788 / 984
七百八十七話 一種の凶器
しおりを挟む
「ぃよっしゃ~~~~!!!!! 戦るぞ~~~~~~~っ!!!!!!」
ウィラーナに到着してから四日後、雪上での行動にある程度慣れた三人。
慣れる為の訓練期間が終わり、今日からようやく本格的に狩りを行う。
「ガルーレはいつも元気だね~~」
「アマゾネスっていう種族上、闘争心がない時はないんじゃないか?」
アラッドはアラッドて楽しみに思っている部分はあるが、ガルーレほど爆発はしてない。
「二人とも、早く行こうよ!!!」
「落ち着け、ガルーレ。獲物はそう簡単に消えないから」
丁度寒い時期と被るということもあり、雪……もしくは氷属性を持つモンスターにとっては、寧ろ狩り時。
ガルーレから仕掛けずとも、モンスターから仕掛けてくる可能性は十分にある。
「良い得物は他の冒険者たちに奪われちゃうかもしれないでしょ」
「それは…………どうだろうな。依頼を受けてる冒険者ならともかく、そもそも俺たちみたいに明確な目的を持たず、ぶらぶらと散策しながら狩りをしようとしてるパーティーは珍しいだろうかな」
「ふ~~~~ん……なんで?」
「寒さを完全に防ぐことが出来るマジックアイテムや服を持ってるなら別かもしれないが、寒さという一種の凶器が常に付きまとっている状態だからな……慣れてる人でも、必要以上に街の外には出たくない筈だ」
雪上、雪国での生活に関して経験値は低いものの、前世の記憶や感覚はまだ消えておらず、熱い真夏の日はクーラーの効いた涼しい部屋から出たくない……寒い真冬の日はまず起きたら温いベッドから出たくない。
そういった感覚は覚えている為、ある程度の事情は把握していた。
「体を動かせば、自然と暖まるじゃん」
「四六時中体を動かしてたら、さすがに目的を達成する前に体力が尽きてしまうだろ」
「それは……確かにそうね」
「そういう事だ。それに、いつ雪が降って……吹雪に変わるか分からない。俺たちにはいざとなったらクロやファルがいるからなんとかなるが、他の冒険者たちはそうはいかない」
アラッドに頼られているとなんとなく把握した二体は、得意げな表情を浮かべていた。
「強さだけじゃ、どうしようもない状況もある」
「……………アラッドってさ、そういう知識、どこで得てるの?」
何度も説明されてきたこともあり、本当に雪原を雪を……そういった環境を嘗めてはいけないということは解った。
しかし、アラッドにはただ知っているか、ということ以外にも別の説得力があった。
「どこって……適当に情報を集めただけだ」
嘘である。
前世、ある程度都会と呼べる場所に住んでいたアラッド(英二)は体験したことはない。
ただ……情報は無数にネットという場所に載っていた。
「それにしては、妙に説得力があるのよね~~~……その顔のせい?」
「顔って……ふふ、まぁそうかもしれないな」
もう自分の強面ぶりには納得しているため、特にツッコまなかった。
「ねぇ、どうやら獲物が向こうから来てくれたみたいだよ」
「だな……一応クロやファルもいるのに、随分勇敢だな」
三人の前に現れたモンスターは……雪原に適応したウサギ、スノーラビット。
ランクはDと、ウサギ系モンスターの中では高く、体の大きさも割とバカに出来ない。
「数は十体みたいね」
「なるほど。十体もいれば気も大きくなる、かっ!!!」
スノーラビットたちはバラけながらも、統率の取れた動きで迫り、アラッドたちを思いっきりかじろうとする。
(……これだけ大きいと、割と可愛くないな)
アラッドがこれまで遭遇してきたウサギ系モンスターの中では一番大きく、これまで出会ってきた個体には割とウサギ特有の可愛さがあったのだが……目の前の迫りくるスノーラビットにはあまり可愛味を感じなかった。
「ホーンラビットがこれぐらいの大きさだたらと思うと、それなりに恐ろしそうだな」
数は十体と多かったが、雪の上と言えどDランクモンスター。
今現在雪は降っておらず、敵の姿を見失ってしまうといったアクシデントもなく、雪上での初戦闘は無事に終了。
三人共ダメージを負うことなく討伐に成功したが、それでも雪上での戦いに僅かながら戦り辛さを感じていた。
「解ってはいたけど、雪の上だから相手が動く度に雪が跳ねるわね」
「そうだな……眼で見るよりも、気配を感知して戦うことを要点にして戦った方が良い場合もあるだろうな」
「立体感知ってスキルよね」
以前、アラッドから教えてもらったスキルを思い出すガルーレ。
(確かに立体感知を会得したら、視界が封じられても相手に動きを正確に把握出来る……のよね? となると、今回の冒険での私の課題は、立体感知を会得して使いこなす事、ね)
そういったスキルがある、と教えてもらっただけで会得出来るほどスキルの会得は簡単ではない。
ガルーレは冒険者全体で見ればセンスが高い方ではあるが、見ただけ聞いただけでスキルが会得出来るほど圧倒的なまでのセンスは持ち合わせていない。
だが、いざという時に視界に頼らずとも正確に相手の姿を把握出来るというのは、接近戦メインで戦うガルーレにとって是非とも会得したいスキル。
(……なんか、若干気温が上がったか?)
思わずアラッドがそう思う程、ガルーレは新スキルの会得に熱を燃やしていた。
ウィラーナに到着してから四日後、雪上での行動にある程度慣れた三人。
慣れる為の訓練期間が終わり、今日からようやく本格的に狩りを行う。
「ガルーレはいつも元気だね~~」
「アマゾネスっていう種族上、闘争心がない時はないんじゃないか?」
アラッドはアラッドて楽しみに思っている部分はあるが、ガルーレほど爆発はしてない。
「二人とも、早く行こうよ!!!」
「落ち着け、ガルーレ。獲物はそう簡単に消えないから」
丁度寒い時期と被るということもあり、雪……もしくは氷属性を持つモンスターにとっては、寧ろ狩り時。
ガルーレから仕掛けずとも、モンスターから仕掛けてくる可能性は十分にある。
「良い得物は他の冒険者たちに奪われちゃうかもしれないでしょ」
「それは…………どうだろうな。依頼を受けてる冒険者ならともかく、そもそも俺たちみたいに明確な目的を持たず、ぶらぶらと散策しながら狩りをしようとしてるパーティーは珍しいだろうかな」
「ふ~~~~ん……なんで?」
「寒さを完全に防ぐことが出来るマジックアイテムや服を持ってるなら別かもしれないが、寒さという一種の凶器が常に付きまとっている状態だからな……慣れてる人でも、必要以上に街の外には出たくない筈だ」
雪上、雪国での生活に関して経験値は低いものの、前世の記憶や感覚はまだ消えておらず、熱い真夏の日はクーラーの効いた涼しい部屋から出たくない……寒い真冬の日はまず起きたら温いベッドから出たくない。
そういった感覚は覚えている為、ある程度の事情は把握していた。
「体を動かせば、自然と暖まるじゃん」
「四六時中体を動かしてたら、さすがに目的を達成する前に体力が尽きてしまうだろ」
「それは……確かにそうね」
「そういう事だ。それに、いつ雪が降って……吹雪に変わるか分からない。俺たちにはいざとなったらクロやファルがいるからなんとかなるが、他の冒険者たちはそうはいかない」
アラッドに頼られているとなんとなく把握した二体は、得意げな表情を浮かべていた。
「強さだけじゃ、どうしようもない状況もある」
「……………アラッドってさ、そういう知識、どこで得てるの?」
何度も説明されてきたこともあり、本当に雪原を雪を……そういった環境を嘗めてはいけないということは解った。
しかし、アラッドにはただ知っているか、ということ以外にも別の説得力があった。
「どこって……適当に情報を集めただけだ」
嘘である。
前世、ある程度都会と呼べる場所に住んでいたアラッド(英二)は体験したことはない。
ただ……情報は無数にネットという場所に載っていた。
「それにしては、妙に説得力があるのよね~~~……その顔のせい?」
「顔って……ふふ、まぁそうかもしれないな」
もう自分の強面ぶりには納得しているため、特にツッコまなかった。
「ねぇ、どうやら獲物が向こうから来てくれたみたいだよ」
「だな……一応クロやファルもいるのに、随分勇敢だな」
三人の前に現れたモンスターは……雪原に適応したウサギ、スノーラビット。
ランクはDと、ウサギ系モンスターの中では高く、体の大きさも割とバカに出来ない。
「数は十体みたいね」
「なるほど。十体もいれば気も大きくなる、かっ!!!」
スノーラビットたちはバラけながらも、統率の取れた動きで迫り、アラッドたちを思いっきりかじろうとする。
(……これだけ大きいと、割と可愛くないな)
アラッドがこれまで遭遇してきたウサギ系モンスターの中では一番大きく、これまで出会ってきた個体には割とウサギ特有の可愛さがあったのだが……目の前の迫りくるスノーラビットにはあまり可愛味を感じなかった。
「ホーンラビットがこれぐらいの大きさだたらと思うと、それなりに恐ろしそうだな」
数は十体と多かったが、雪の上と言えどDランクモンスター。
今現在雪は降っておらず、敵の姿を見失ってしまうといったアクシデントもなく、雪上での初戦闘は無事に終了。
三人共ダメージを負うことなく討伐に成功したが、それでも雪上での戦いに僅かながら戦り辛さを感じていた。
「解ってはいたけど、雪の上だから相手が動く度に雪が跳ねるわね」
「そうだな……眼で見るよりも、気配を感知して戦うことを要点にして戦った方が良い場合もあるだろうな」
「立体感知ってスキルよね」
以前、アラッドから教えてもらったスキルを思い出すガルーレ。
(確かに立体感知を会得したら、視界が封じられても相手に動きを正確に把握出来る……のよね? となると、今回の冒険での私の課題は、立体感知を会得して使いこなす事、ね)
そういったスキルがある、と教えてもらっただけで会得出来るほどスキルの会得は簡単ではない。
ガルーレは冒険者全体で見ればセンスが高い方ではあるが、見ただけ聞いただけでスキルが会得出来るほど圧倒的なまでのセンスは持ち合わせていない。
だが、いざという時に視界に頼らずとも正確に相手の姿を把握出来るというのは、接近戦メインで戦うガルーレにとって是非とも会得したいスキル。
(……なんか、若干気温が上がったか?)
思わずアラッドがそう思う程、ガルーレは新スキルの会得に熱を燃やしていた。
600
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる