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七百五十七話 無意識に縛っていた
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「生きてるか、リエラ嬢」
「え、えぇ。生きてる、わ…………はぁ~~~~。本気で戦ったのだけどね」
既にフローレンスから渡されたポーションを飲み干し、ガルーレにやられた肋骨や内臓の損傷は癒されていた。
「済まないな、ガルーレがバカな戦い方をして」
「……そんな事ないわよ。彼女は模擬戦ではなく、試合をしようと最初に伝えてくれてたわ」
「そう言ってもらえると助かる」
「それより、あんな戦い方をして、ガルーレは大丈夫なの?」
細剣で手を貫かれることに抵抗がなく、寧ろ引かずに柄を掴んむという奇行に出たガルーレに対し、リエラは驚きこそすれ、ドン引いてはいなかった。
何かを懸けて戦っていた訳ではないが、戦うのであれば負けたくない。
そんな至極単純な心構えを見失わずに持っている……と、リエラはガルーレの行動を捉えていた。
「あいつはあるスキルを発動して、その効果で痛みに関して物凄く鈍くなっていたんだ。だから左手を貫かれてもそのまま動かして、細剣の柄を掴んだんだ」
「テンションが上がり過ぎて、痛みを忘れてた、という訳ではないのね」
「……それもそれであり得そうだが、今回に関してはスキルの影響があってだな。それと、余計なお世話かもしれないが、ガルーレのメイン武器は素手だ。リエラ嬢が万全の状態であれば、同じ結果にはなっていなかったかもしれない」
ガルーレのメインウェポンが拳や脚なのに対し、今回リエラが使用していた細剣はなるべく頑丈に造られている訓練用の細剣。
普段リエラが使用している愛剣ではないため、アラッドの言う通り愛剣を使用していれば同じ結果になるとは限らない。
そんなアラッドの気遣いに対し、本当に余計なお世話だとは口にせず、ありのままの現実を受け入れる。
「関係無いわ。正直なところ、普段使っている細剣を使用したからといって、絶対に勝てるイメージは湧く湧かない。それに……私は細剣技のスキル技を使用してたけれど、彼女は武技のスキル技を使用していなかった」
スキル技の使用の有無。
これに関しては特にルールを決めておらず、ガルーレ自身も……特に意識して縛りプレイをしていた訳ではなかった。
最後の掌底も発勁ではなく、ただの渾身の掌底がぶち込まれた結果、きっちり内臓までダメージが浸透しただけ。
「それに、痛みに対して鈍くなるという効果を考えると、これより良い得物を使ったところで、っていう気がするのよね」
「そうか…………まぁ、あいつもバカではないんで」
ただの脳筋美女ではなく、戦いに関してはそれなりに頭が回る……というよりも、頭の代わりに本能が働いてくれる。
「アラッド、彼女……直ぐにまた試合を始めたそうだけど、大丈夫なのかしら?」
フローレンスが指さす方へ顔を向けると……今度はガルーレとライホルトが試合を始めていた。
「ら、ライホルト、とか。殴り合いだけなら、大丈夫だと思いたい、かな」
ガルーレの奥の手であるペイル・サーベルスはアラッドの狂化と違い、任意で発動出来る強化系スキルではない。
使い勝手が悪いと思われるかもしれないが、狂化の様に一定の使用時間が過ぎれば感情がコントロールしきれなくなる、飲み込まれるといったデメリットがない。
スティームの赤雷の様に消費魔力の燃費が悪いわけでもなく、ダメージを受ければ受けるほど身体能力が高まる。
つまり……ガルーレの根性次第で、シーソーゲームがいくらでも続く。
「アラッド兄さん。あれ、本当に大丈夫なんですか?」
腹パンならぬ腹掌を食らって壁に激突したリエラを心配する素振りすら見せず、アッシュは絶賛殴り合っている二人について兄に尋ねた。
「確か、ガルーレさんの奥の手って、本人の意志とは関係無く特定の状態になったら、勝手に発動すしますよね」
「そうだな」
「発動してしまったら、ライホルトさんも……多分、奥の手を使わざるを得なくなりますよね」
「どう、だろうな。もしかしたら、ライホルトはこの試合でそれを使わないと決めてるかもしれないぞ」
見た目だけで実力は測れない。
それは確かにそうなのだが、接近戦において、体格の大きさは……それはそれで武器になる。
(とはいえ、負けたくないって思いが爆発すれば、色々と無視してしまうかもしれない、が…………いや、ライホルトなら、大丈夫だろう……多分、きっと)
アラッドの中で、ライホルトという人間は真面目な岩男という印象が強かった。
しかし、実際に話すようになってから……割と自分やガルーレと同じく、強者としての戦いが好みなのだと知った。
故に……不安がないと言えば、嘘になる。
「…………アラッド、どうやらそこまで心配する必要はないみたいだよ」
「おっ、やっぱりそうか?」
「うん。多分だけど、ガルーレももしかしてっていう不安があるんだるね。少しいつもと違う戦い方をしてる」
(……言われてみれば、偶に拳に拳を、脚に脚を合わせたりするけど、どちらかと言えばダメージが蓄積しない様な戦い方をしてるな)
ガルーレがリエラとの試合とは変わって、ダメージを気にしながら戦うようになったこともあり、二人の試合は五分以上経過した後、ガルーレがペイル・サーベルスが発動してしまったのを把握し、自分の降参を宣言した。
「え、えぇ。生きてる、わ…………はぁ~~~~。本気で戦ったのだけどね」
既にフローレンスから渡されたポーションを飲み干し、ガルーレにやられた肋骨や内臓の損傷は癒されていた。
「済まないな、ガルーレがバカな戦い方をして」
「……そんな事ないわよ。彼女は模擬戦ではなく、試合をしようと最初に伝えてくれてたわ」
「そう言ってもらえると助かる」
「それより、あんな戦い方をして、ガルーレは大丈夫なの?」
細剣で手を貫かれることに抵抗がなく、寧ろ引かずに柄を掴んむという奇行に出たガルーレに対し、リエラは驚きこそすれ、ドン引いてはいなかった。
何かを懸けて戦っていた訳ではないが、戦うのであれば負けたくない。
そんな至極単純な心構えを見失わずに持っている……と、リエラはガルーレの行動を捉えていた。
「あいつはあるスキルを発動して、その効果で痛みに関して物凄く鈍くなっていたんだ。だから左手を貫かれてもそのまま動かして、細剣の柄を掴んだんだ」
「テンションが上がり過ぎて、痛みを忘れてた、という訳ではないのね」
「……それもそれであり得そうだが、今回に関してはスキルの影響があってだな。それと、余計なお世話かもしれないが、ガルーレのメイン武器は素手だ。リエラ嬢が万全の状態であれば、同じ結果にはなっていなかったかもしれない」
ガルーレのメインウェポンが拳や脚なのに対し、今回リエラが使用していた細剣はなるべく頑丈に造られている訓練用の細剣。
普段リエラが使用している愛剣ではないため、アラッドの言う通り愛剣を使用していれば同じ結果になるとは限らない。
そんなアラッドの気遣いに対し、本当に余計なお世話だとは口にせず、ありのままの現実を受け入れる。
「関係無いわ。正直なところ、普段使っている細剣を使用したからといって、絶対に勝てるイメージは湧く湧かない。それに……私は細剣技のスキル技を使用してたけれど、彼女は武技のスキル技を使用していなかった」
スキル技の使用の有無。
これに関しては特にルールを決めておらず、ガルーレ自身も……特に意識して縛りプレイをしていた訳ではなかった。
最後の掌底も発勁ではなく、ただの渾身の掌底がぶち込まれた結果、きっちり内臓までダメージが浸透しただけ。
「それに、痛みに対して鈍くなるという効果を考えると、これより良い得物を使ったところで、っていう気がするのよね」
「そうか…………まぁ、あいつもバカではないんで」
ただの脳筋美女ではなく、戦いに関してはそれなりに頭が回る……というよりも、頭の代わりに本能が働いてくれる。
「アラッド、彼女……直ぐにまた試合を始めたそうだけど、大丈夫なのかしら?」
フローレンスが指さす方へ顔を向けると……今度はガルーレとライホルトが試合を始めていた。
「ら、ライホルト、とか。殴り合いだけなら、大丈夫だと思いたい、かな」
ガルーレの奥の手であるペイル・サーベルスはアラッドの狂化と違い、任意で発動出来る強化系スキルではない。
使い勝手が悪いと思われるかもしれないが、狂化の様に一定の使用時間が過ぎれば感情がコントロールしきれなくなる、飲み込まれるといったデメリットがない。
スティームの赤雷の様に消費魔力の燃費が悪いわけでもなく、ダメージを受ければ受けるほど身体能力が高まる。
つまり……ガルーレの根性次第で、シーソーゲームがいくらでも続く。
「アラッド兄さん。あれ、本当に大丈夫なんですか?」
腹パンならぬ腹掌を食らって壁に激突したリエラを心配する素振りすら見せず、アッシュは絶賛殴り合っている二人について兄に尋ねた。
「確か、ガルーレさんの奥の手って、本人の意志とは関係無く特定の状態になったら、勝手に発動すしますよね」
「そうだな」
「発動してしまったら、ライホルトさんも……多分、奥の手を使わざるを得なくなりますよね」
「どう、だろうな。もしかしたら、ライホルトはこの試合でそれを使わないと決めてるかもしれないぞ」
見た目だけで実力は測れない。
それは確かにそうなのだが、接近戦において、体格の大きさは……それはそれで武器になる。
(とはいえ、負けたくないって思いが爆発すれば、色々と無視してしまうかもしれない、が…………いや、ライホルトなら、大丈夫だろう……多分、きっと)
アラッドの中で、ライホルトという人間は真面目な岩男という印象が強かった。
しかし、実際に話すようになってから……割と自分やガルーレと同じく、強者としての戦いが好みなのだと知った。
故に……不安がないと言えば、嘘になる。
「…………アラッド、どうやらそこまで心配する必要はないみたいだよ」
「おっ、やっぱりそうか?」
「うん。多分だけど、ガルーレももしかしてっていう不安があるんだるね。少しいつもと違う戦い方をしてる」
(……言われてみれば、偶に拳に拳を、脚に脚を合わせたりするけど、どちらかと言えばダメージが蓄積しない様な戦い方をしてるな)
ガルーレがリエラとの試合とは変わって、ダメージを気にしながら戦うようになったこともあり、二人の試合は五分以上経過した後、ガルーレがペイル・サーベルスが発動してしまったのを把握し、自分の降参を宣言した。
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