうになった自身の口を、速攻で抑えた。

受付嬢として、冒険帰りの冒険者たちに失礼な態度を取らない……そういったプロ意識が無意識に発揮された瞬間であった。

「「「「「な、なにぃいいいいいいいい!!!!!?????」」」」」

しかし、アラッドの「例のハヌマーンが、ガルーレの従魔になりました」という言葉は、シンっと静まり返ったタイミングで発現されたこともあり、ばっちりロビーにいる冒険者たちの耳にも入ってしまった。

「う、嘘だろ!!!???」

「ま、待て待て……従魔にしたってことは!!!!」

何かを思い付いた冒険者は、ダッシュで冒険者ギルドの外に出た。
そして数秒後、直ぐにロビーへ帰還。

「ま、マジだ……マジで、ハヌマーンが従魔の証を付けてやがる」

確認して戻って来た冒険者の言葉を聞き、同業者たちは己の目で確認しようと、少し早目の夕食を食べ始めていた冒険者たちまで一目見ようと、ロビーの外に出た。

「あの冒険者が言った通り、既に従魔の証は門兵の方から頂いています。なので、ギルドでガルーレの従魔、後は名前などの手続きをしようかと」

「そ、そうですね。で、では、えっと…………っ、アラッドさんはまず解体場へ来ていただいてもよろしいでしょうか」

「分かりました」

最初に伝えられた言葉は、多数のハヌーマを討伐したから、解体場で解体を頼みたいという申し出だった。

元々アラッドたちはモンスターを討伐すれば、その場で解体していた。
ただ今回は、ヴァジュラが気にしていなくとも、さすがに同族……元部下だった者たちを目の前で解体するのはいかがなものかと思い、死体は解体せず亜空間に放り込んでいた。

「……あの、解体場に付いてくるのはアラッドさんだけでも大丈夫なのですが」

「そのぉ……なんとなく、流れで」

「安心して、ちゃんと登録? 云々かんぬんは後でやるから」

こっそりアラッドの後ろに付いてきていたスティームとガルーレ。
受付嬢の言う通り、解体場に来るのはアラッドだけで十分。

しかし、面倒な波動を感じ取った二人はアラッドと一緒に解体場に行こうと判断。

受付嬢も後から押し寄せる三人にとって面倒な波動をなんとなく感じ取っていたため、強く言うことは出来なかった。

「では、お願いします」

「はい」

アラッドはハヌーマの死体……だけではなく、街にカルトロッサに戻るまでに討伐したモンスターの死体もついでにお願いした。
ギルド専属の解体士たちからすれば、数が増えれば増えるだけ手当が増額されるため、全くもって構わなかった。

「あの、アラッドさん」

「なんですか?」

「もし良ければ、ハヌマーンをどのようにしてテイムしたのかをお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ハヌマーン、ヴァジュラの主人はガルーレなんですが「私説明とか上手くないから、アラッドが説明しちゃって良いよ~~」…………という訳で、俺が説明させてもらいます。まず、最初にハヌマーンと戦ったのはガルーレではなくスティームです」

「な、なるほど?」

もう、まずそこからちょっと意味が解らない。

最初に戦ったのがスティームであるならば、何故スティームの従魔ではないのか。
まずそこに疑問を持つが、受付嬢は質問したい気持ちを抑えて説明の続きを待った。

「俺たちがハヌーマと戦っている間、スティームはハヌマーンと戦い続け、勝利しました」

「…………スティームさん、お一人で戦い、そのまま勝利した……ということでよろしいでしょうか」

「えぇ、言葉の通りです」

「受付嬢さ~~ん、スティームはこれでも一人でBランクモンスターを討伐したことがあるんですよ」

アラッドの活躍話は冒険者ギルドで働いていれば、自然と耳に入ることが多い。
しかし、スティームの活躍はアラッドとセットで入ってくることが多いため、細かい内容を覚えている者が少なかった。

「ち、知識不足で申し訳ありません!!!」

「い、いえ。僕は他国出身の冒険者ですので。それに、アラッドは僕がハヌマーンに勝利したと言ってくれましたが、模擬戦の様な形で終わったので、完全に勝利したとは言えません」

「……相変わらずお前は謙虚だな、スティーム。あの時、やろうと思えば万雷に纏っていた赤雷を伸ばして喉を指すことも出来ただろ」

「どうかな。正直、もう結構ギリギリだったよ」

何はともあれ、ひとまずスティームがソロでハヌマーンを討伐したことは受付嬢も理解した。
だが、まだ肝心の謎が残っている。

「そうかよ……話を戻しますが、その後に二つのポーションを渡し、今度はガルーレがハヌマーンと戦いました」

「………………」

受付嬢はなんとか思考を完全に停止せず、気を失わずに済んだ。

(どうして、勝利した相手に、モンスターにわざわざポーションを?????)

当然、そこに疑問が湧く。
しかし……受付嬢はここで目の前の人物たちのリーダーが、どういった人物なのかを思い出した。

(…………そう、ですね。アラッドさんは私の常識で測れる方ではない。きっと、何かしらの考えがあっての行動なのでしょう)

自身の常識外の人間であると認識し、無理矢理納得するしかなかった。
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