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七百八十八話 腹滑り
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「あぁ~~~、今日もご飯が美味い!!!」
三人は移動できる時間まで探索し続け、その後はクロやファルの背に乗って移動して帰還。
そして夕食時、ガルーレは先日と同じく思わず腹の膨れ具合が少々心配するほど夕食を注文していた。
「それは良かったな。それで、感想は?」
「アラッドが話してた通り、思ってた以上に面倒ね、雪原って環境は」
探索最中に三人はスノーグリズリーに遭遇。
雪属性の巨熊はソロで戦ったガルーレの予想よりも速く動き、何度か危ない場面があった。
「けど、向こうは当然だけどその環境で動くことに慣れてる」
「訓練しておいて良かっただろ」
「えぇ、本当にそうね。特に、クロみたいなタイプと模擬戦出来たのは本当に良い経験だったわ」
身体能力はアラッドたちの中でもダントツ。
雪上という慣れない環境であっても、その強さが完全に失われることはない。
「やっぱりあれだね。地味に雪を投げ飛ばしてくるのが鬱陶しかったね」
「雪はそこら辺にあるからな。後…………注意してれば食らうことはないだろうけど、スノーグリズリーの腹で滑りながら近づいて放つ爪撃。あれは中々の威力がありそうだった」
「あぁ~~~、そんな攻撃もあったわね……確かに食らったらヤバだけどさ、あれ……ただダッシュしたからって説明で済むスピードだった?」
「「…………」」
ガルーレと戦っていたスノーグリズリーは戦闘中に背を向けて逃げ出したかと思えば、全力ダッシュからの腹滑りで勢い良くガルーレに近づいた。
元々スノーグリズリーの位置を把握していたこともあり、繰り出される爪撃を食らうことはなかった。
ただ、それでもダッシュからの腹滑りのスピードに驚かされたのは事実。
「……雪上だからこそ、スピードが落ちることなく更に加速した。加えて、他の熊系モンスターと毛皮の質が異なっているのかもしれないな」
「毛皮の質、ねぇ……それで勢いが落ちるどころか、スピードが加速する、ねぇ……私は頭が良くないからあれだけど、多分それだけの違いであんな勢い良く滑るんでしょうね」
見え見えの攻撃だからといって、油断は出来ない。
結果的にガルーレは見事回避したが、アラッドとスティームも両腕から繰り出された爪撃の勢いによって、大量の雪が吹き飛ばされ、ついでに地面まで剥がされた光景を忘れてはいない。
「ふ、ふっふっふ。本当に、この季節にこういった地域に来て良かったわ」
まだ正式に探索を始めてから一日しか経ってないにもかかわらず、心が躍る戦いが出来た。
普通の冒険者であれば勘弁してほしい戦いだが、燃える女戦士、アマゾネスであるガルーレは寧ろいくらでもウェルカムである。
それから数日間、アラッドたちは適当に雪原を探索しては遭遇したモンスターを討伐するという日々を繰り返していた。
そして翌日……三人は「そういえば俺達、冒険者だったよな」と思い出した。
冒険者であれば、冒険者らしく偶には仕事を受けようと思い、ウィラーナの冒険者ギルドに訪れた。
(おっ、今泊っている宿と同じく、割と暖かいな)
暖炉を活動させているのではなく……冒険者ギルド内部、全体が暖かい。
建設する際にある細工を行っている為、他の冒険者ギルドで活動している冒険者たちと同じく……昼間から併設されている酒場で酒を呑むことが出来る。
「外が常に寒いからこそ、昼間から呑むエールは格別の味なのかしら?」
「他の街で活動してた冒険者たちからすれば、差は感じるのかもしれないな」
昼間から酒を呑むことがない三人だが、昼間……どころか、朝からエールを呑んでいる者たちに侮蔑の視線を向けることはない。
(普段は学校があるのに、軽い熱が出て学校を休めて、その間にゲームが出来る感覚……に近い快感だろうな)
やや薄れつつはあるものの、十何年以上も前の楽しさは未だに覚えていた。
「あっ、アラッド。あの依頼」
「ん? なん、だ………………そりゃそうか」
真っ先にガルーレが見つけた依頼は、雪竜討伐の依頼。
成功報酬、白金貨が五十枚以上。
達成出来れば、当分の間豪遊できる金額である。
雪竜は風竜と同じくBランクのモンスターであるが、雪竜の姿が確認されている場所を考えれば、まずそこまで移動するのに大きな労力と金が掛かる。
冒険者ギルドもバカではなく、依頼者にその難点を重点的に伝えている。
その結果、雪竜の討伐に白金貨五十枚以上という報酬が付いた。
「まぁ、今は無視して良いだろう」
「やっぱりか~~」
「金には特に困ってないからな」
なんとも同業者からすれば嫌味な言葉ではあるが、アラッドが若くして超大金を有してるのは事実。
武力で殴れなければ、金でぶん殴ることが出来る。
「ヘイルタイガー、スノウジャイアント、ブリザードパンサー…………ふふ、雪竜以外にも気になるモンスターはいくらでもいるじゃないか」
アラッドが呟いたモンスターの名は、どれもBランクの高ランクモンスターばかり。
三人からすれば上等!! と思えるラインナップ。
しかし、そんなアラッドの声が聞こえたのか……少し離れた場所から笑い声が零れた。
三人は移動できる時間まで探索し続け、その後はクロやファルの背に乗って移動して帰還。
そして夕食時、ガルーレは先日と同じく思わず腹の膨れ具合が少々心配するほど夕食を注文していた。
「それは良かったな。それで、感想は?」
「アラッドが話してた通り、思ってた以上に面倒ね、雪原って環境は」
探索最中に三人はスノーグリズリーに遭遇。
雪属性の巨熊はソロで戦ったガルーレの予想よりも速く動き、何度か危ない場面があった。
「けど、向こうは当然だけどその環境で動くことに慣れてる」
「訓練しておいて良かっただろ」
「えぇ、本当にそうね。特に、クロみたいなタイプと模擬戦出来たのは本当に良い経験だったわ」
身体能力はアラッドたちの中でもダントツ。
雪上という慣れない環境であっても、その強さが完全に失われることはない。
「やっぱりあれだね。地味に雪を投げ飛ばしてくるのが鬱陶しかったね」
「雪はそこら辺にあるからな。後…………注意してれば食らうことはないだろうけど、スノーグリズリーの腹で滑りながら近づいて放つ爪撃。あれは中々の威力がありそうだった」
「あぁ~~~、そんな攻撃もあったわね……確かに食らったらヤバだけどさ、あれ……ただダッシュしたからって説明で済むスピードだった?」
「「…………」」
ガルーレと戦っていたスノーグリズリーは戦闘中に背を向けて逃げ出したかと思えば、全力ダッシュからの腹滑りで勢い良くガルーレに近づいた。
元々スノーグリズリーの位置を把握していたこともあり、繰り出される爪撃を食らうことはなかった。
ただ、それでもダッシュからの腹滑りのスピードに驚かされたのは事実。
「……雪上だからこそ、スピードが落ちることなく更に加速した。加えて、他の熊系モンスターと毛皮の質が異なっているのかもしれないな」
「毛皮の質、ねぇ……それで勢いが落ちるどころか、スピードが加速する、ねぇ……私は頭が良くないからあれだけど、多分それだけの違いであんな勢い良く滑るんでしょうね」
見え見えの攻撃だからといって、油断は出来ない。
結果的にガルーレは見事回避したが、アラッドとスティームも両腕から繰り出された爪撃の勢いによって、大量の雪が吹き飛ばされ、ついでに地面まで剥がされた光景を忘れてはいない。
「ふ、ふっふっふ。本当に、この季節にこういった地域に来て良かったわ」
まだ正式に探索を始めてから一日しか経ってないにもかかわらず、心が躍る戦いが出来た。
普通の冒険者であれば勘弁してほしい戦いだが、燃える女戦士、アマゾネスであるガルーレは寧ろいくらでもウェルカムである。
それから数日間、アラッドたちは適当に雪原を探索しては遭遇したモンスターを討伐するという日々を繰り返していた。
そして翌日……三人は「そういえば俺達、冒険者だったよな」と思い出した。
冒険者であれば、冒険者らしく偶には仕事を受けようと思い、ウィラーナの冒険者ギルドに訪れた。
(おっ、今泊っている宿と同じく、割と暖かいな)
暖炉を活動させているのではなく……冒険者ギルド内部、全体が暖かい。
建設する際にある細工を行っている為、他の冒険者ギルドで活動している冒険者たちと同じく……昼間から併設されている酒場で酒を呑むことが出来る。
「外が常に寒いからこそ、昼間から呑むエールは格別の味なのかしら?」
「他の街で活動してた冒険者たちからすれば、差は感じるのかもしれないな」
昼間から酒を呑むことがない三人だが、昼間……どころか、朝からエールを呑んでいる者たちに侮蔑の視線を向けることはない。
(普段は学校があるのに、軽い熱が出て学校を休めて、その間にゲームが出来る感覚……に近い快感だろうな)
やや薄れつつはあるものの、十何年以上も前の楽しさは未だに覚えていた。
「あっ、アラッド。あの依頼」
「ん? なん、だ………………そりゃそうか」
真っ先にガルーレが見つけた依頼は、雪竜討伐の依頼。
成功報酬、白金貨が五十枚以上。
達成出来れば、当分の間豪遊できる金額である。
雪竜は風竜と同じくBランクのモンスターであるが、雪竜の姿が確認されている場所を考えれば、まずそこまで移動するのに大きな労力と金が掛かる。
冒険者ギルドもバカではなく、依頼者にその難点を重点的に伝えている。
その結果、雪竜の討伐に白金貨五十枚以上という報酬が付いた。
「まぁ、今は無視して良いだろう」
「やっぱりか~~」
「金には特に困ってないからな」
なんとも同業者からすれば嫌味な言葉ではあるが、アラッドが若くして超大金を有してるのは事実。
武力で殴れなければ、金でぶん殴ることが出来る。
「ヘイルタイガー、スノウジャイアント、ブリザードパンサー…………ふふ、雪竜以外にも気になるモンスターはいくらでもいるじゃないか」
アラッドが呟いたモンスターの名は、どれもBランクの高ランクモンスターばかり。
三人からすれば上等!! と思えるラインナップ。
しかし、そんなアラッドの声が聞こえたのか……少し離れた場所から笑い声が零れた。
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