802 / 1,032
八百一話 反省点もあった
しおりを挟む
「そういえば、あれ以来あのアサシンたちは襲って来ないね」
アラッドたちがウィラーナで活動を始めてから既に二週間以上が経過していた。
今日も今日とて元気に雪原地帯を探索している三人と二体。
「良いことじゃないか」
「……アラッドって、人と命を懸けた戦いはあんまり好きじゃないタイプ?」
「ガルーレ、そもそもそういった戦いを好む者は多くないと思うぞ」
「いや、それは勿論解ってるって。ただ、アラッドは強い敵との戦闘を好むタイプじゃん。だからあぁいった連中との戦いも楽しんでるんじゃないかと思って」
先日、自ら一対二という不利な戦況を選択して手練れのアサシン二人と戦ったガルーレ。
戦闘の中でヘイルタイガーとの戦闘で研ぎ澄まされていた感覚が更に磨かれ、立体感知のスキルを会得。
加えて……集中力が極限まで高まった結果、ゾーンに突入したこともあり……実際のところガルーレはアサシンとの戦闘を楽しんでいた部分があった。
「さぁ、どうだろうな。少なくとも、昨日の戦いには楽しめる余裕は欠片もなかった」
「うっ……それは、申し訳ない」
「いや、分断されたのはガルーレのせいではない。俺の判断が遅れたからだ。ただ……そういうのを除いても、どうだろうな…………」
ガルーレの言う通り、強者との戦闘を好む。
だが、裏の連中との戦いに関しては自分だけが狙われているのであれば、そこまで心配などの気持ちは湧き上がらない。
しかし……自分以外の者も狙われているのであれば、話は別。
そこがアラッドの楽しめるか否かの境界線でもあった。
「そ、そっか……あっ、そういえばスティームもアサシンを相手に瞬殺したんでしょ」
「え、うん。瞬殺……そう、だね。初撃で倒すことは出来なかったけど、赤雷を使ったお陰でなんとか速攻で倒すことは出来たよ。僕としては、少し失敗したなって思うけど」
「なんで? あのレベルのアサシンを相手に瞬殺って凄いことじゃん。それに、強い相手ほど緊急時なら、直ぐに戦いを終わらせられるに越したことないでしょ」
強い相手ほど、瞬殺できるに越したことはない。
それはそれで正しい考えなのは間違いない。
ただ、スティームにとって相手が裏の連中というのが問題だった。
「早く倒せるのは勿論良いんだけど、相手が僕たちの前に現れた四人だけという確証はないでしょ」
アサシン二人を瞬殺することに成功したスティーム。
十分な功績ではあるが、理想は初撃での討伐。
相手が並のアサシンではなかったこともあり、数秒ほど掛かってしまった。
アラッドと共に行動する前と比べてレベルは上がっており、魔力総量も増えている。
そのため、赤雷を纏える時間も増えているのだが……それでも戦闘終了後には温くはない疲労が襲い掛かる。
「……確かに、あの時は俺もそこまで考えられていなかったな」
普段の探索中にも言えるところだが、自分たちを狙っている存在が、目の前の存在だけとは限らない。
裏の連中、同じ組織に属してるであろうことを考えれば、二人はもっと他にもアサシンが隠れているのではないかと警戒しながら戦うべきだった。
「それに、倒し終えた時にちょっと気が抜けたというか、油断しちゃってたからね。あれは良くなかった……反省しないとね」
「それを言われると……私もクロに我儘を言ったのを反省しないとってなっちゃうわね」
わざわざ数的不利な状況に足を突っ込むなど、他の同業者たちが聞けば……大半は「こいつ頭おかしいんじゃないか?」と首を捻る。
「ガルーレの場合は、こう……何か来る感覚があったんだろ。俺は俺でそこは解らなくもないから……反省する必要はないと思うが、もう少しリスクヘッジは考慮してほしいかな」
「あれでも結構調子に乗らずに頑張ったんだけどな~~~。そうなると、やっぱりもう少し武器を使ってみるべきかな」
基本的にガルーレは徒手格闘で戦う戦闘スタイル。
故郷で暮らしていた頃に武器を扱う同族から指導を受けているため、素人よりは扱えるが、専門家には敵わない。
「……ならガルーレ。こいつを使うか?」
アラッドは亜空間から一本の長剣を取り出した。
それは……かつての英雄が使用していた相棒、ランク八の剛柔であった。
「いや、え、えっと……一応三人の物ってことは解ってるんだけど、ここら辺に生息しているモンスターだと、オーバーキルにならない?」
「かもしれないな。けど、とりあえず技術を学ぶなら、こいつを使ってた方が良いだろ。名剣も、使わずにほこり被ったままなら、在庫処分品と変わらないからな」
ランク八の名剣に対して、それは言い過ぎでは? とツッコみたくなるものの、アラッドの言いたい事も解るガルーレ。
「…………分かった。それじゃあ、使わせてもらうわ」
名剣を使うとなれば、それはそれでテンションが上がる。
帯剣して十数分後には、早く手頃なモンスターを切ってみたいという思いが湧き上がって来た。
(しかし、ガルーレの言う通り……剛柔を使うのであれば、Cランクモンスターで最低ラインか…………っ!!!???)
周囲にBランクモンスターをいないかと周囲を見渡そうとした瞬間……雪山の方に意識を奪われた。
アラッドたちがウィラーナで活動を始めてから既に二週間以上が経過していた。
今日も今日とて元気に雪原地帯を探索している三人と二体。
「良いことじゃないか」
「……アラッドって、人と命を懸けた戦いはあんまり好きじゃないタイプ?」
「ガルーレ、そもそもそういった戦いを好む者は多くないと思うぞ」
「いや、それは勿論解ってるって。ただ、アラッドは強い敵との戦闘を好むタイプじゃん。だからあぁいった連中との戦いも楽しんでるんじゃないかと思って」
先日、自ら一対二という不利な戦況を選択して手練れのアサシン二人と戦ったガルーレ。
戦闘の中でヘイルタイガーとの戦闘で研ぎ澄まされていた感覚が更に磨かれ、立体感知のスキルを会得。
加えて……集中力が極限まで高まった結果、ゾーンに突入したこともあり……実際のところガルーレはアサシンとの戦闘を楽しんでいた部分があった。
「さぁ、どうだろうな。少なくとも、昨日の戦いには楽しめる余裕は欠片もなかった」
「うっ……それは、申し訳ない」
「いや、分断されたのはガルーレのせいではない。俺の判断が遅れたからだ。ただ……そういうのを除いても、どうだろうな…………」
ガルーレの言う通り、強者との戦闘を好む。
だが、裏の連中との戦いに関しては自分だけが狙われているのであれば、そこまで心配などの気持ちは湧き上がらない。
しかし……自分以外の者も狙われているのであれば、話は別。
そこがアラッドの楽しめるか否かの境界線でもあった。
「そ、そっか……あっ、そういえばスティームもアサシンを相手に瞬殺したんでしょ」
「え、うん。瞬殺……そう、だね。初撃で倒すことは出来なかったけど、赤雷を使ったお陰でなんとか速攻で倒すことは出来たよ。僕としては、少し失敗したなって思うけど」
「なんで? あのレベルのアサシンを相手に瞬殺って凄いことじゃん。それに、強い相手ほど緊急時なら、直ぐに戦いを終わらせられるに越したことないでしょ」
強い相手ほど、瞬殺できるに越したことはない。
それはそれで正しい考えなのは間違いない。
ただ、スティームにとって相手が裏の連中というのが問題だった。
「早く倒せるのは勿論良いんだけど、相手が僕たちの前に現れた四人だけという確証はないでしょ」
アサシン二人を瞬殺することに成功したスティーム。
十分な功績ではあるが、理想は初撃での討伐。
相手が並のアサシンではなかったこともあり、数秒ほど掛かってしまった。
アラッドと共に行動する前と比べてレベルは上がっており、魔力総量も増えている。
そのため、赤雷を纏える時間も増えているのだが……それでも戦闘終了後には温くはない疲労が襲い掛かる。
「……確かに、あの時は俺もそこまで考えられていなかったな」
普段の探索中にも言えるところだが、自分たちを狙っている存在が、目の前の存在だけとは限らない。
裏の連中、同じ組織に属してるであろうことを考えれば、二人はもっと他にもアサシンが隠れているのではないかと警戒しながら戦うべきだった。
「それに、倒し終えた時にちょっと気が抜けたというか、油断しちゃってたからね。あれは良くなかった……反省しないとね」
「それを言われると……私もクロに我儘を言ったのを反省しないとってなっちゃうわね」
わざわざ数的不利な状況に足を突っ込むなど、他の同業者たちが聞けば……大半は「こいつ頭おかしいんじゃないか?」と首を捻る。
「ガルーレの場合は、こう……何か来る感覚があったんだろ。俺は俺でそこは解らなくもないから……反省する必要はないと思うが、もう少しリスクヘッジは考慮してほしいかな」
「あれでも結構調子に乗らずに頑張ったんだけどな~~~。そうなると、やっぱりもう少し武器を使ってみるべきかな」
基本的にガルーレは徒手格闘で戦う戦闘スタイル。
故郷で暮らしていた頃に武器を扱う同族から指導を受けているため、素人よりは扱えるが、専門家には敵わない。
「……ならガルーレ。こいつを使うか?」
アラッドは亜空間から一本の長剣を取り出した。
それは……かつての英雄が使用していた相棒、ランク八の剛柔であった。
「いや、え、えっと……一応三人の物ってことは解ってるんだけど、ここら辺に生息しているモンスターだと、オーバーキルにならない?」
「かもしれないな。けど、とりあえず技術を学ぶなら、こいつを使ってた方が良いだろ。名剣も、使わずにほこり被ったままなら、在庫処分品と変わらないからな」
ランク八の名剣に対して、それは言い過ぎでは? とツッコみたくなるものの、アラッドの言いたい事も解るガルーレ。
「…………分かった。それじゃあ、使わせてもらうわ」
名剣を使うとなれば、それはそれでテンションが上がる。
帯剣して十数分後には、早く手頃なモンスターを切ってみたいという思いが湧き上がって来た。
(しかし、ガルーレの言う通り……剛柔を使うのであれば、Cランクモンスターで最低ラインか…………っ!!!???)
周囲にBランクモンスターをいないかと周囲を見渡そうとした瞬間……雪山の方に意識を奪われた。
628
お気に入りに追加
6,112
あなたにおすすめの小説
クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
見よう見まねで生産チート
立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します)
ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。
神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。
もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ
楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。
※基本的に主人公視点で進んでいきます。
※趣味作品ですので不定期投稿となります。
コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる