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七百九十五話 まずは飯

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「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ、はぁ………………ふぅーーーーーーー」

上等な魔力回復のポーションを飲み干し、一応呼吸を整えたアラッド。

「あ、アラッド。だ、大丈夫、なの?」

「あぁ……一応な。魔力切れ寸前まで魔力を使ったからちょっと危なかったが、とりあえずは動ける」

完全に魔力切れを起こしてしまうと、自力では中々抗えない倦怠感に襲われてしまう。

アラッドはなんとかそうなる一歩手前まで魔力を残していた。

「そ、そっか。それは良かったよ。うん、本当に…………ただ、ちょっと凄過ぎない」

吹雪が止んだ空を見上げながら、心の底から思ったことを口にしたスティーム。

雪崩に対して強烈な遠距離攻撃を叩き込み、粉砕する。
そこまでであれば、スティームもアラッドならなんとか出来る、出来てしまうと思っていた。

だが……そもそもな話、一人の人間が天候をどうこうしてしまう、なんて事は考えない。

(僕の見間違いじゃなきゃ……間違いなく、角が生えていた。あれは……狂化の、副作用? それともあの羅刹という刀を使った影響?)

狂化を使用し、額の右側に角が生えた姿は、鬼人族のそれに近かった。

(………………うん、変な事を考えるのは止めよう)

可能性としては考えられる、思わず脳内に浮かんでしまった内容はアラッドに尋ねられなかった。

「……かもしれないな。羅刹あっての結果だと思うがな。ただ……斬っただけで、消し飛ばしたわけではない。時期にまた振り出すかもしれない」

「分かった。ただ、移動は勿論ファルの背中に乗ってだよ」

「クルルルゥウウウウウっ!!!!」

「…………分かった。お言葉に甘えさせてもらう」

切れかかっていた魔力を回復したとはいえ、疲労が完全に消えたわけではない。

何故、スノウジャイアントが起こした雪崩の速度が異常だったのか……そもそも雪崩を起こしたスノウジャイアントは、自らの意志でアラッドたちを狙ったのか。

解らない事が多く、万が一のことを考えれば体力の消費を避けなければならない。

(無事でいてくれよ……ガルーレ、クロ)



「ん、んん…………ここは、洞窟?」

「ワゥっ!!」

「あっ、クロ!!!!」

ほんの少しの間、自身の周囲がどういった状況になっているのか解らなくなっていた。

だが、クロが隣にいると解り、直ぐに安心感を得た。

「私がボケてなかったら、さっきまでヘイルタイガーと戦ってた筈……そういえば、急に雪崩がきたよね、クロ」

「ワゥ」

「だよね~~~。ヘイルタイガーとの戦いで結構疲れてはいたけど、全く反応出来なかったのはヤバいよね~~~」

とりあえず自分の生死、諸々の状況を確認したガルーレはアイテムバッグの中から燃える木々とモンスター肉、そして調味料を取り出した。

「クロも食べるでしょ」

「ワゥっ!!」

「んじゃ、じゃんじゃん焼いていこっか」

腹が減っては戦は出来ぬ、ということわざを知っている訳ではない。

本来であれば、直ぐにクロの背に乗ってアラッドたちと合流うべきなのだが、ポーションを飲んで傷を癒したとしても、体力までは完全回復はしない。

イレギュラーが重なれば、今の自分の状態ではクロの足手まといになってしまうと判断し、今は肉を食らって完全回復すると決めた。

(結構ヤバい雪崩……だったよね? まぁでもアラッドとスティーム……ファルは大丈夫よね。あれだけ雪崩っていう現象が速いのはびっくりしたけど)

肉を焼きながら、あれは何だったのかと考え込む。

ヘイルタイガーとの戦闘で色々と消耗していたとはいえ、僅かではあるがイレギュラー味を感じずにはいられなかった。

(……仮にイレギュラーだとしたら、どういうイレギュラーなんだろ。モンスターの中に雪崩を引き起こす個体はいるらしいけど……アラッドやスティームだったら、反応出来そうよね)

雪崩と何度も遭遇した経験は無い。

ただ、アラッドとスティームの二人ならという信頼感はあった。

(二人が反応出来なかったってのを考えると……普通の雪崩ではない、って考えて良さそうね)

肉が焼き上がり、クロと半分に別けながら、足りないことが確定しているため、再度焼き始める。

「…………そう言えば、この前私たちを嗤ってた連中がいたわね」

ガルーレの脳内に、以前ギルド内で自分たちの会話を嗤った同業者たちが浮かんだ。

「……………………それはないか」

自分たちを狙うのであればという候補が浮かぶも、直ぐに候補から消した。

(陰で嗤う様なことしか出来ない連中に、直接何かする度胸なんてないよね~~)

見下してる考えだと指摘されても、ガルーレは特にその考えを変えるつもりはなかった。

(でも、あの雪崩がイレギュラーだと仮定して……私たちに恨みがある人物の仕業って考えると………………誰だ?)

先日、アラッドが改めて話してくれた、アラッドの逆鱗隣りをなぞるという、なんとも恐ろしい愚行を起こしたギルという人物が頭に浮かぶも、また直ぐに候補から消した。

アラッドの経験、自身の経験、スティームの経験と、これまで三人が経験した、関わってきた人物や事件を思い出していくが……それらしい人物を思い出していくが、中々候補が定まらない。

そんな中、ふとアラッドとスティームが体験したある件を思い出した。
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