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八百三十五話 早とちり
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(まぁ、当然こうなるよな)
夕食前にカルトロッサに戻って来た三人。
いつも通り街に入るために列に並んでいると、軽い悲鳴、驚きの声、多数の視線が向けられる。
ある程度世間話に耳を傾けている者であれば、巨狼と風鳥を従えている者と言えば、あのアラッドとスティームではないのかという答えに辿り着く。
もう少し詳しい者であれば、その二人のパーティーにアマゾネスの女性冒険者が加わっていることも知っており、噂の者たちを見れたと感心する。
ただ……そこに、情報通である者ですら知らない存在が、彼らと共に行動していた。
「やっぱり、目立ってるね」
「しょうがないよね~~。まっ、別にテイマーの冒険者だっている訳だし、直ぐに慣れてくれるよね」
「ウキャキャ」
主人であるガルーレに撫でられる、ご満悦な表情を浮かべるヴァジュラ。
そんな中、数人の門兵がアラッドたちの元にやって来た。
「冒険者のアラッドさんたち、でよろしいでしょうか」
「えぇ、冒険者のアラッドです」
「同じく冒険者のスティームです」
「二人と同じく冒険者のガルーレで~~す」
ギルドカードまで見せてもらい、目の前の人物たちがあのアラッド一向であると確認が取れ、門兵たちは早速本題に入る。
「アラッドさん、そちらの……白毛の大猿は、アラッドさんの新たな従魔、なのでしょうか」
「いえ、こちらのハヌマーン、ヴァジュラはガルーレの従魔です」
「アラッドの言う通り、こいつは私の従魔ってことになりました!!」
「ウキャキャ!!!」
肩を組み合うガルーレとヴァジュラ。
門兵たちから見ても、ガルーレは当然として、ヴァジュラの浮かべる笑みは……本当に心の底から笑ってる笑みにしか見えなかった。
「な、なるほど。ガルーレさんの、従魔でしたか」
門兵はアラッドよりも、ガルーレよりも年齢が上なのだが、二人が纏う空気や巨狼、白毛の大猿を従える様子から、無意識にさん付けで呼んでいた。
「できれば、ヴァジュラに従魔の証を身に着けさせたいので、中に入る前に頂いても良いですか」
「も、勿論です。直ぐに持ってまいります!!!!!」
門兵たちはダッシュで詰所へ向かい、書類仕事をしていた上司に報告。
テイマーが新たなモンスターを引き連れてくるといった例は過去に何度かあったため、詰め所に冒険者の従魔だと示す証が用意されていた。
「お待たせしました! こちらが、従魔の証になります」
「ありがとうございま~す!」
リストバンドタイプの従魔の証を受け取り、ガルーレは直ぐにヴァジュラに身に着けた。
ヴァジュラもなんとなく必要な物なのだろうと判断し、特に嫌がるそぶりを見せなかった。
その様子を見て、門兵たちは本当にガルーレの従魔なのだと理解した。
そう理解しながら……恐る恐るパーティーのリーダーであるアラッドに声を掛けた。
「あの、アラッドさん。そちらのハヌマーンは、あのハヌマーンで合っているでしょうか」
「そうですね。あなた方が考える、あのハヌマーンで合っています」
「っ、やはりそうでしたか」
「安心してください。言いたい事は解っています」
門兵たちが何を伝えてたいのか、アラッドは予め解っていた。
「解った上で、問題ありません。自分たちで、どうにかしてみせます」
「要らない心配だったようですね」
本人たちが問題無いと言ってるのだから、これ以上自分たちが口を挟むことではないと判断し、門兵たちは仕事場へと戻って行った。
「……因みに、どうするつもりなの、アラッド」
「別に特に難しいことはしない。ただ、俺の考えを伝えるだけだ」
スティームはアラッドがどういった事を考えているのか、ある程度解ってきている。
間違ったことは言わないだろうという信用はある。
だが、何事もなく平和に終わるとは思えなかった。
「ねぇ、アラッド。私に何か出来ることはある?」
アラッドが提案したこととはいえ、ヴァジュラの主人になったガルーレ。
ヴァジュラの為に何か出来ることがあればやりたいという素直で清い思いが浮かぶ。
「大丈夫だ。俺がなんとかする。ありがとな」
ガルーレの申し出を嬉しく思いながらも、アラッドは自分一人でなんとかすると返した。
そして一行はそのまま冒険者ギルドへと向かい、中へと入る。
「大量のハヌーマを討伐しました。なので、解体をお願いします」
「か、かしこまりました!」
素材買い取りの列に並び、アラッドたちの番が回って来た。
まず、大量のハヌーマを討伐したことを報告した。
それを聞いた受付嬢は多くのハヌーマを従えているハヌマーンをアラッドが討伐したのかと思い、テンションが上がって声が上ずってしまった。
周囲でアラッドの言葉を耳にした者たちも、同じ考えに至る。
しかし、それは完全な早とちりだった。
「それとこれは報告なんですが、例のハヌマーンを従魔にしました」
「………………え?」
受付嬢は次にアラッドが発した言葉を理解するまでに、約十秒ほど掛かった。
「あの、今……ハヌマーンを、従魔にした、と、言いましたか?」
「えぇ。正確には、ガルーレの従魔になりました」
アラッドが詳細を言い終えたタイミングで、ギルドのロビーから全ての音が消えた。
夕食前にカルトロッサに戻って来た三人。
いつも通り街に入るために列に並んでいると、軽い悲鳴、驚きの声、多数の視線が向けられる。
ある程度世間話に耳を傾けている者であれば、巨狼と風鳥を従えている者と言えば、あのアラッドとスティームではないのかという答えに辿り着く。
もう少し詳しい者であれば、その二人のパーティーにアマゾネスの女性冒険者が加わっていることも知っており、噂の者たちを見れたと感心する。
ただ……そこに、情報通である者ですら知らない存在が、彼らと共に行動していた。
「やっぱり、目立ってるね」
「しょうがないよね~~。まっ、別にテイマーの冒険者だっている訳だし、直ぐに慣れてくれるよね」
「ウキャキャ」
主人であるガルーレに撫でられる、ご満悦な表情を浮かべるヴァジュラ。
そんな中、数人の門兵がアラッドたちの元にやって来た。
「冒険者のアラッドさんたち、でよろしいでしょうか」
「えぇ、冒険者のアラッドです」
「同じく冒険者のスティームです」
「二人と同じく冒険者のガルーレで~~す」
ギルドカードまで見せてもらい、目の前の人物たちがあのアラッド一向であると確認が取れ、門兵たちは早速本題に入る。
「アラッドさん、そちらの……白毛の大猿は、アラッドさんの新たな従魔、なのでしょうか」
「いえ、こちらのハヌマーン、ヴァジュラはガルーレの従魔です」
「アラッドの言う通り、こいつは私の従魔ってことになりました!!」
「ウキャキャ!!!」
肩を組み合うガルーレとヴァジュラ。
門兵たちから見ても、ガルーレは当然として、ヴァジュラの浮かべる笑みは……本当に心の底から笑ってる笑みにしか見えなかった。
「な、なるほど。ガルーレさんの、従魔でしたか」
門兵はアラッドよりも、ガルーレよりも年齢が上なのだが、二人が纏う空気や巨狼、白毛の大猿を従える様子から、無意識にさん付けで呼んでいた。
「できれば、ヴァジュラに従魔の証を身に着けさせたいので、中に入る前に頂いても良いですか」
「も、勿論です。直ぐに持ってまいります!!!!!」
門兵たちはダッシュで詰所へ向かい、書類仕事をしていた上司に報告。
テイマーが新たなモンスターを引き連れてくるといった例は過去に何度かあったため、詰め所に冒険者の従魔だと示す証が用意されていた。
「お待たせしました! こちらが、従魔の証になります」
「ありがとうございま~す!」
リストバンドタイプの従魔の証を受け取り、ガルーレは直ぐにヴァジュラに身に着けた。
ヴァジュラもなんとなく必要な物なのだろうと判断し、特に嫌がるそぶりを見せなかった。
その様子を見て、門兵たちは本当にガルーレの従魔なのだと理解した。
そう理解しながら……恐る恐るパーティーのリーダーであるアラッドに声を掛けた。
「あの、アラッドさん。そちらのハヌマーンは、あのハヌマーンで合っているでしょうか」
「そうですね。あなた方が考える、あのハヌマーンで合っています」
「っ、やはりそうでしたか」
「安心してください。言いたい事は解っています」
門兵たちが何を伝えてたいのか、アラッドは予め解っていた。
「解った上で、問題ありません。自分たちで、どうにかしてみせます」
「要らない心配だったようですね」
本人たちが問題無いと言ってるのだから、これ以上自分たちが口を挟むことではないと判断し、門兵たちは仕事場へと戻って行った。
「……因みに、どうするつもりなの、アラッド」
「別に特に難しいことはしない。ただ、俺の考えを伝えるだけだ」
スティームはアラッドがどういった事を考えているのか、ある程度解ってきている。
間違ったことは言わないだろうという信用はある。
だが、何事もなく平和に終わるとは思えなかった。
「ねぇ、アラッド。私に何か出来ることはある?」
アラッドが提案したこととはいえ、ヴァジュラの主人になったガルーレ。
ヴァジュラの為に何か出来ることがあればやりたいという素直で清い思いが浮かぶ。
「大丈夫だ。俺がなんとかする。ありがとな」
ガルーレの申し出を嬉しく思いながらも、アラッドは自分一人でなんとかすると返した。
そして一行はそのまま冒険者ギルドへと向かい、中へと入る。
「大量のハヌーマを討伐しました。なので、解体をお願いします」
「か、かしこまりました!」
素材買い取りの列に並び、アラッドたちの番が回って来た。
まず、大量のハヌーマを討伐したことを報告した。
それを聞いた受付嬢は多くのハヌーマを従えているハヌマーンをアラッドが討伐したのかと思い、テンションが上がって声が上ずってしまった。
周囲でアラッドの言葉を耳にした者たちも、同じ考えに至る。
しかし、それは完全な早とちりだった。
「それとこれは報告なんですが、例のハヌマーンを従魔にしました」
「………………え?」
受付嬢は次にアラッドが発した言葉を理解するまでに、約十秒ほど掛かった。
「あの、今……ハヌマーンを、従魔にした、と、言いましたか?」
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