スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
814 / 1,043

八百十三話 そうなれば、一直線に、最奥まで

しおりを挟む
雪山の主、雪竜グレイスに挨拶を済ませた後……アラッドたちはそのままクロとファルの背に乗って次の目的地に向かっていた。

「あれだね~~、解ってはいたけど、起こるかもしれない戦争に向けて出来る事は限られてるね」

「そうだな……よくよく考えてみれば、当然の話だ」

アラッドたちはグレイスから教えてもらった情報を頼りに、人間に迷惑を掛けるタイプ……もしくは人間に迷惑を掛けることを屁とも思っていないタイプのドラゴンの元へ向かっていた。

そんな中でも、今回討伐しようと思っているドラゴンは……風属性のドラゴン。

他にも気になるドラゴンは何体かいたものの、ウィラーナの雪原で起こった件を考慮すれば、やはりゴリディア帝国との戦争が起こる可能性は非常に高い。

三人としては、ゴリディア帝国に利用される可能性が高い。
その為、可能性のある風竜は一体でも多く討伐しておきたい。

ただ……かつてフールにソロ討伐された暴風竜ボレアスの子、暴風竜ボレアスの強さに敬意を抱いていた風竜たち全てが、アルバース王国にいるとは限らない。

アラッドの頭に入っているだけでも、ゴリディア帝国とナルターク王国、ホットル王国といった国土の広さに関してはそこまで大きな差はない国々が存在する。

「でも、本当に始まってしまう前に、一体でも多く倒したいね」

「そうだな…………まぁ、さすがにゴリディア帝国の連中も侵略戦争を仕掛けてこないだろうから、可能なら他国に行って討伐するのもありだな」

侵略戦争が始まってしまうと、それは権利や金などの奪い合いではなく……国土の奪い合いとなる。

アラッドの甘い幻想などではなく、先にゴリディア帝国がそれを始めてしまうと、当然ながらアルバース王国もただ守るという選択肢を取る……だけでは済まない。

仮にゴリディア帝国が侵略戦争を仕掛けて来れば、申し訳ないと思いつつも、アラッドはスティームとガルーレを置いていく。
そしてキャバリオン、赤龍帝を持つフールと共に一直線に駆け抜け……全てを斬り倒しながら王都を攻め落とす。

さすがに無理が過ぎると思われるかもしれないが、全体の指揮官トップが許可を出し、一定以上の実力を持つ強者たちの部隊を分散して出動させれば……ゴリディア帝国も猛者たちを王都だけに集中させることは出来ない。

「ねぇ、仮に向こうがそれを仕掛けてきたらどうするの?」

「……最悪の結果になるだろうな。ただ、俺はなるべく早く終わらせたい」

「それは、一直線に本陣? まで突き進んで大将首を取るってことかしら」

「そうなるな…………俺は、強者と戦うことに楽しさを感じるタイプだが、それでも……殺し合いをしたい訳じゃない」

「……そうだったね。前にも同じ事言ってた」

国に仕える騎士、魔術師たちはそういう時こそ前線に立って戦うのが役目。

だが、それを目指した者たちが……全員他国の戦闘者たちとの殺し合いを求めていたのか? 
答えは……否である。

誇りやそういった家系に生まれたから、憧れを持ってしまったから。
理由は様々ではあるが、多くの者たちは……何かを守りたいという気持ちを持って騎士に、魔術師になった。

可能であれば、アラッドはそういった者たちを斬り殺したくはなかった。

(一直線に進んで、大将がいる場所まで向かう、か……………………まだ、立ててない。それを、現実として受け入れないとね)

チラッと友人の顔を……眼を見て、スティームはアラッドの考えの中に、自分やガルーレが入ってないことに気付いていた。

(重要な場所には、当然実力者たちがいる。それこそ……冒険者で例えるなら、BランクやAランク並みの冒険者たちが複数いてもおかしくない)

今のところ、スティームの切り札はランク八の武器である万雷と、色の付いた魔力……赤雷。

ウィラーナでの活動時、ブリザードパンサーなどのBランクモンスターをファルと共に討伐、ソロで戦った経験もあり、レベルアップして着実に魔力量は増えた。

伯爵家の令息であり、ガッツリ魔法もいけるタイプというわけではないが、魔力量は割と多い方であり……赤雷を使う上で雀の涙以上は上昇している。
しかし、現状の魔力量では一分以上赤雷を纏い続けて戦うのは厳しい。

(うん、仕方ない…………というか、そもそもゴリディア帝国が侵略戦争を仕掛けてくるかは、まだ分からない。でも…………そうだね。もう少し焦った方が良さそうだね)

自然、少し……落ちない様にファルを掴んでいた力が強まる。

「けど、私たちで裏の人間を潰したんだし、ビビッてそういう考えがなくなれば良いのだけどね」

「だな。上には上の人たちの考えがあるのだろうが、俺たち冒険者からすれば、基本的に良い迷惑だ」

「割と血の気の多いって言うか、そういう功績も手に入れられたらって考える人も多いんじゃないの?」

「いるにはいるだろうな。ただ……戦争だぞ? 向こうの戦力……というか、こっちの戦力もそこまで詳しくは知らないが、圧倒的な差があるならそもそも仕掛けてこないだろ。それを考えれば、ある程度実力がある人でも……それこそ、Aランクの冒険者であっても死ぬときは死ぬはずだ」

アラッドからすれば、冒険者としての功績をそこで見い出そうとする者の考えは全く理解出来なかった。
しおりを挟む
感想 466

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...