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七百四十五話 要は覚悟の問題
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「お買い上げありがとうございます」
結局、アラッドはアッシュが選んだシルフィーへのお土産を、一切悩むことなく購入した。
ランクは五と……当然だが、貴族の令嬢であっても十代前半の小娘が身に付けるような物ではない。
とはいえ、長男であるギーラスの身が心配だからといって、ランク五とランク六のマジックアイテムをプレゼントした過去があるアラッドなら……そこまでおかしい事ではなかった。
「あなた、本当に太っ腹ね」
「アラッドは妹や弟に優しいもんね~」
「そうかもな。けど、毎日頑張ってる弟や妹には優しくしたくなるものだろ」
その気持ちが解る者もはいた。
いるが……そうやって素直に思えるのは、アラッドに心の底から余裕があるからである。
「アラッドは本当に大事に想ってるもんね。この前、妹さんの婚約者になりたいなら、自分に勝てるぐらいの人じゃないとって話してたし」
スティームの言葉を聞いて、身を持ってその強さを体験したリエラやその激闘ぶりを観戦していたラディアやライホルトたちは……軽く引いていた。
こいつは正気なのかという疑問を向けながら、本当に引いていた。
「おいおい、スティーム。ちょっと話が盛ってるぞ」
アラッドが訂正しようとして、引いていた表情が戻りかけるも……直ぐにまた引いてしまう。
「本気の俺とそれなりに戦えるぐらいの奴じゃないと認められないって言っただろ」
たいして内容が変わっていない。
「あなた……それ、本気で言ってますの?」
「? おぅ、本気だぞ。可愛い妹の嫁になるんだ。古臭い考えだとは思うが、まずは妹よりも強い事が大前提……その上で、俺に勝てずともそれなりに戦えるぐらいの実力は持ってないとな」
本気で言っていると解り、更に引く三人。
スティーム、アッシュ、ガルーレの三人は元々知っていたため、特にアラッドの本気具合にツッコむことはなかった。
「アラッド、あなたはソロでAランクのモンスターを倒したことがあるのでしょ」
「……一応、そうだな」
まだアラッド自身は認めてないが、それでも結果としてそう残っているため、ドラゴンゾンビとの戦闘に関して否定しなかった。
「そんなあなたとまともに戦える人が、世の中にどれだけいると思ってるの?」
「多くはないだろう。まぁ…………そうだな。シルフィーに厳し過ぎると言われたら、狂化を使うのは止めておくか」
アラッドの切り札とも言えるスキル、狂化。
それを使わないのであれば……と安心出来るほど、アラッドの実力は全くもって緩くない。
そのため、それなら大丈夫、とは言えない。
「ねぇ、アラッド。狂化を使わないつもりなら、当然糸は使うんでしょ」
「そうなるな。程々に留めてはおくが、絡め手にも対応出来る強さは見せてほしいだろ」
真っ向勝負以外にも対応出来る強さというのは、確かに必要である。
しかし、アラッドが使用する糸の力を実際に観た、体験したスティームやフローレンスは……結局苦笑いを浮かべるしかない。
「とはいえ、ギーラス兄さんもシルフィーの事を大事に想ってるし……後、そういう話になったら、父さんも出てくるだろうな」
「アラッド、間違っていなければ、その二人もお前と同じくドラゴンスレイヤーだったと思うのだが」
「あぁ、そうだ。良く知ってるな、ライホルト」
知らない訳がない。
ギーラスはBランクの、フールはAランクの風属性のドラゴンを討伐した、正真正銘の竜殺し。
「……ねぇ、アラッド。妹を大切に想うあなた達の考えを否定するつもりはない。でも、そんな人が本当にいると思う?」
「シルフィーが出会うかどうかはさておき、この世界のどこかにはいるだろうな。何故なら……性別はさておき、俺と戦り合える猛者たちがここに何人いる?」
ラディア、ライホルト、スティーム、フローレンス。
才だけであれば確実にアラッドを越えているアッシュ。
リエラも今後の活動次第で、可能性は十分にある。
「別に、その男がシルフィーに好意を抱いた時、その時はまだ弱くても構わない。要は…………どれだけ本気なのか、俺や兄さん、父さんに示せば良いだけだ」
「要は、死ぬ気で強くなれと」
「シルフィーが気に入った相手なら、その時点でそれなりの土台は出来てるだろうからな」
シルフィーに……将来の伴侶の為に、本気の覚悟を見せることが出来るか。
その考えに関しては、大いに賛同できる。
しかし、しかし……戦わなければならない相手がアラッド、そしてその兄と父。
リエラは顔も見たことがないアラッド、その妹に惚れた相手を不憫に思った。
この後もアラッドたちはリエラが勧める店に訪れては移動し、訪れては移動してを繰り返した。
そして日も沈んで、昼間とは違う賑やかさが街を包み始めたところで、リエラはアラッドたちをカジュアルで……尚且つ、多くの職業の者たちが集まる店へと案内した。
別の候補には豪商や貴族しか訪れない高級店もあったのだが、アラッドやラディアが冒険者ということを考慮した結果、その店を選んだ。
アラッドにとっても、その選択はナイス!! と褒め称えたかった。
ただ、リエラは後にその店を選んだことを後悔した。
結局、アラッドはアッシュが選んだシルフィーへのお土産を、一切悩むことなく購入した。
ランクは五と……当然だが、貴族の令嬢であっても十代前半の小娘が身に付けるような物ではない。
とはいえ、長男であるギーラスの身が心配だからといって、ランク五とランク六のマジックアイテムをプレゼントした過去があるアラッドなら……そこまでおかしい事ではなかった。
「あなた、本当に太っ腹ね」
「アラッドは妹や弟に優しいもんね~」
「そうかもな。けど、毎日頑張ってる弟や妹には優しくしたくなるものだろ」
その気持ちが解る者もはいた。
いるが……そうやって素直に思えるのは、アラッドに心の底から余裕があるからである。
「アラッドは本当に大事に想ってるもんね。この前、妹さんの婚約者になりたいなら、自分に勝てるぐらいの人じゃないとって話してたし」
スティームの言葉を聞いて、身を持ってその強さを体験したリエラやその激闘ぶりを観戦していたラディアやライホルトたちは……軽く引いていた。
こいつは正気なのかという疑問を向けながら、本当に引いていた。
「おいおい、スティーム。ちょっと話が盛ってるぞ」
アラッドが訂正しようとして、引いていた表情が戻りかけるも……直ぐにまた引いてしまう。
「本気の俺とそれなりに戦えるぐらいの奴じゃないと認められないって言っただろ」
たいして内容が変わっていない。
「あなた……それ、本気で言ってますの?」
「? おぅ、本気だぞ。可愛い妹の嫁になるんだ。古臭い考えだとは思うが、まずは妹よりも強い事が大前提……その上で、俺に勝てずともそれなりに戦えるぐらいの実力は持ってないとな」
本気で言っていると解り、更に引く三人。
スティーム、アッシュ、ガルーレの三人は元々知っていたため、特にアラッドの本気具合にツッコむことはなかった。
「アラッド、あなたはソロでAランクのモンスターを倒したことがあるのでしょ」
「……一応、そうだな」
まだアラッド自身は認めてないが、それでも結果としてそう残っているため、ドラゴンゾンビとの戦闘に関して否定しなかった。
「そんなあなたとまともに戦える人が、世の中にどれだけいると思ってるの?」
「多くはないだろう。まぁ…………そうだな。シルフィーに厳し過ぎると言われたら、狂化を使うのは止めておくか」
アラッドの切り札とも言えるスキル、狂化。
それを使わないのであれば……と安心出来るほど、アラッドの実力は全くもって緩くない。
そのため、それなら大丈夫、とは言えない。
「ねぇ、アラッド。狂化を使わないつもりなら、当然糸は使うんでしょ」
「そうなるな。程々に留めてはおくが、絡め手にも対応出来る強さは見せてほしいだろ」
真っ向勝負以外にも対応出来る強さというのは、確かに必要である。
しかし、アラッドが使用する糸の力を実際に観た、体験したスティームやフローレンスは……結局苦笑いを浮かべるしかない。
「とはいえ、ギーラス兄さんもシルフィーの事を大事に想ってるし……後、そういう話になったら、父さんも出てくるだろうな」
「アラッド、間違っていなければ、その二人もお前と同じくドラゴンスレイヤーだったと思うのだが」
「あぁ、そうだ。良く知ってるな、ライホルト」
知らない訳がない。
ギーラスはBランクの、フールはAランクの風属性のドラゴンを討伐した、正真正銘の竜殺し。
「……ねぇ、アラッド。妹を大切に想うあなた達の考えを否定するつもりはない。でも、そんな人が本当にいると思う?」
「シルフィーが出会うかどうかはさておき、この世界のどこかにはいるだろうな。何故なら……性別はさておき、俺と戦り合える猛者たちがここに何人いる?」
ラディア、ライホルト、スティーム、フローレンス。
才だけであれば確実にアラッドを越えているアッシュ。
リエラも今後の活動次第で、可能性は十分にある。
「別に、その男がシルフィーに好意を抱いた時、その時はまだ弱くても構わない。要は…………どれだけ本気なのか、俺や兄さん、父さんに示せば良いだけだ」
「要は、死ぬ気で強くなれと」
「シルフィーが気に入った相手なら、その時点でそれなりの土台は出来てるだろうからな」
シルフィーに……将来の伴侶の為に、本気の覚悟を見せることが出来るか。
その考えに関しては、大いに賛同できる。
しかし、しかし……戦わなければならない相手がアラッド、そしてその兄と父。
リエラは顔も見たことがないアラッド、その妹に惚れた相手を不憫に思った。
この後もアラッドたちはリエラが勧める店に訪れては移動し、訪れては移動してを繰り返した。
そして日も沈んで、昼間とは違う賑やかさが街を包み始めたところで、リエラはアラッドたちをカジュアルで……尚且つ、多くの職業の者たちが集まる店へと案内した。
別の候補には豪商や貴族しか訪れない高級店もあったのだが、アラッドやラディアが冒険者ということを考慮した結果、その店を選んだ。
アラッドにとっても、その選択はナイス!! と褒め称えたかった。
ただ、リエラは後にその店を選んだことを後悔した。
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