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七百六十四話 強制はされない
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「っし、終わりだ。お前ら、ちゃんと休憩しろよ」
実家に帰ってきてから特に予定が決まってないアラッドたちは、孤児院の子供たちの相手をしていた。
勿論、遊び相手になるという訳ではなく、模擬戦相手。
「話には聞いてたけど、あの子たち凄いね~。私の故郷に居る同年代の子供たちよりも強いかも」
ガルーレも将来冒険者や騎士を目指す子供たちの模擬戦相手をしており、当然ながら現時点でガルーレの戦闘欲を満たすことはないが、それでも楽しみな素材は何人もいた。
「俺なりに、子供たちが努力出来る環境を整えてるつもりだからな」
「確かにそうだね~。先生? たちはしっかり強いし、勉強面とかもちゃんと教えてるんでしょ」
「強いのが第一だが、バカなままじゃ社会に出た時に苦労するだろうからな」
孤児院にはアラッドが手配した戦闘面だけではなく、計算や世界の常識、社会に出た時に気を付けなければならない事を教えてくれる先生たちがいる。
「こういう事言うのはあれかもしれないけど、結構お金使ったんじゃないの?」
「金は使わないと、世の中回らないだろ。溜め込むのは悪い事じゃないが、溜め込むだけじゃ……なんと言うか、意味がないだろ」
現在でもアラッドの懐には毎月金が入ってきている。
一時の金額と比べればかなり落ちたものの、それでも冒険者たちがその額を見れば「何でまだ冒険者をしてるんだよ」とツッコみたくなる。
「そこで自分以外の事に使えるのが、アラッドの凄いところだよ」
「……俺が満足するところが、金とはまた別のところにあるからな。それと……まぁ、偽善みたいなところもある」
「偽善、ね。私は政治とか、そういうの全然解らないけど、あの子たちが真剣に学ぼうとする姿を見てると、アラッドが偽善と思ってる事は無意味じゃないと思えるけどね」
アラッドが偽善と思っている行動に対し、間違いなく感謝している者たちがいる。
それは間違いない事実だった。
「僕もガルーレと同じだね。アラッドがそこに何かを思う必要はないと思うよ」
「そうか……」
二人の心遣いに、薄っすらと笑みが零れる。
「ねぇ、アラッド兄ちゃん」
「どうした。質問か?」
「質問……なのかな? あのさ、アッシュ様って結婚するの?」
(……早くないか?)
今日、アラッドはその話題については一切口にしてない。
にもかかわらず、孤児院の子供がその話題に関して触れてきたという事は、どこかで耳にしたのは確実だった。
「いや、そんな事はないぞ」
「そうなの? メイドさん達が、なんかうきうきの表情で話してたけど」
主に世話を担当していたメイドだけではなく、基本的に静かで我儘な態度を取ることはなく、中等部に入学するまで反抗期を迎えることもなかったアッシュ。
メイドたちにとっては、非常に手のかからない優しい令息といったイメージを持たれており、そんなアッシュに婚約者が!!!??? っといったニュースが耳に入れば、思わずテンションが上がってしまうのも無理はない。
「アッシュも侯爵家の令息だ。そういった申し込み自体が来ることは珍しくない」
「へぇ~~~。アッシュ様は、学園でモテモテってこと?」
「この前久しぶりに会って、チラッと話を聞いたが、ちゃんとモテててるらしいぞ」
アラッドの言葉を聞いた子供たちの評価は……二分化していた。
アッシュがあのシルフィーよりも強いという事実は、孤児院の子供たちであれば誰でも知っている。
しかし、子供たちはアッシュが積極的に訓練に参加する姿を見たことがない。
戦い自体にさほど興味がないということもあり、男子たちから見て……強いことには強いが、やや雰囲気が暗く、覇気がないということもあって、モテるタイプとは思っていなかった。
「流石アッシュ様ですね」
「そうよね~~~」
「モテない方がおかしいよね」
対して、女子たちはアッシュが学園でモテ散らかしているという状況に、寧ろ納得の表情を浮かべていた。
強くなる事に対して積極性がない。
そこに関してあまり思うところはなく、大前提として自分たちが一対一ではまず敵わないシルフィーよりも強い。
その時点で魅力が高い。
クール……と言うより、ややダウナー感があるものの、容姿はしっかりフールとエリアの遺伝子を継いでることもあって、非常に整っている。
整っている顔を持ってるのに、雰囲気が暗い……女子たちは、逆にそこにくるものがあった。
そして強いからといって横暴で傲慢な性格ではないところもポイントが高い。
「でも、アッシュ様が婚約者や恋人を求めるようには思えません」
「それは同感だな~。錬金術にどっぷりハマってたし…………けど、侯爵家の令息なんだから、やっぱり良い感じの相手を用意されて強制的に結婚するのかな? どうなんですか、アラッド兄さん」
「それはないぞ。何故なら…………強制的にそういう相手を用意されるなら、まず俺にそういう相手が用意されてるからな」
自信満々に答えるアラッドに対し、理解のある子供たちは……それもそうだと、苦笑いで頷くしかなかった。
実家に帰ってきてから特に予定が決まってないアラッドたちは、孤児院の子供たちの相手をしていた。
勿論、遊び相手になるという訳ではなく、模擬戦相手。
「話には聞いてたけど、あの子たち凄いね~。私の故郷に居る同年代の子供たちよりも強いかも」
ガルーレも将来冒険者や騎士を目指す子供たちの模擬戦相手をしており、当然ながら現時点でガルーレの戦闘欲を満たすことはないが、それでも楽しみな素材は何人もいた。
「俺なりに、子供たちが努力出来る環境を整えてるつもりだからな」
「確かにそうだね~。先生? たちはしっかり強いし、勉強面とかもちゃんと教えてるんでしょ」
「強いのが第一だが、バカなままじゃ社会に出た時に苦労するだろうからな」
孤児院にはアラッドが手配した戦闘面だけではなく、計算や世界の常識、社会に出た時に気を付けなければならない事を教えてくれる先生たちがいる。
「こういう事言うのはあれかもしれないけど、結構お金使ったんじゃないの?」
「金は使わないと、世の中回らないだろ。溜め込むのは悪い事じゃないが、溜め込むだけじゃ……なんと言うか、意味がないだろ」
現在でもアラッドの懐には毎月金が入ってきている。
一時の金額と比べればかなり落ちたものの、それでも冒険者たちがその額を見れば「何でまだ冒険者をしてるんだよ」とツッコみたくなる。
「そこで自分以外の事に使えるのが、アラッドの凄いところだよ」
「……俺が満足するところが、金とはまた別のところにあるからな。それと……まぁ、偽善みたいなところもある」
「偽善、ね。私は政治とか、そういうの全然解らないけど、あの子たちが真剣に学ぼうとする姿を見てると、アラッドが偽善と思ってる事は無意味じゃないと思えるけどね」
アラッドが偽善と思っている行動に対し、間違いなく感謝している者たちがいる。
それは間違いない事実だった。
「僕もガルーレと同じだね。アラッドがそこに何かを思う必要はないと思うよ」
「そうか……」
二人の心遣いに、薄っすらと笑みが零れる。
「ねぇ、アラッド兄ちゃん」
「どうした。質問か?」
「質問……なのかな? あのさ、アッシュ様って結婚するの?」
(……早くないか?)
今日、アラッドはその話題については一切口にしてない。
にもかかわらず、孤児院の子供がその話題に関して触れてきたという事は、どこかで耳にしたのは確実だった。
「いや、そんな事はないぞ」
「そうなの? メイドさん達が、なんかうきうきの表情で話してたけど」
主に世話を担当していたメイドだけではなく、基本的に静かで我儘な態度を取ることはなく、中等部に入学するまで反抗期を迎えることもなかったアッシュ。
メイドたちにとっては、非常に手のかからない優しい令息といったイメージを持たれており、そんなアッシュに婚約者が!!!??? っといったニュースが耳に入れば、思わずテンションが上がってしまうのも無理はない。
「アッシュも侯爵家の令息だ。そういった申し込み自体が来ることは珍しくない」
「へぇ~~~。アッシュ様は、学園でモテモテってこと?」
「この前久しぶりに会って、チラッと話を聞いたが、ちゃんとモテててるらしいぞ」
アラッドの言葉を聞いた子供たちの評価は……二分化していた。
アッシュがあのシルフィーよりも強いという事実は、孤児院の子供たちであれば誰でも知っている。
しかし、子供たちはアッシュが積極的に訓練に参加する姿を見たことがない。
戦い自体にさほど興味がないということもあり、男子たちから見て……強いことには強いが、やや雰囲気が暗く、覇気がないということもあって、モテるタイプとは思っていなかった。
「流石アッシュ様ですね」
「そうよね~~~」
「モテない方がおかしいよね」
対して、女子たちはアッシュが学園でモテ散らかしているという状況に、寧ろ納得の表情を浮かべていた。
強くなる事に対して積極性がない。
そこに関してあまり思うところはなく、大前提として自分たちが一対一ではまず敵わないシルフィーよりも強い。
その時点で魅力が高い。
クール……と言うより、ややダウナー感があるものの、容姿はしっかりフールとエリアの遺伝子を継いでることもあって、非常に整っている。
整っている顔を持ってるのに、雰囲気が暗い……女子たちは、逆にそこにくるものがあった。
そして強いからといって横暴で傲慢な性格ではないところもポイントが高い。
「でも、アッシュ様が婚約者や恋人を求めるようには思えません」
「それは同感だな~。錬金術にどっぷりハマってたし…………けど、侯爵家の令息なんだから、やっぱり良い感じの相手を用意されて強制的に結婚するのかな? どうなんですか、アラッド兄さん」
「それはないぞ。何故なら…………強制的にそういう相手を用意されるなら、まず俺にそういう相手が用意されてるからな」
自信満々に答えるアラッドに対し、理解のある子供たちは……それもそうだと、苦笑いで頷くしかなかった。
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