788 / 1,023
七百八十七話 一種の凶器
しおりを挟む
「ぃよっしゃ~~~~!!!!! 戦るぞ~~~~~~~っ!!!!!!」
ウィラーナに到着してから四日後、雪上での行動にある程度慣れた三人。
慣れる為の訓練期間が終わり、今日からようやく本格的に狩りを行う。
「ガルーレはいつも元気だね~~」
「アマゾネスっていう種族上、闘争心がない時はないんじゃないか?」
アラッドはアラッドて楽しみに思っている部分はあるが、ガルーレほど爆発はしてない。
「二人とも、早く行こうよ!!!」
「落ち着け、ガルーレ。獲物はそう簡単に消えないから」
丁度寒い時期と被るということもあり、雪……もしくは氷属性を持つモンスターにとっては、寧ろ狩り時。
ガルーレから仕掛けずとも、モンスターから仕掛けてくる可能性は十分にある。
「良い得物は他の冒険者たちに奪われちゃうかもしれないでしょ」
「それは…………どうだろうな。依頼を受けてる冒険者ならともかく、そもそも俺たちみたいに明確な目的を持たず、ぶらぶらと散策しながら狩りをしようとしてるパーティーは珍しいだろうかな」
「ふ~~~~ん……なんで?」
「寒さを完全に防ぐことが出来るマジックアイテムや服を持ってるなら別かもしれないが、寒さという一種の凶器が常に付きまとっている状態だからな……慣れてる人でも、必要以上に街の外には出たくない筈だ」
雪上、雪国での生活に関して経験値は低いものの、前世の記憶や感覚はまだ消えておらず、熱い真夏の日はクーラーの効いた涼しい部屋から出たくない……寒い真冬の日はまず起きたら温いベッドから出たくない。
そういった感覚は覚えている為、ある程度の事情は把握していた。
「体を動かせば、自然と暖まるじゃん」
「四六時中体を動かしてたら、さすがに目的を達成する前に体力が尽きてしまうだろ」
「それは……確かにそうね」
「そういう事だ。それに、いつ雪が降って……吹雪に変わるか分からない。俺たちにはいざとなったらクロやファルがいるからなんとかなるが、他の冒険者たちはそうはいかない」
アラッドに頼られているとなんとなく把握した二体は、得意げな表情を浮かべていた。
「強さだけじゃ、どうしようもない状況もある」
「……………アラッドってさ、そういう知識、どこで得てるの?」
何度も説明されてきたこともあり、本当に雪原を雪を……そういった環境を嘗めてはいけないということは解った。
しかし、アラッドにはただ知っているか、ということ以外にも別の説得力があった。
「どこって……適当に情報を集めただけだ」
嘘である。
前世、ある程度都会と呼べる場所に住んでいたアラッド(英二)は体験したことはない。
ただ……情報は無数にネットという場所に載っていた。
「それにしては、妙に説得力があるのよね~~~……その顔のせい?」
「顔って……ふふ、まぁそうかもしれないな」
もう自分の強面ぶりには納得しているため、特にツッコまなかった。
「ねぇ、どうやら獲物が向こうから来てくれたみたいだよ」
「だな……一応クロやファルもいるのに、随分勇敢だな」
三人の前に現れたモンスターは……雪原に適応したウサギ、スノーラビット。
ランクはDと、ウサギ系モンスターの中では高く、体の大きさも割とバカに出来ない。
「数は十体みたいね」
「なるほど。十体もいれば気も大きくなる、かっ!!!」
スノーラビットたちはバラけながらも、統率の取れた動きで迫り、アラッドたちを思いっきりかじろうとする。
(……これだけ大きいと、割と可愛くないな)
アラッドがこれまで遭遇してきたウサギ系モンスターの中では一番大きく、これまで出会ってきた個体には割とウサギ特有の可愛さがあったのだが……目の前の迫りくるスノーラビットにはあまり可愛味を感じなかった。
「ホーンラビットがこれぐらいの大きさだたらと思うと、それなりに恐ろしそうだな」
数は十体と多かったが、雪の上と言えどDランクモンスター。
今現在雪は降っておらず、敵の姿を見失ってしまうといったアクシデントもなく、雪上での初戦闘は無事に終了。
三人共ダメージを負うことなく討伐に成功したが、それでも雪上での戦いに僅かながら戦り辛さを感じていた。
「解ってはいたけど、雪の上だから相手が動く度に雪が跳ねるわね」
「そうだな……眼で見るよりも、気配を感知して戦うことを要点にして戦った方が良い場合もあるだろうな」
「立体感知ってスキルよね」
以前、アラッドから教えてもらったスキルを思い出すガルーレ。
(確かに立体感知を会得したら、視界が封じられても相手に動きを正確に把握出来る……のよね? となると、今回の冒険での私の課題は、立体感知を会得して使いこなす事、ね)
そういったスキルがある、と教えてもらっただけで会得出来るほどスキルの会得は簡単ではない。
ガルーレは冒険者全体で見ればセンスが高い方ではあるが、見ただけ聞いただけでスキルが会得出来るほど圧倒的なまでのセンスは持ち合わせていない。
だが、いざという時に視界に頼らずとも正確に相手の姿を把握出来るというのは、接近戦メインで戦うガルーレにとって是非とも会得したいスキル。
(……なんか、若干気温が上がったか?)
思わずアラッドがそう思う程、ガルーレは新スキルの会得に熱を燃やしていた。
ウィラーナに到着してから四日後、雪上での行動にある程度慣れた三人。
慣れる為の訓練期間が終わり、今日からようやく本格的に狩りを行う。
「ガルーレはいつも元気だね~~」
「アマゾネスっていう種族上、闘争心がない時はないんじゃないか?」
アラッドはアラッドて楽しみに思っている部分はあるが、ガルーレほど爆発はしてない。
「二人とも、早く行こうよ!!!」
「落ち着け、ガルーレ。獲物はそう簡単に消えないから」
丁度寒い時期と被るということもあり、雪……もしくは氷属性を持つモンスターにとっては、寧ろ狩り時。
ガルーレから仕掛けずとも、モンスターから仕掛けてくる可能性は十分にある。
「良い得物は他の冒険者たちに奪われちゃうかもしれないでしょ」
「それは…………どうだろうな。依頼を受けてる冒険者ならともかく、そもそも俺たちみたいに明確な目的を持たず、ぶらぶらと散策しながら狩りをしようとしてるパーティーは珍しいだろうかな」
「ふ~~~~ん……なんで?」
「寒さを完全に防ぐことが出来るマジックアイテムや服を持ってるなら別かもしれないが、寒さという一種の凶器が常に付きまとっている状態だからな……慣れてる人でも、必要以上に街の外には出たくない筈だ」
雪上、雪国での生活に関して経験値は低いものの、前世の記憶や感覚はまだ消えておらず、熱い真夏の日はクーラーの効いた涼しい部屋から出たくない……寒い真冬の日はまず起きたら温いベッドから出たくない。
そういった感覚は覚えている為、ある程度の事情は把握していた。
「体を動かせば、自然と暖まるじゃん」
「四六時中体を動かしてたら、さすがに目的を達成する前に体力が尽きてしまうだろ」
「それは……確かにそうね」
「そういう事だ。それに、いつ雪が降って……吹雪に変わるか分からない。俺たちにはいざとなったらクロやファルがいるからなんとかなるが、他の冒険者たちはそうはいかない」
アラッドに頼られているとなんとなく把握した二体は、得意げな表情を浮かべていた。
「強さだけじゃ、どうしようもない状況もある」
「……………アラッドってさ、そういう知識、どこで得てるの?」
何度も説明されてきたこともあり、本当に雪原を雪を……そういった環境を嘗めてはいけないということは解った。
しかし、アラッドにはただ知っているか、ということ以外にも別の説得力があった。
「どこって……適当に情報を集めただけだ」
嘘である。
前世、ある程度都会と呼べる場所に住んでいたアラッド(英二)は体験したことはない。
ただ……情報は無数にネットという場所に載っていた。
「それにしては、妙に説得力があるのよね~~~……その顔のせい?」
「顔って……ふふ、まぁそうかもしれないな」
もう自分の強面ぶりには納得しているため、特にツッコまなかった。
「ねぇ、どうやら獲物が向こうから来てくれたみたいだよ」
「だな……一応クロやファルもいるのに、随分勇敢だな」
三人の前に現れたモンスターは……雪原に適応したウサギ、スノーラビット。
ランクはDと、ウサギ系モンスターの中では高く、体の大きさも割とバカに出来ない。
「数は十体みたいね」
「なるほど。十体もいれば気も大きくなる、かっ!!!」
スノーラビットたちはバラけながらも、統率の取れた動きで迫り、アラッドたちを思いっきりかじろうとする。
(……これだけ大きいと、割と可愛くないな)
アラッドがこれまで遭遇してきたウサギ系モンスターの中では一番大きく、これまで出会ってきた個体には割とウサギ特有の可愛さがあったのだが……目の前の迫りくるスノーラビットにはあまり可愛味を感じなかった。
「ホーンラビットがこれぐらいの大きさだたらと思うと、それなりに恐ろしそうだな」
数は十体と多かったが、雪の上と言えどDランクモンスター。
今現在雪は降っておらず、敵の姿を見失ってしまうといったアクシデントもなく、雪上での初戦闘は無事に終了。
三人共ダメージを負うことなく討伐に成功したが、それでも雪上での戦いに僅かながら戦り辛さを感じていた。
「解ってはいたけど、雪の上だから相手が動く度に雪が跳ねるわね」
「そうだな……眼で見るよりも、気配を感知して戦うことを要点にして戦った方が良い場合もあるだろうな」
「立体感知ってスキルよね」
以前、アラッドから教えてもらったスキルを思い出すガルーレ。
(確かに立体感知を会得したら、視界が封じられても相手に動きを正確に把握出来る……のよね? となると、今回の冒険での私の課題は、立体感知を会得して使いこなす事、ね)
そういったスキルがある、と教えてもらっただけで会得出来るほどスキルの会得は簡単ではない。
ガルーレは冒険者全体で見ればセンスが高い方ではあるが、見ただけ聞いただけでスキルが会得出来るほど圧倒的なまでのセンスは持ち合わせていない。
だが、いざという時に視界に頼らずとも正確に相手の姿を把握出来るというのは、接近戦メインで戦うガルーレにとって是非とも会得したいスキル。
(……なんか、若干気温が上がったか?)
思わずアラッドがそう思う程、ガルーレは新スキルの会得に熱を燃やしていた。
621
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
一人暮らしのおばさん薬師を黒髪の青年は崇めたてる
朝山みどり
ファンタジー
冤罪で辺境に追放された元聖女。のんびりまったり平和に暮らしていたが、過去が彼女の生活を壊そうとしてきた。
彼女を慕う青年はこっそり彼女を守り続ける。
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる