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七百五十五話 イメージ、出来ない
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「スティーム、魔力量は大丈夫か?」
「ほんの少ししか使ってないから大丈夫……とは思うけど、一応回復しとこうかな」
スティームが赤雷を使用したのは、ほんの一瞬。
なので、そこまで魔力は消費してないが、それでも次の相手はライホルト。
条件通り、巨人の怒りを使うことはないが……それでも防御力は一級品。
直ぐに終わるとは思えないため、一応回復。
「お待たせしました」
「いやいや、何分でも待つぞ。本当にもう始めても良いのか?」
アラッドは以前、初戦であれば、間違いなくスティームが勝利すると宣言した。
そして、その言葉通り……使用出来る強化方法は魔力と、属性魔力のみという縛りありとはいえ、ラディアを瞬殺と言える形に追い込んだ。
その数秒で終わってしまった戦いの中で、外から見ていたライホルトはスティームの力の正体に気付いた。
であれば、ライホルトが負ける要素はない?
(アラッドと模擬戦を行う前も昂ってはいたが……ふっふっふ。寒気が止まらんな)
答えは否。
力の正体が解ったからといって、明確に勝てるイメージが思い浮かばない。
だからこそ……ライホルトにとって、挑む価値がある。
「えぇ、大丈夫です」
スティームの万全を確認し、今度はラディアが審判を行う。
「それでは……始め」
小さく、しかし確かに聞こえた開始の合図。
大剣を持つライホルトは直ぐに自身の周囲を最警戒。
どこから攻撃されても対応出来る様に神経を尖らせる。
しかし……スティームはラディアの模擬戦の時の様に赤雷を纏って背後を取るのではなく、ただ雷を纏い、ライホルトから大きく寄りを取った。
いったいそこから何をするのか。
そんな事は……考えるだけ無駄であった。
「ッ!!!!!!」
「ぬぅッ!!!!!!」
スティームが後方に下がったのは、加速する距離を取るため。
十分な距離を取った瞬間、纏う魔力を雷から赤雷に変更。
そのまま加速し、スティームはライホルトが反応出来るであろう、正面から赤雷を纏った双剣を同士に振るった。
結果として、大剣に鋼鉄を纏っていたライホルトはなんとかガードに成功。
(纏った鋼鉄、が)
大剣に纏っていた鋼鉄だけではなく、全身に纏っていた岩までもが衝撃で粉砕された。
「うっ、ぐっ!!??」
防御力は負けていない。腕力も……ギリギリ勝っている。
しかし、圧倒的にスピードに差がある。
どれだけ大剣に、全身に纏い直しても、直ぐに砕かれてしまう。
修復する時間と魔力が勿体ない。
それは解った……しかし、ライホルトには現状を打破する手札がなかった。
読みが出来ないザ・脳筋ではない。
ライホルトも並ではない経験をこれまで何度も乗り越えてきた。
しかし、スティームは特に背後を取ろうとせず、真正面から双剣を振るい続ける。
淡々と……間違えることはなく、冷静に振るう。
「ッ!?」
次の瞬間、赤雷を纏った斬撃を受けきれなくなり、大剣が破壊。
まだ、スティームが持つ双剣は……一応生きていた。
「終わり……で、良いですよね」
「……うむ、そうだな」
最後、スティームはラディアとの戦闘時の様に急所となり得る場所に刃を添えるのではなく、双剣から赤雷を刃の様に伸ばし、ライホルトの横顔部分に添えた。
「はぁ、はぁ……ふぅ~~~~~~~」
ぶっ倒れるほど赤雷を使用せずには済んだが、それでも予想以上にライホルトの堅守に阻まれ、想定以上の時間が掛かった。
「お疲れさん、スティーム。ぶっ倒れそうか?」
「いや、大丈夫だよ。まぁ、結構疲れたのは、事実だけど」
「結構疲れた、か。強化方法が魔力、属性魔力の使用のみとはいえ、あそこまであっさりと破れるのは想定外だったのだが……まだ、認識が甘かったようだ」
「ふっふっふ、だろだろ。スティームは超強ぇんだよ」
自分の事の様に自慢するアラッドに、ライホルトは得にツッコまなかった。
(その気持ちは解らなくもない……普段の得物を使っていれば、というのはスティームも同じ。ではスキルも加味すれば………………実際に体験したからこそ、本当に防ぎきれるのか、怪しく思うな)
巨人の怒りは、対峙する相手のスピードが速ければ速いほどライホルトの攻撃力、防御力が増す。
打撃にも斬撃に対してもその防御力は発揮されるが、どんな攻撃も全くダメージを受けないス〇ー状態になるわけではない。
「あぁ、そうだな。さて……リエラ、お前はどうするのだ?」
「っ……勿論、戦るに決まってますわ」
当然のことながら、先程までのライホルトと同じく、今のリエラは赤雷を纏ったスティームに勝つイメージが全く出来ていない。
同世代の中には、まだまだ自分よりも強い者たちがいるのだと……一昨日、そして今日も改めて理解した。
勝つイメージが全く出来ない相手と、特定の条件下とはいえわざわざ戦る必要があるのか?
(解っている。でも、折角肌で感じられるチャンスを、みすみす逃して良い訳がない!!!!!)
今日、リエラはあわよくばアッシュと仲を深められたら良いな……といった理由だけで訪れた訳ではない。
惨めな思いをすると解っていても一歩でも、半歩でも強くなる為に訪れたのだ。
「ほんの少ししか使ってないから大丈夫……とは思うけど、一応回復しとこうかな」
スティームが赤雷を使用したのは、ほんの一瞬。
なので、そこまで魔力は消費してないが、それでも次の相手はライホルト。
条件通り、巨人の怒りを使うことはないが……それでも防御力は一級品。
直ぐに終わるとは思えないため、一応回復。
「お待たせしました」
「いやいや、何分でも待つぞ。本当にもう始めても良いのか?」
アラッドは以前、初戦であれば、間違いなくスティームが勝利すると宣言した。
そして、その言葉通り……使用出来る強化方法は魔力と、属性魔力のみという縛りありとはいえ、ラディアを瞬殺と言える形に追い込んだ。
その数秒で終わってしまった戦いの中で、外から見ていたライホルトはスティームの力の正体に気付いた。
であれば、ライホルトが負ける要素はない?
(アラッドと模擬戦を行う前も昂ってはいたが……ふっふっふ。寒気が止まらんな)
答えは否。
力の正体が解ったからといって、明確に勝てるイメージが思い浮かばない。
だからこそ……ライホルトにとって、挑む価値がある。
「えぇ、大丈夫です」
スティームの万全を確認し、今度はラディアが審判を行う。
「それでは……始め」
小さく、しかし確かに聞こえた開始の合図。
大剣を持つライホルトは直ぐに自身の周囲を最警戒。
どこから攻撃されても対応出来る様に神経を尖らせる。
しかし……スティームはラディアの模擬戦の時の様に赤雷を纏って背後を取るのではなく、ただ雷を纏い、ライホルトから大きく寄りを取った。
いったいそこから何をするのか。
そんな事は……考えるだけ無駄であった。
「ッ!!!!!!」
「ぬぅッ!!!!!!」
スティームが後方に下がったのは、加速する距離を取るため。
十分な距離を取った瞬間、纏う魔力を雷から赤雷に変更。
そのまま加速し、スティームはライホルトが反応出来るであろう、正面から赤雷を纏った双剣を同士に振るった。
結果として、大剣に鋼鉄を纏っていたライホルトはなんとかガードに成功。
(纏った鋼鉄、が)
大剣に纏っていた鋼鉄だけではなく、全身に纏っていた岩までもが衝撃で粉砕された。
「うっ、ぐっ!!??」
防御力は負けていない。腕力も……ギリギリ勝っている。
しかし、圧倒的にスピードに差がある。
どれだけ大剣に、全身に纏い直しても、直ぐに砕かれてしまう。
修復する時間と魔力が勿体ない。
それは解った……しかし、ライホルトには現状を打破する手札がなかった。
読みが出来ないザ・脳筋ではない。
ライホルトも並ではない経験をこれまで何度も乗り越えてきた。
しかし、スティームは特に背後を取ろうとせず、真正面から双剣を振るい続ける。
淡々と……間違えることはなく、冷静に振るう。
「ッ!?」
次の瞬間、赤雷を纏った斬撃を受けきれなくなり、大剣が破壊。
まだ、スティームが持つ双剣は……一応生きていた。
「終わり……で、良いですよね」
「……うむ、そうだな」
最後、スティームはラディアとの戦闘時の様に急所となり得る場所に刃を添えるのではなく、双剣から赤雷を刃の様に伸ばし、ライホルトの横顔部分に添えた。
「はぁ、はぁ……ふぅ~~~~~~~」
ぶっ倒れるほど赤雷を使用せずには済んだが、それでも予想以上にライホルトの堅守に阻まれ、想定以上の時間が掛かった。
「お疲れさん、スティーム。ぶっ倒れそうか?」
「いや、大丈夫だよ。まぁ、結構疲れたのは、事実だけど」
「結構疲れた、か。強化方法が魔力、属性魔力の使用のみとはいえ、あそこまであっさりと破れるのは想定外だったのだが……まだ、認識が甘かったようだ」
「ふっふっふ、だろだろ。スティームは超強ぇんだよ」
自分の事の様に自慢するアラッドに、ライホルトは得にツッコまなかった。
(その気持ちは解らなくもない……普段の得物を使っていれば、というのはスティームも同じ。ではスキルも加味すれば………………実際に体験したからこそ、本当に防ぎきれるのか、怪しく思うな)
巨人の怒りは、対峙する相手のスピードが速ければ速いほどライホルトの攻撃力、防御力が増す。
打撃にも斬撃に対してもその防御力は発揮されるが、どんな攻撃も全くダメージを受けないス〇ー状態になるわけではない。
「あぁ、そうだな。さて……リエラ、お前はどうするのだ?」
「っ……勿論、戦るに決まってますわ」
当然のことながら、先程までのライホルトと同じく、今のリエラは赤雷を纏ったスティームに勝つイメージが全く出来ていない。
同世代の中には、まだまだ自分よりも強い者たちがいるのだと……一昨日、そして今日も改めて理解した。
勝つイメージが全く出来ない相手と、特定の条件下とはいえわざわざ戦る必要があるのか?
(解っている。でも、折角肌で感じられるチャンスを、みすみす逃して良い訳がない!!!!!)
今日、リエラはあわよくばアッシュと仲を深められたら良いな……といった理由だけで訪れた訳ではない。
惨めな思いをすると解っていても一歩でも、半歩でも強くなる為に訪れたのだ。
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