スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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七百八十六話 染みる温かさ

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「それじゃ……ひとまず、歩くことに慣れるか」

宿を取り、街の外に出たアラッドたち。
初めは本当に探索を交えながらではなく雪上での動き、戦いに慣れるために活動。

「ん~~~、確かにこの感じ……ちょっと違和感あるわね」

「そうだろ。今は丁度雪が降ってないからあれだが、これで雪が降り始めたり……吹雪になったりしたら、更に戦い辛くなる」

「…………」

「ん? どうした、スティーム」

「いや、アラッドは仮にそういった状況になったとしても、斬撃刃や攻撃魔法を上手く使って戦うんだろうなと思って。僕も魔法はともかく、上手く斬撃刃を的確に繰り出せるようにならないとね」

基本的に何でも出来る、頼りになるリーダー。

とはいえ、スティームの心情的に頼りっぱなしでいられない。

(僕の課題は雪上で上手く戦う以外にも、遠距離攻撃だけでも戦えるようになる事だね)

一人、心の内で課題を追加するスティーム。

(雪、吹雪ねぇ……確か、いきなり視界が悪くなるのよね…………そうなると、今まで以上に敵を把握する力が必要になりそうね~~)

ガルーレもひっそりと心の中で、雪上で上手く戦うという課題以外にも、自分なりの課題を決めていた。
そんな中……一つ、アラッドも考えていることがあった。

(これまでと比べて、大技を放つのは止めておいた方が良さそうだな……周り白、白、白の景色だと、人の姿は逆に解り易いんじゃないかと思ってたが…………それに、あまり大技を放って、結果的に雪崩を引き起こすことになれば、本当に最悪だ)

同業者を巻き込む様な攻撃を控える、加えて雪崩を引き起こしかねない大技の発動を控える。

そういった縛りとも思える条件を頭に刻み、とりあえず歩いて歩いて歩き……歩き慣れると、今度は走って走って走る。

「っ、速く動いてると、気付くのに恐れるな」

一面雪景色。

しかし、場所によって多少の高低差がある。
その高低差がただ速く走るという動作に関わってくる。

「おわっ!? とっとっと!」

「大丈夫か、ガルーレ」

「うん、大丈夫大丈夫。ちょっと躓いただけ…………ねぇ、思ったんだけどさ、勿論走ったり高速で戦う訓練は行うべきだと思うけど、可能なら実戦ではあんまり動いて戦わない方が良い感じ?」

「「…………」」

アラッドとスティーム、二人とも走るのを止めずに考え込む。

「……遭遇するモンスター、全てが闘争心向きで襲い掛かってくれるなら、そっちの方が良さそうだな」

「だね。でもさ、あんまり動かない戦い方してると、体が暖まらないんじゃないかな」

「うっ! そ、それはちょっと嫌ね」

故郷は一年を通してそれなりに暖かい気温が保たれており、これまでもそこまで寒くない場所で活動してきたガルーレにとって、ウィラーナ周辺は……割と「攻撃的な気温?」と思うほど、寒さにダメージを感じていた。

「とりあえず、ガルーレの言う通り、なるべく止まって戦うのはありだな」

そう口にしながらも雪上で歩く、走る訓練を終えたアラッドは雪上でクロやファルも交えて模擬戦を開始。


「あれ……なんなんだ?」

「さぁ? 模擬戦……じゃない?」


遠目でその光景を確認した同業者たちは、全員その光景を観てあいつらは雪原地帯で何をやっているのかと、思いっきり首を傾げた。


「はぁ~~~、温かさが染みる~~~~~~」

「解る」

日が暮れる前まで雪上での動きに慣れるため、動いて動いて動き続けていた三人。

防寒対策のマジックアイテムは装備しており、動き続けていれば必然的に体温は上がる。
それでも、どこか普段は感じない寒さを感じていた。

そんな体に暖かい肉料理、スープはいつも以上に美味に感じた。

「すいません! これと同じ奴もう一つ!!!」

「かしこまりました~~~!!!」

既に別の肉料理を完食しているガルーレ。

まだテーブルの上には全員で食べる料理がいくつも残っており、やや食べ過ぎ……と思わなくもないが、アラッドやスティームは一応貴族の令息ということもあって「あまり食べ過ぎると太るぞ」と、ノット紳士な発言はしなかった。

「それで、後どれぐらい訓練するの?」

「……念の為、三日ぐらいだな」

アラッドの強さがあれば、と思うかもしれない。

しかし、雪上……更に進めば雪山と、これまで殆ど体験したことがない環境での戦い。
そう考えると、いつも以上に慎重にという気持ちが大きくなるのは、寧ろ当然と言えた。

(…………逆にあれだよね。これだけ慎重に考えて動いてくれるメンバーがいるってのは、有難いって思わないとだめだよね)

基本的にパーティーのリーダーがストッパー係となるものだが、これまでガルーレが一時的に組んできたパーティーには……リーダーも一緒になって突っ走る、もしくは暴走して危機的状況に遭遇してしまうこともあった。

それはそれでガルーレにとって楽しい思い出ではあるが、これまでと比べて比較的遭遇するモンスターの強さが上がっている事を考えれば、時たま鬼神の如く戦うも、普段は冷静に物事を判断出来るリーダーの存在は非常に頼もしかった。

「それが終われば……雪原のモンスターを相手に、楽しく戦ろう」
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