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七百三十二話 予想通り
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「では、ゆっくりと楽しんでくれ。なんと言っても、今日の主役は君たちだからな」
なんとも嬉しそうな表情を浮かべながら、アルバース国王は他の大人たちの元へと向かった。
「主役、ねぇ」
普通に考えれば、アルバース国王の言う通りではある。
しかし、相変わらずアラッドは自分が……といった考えが浮かぶも、直ぐに主役らしく声を掛けられた。
「少し話さないか」
「ん? あぁ、あなた達は」
声を掛けてきた人物たちは、アラッドたちが代表選で戦った三人であった。
「是非とも、話したいと思ってな」
「それは自分も同じだったが……良いのですか?」
「ふっふっふ。面倒な者たちは気にするかもしれないが、俺としてはそこら辺を気にするつもりはない。自分たちを負かした強者……直接、ゆっくりと話してみたいと思うものだろう。なぁ、ラディア、リエラ」
「そうですね」
「勿論よ!!!!」
冷静に、自分が戦った対戦相手、アラッド以外のアッシュやフローレンスにも多少の興味を持っているラディア。
しかし……アッシュと対戦したリエラ・カルバトラだけは、アッシュにだけ興味津々、夢中であった。
(……ご愁傷様、アッシュ)
これも経験だと思いながら、アラッドはアッシュに助け舟を出すことはなかった。
というよりも、リエラの眼の色、本気具合からして……自分が助け舟を出したところで、素直に止まるとは思えなかった。
「アラッド、って呼んでいいかしら」
「えぇ、構いませんよ」
「ありがとう。アラッド、試合の際に精霊に意識を乗っ取られたまま戦って、ごめんなさい」
戦いという場において、賛否両論になるのは間違いない戦法を、意識的にではないにしろ、行ってしまったラディア。
本人が意識を失うほどのダメージを負ったにもかかわらず、そこで精霊という意識自体はマックス状態で復帰し、更に身体能力が増していた。
戦ってた相手からすれば、残機がもう一つあるなんて反則なんじゃないか!!?? とツッコんでもおかしくない。
だが……色々とおかしさ満載のアラッドにとって、そこに関して特に思うところは一切なかった。
「……それを気にしていたんですか?」
「えぇ、そうなのだけど……だって、ズルいと思いませんか?」
「あぁ…………そう、ですね。人によってはそう思う人もいるでしょう。そういった人たちの気持ちを否定するつもりはありません。ただ、俺としては……少し失礼な話ですが、今回の代表戦にそこまで期待を持っていなかったんです」
本当に自分と渡り合える冒険者がいるのか? 戦うという姿勢を示すだけで、本気で自分に勝つという意志を、闘志を持つ相手と戦うことはないのではと思っていた。
「ですが、あなたとの戦いは本当に楽しかった。正直なところ、精霊に意識を奪われてからの戦いも……楽しかった。何度か、自分の首元に刃が迫る感覚がありました」
「それは……本当に楽しかったのですか?」
とりあえず、自分の実力等を褒めてくれているのは解る。
だが、少々理解出来ない感想に戸惑うラディア。
「えぇ。だって、負けるつもりは毛頭ありませんでしたから」
「……なるほど、強いわけですね。ところで、一つお聞きしたのですが、何故私との戦闘の際に従魔を呼ばなかったのですか」
顔見知りであるライホルトから予想は聞いたが、それでも本人の口から聞きたかった。
「貴女が自分と同じく従魔を従えていたり、フローレンスと同じく精霊と契約して共に戦う戦闘スタイルであれば、自分も従魔であるクロを呼んでいたでしょう」
語られる内容は……ライホルトが予想していたものと、全く変わらなかった。
「ですが、あなたは一人で俺と戦おうとした。であれば、俺もクロに頼らず一人で戦うのが筋と言いますか……他の方たちが聞けば、こいつは何を言ってるんだとツッコまれるかもしれませんが、貴女との戦いを譲りたくはなかった……そういった思いもありました」
「……ふ、ふっふっふ。なるほど、それは私にも経験があります」
彼女は確かに貴族の令嬢ではあるが、現在は冒険者として活動している女傑。
そこら辺のお嬢様たちとは感覚がまるで違う。
「それはなによりです」
「ほら、言っただろう、ラディア。彼はこういった人物だと」
「そうですね。ライホルトの言う通りでした」
「ライホルトさん、というのが貴方の名前だったんですね」
「ライホルト、で構わない。君のような人物にさん付けで呼ばれるのはむず痒い」
「そうですか。であれば、自分のことも呼び捨てで」
ライホルトは一応アラッドの情報も頭に入っていた。
当然、侯爵家の人間ということも知っている。
ライホルト自身も侯爵家の人間だが、ここまで気安く喋ってもらって構わないと伝えられるのは、少々予想外だった。
「そうか、ではアラッドと呼ばせてもらおう」
「俺も同じく…………ライホルト、俺は正直なところ、貴方と戦うフローレンスが羨ましく感じた」
突然の褒め言葉に、どう返せば良いか迷い、苦笑いを浮かべる。
「ライホルトさん、彼はラディアさんとの試合ではロングソードや魔法を使用していましたが、殴り合いも得意なのです」
フローレンスのフォローもあって、何故いきなりアラッドが自分にあぁいった褒め言葉を伝えてきたのか……一応納得出来た。
なんとも嬉しそうな表情を浮かべながら、アルバース国王は他の大人たちの元へと向かった。
「主役、ねぇ」
普通に考えれば、アルバース国王の言う通りではある。
しかし、相変わらずアラッドは自分が……といった考えが浮かぶも、直ぐに主役らしく声を掛けられた。
「少し話さないか」
「ん? あぁ、あなた達は」
声を掛けてきた人物たちは、アラッドたちが代表選で戦った三人であった。
「是非とも、話したいと思ってな」
「それは自分も同じだったが……良いのですか?」
「ふっふっふ。面倒な者たちは気にするかもしれないが、俺としてはそこら辺を気にするつもりはない。自分たちを負かした強者……直接、ゆっくりと話してみたいと思うものだろう。なぁ、ラディア、リエラ」
「そうですね」
「勿論よ!!!!」
冷静に、自分が戦った対戦相手、アラッド以外のアッシュやフローレンスにも多少の興味を持っているラディア。
しかし……アッシュと対戦したリエラ・カルバトラだけは、アッシュにだけ興味津々、夢中であった。
(……ご愁傷様、アッシュ)
これも経験だと思いながら、アラッドはアッシュに助け舟を出すことはなかった。
というよりも、リエラの眼の色、本気具合からして……自分が助け舟を出したところで、素直に止まるとは思えなかった。
「アラッド、って呼んでいいかしら」
「えぇ、構いませんよ」
「ありがとう。アラッド、試合の際に精霊に意識を乗っ取られたまま戦って、ごめんなさい」
戦いという場において、賛否両論になるのは間違いない戦法を、意識的にではないにしろ、行ってしまったラディア。
本人が意識を失うほどのダメージを負ったにもかかわらず、そこで精霊という意識自体はマックス状態で復帰し、更に身体能力が増していた。
戦ってた相手からすれば、残機がもう一つあるなんて反則なんじゃないか!!?? とツッコんでもおかしくない。
だが……色々とおかしさ満載のアラッドにとって、そこに関して特に思うところは一切なかった。
「……それを気にしていたんですか?」
「えぇ、そうなのだけど……だって、ズルいと思いませんか?」
「あぁ…………そう、ですね。人によってはそう思う人もいるでしょう。そういった人たちの気持ちを否定するつもりはありません。ただ、俺としては……少し失礼な話ですが、今回の代表戦にそこまで期待を持っていなかったんです」
本当に自分と渡り合える冒険者がいるのか? 戦うという姿勢を示すだけで、本気で自分に勝つという意志を、闘志を持つ相手と戦うことはないのではと思っていた。
「ですが、あなたとの戦いは本当に楽しかった。正直なところ、精霊に意識を奪われてからの戦いも……楽しかった。何度か、自分の首元に刃が迫る感覚がありました」
「それは……本当に楽しかったのですか?」
とりあえず、自分の実力等を褒めてくれているのは解る。
だが、少々理解出来ない感想に戸惑うラディア。
「えぇ。だって、負けるつもりは毛頭ありませんでしたから」
「……なるほど、強いわけですね。ところで、一つお聞きしたのですが、何故私との戦闘の際に従魔を呼ばなかったのですか」
顔見知りであるライホルトから予想は聞いたが、それでも本人の口から聞きたかった。
「貴女が自分と同じく従魔を従えていたり、フローレンスと同じく精霊と契約して共に戦う戦闘スタイルであれば、自分も従魔であるクロを呼んでいたでしょう」
語られる内容は……ライホルトが予想していたものと、全く変わらなかった。
「ですが、あなたは一人で俺と戦おうとした。であれば、俺もクロに頼らず一人で戦うのが筋と言いますか……他の方たちが聞けば、こいつは何を言ってるんだとツッコまれるかもしれませんが、貴女との戦いを譲りたくはなかった……そういった思いもありました」
「……ふ、ふっふっふ。なるほど、それは私にも経験があります」
彼女は確かに貴族の令嬢ではあるが、現在は冒険者として活動している女傑。
そこら辺のお嬢様たちとは感覚がまるで違う。
「それはなによりです」
「ほら、言っただろう、ラディア。彼はこういった人物だと」
「そうですね。ライホルトの言う通りでした」
「ライホルトさん、というのが貴方の名前だったんですね」
「ライホルト、で構わない。君のような人物にさん付けで呼ばれるのはむず痒い」
「そうですか。であれば、自分のことも呼び捨てで」
ライホルトは一応アラッドの情報も頭に入っていた。
当然、侯爵家の人間ということも知っている。
ライホルト自身も侯爵家の人間だが、ここまで気安く喋ってもらって構わないと伝えられるのは、少々予想外だった。
「そうか、ではアラッドと呼ばせてもらおう」
「俺も同じく…………ライホルト、俺は正直なところ、貴方と戦うフローレンスが羨ましく感じた」
突然の褒め言葉に、どう返せば良いか迷い、苦笑いを浮かべる。
「ライホルトさん、彼はラディアさんとの試合ではロングソードや魔法を使用していましたが、殴り合いも得意なのです」
フローレンスのフォローもあって、何故いきなりアラッドが自分にあぁいった褒め言葉を伝えてきたのか……一応納得出来た。
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