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七百五十二話 範疇越え
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「……ねぇ、こういう事は不謹慎かもしれないけど、この戦いを観られるとしたら……観客たちはどれだけお金を払うかしら」
今現在、最初の模擬戦……アラッド対ライホルトの戦いがリエラたちの前で行われていた。
「金貨一枚?」
「平民たちもって考えると、銀貨五十枚とか?」
「席によって金額を変えれば、平民や貴族関係無しに観れるようになるだろうね」
ライホルトだけではなく、アラッドも大剣を振るう重量級武器のぶつかり合いは……人によって好みは別れれど、熱い戦いであることに変わりはない。
「「ヌゥウウウォラアアアアアッ!!!!!!」」
雄叫びと共に、強烈な一撃がぶつかり合い、けたましい金属音が会場中に響き渡り、二人は衝撃によって後方へ押しやられる。
(パワーも並ではないと解っていたが、狂化を使用してない状態でこれか……ふっふっふ、滾るなあああああ!!!!!)
(なるほどな! こいつは、フローレンスの奴が聖光雄化を使っても、押される訳だ!!!!!)
両者が互いのパワーに敬意を表しながらも、表情にはどう力でごり押すのか……そんな脳筋スマイルが浮かんでいた。
「……とても楽しそうに戦ってますけど、多分……そろそろ壊れますよね」
アッシュがそう口にした数秒後、両者の大剣が破損。
二人が扱っていた武器は木製の大剣ではなく、抜き身の大剣。
超硬度な金属が元となった大剣ではないが、それでもそう簡単に壊れることはない。
(二人とも一切避けることなく、ぶつかり合い続けた影響だろうね)
アラッドとライホルトが互いの攻撃にどう対応するか、その辺りを真剣に考えながら試合を進めていれば同時に壊れるなんて事態にはならなかった。
しかし、二人の頭には互いの力をぶつけ合う……それしかなかった。
結果……同時に大剣が破損する事態に至り、通常であればその時点で終了……なのだが、当然の様に二人は使い物にならなくなった破損した大剣を放り投げ……拳を握った。
「ッ、シャォラッ!!!!!」
「ウォォオオオオッ!!!!!」
大剣が破損した……であれば、両拳、両脚を使って戦えば良い。
二人の思考は、至って単純であった。
「ねぇ……あの二人、大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃないですかね。アラッドって、基本的にあれが平常運転なので」
「ガルーレの言う通り、問題無いと思いますよ」
「……ライホルトも、巨人の怒りを使う様子はない。だから問題無い筈よ、リエラ」
「それもそう……って、言って良いのかしら?」
先程までは、大剣と大剣がぶつかり合っていた。
なので、体に痺れが渡れど、肉体が傷付くことはなかった。
しかし、徒手格闘戦になってから、二人はようやく回避という選択を取り始めるも、タイミング的に防御するしかない攻撃がある。
両者共に魔力を纏っているとはいえ……それは防御力が増すのと同時に、攻撃力も増している。
加えて二人は狂化、巨人の怒り以外の強化スキルを使用しており……上手く受け流すことに成功しなければ、どうしてもダメージが残ってしまう。
徒手格闘戦が始まってまだ二分程度しか経ってないにもかかわらず、既に二人の体には多数の青痣が生まれていた。
だが……止まらない。
それどころか、寧ろ加速していた。
(二人共、ちゃんと狂化と巨人の怒りは使ってないけど……ちょ、ちょっとマズくないかな?)
刃物を使ってないため、腕や脚が斬り飛ぶことはない。
二人とも手刀といった攻撃方法、手刀や脚による斬撃刃を放つこともなく、切断の恐れはないものの……重鈍な打撃が意識の隙間を縫って叩き込まれれば、どうしても内側まで衝撃が伝わってしまう。
(……アラッドも、ライホルトも……まだ、ちゃんと急所は避けてる)
二人の攻防をしっかり把握しているラディア。
元々力比べがしたいという共通認識を持っており、殺したいほど憎い相手ではなく、何かが懸かっている戦いでもない。
アラッドとライホルトもそれを理解しているため、頭部や心臓……一応股間などに向けた攻撃は放たれてない。
「ッ、破ッ!!!!!!!」
「ぐっ!!!!????」
そして徒手格闘戦が始まってから約五分後、ライホルトの右ストレートをアラッドは左手でなんとかキャッチ。
そこから離さず……寧ろ引っ張り、勢いを付けて右肘を叩きつけた。
「そこまで。二人とも、それで良いよね」
ライホルトが並ではない吐血を零したところで、ラディアが間に入った。
「ふ、ふっふっふ。そうだな。見事な……手痛いカウンターだったぞ、アラッド」
「おぅよ。つっても、お前の鉄拳も痛かっただぞ、ライホルト。上手く掴んだつもりだったのに、ほら」
右ストレートを掴んだはずの左手に青痣が出来ていた。
「はいはい二人共、互いを賞賛するのは良いことだけど、まずはその傷を癒しなさい。もうどこからどう観ても模擬戦じゃなくて試合だったわよ、全く」
では、何故模擬戦の範疇を越えた戦いをリエラたちは止めようとしなかったのか。
…………それが解らないようでは、戦闘者とは言えない。
それをアラッドとライホルトも解っているからこそ、リエラにツッコむことはなく、まずは効果は抜群だが、苦い苦いポーションを一気に飲み干した。
今現在、最初の模擬戦……アラッド対ライホルトの戦いがリエラたちの前で行われていた。
「金貨一枚?」
「平民たちもって考えると、銀貨五十枚とか?」
「席によって金額を変えれば、平民や貴族関係無しに観れるようになるだろうね」
ライホルトだけではなく、アラッドも大剣を振るう重量級武器のぶつかり合いは……人によって好みは別れれど、熱い戦いであることに変わりはない。
「「ヌゥウウウォラアアアアアッ!!!!!!」」
雄叫びと共に、強烈な一撃がぶつかり合い、けたましい金属音が会場中に響き渡り、二人は衝撃によって後方へ押しやられる。
(パワーも並ではないと解っていたが、狂化を使用してない状態でこれか……ふっふっふ、滾るなあああああ!!!!!)
(なるほどな! こいつは、フローレンスの奴が聖光雄化を使っても、押される訳だ!!!!!)
両者が互いのパワーに敬意を表しながらも、表情にはどう力でごり押すのか……そんな脳筋スマイルが浮かんでいた。
「……とても楽しそうに戦ってますけど、多分……そろそろ壊れますよね」
アッシュがそう口にした数秒後、両者の大剣が破損。
二人が扱っていた武器は木製の大剣ではなく、抜き身の大剣。
超硬度な金属が元となった大剣ではないが、それでもそう簡単に壊れることはない。
(二人とも一切避けることなく、ぶつかり合い続けた影響だろうね)
アラッドとライホルトが互いの攻撃にどう対応するか、その辺りを真剣に考えながら試合を進めていれば同時に壊れるなんて事態にはならなかった。
しかし、二人の頭には互いの力をぶつけ合う……それしかなかった。
結果……同時に大剣が破損する事態に至り、通常であればその時点で終了……なのだが、当然の様に二人は使い物にならなくなった破損した大剣を放り投げ……拳を握った。
「ッ、シャォラッ!!!!!」
「ウォォオオオオッ!!!!!」
大剣が破損した……であれば、両拳、両脚を使って戦えば良い。
二人の思考は、至って単純であった。
「ねぇ……あの二人、大丈夫かしら?」
「大丈夫じゃないですかね。アラッドって、基本的にあれが平常運転なので」
「ガルーレの言う通り、問題無いと思いますよ」
「……ライホルトも、巨人の怒りを使う様子はない。だから問題無い筈よ、リエラ」
「それもそう……って、言って良いのかしら?」
先程までは、大剣と大剣がぶつかり合っていた。
なので、体に痺れが渡れど、肉体が傷付くことはなかった。
しかし、徒手格闘戦になってから、二人はようやく回避という選択を取り始めるも、タイミング的に防御するしかない攻撃がある。
両者共に魔力を纏っているとはいえ……それは防御力が増すのと同時に、攻撃力も増している。
加えて二人は狂化、巨人の怒り以外の強化スキルを使用しており……上手く受け流すことに成功しなければ、どうしてもダメージが残ってしまう。
徒手格闘戦が始まってまだ二分程度しか経ってないにもかかわらず、既に二人の体には多数の青痣が生まれていた。
だが……止まらない。
それどころか、寧ろ加速していた。
(二人共、ちゃんと狂化と巨人の怒りは使ってないけど……ちょ、ちょっとマズくないかな?)
刃物を使ってないため、腕や脚が斬り飛ぶことはない。
二人とも手刀といった攻撃方法、手刀や脚による斬撃刃を放つこともなく、切断の恐れはないものの……重鈍な打撃が意識の隙間を縫って叩き込まれれば、どうしても内側まで衝撃が伝わってしまう。
(……アラッドも、ライホルトも……まだ、ちゃんと急所は避けてる)
二人の攻防をしっかり把握しているラディア。
元々力比べがしたいという共通認識を持っており、殺したいほど憎い相手ではなく、何かが懸かっている戦いでもない。
アラッドとライホルトもそれを理解しているため、頭部や心臓……一応股間などに向けた攻撃は放たれてない。
「ッ、破ッ!!!!!!!」
「ぐっ!!!!????」
そして徒手格闘戦が始まってから約五分後、ライホルトの右ストレートをアラッドは左手でなんとかキャッチ。
そこから離さず……寧ろ引っ張り、勢いを付けて右肘を叩きつけた。
「そこまで。二人とも、それで良いよね」
ライホルトが並ではない吐血を零したところで、ラディアが間に入った。
「ふ、ふっふっふ。そうだな。見事な……手痛いカウンターだったぞ、アラッド」
「おぅよ。つっても、お前の鉄拳も痛かっただぞ、ライホルト。上手く掴んだつもりだったのに、ほら」
右ストレートを掴んだはずの左手に青痣が出来ていた。
「はいはい二人共、互いを賞賛するのは良いことだけど、まずはその傷を癒しなさい。もうどこからどう観ても模擬戦じゃなくて試合だったわよ、全く」
では、何故模擬戦の範疇を越えた戦いをリエラたちは止めようとしなかったのか。
…………それが解らないようでは、戦闘者とは言えない。
それをアラッドとライホルトも解っているからこそ、リエラにツッコむことはなく、まずは効果は抜群だが、苦い苦いポーションを一気に飲み干した。
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