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七百六十七話 どの視線よりも
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「っ!!!! ん、の野郎!!!!!」
恥をかかせるつもりが、逆に恥をかく形になった青年。
顔は怒りで直ぐに赤くなり、放っておけば絶対に殴り掛かるのが眼に見えて解るため、同世代のルーキーたちが無理矢理止めていた。
「ば、バカ!! あの人はこの街の領主の息子だっての!!!」
「だったらなんだ!!! 貴族なんかに怯えてて、冒険者なんかやってられるかよ!!!!!」
同世代のルーキーに言われて落ち着くなら、元々アラッドを挑発するような言葉を投げることはなく、無理矢理にでもアラッドの元へ行こうとする。
(これはまた……随分と貴族の事が嫌いそうなルーキーだな)
アラッドは冒険者になって初めて自分にザ・嫌悪感をぶつけてきたルーキー……ギルの事を思い出した。
(懐かしいな。あいつ、結局あの後どうしたんだろうな…………やっぱり盗賊にでもなったか?)
アラッドの逆鱗に触れるような発言をし、刃を向けたこともあり、最終的に冒険者ギルドから追放された。
結果としてその街の牢にぶち込んだ訳ではないため、犯罪者にはなっていないが、それでも一度冒険者の称号、立場を剥奪された。
つまり、冒険者として生きる道を完全に失ったのと同義。
「随分と元気なルーキーが入って来たんですね」
「……なんか、思ったより慣れてるみたいだな」
「そりゃ勿論慣れてますよ。冒険者にな……る前に、分け合って似た様な? 絡まれ方をしましたし、冒険者になってからも何度かこういった絡み方をされましたから」
「なんとなく予想はしてたが、お前はお前で大変な冒険者人生を送ってたんだな」
アラッドが冒険者になる前からどういったモンスターを倒していたのか知っていたからこそ、顔見知りの冒険者たちはアラッドの冒険者人生が順風満帆にはいかないのではと思っていた。
「思うところがないと言えば嘘になりますけど、やっぱり俺が恵まれてる事実に関しては変わりありません。だから、あぁいった者が現れることは、こう……自然の摂理だと思って納得してます」
「……はっはっは!!!! 自然の摂理ときたか。そうだな……まっ、冒険者ギルドじゃあ、何度も繰り返されて来た光景ではあるからな~~~」
男の言葉に、先程アラッドに向けて拍手を送ったベテラン冒険者たち、皆がうんうんと頷きながら……アラッドに挑発的な言葉を投げた青年に対し……生暖かい眼を向けた。
「っ!!!!!!!!!! てん、めぇえええええええええっ!!!!!」
「「「おわっ!!??」」」
呆れの視線、憐みの視線、嘲笑の視線……どの視線よりも、同業者の先輩達に向けられた生暖かい視線が、ルーキーの羞恥心を刺激した。
結果、青年は身体強化を無意識に使い、友人たちの拘束を振り払い、アラッドへ向かって全力ダッシュ。
スティームとガルーレが動こうとした瞬間……青年が拳を振り上げた状態のまま、ピタリと止まってしまった。
「なっ!? ぐっ!!!!! っ、んだよ、これ!!!!!!!」
「冒険者なら、知らなくてもおかしくないか。それが、俺の力の一つだ」
アラッドは……その場から動いていない。
しかし、自分が拳を振り上げて接近してきた青年の動きを止めたと……確かに口にした。
「無理に動こうとしても無駄だ。バラバラになったりはしないが……とにかく無駄だ。まっ、それよりも話そうか。あっ、面倒だから拘束はそのままでな」
「ふ、ふざけんな!!!!!!!!!!」
どれだけ青年が怒鳴り声を上げ、力を振り絞り……体に魔力を纏って更に強化しても、拘束している糸が千切れることはない。
「貴族のボンボンなんかに負けてたまるか。その心構え。いや、心意気か? それが間違ってるとは思わない」
「お、おいアラッド。お前さんがそれを言っちまっても良いのか?」
「……多分大丈夫です。実際に、面倒な貴族はいますから」
それも言ってしまって良いのか? とツッコみたいベテラン達。
ついでにスティームもツッコみたかったが、一先ず二人の会話が終わるのを待つことにした。
「さて、話を続けようか。貴族だからといって、全員がその役目を第一に動いてるとは言い難い。そんな思いもあって、貴族の令息なんかに負けるか……そうやって闘争心を燃やすのは良い事だ」
「嘗めてんのかよ、クソ野郎」
「嘗めてはいない。ただ、君が俺より弱いという前提で話している」
「ッ!!!!!!」
当然、更に青年の顔は赤くなり、糸を引き千切ろうとする力が強まるも、やはり引き千切れない。
「生まれた時から恵まれてる奴らに負けたくない。そうやって闘争心、向上心を燃やすのは良い事だ……ただな。燃やして恵まれている連中に向かって挑発して、暴言を吐いて……努力するのではなく、相手を下げようとする発言をするのは…………ただダサいだけのビッグマウスだ」
「ふ、ふざけんなよ!!!! 俺が、ただの口だけの野郎だと!!!!!」
「……追加で伝えよう。怒りという感情も、人が成長する上で必要なものだ。しかしだな、君は今……俺の力で拘束されてる。そして、君はそこからどう足掻いても勝てない。つまり……喧嘩、試合、殺し合い。どのケースであっても、君はもう死んでいるんだ。まず、その現実を受け入れようか」
淡々と……淡々と、アラッドは冷静に現実を突き付けていく。
恥をかかせるつもりが、逆に恥をかく形になった青年。
顔は怒りで直ぐに赤くなり、放っておけば絶対に殴り掛かるのが眼に見えて解るため、同世代のルーキーたちが無理矢理止めていた。
「ば、バカ!! あの人はこの街の領主の息子だっての!!!」
「だったらなんだ!!! 貴族なんかに怯えてて、冒険者なんかやってられるかよ!!!!!」
同世代のルーキーに言われて落ち着くなら、元々アラッドを挑発するような言葉を投げることはなく、無理矢理にでもアラッドの元へ行こうとする。
(これはまた……随分と貴族の事が嫌いそうなルーキーだな)
アラッドは冒険者になって初めて自分にザ・嫌悪感をぶつけてきたルーキー……ギルの事を思い出した。
(懐かしいな。あいつ、結局あの後どうしたんだろうな…………やっぱり盗賊にでもなったか?)
アラッドの逆鱗に触れるような発言をし、刃を向けたこともあり、最終的に冒険者ギルドから追放された。
結果としてその街の牢にぶち込んだ訳ではないため、犯罪者にはなっていないが、それでも一度冒険者の称号、立場を剥奪された。
つまり、冒険者として生きる道を完全に失ったのと同義。
「随分と元気なルーキーが入って来たんですね」
「……なんか、思ったより慣れてるみたいだな」
「そりゃ勿論慣れてますよ。冒険者にな……る前に、分け合って似た様な? 絡まれ方をしましたし、冒険者になってからも何度かこういった絡み方をされましたから」
「なんとなく予想はしてたが、お前はお前で大変な冒険者人生を送ってたんだな」
アラッドが冒険者になる前からどういったモンスターを倒していたのか知っていたからこそ、顔見知りの冒険者たちはアラッドの冒険者人生が順風満帆にはいかないのではと思っていた。
「思うところがないと言えば嘘になりますけど、やっぱり俺が恵まれてる事実に関しては変わりありません。だから、あぁいった者が現れることは、こう……自然の摂理だと思って納得してます」
「……はっはっは!!!! 自然の摂理ときたか。そうだな……まっ、冒険者ギルドじゃあ、何度も繰り返されて来た光景ではあるからな~~~」
男の言葉に、先程アラッドに向けて拍手を送ったベテラン冒険者たち、皆がうんうんと頷きながら……アラッドに挑発的な言葉を投げた青年に対し……生暖かい眼を向けた。
「っ!!!!!!!!!! てん、めぇえええええええええっ!!!!!」
「「「おわっ!!??」」」
呆れの視線、憐みの視線、嘲笑の視線……どの視線よりも、同業者の先輩達に向けられた生暖かい視線が、ルーキーの羞恥心を刺激した。
結果、青年は身体強化を無意識に使い、友人たちの拘束を振り払い、アラッドへ向かって全力ダッシュ。
スティームとガルーレが動こうとした瞬間……青年が拳を振り上げた状態のまま、ピタリと止まってしまった。
「なっ!? ぐっ!!!!! っ、んだよ、これ!!!!!!!」
「冒険者なら、知らなくてもおかしくないか。それが、俺の力の一つだ」
アラッドは……その場から動いていない。
しかし、自分が拳を振り上げて接近してきた青年の動きを止めたと……確かに口にした。
「無理に動こうとしても無駄だ。バラバラになったりはしないが……とにかく無駄だ。まっ、それよりも話そうか。あっ、面倒だから拘束はそのままでな」
「ふ、ふざけんな!!!!!!!!!!」
どれだけ青年が怒鳴り声を上げ、力を振り絞り……体に魔力を纏って更に強化しても、拘束している糸が千切れることはない。
「貴族のボンボンなんかに負けてたまるか。その心構え。いや、心意気か? それが間違ってるとは思わない」
「お、おいアラッド。お前さんがそれを言っちまっても良いのか?」
「……多分大丈夫です。実際に、面倒な貴族はいますから」
それも言ってしまって良いのか? とツッコみたいベテラン達。
ついでにスティームもツッコみたかったが、一先ず二人の会話が終わるのを待つことにした。
「さて、話を続けようか。貴族だからといって、全員がその役目を第一に動いてるとは言い難い。そんな思いもあって、貴族の令息なんかに負けるか……そうやって闘争心を燃やすのは良い事だ」
「嘗めてんのかよ、クソ野郎」
「嘗めてはいない。ただ、君が俺より弱いという前提で話している」
「ッ!!!!!!」
当然、更に青年の顔は赤くなり、糸を引き千切ろうとする力が強まるも、やはり引き千切れない。
「生まれた時から恵まれてる奴らに負けたくない。そうやって闘争心、向上心を燃やすのは良い事だ……ただな。燃やして恵まれている連中に向かって挑発して、暴言を吐いて……努力するのではなく、相手を下げようとする発言をするのは…………ただダサいだけのビッグマウスだ」
「ふ、ふざけんなよ!!!! 俺が、ただの口だけの野郎だと!!!!!」
「……追加で伝えよう。怒りという感情も、人が成長する上で必要なものだ。しかしだな、君は今……俺の力で拘束されてる。そして、君はそこからどう足掻いても勝てない。つまり……喧嘩、試合、殺し合い。どのケースであっても、君はもう死んでいるんだ。まず、その現実を受け入れようか」
淡々と……淡々と、アラッドは冷静に現実を突き付けていく。
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