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七百九十一話 贔屓したくなる存在?
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「アラッド、何を話してたの?」
「昼間、俺たちを嗤った連中がいただろ」
「いたわね、そんな連中」
「その連中たちの態度に関して、ギルドの職員が謝罪してに来たんだよ」
「………………え?」
部屋に戻って来たアラッドに何があったのか尋ねた。
返ってきた答えを耳にし……驚き固まってしまった。
「ちょ、ちょっと待って。そんな理由で、ギルド職員がわざわざ謝罪しに来たの?」
「大雑把に言うと、それで合ってる」
「……嘘、じゃないのよね」
驚き固まったのは、ガルーレだけではなくスティームも驚き固まっていた。
「あぁ、勿論だ」
「え、えっと……えっと、あれかな。アラッドのお父さんが、昔ウィラーナに迫る脅威を撃退したことがあるから、とか?」
「そういった話は聞いたことがない」
「「えぇ~~~~……」」
無意識にハモってしまった二人。
だが、そんな偶然を気にする素振りすら起きない程、二人にとってある意味衝撃的な内容だった。
「そういう反応になるのは解る。俺も謝罪の理由を聞いた時、そんな感じの反応になった。ただな、どうやら俺が冒険者として初めて活動した街で起こった一件が原因みたいでな」
「アラッドが冒険者として初めて活動した街で………………あっ、もしかして絡んできたルーキーを、結果的に追放した一件?」
スティームの予想に対し、アラッドは苦笑いを浮かべながら頷いた。
「その一件だ。どうやら、この街の冒険者ギルドはウィラーナを拠点として活動してる冒険者たちが、追放せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない未来に怯えてたらしい」
「……アラッドって、そういうタイプだっけ?」
ここ何か月も共に行動をしてるガルーレ。
しかし、基本的に知っている部分は、冒険者として活動を始めてからのアラッド。
アラッドの全てを知ってるとは言えない。
「そういうタイプではないと、自分では思ってる。その件に関しても……確かに逆鱗の隣をなぞられはしたが、最終的な判断を下したのは冒険者ギルドだ」
「そうよね~~~。って、そういう事情を考えれば、冒険者たちがただ単にやらかしただけよね」
「そうだな。そう言えるんだが……とりあえず、今回の謝罪の件に関しては、冒険者ギルドとしてはウィラーナで活動する冒険者を失わないようにするための謝罪だっただろうな」
冒険者として活動していれば、陰口の叩き合い。
直接喧嘩することも珍しくない。
ロビーで喧嘩されるのは迷惑ではあるが、ちゃんとルールを決めて訓練場で模擬戦やら試合やらで私情をぶつけ合うことに関しては、冒険者ギルドも止めはしない。
そこを理解しているからこそ、アラッドはギルド職員がわざわざ謝罪してきた理由を把握出来た。
「おそらく長期間滞在しないであろうアラッドよりも、ウィラーナを拠点としてる冒険者の方がいざという時の戦力になるから、ってことだね」
「…………なんかムカつくわね~~~~」
突っ走る特攻隊長タイプではあるが、決して本物のバカではないガルーレ。
冒険者ギルド側の考え、気持ちは解らなくもないが、それでも納得出来るか否かは別問題。
「仕方ない。それに、わざわざ冒険者ギルド側が謝罪に来たという点を考えれば、悪くはない」
「……それが広まったら、冒険者ギルドがアラッドを贔屓してるって噂が流れたりしない?」
ガルーレの懸念は最もなものだった。
だが、アラッドはその点に関してはそこまで気にしていなかった。
「俺にそのつもりはなくとも、俺は侯爵家の令息だ。冒険者ギルドが所属している冒険者たちのせいで、侯爵家と敵対したくないと考えるのは至極当然……冒険者たちも、生々しい現実が……パーティーのリーダーを務めている冒険者であれば、ルーキーでも解る筈だ」
「確かに、人を纏める立場の経験者であれば、ギルドの考えを理解出来そうだね」
「だろ。加えて…………こういう事を言うと、人々の自由を奪っている様に聞こえるかもしれないが、俺たちに対して俺たちの陰口? を、わざわざ聞こえるか否かの距離で喋る必要はあるか?」
「必要があるか否かというのが論点なら、僕はないと思うね」
「私も同じね」
二人とも即答だった。
そんな二人の反応を嬉しく感じ、アラッドは小さな笑みを零す。
「ふふ……まっ、俺が何を言いたいかっていうと、わざわざする必要がないことをしてしまう奴らのせいで、組織が被害を被るのは避けたい……だからこそ、冒険者ギルドが多少は俺たちを贔屓するのは当然だと思うんだよ」
アラッド自身、特に贔屓されたいとは思っていない。
だが、アラッドはこれまで何度も冒険者ギルド的に助かる功績を上げてきた。
スティームやガルーレも一緒に行動し、功績を上げているが……それでも、間違いなくその中心に居るのはアラッドである。
冒険者ギルドが多少贔屓したくなるのは、冷静に考えずとも解る内容である。
「それに、そういった噂だけで判断して負の感情を向けてくるような奴らとは、特に仲良くしたいとは思わないからな」
アラッドの意見には二人とも賛成であり、一応モヤモヤとした感情は消え、翌日の探索に取り組むことが出来た。
しかし、それから数日後……街の外で事件が起きた。
「昼間、俺たちを嗤った連中がいただろ」
「いたわね、そんな連中」
「その連中たちの態度に関して、ギルドの職員が謝罪してに来たんだよ」
「………………え?」
部屋に戻って来たアラッドに何があったのか尋ねた。
返ってきた答えを耳にし……驚き固まってしまった。
「ちょ、ちょっと待って。そんな理由で、ギルド職員がわざわざ謝罪しに来たの?」
「大雑把に言うと、それで合ってる」
「……嘘、じゃないのよね」
驚き固まったのは、ガルーレだけではなくスティームも驚き固まっていた。
「あぁ、勿論だ」
「え、えっと……えっと、あれかな。アラッドのお父さんが、昔ウィラーナに迫る脅威を撃退したことがあるから、とか?」
「そういった話は聞いたことがない」
「「えぇ~~~~……」」
無意識にハモってしまった二人。
だが、そんな偶然を気にする素振りすら起きない程、二人にとってある意味衝撃的な内容だった。
「そういう反応になるのは解る。俺も謝罪の理由を聞いた時、そんな感じの反応になった。ただな、どうやら俺が冒険者として初めて活動した街で起こった一件が原因みたいでな」
「アラッドが冒険者として初めて活動した街で………………あっ、もしかして絡んできたルーキーを、結果的に追放した一件?」
スティームの予想に対し、アラッドは苦笑いを浮かべながら頷いた。
「その一件だ。どうやら、この街の冒険者ギルドはウィラーナを拠点として活動してる冒険者たちが、追放せざるを得ない状況に追い込まれるかもしれない未来に怯えてたらしい」
「……アラッドって、そういうタイプだっけ?」
ここ何か月も共に行動をしてるガルーレ。
しかし、基本的に知っている部分は、冒険者として活動を始めてからのアラッド。
アラッドの全てを知ってるとは言えない。
「そういうタイプではないと、自分では思ってる。その件に関しても……確かに逆鱗の隣をなぞられはしたが、最終的な判断を下したのは冒険者ギルドだ」
「そうよね~~~。って、そういう事情を考えれば、冒険者たちがただ単にやらかしただけよね」
「そうだな。そう言えるんだが……とりあえず、今回の謝罪の件に関しては、冒険者ギルドとしてはウィラーナで活動する冒険者を失わないようにするための謝罪だっただろうな」
冒険者として活動していれば、陰口の叩き合い。
直接喧嘩することも珍しくない。
ロビーで喧嘩されるのは迷惑ではあるが、ちゃんとルールを決めて訓練場で模擬戦やら試合やらで私情をぶつけ合うことに関しては、冒険者ギルドも止めはしない。
そこを理解しているからこそ、アラッドはギルド職員がわざわざ謝罪してきた理由を把握出来た。
「おそらく長期間滞在しないであろうアラッドよりも、ウィラーナを拠点としてる冒険者の方がいざという時の戦力になるから、ってことだね」
「…………なんかムカつくわね~~~~」
突っ走る特攻隊長タイプではあるが、決して本物のバカではないガルーレ。
冒険者ギルド側の考え、気持ちは解らなくもないが、それでも納得出来るか否かは別問題。
「仕方ない。それに、わざわざ冒険者ギルド側が謝罪に来たという点を考えれば、悪くはない」
「……それが広まったら、冒険者ギルドがアラッドを贔屓してるって噂が流れたりしない?」
ガルーレの懸念は最もなものだった。
だが、アラッドはその点に関してはそこまで気にしていなかった。
「俺にそのつもりはなくとも、俺は侯爵家の令息だ。冒険者ギルドが所属している冒険者たちのせいで、侯爵家と敵対したくないと考えるのは至極当然……冒険者たちも、生々しい現実が……パーティーのリーダーを務めている冒険者であれば、ルーキーでも解る筈だ」
「確かに、人を纏める立場の経験者であれば、ギルドの考えを理解出来そうだね」
「だろ。加えて…………こういう事を言うと、人々の自由を奪っている様に聞こえるかもしれないが、俺たちに対して俺たちの陰口? を、わざわざ聞こえるか否かの距離で喋る必要はあるか?」
「必要があるか否かというのが論点なら、僕はないと思うね」
「私も同じね」
二人とも即答だった。
そんな二人の反応を嬉しく感じ、アラッドは小さな笑みを零す。
「ふふ……まっ、俺が何を言いたいかっていうと、わざわざする必要がないことをしてしまう奴らのせいで、組織が被害を被るのは避けたい……だからこそ、冒険者ギルドが多少は俺たちを贔屓するのは当然だと思うんだよ」
アラッド自身、特に贔屓されたいとは思っていない。
だが、アラッドはこれまで何度も冒険者ギルド的に助かる功績を上げてきた。
スティームやガルーレも一緒に行動し、功績を上げているが……それでも、間違いなくその中心に居るのはアラッドである。
冒険者ギルドが多少贔屓したくなるのは、冷静に考えずとも解る内容である。
「それに、そういった噂だけで判断して負の感情を向けてくるような奴らとは、特に仲良くしたいとは思わないからな」
アラッドの意見には二人とも賛成であり、一応モヤモヤとした感情は消え、翌日の探索に取り組むことが出来た。
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