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七百五十六話 爆上がり、過ぎ?
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「ま、参り、ましたわ」
ラディアやライホルトと同じ条件下で戦った結果、当然と言えば当然ではあるものの……スティームが勝利を収めた。
(……読みの感覚は、ラディアさんと同じぐらい、かな?)
総合的にはラディアの方が上だと感じるものの、読みに関してはリエラも負けてないというのが、スティームの感想だった。
「アラッドの狂化に負けないレベルの切り札だな」
「…………そうですね。燃費はあまり良くないですけど、頼りになる僕の切り札です」
トーナメントの決勝戦でアラッドから狂化を引き出したこともあり、そこは自信を持って答えられる。
「しかし、これでまだ本気ではないというのだからな……ふっふっふ。アラッド、今度はどんな敵と戦うつもりだ?」
「どんなと言われてもな……俺たちは冒険者だから、その時々によって変わるな」
退屈しない相手と戦いたいという希望はあれど、相手が人なのか、それともモンスターなのかは気にしない。
「ねぇ、リエラさ~ん。今度は私戦りませんか? 割とガチ目に」
「割とガチ目に、ということは模擬戦ではなく試合を、ということですの?」
「もしリエラさんが良かったらですけど」
「……えぇ、勿論戦りましょう、ガルーレ」
リエラはなんだかんだで、自分たちが行う模擬戦が本当に模擬戦の範疇に収まるとは思っておらず、回復用のポーションを多めに用意していた。
「…………ねぇ、アラッド。ガルーレさ……結構本気みたいじゃないかな」
「みたいだな。でも、それはリエラ嬢も解ってるだろ?」
十秒ほどで負けてしまったとはいえ、リエラの戦意が萎えているということはなく、寧ろ燃え滾っており、発散出来る戦いを欲していた。
「それでは、始め!!!」
フローレンスの開始の合図が響き渡ると同時に、ガルーレが様子見することなく仕掛けた。
「っ!!」
素手でありながら、細剣を持つ自分に対して全く臆することなく仕掛けてきたガルーレに……リエラは面食らうことなく、冷静に対処。
リーチの差では得物を使用しているリエラの方が有利ではあるが、ガルーレはその程度の差などものともせず、果敢に攻撃を仕掛ける。
(やはり、アラッド達と共に行動してるだけは、ある!!!)
先程互いに了承した通り、今回は模擬戦ではなく、試合。
様子見などはなく、互いに勝利を奪う為に剣を振るい、拳を突き出す。
当然ながら先程までの試合と違い、スキルの使用禁止などといった縛りはない。
なので、リエラもスティームとの戦いよりも早く鋭く動き、ガルーレの体を刻む。
「ッ! 良いですね!! もっと上げましょう!!!」
試合とはいえ、何かを懸けた試合ではない。
それはガルーレも解っている。解っているが、武器以外は本気であるリエラは満面の笑みを浮かべてしまうほど楽しい相手である。
そして……体に刻まれる切傷の数が増えていけば……必然的に、リエラの奥の手であるスキル、ペイル・サーベルスが発動してしまう。
「……ガルーレの様子が、変わったか?」
「そうだな。とりあえず、この試合はガルーレの勝ちだな」
リエラの実力をアラッドよりも良く知っているラディアとライホルトは……アラッドの言葉を全否定はしないしないものの、一部を否定する。
「アラッド、リエラは……確かに代表戦ではアッシュ君にあっさり追い詰められちゃったけど、ちゃんと強いよ」
「うむ、ラディアの言う通りだ。決して世間知らずのお嬢様騎士ではない」
「二人がリエラ嬢を評価してるのは解る。というか、俺もリエラ嬢は十分強者だと認識している。ただ、とりあえずこの戦いに関してはスティームとの一戦に近い」
どういう事なのかと首を捻る二人。
「とはいえ、スティームの時みたいに……スマートに? 止まりはしないんだけどな」
アラッドはガルーレがリエラに対し、模擬戦ではなく試合をしようと伝えたことに、やはり猪突猛進娘ではないのだと再認識。
ただ……ペルス・サーベルスが発動してしまうと、普段はあまりしない戦い方が出来るようになってしまう。
「あっ、やっぱりやりやがったな、あいつ」
視線の先では……リエラの刺突がガルーレの左手を貫通。
しかし、ガルーレは痛みなど知ったことではなく、そのまま細剣の柄を掴み、リエラが後方に下がるのを防ぐ。
そしてがっちりと掴んだままリエラの体を引き寄せ……腹に掌底を叩き込んだ。
「っ!!!!????」
その衝撃にリエラは細剣手放してしまい、あっという間に壁に激突し、吐血。
「フローレンス」
「えぇ」
試合は当然終了。
ガルーレも盛り上がってはいたが、これが試合であることまでは忘れておらず、追撃することはなく……平然とした表情で左手を貫いた細剣を引き抜く。
「ほらよ、ガルーレ」
「サンキュー、アラッド!」
「お前、そっちの手は……まっいっか」
穴が開いている方の手で投げられたポーションをキャッチし、苦いポーションを一気に煽るガルーレ。
「ふぃ~~~~。いやぁ~~~、テンション爆上がりだったね~」
「爆上がりだったね~、じゃねぇんだけどな。ったくよ」
呆れながらも、ガルーレらしいと思いながら……アラッドは事情説明の為に掌底を腹に食らったリエラの元へ向かった。
ラディアやライホルトと同じ条件下で戦った結果、当然と言えば当然ではあるものの……スティームが勝利を収めた。
(……読みの感覚は、ラディアさんと同じぐらい、かな?)
総合的にはラディアの方が上だと感じるものの、読みに関してはリエラも負けてないというのが、スティームの感想だった。
「アラッドの狂化に負けないレベルの切り札だな」
「…………そうですね。燃費はあまり良くないですけど、頼りになる僕の切り札です」
トーナメントの決勝戦でアラッドから狂化を引き出したこともあり、そこは自信を持って答えられる。
「しかし、これでまだ本気ではないというのだからな……ふっふっふ。アラッド、今度はどんな敵と戦うつもりだ?」
「どんなと言われてもな……俺たちは冒険者だから、その時々によって変わるな」
退屈しない相手と戦いたいという希望はあれど、相手が人なのか、それともモンスターなのかは気にしない。
「ねぇ、リエラさ~ん。今度は私戦りませんか? 割とガチ目に」
「割とガチ目に、ということは模擬戦ではなく試合を、ということですの?」
「もしリエラさんが良かったらですけど」
「……えぇ、勿論戦りましょう、ガルーレ」
リエラはなんだかんだで、自分たちが行う模擬戦が本当に模擬戦の範疇に収まるとは思っておらず、回復用のポーションを多めに用意していた。
「…………ねぇ、アラッド。ガルーレさ……結構本気みたいじゃないかな」
「みたいだな。でも、それはリエラ嬢も解ってるだろ?」
十秒ほどで負けてしまったとはいえ、リエラの戦意が萎えているということはなく、寧ろ燃え滾っており、発散出来る戦いを欲していた。
「それでは、始め!!!」
フローレンスの開始の合図が響き渡ると同時に、ガルーレが様子見することなく仕掛けた。
「っ!!」
素手でありながら、細剣を持つ自分に対して全く臆することなく仕掛けてきたガルーレに……リエラは面食らうことなく、冷静に対処。
リーチの差では得物を使用しているリエラの方が有利ではあるが、ガルーレはその程度の差などものともせず、果敢に攻撃を仕掛ける。
(やはり、アラッド達と共に行動してるだけは、ある!!!)
先程互いに了承した通り、今回は模擬戦ではなく、試合。
様子見などはなく、互いに勝利を奪う為に剣を振るい、拳を突き出す。
当然ながら先程までの試合と違い、スキルの使用禁止などといった縛りはない。
なので、リエラもスティームとの戦いよりも早く鋭く動き、ガルーレの体を刻む。
「ッ! 良いですね!! もっと上げましょう!!!」
試合とはいえ、何かを懸けた試合ではない。
それはガルーレも解っている。解っているが、武器以外は本気であるリエラは満面の笑みを浮かべてしまうほど楽しい相手である。
そして……体に刻まれる切傷の数が増えていけば……必然的に、リエラの奥の手であるスキル、ペイル・サーベルスが発動してしまう。
「……ガルーレの様子が、変わったか?」
「そうだな。とりあえず、この試合はガルーレの勝ちだな」
リエラの実力をアラッドよりも良く知っているラディアとライホルトは……アラッドの言葉を全否定はしないしないものの、一部を否定する。
「アラッド、リエラは……確かに代表戦ではアッシュ君にあっさり追い詰められちゃったけど、ちゃんと強いよ」
「うむ、ラディアの言う通りだ。決して世間知らずのお嬢様騎士ではない」
「二人がリエラ嬢を評価してるのは解る。というか、俺もリエラ嬢は十分強者だと認識している。ただ、とりあえずこの戦いに関してはスティームとの一戦に近い」
どういう事なのかと首を捻る二人。
「とはいえ、スティームの時みたいに……スマートに? 止まりはしないんだけどな」
アラッドはガルーレがリエラに対し、模擬戦ではなく試合をしようと伝えたことに、やはり猪突猛進娘ではないのだと再認識。
ただ……ペルス・サーベルスが発動してしまうと、普段はあまりしない戦い方が出来るようになってしまう。
「あっ、やっぱりやりやがったな、あいつ」
視線の先では……リエラの刺突がガルーレの左手を貫通。
しかし、ガルーレは痛みなど知ったことではなく、そのまま細剣の柄を掴み、リエラが後方に下がるのを防ぐ。
そしてがっちりと掴んだままリエラの体を引き寄せ……腹に掌底を叩き込んだ。
「っ!!!!????」
その衝撃にリエラは細剣手放してしまい、あっという間に壁に激突し、吐血。
「フローレンス」
「えぇ」
試合は当然終了。
ガルーレも盛り上がってはいたが、これが試合であることまでは忘れておらず、追撃することはなく……平然とした表情で左手を貫いた細剣を引き抜く。
「ほらよ、ガルーレ」
「サンキュー、アラッド!」
「お前、そっちの手は……まっいっか」
穴が開いている方の手で投げられたポーションをキャッチし、苦いポーションを一気に煽るガルーレ。
「ふぃ~~~~。いやぁ~~~、テンション爆上がりだったね~」
「爆上がりだったね~、じゃねぇんだけどな。ったくよ」
呆れながらも、ガルーレらしいと思いながら……アラッドは事情説明の為に掌底を腹に食らったリエラの元へ向かった。
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