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七百三十話 少なくとも……
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「ふっふっふ……どうでしょうか、アラッド様」
「……とても有難い。俺一人では、とても……」
アラッドは執事たちに似合う礼服を用意された、だけではなく髪型までビシッとセットされていた。
(とはいえ、俺の場合は相変わらず強面というか……いや、執事さんたちがあれこれ悩んで礼服を選び、セットしてくれたからこそ、多少は和らいでいるのか)
お世辞ではなく、アラッドは鏡に映る自身の姿に、非常に満足していた。
「兄さん……」
「どうした、アッシュ。そんな顔して」
「……この人たちが選んでくれたのは嬉しいけど、僕には……」
似合ってない、とは言えなかった。
それは彼等の努力を無駄にする言葉であると、アッシュも解っていた。
「気にするな、アッシュ。俺もこういった服が俺に本当に似合ってるのか、という疑問は持つ。ただ……プロが選んでくれたこともあって、鏡を見ればやはり悪くはないと思う」
本当にピッタリの服を選び、髪も最高のスタイルにセットしてくれた。
だからこそ……本当に自分がここまで豪華な服を着て、洒落た髪型にして似合っているのかと思っしまう。
「アラッドの言う通りだと思うよ」
「スティームさん……」
「ちなみに、僕は二人の服装、髪型はとても似合ってると思うよ」
「俺は、自分は置いといて二人はとても似合ってる……普段より、カッコ良さ三割増しにはなってるな」
「僕も自分はともかく……アラッド兄さんやスティームさんの格好は、とても似合ってると思う」
「はは!! ありがとよ、アッシュ。でも、これで最低でも二人……いや、ここに居るプロの人たちは、俺たちの格好を最高だと思ってくれてるんだ」
周囲を見渡すと、礼服選びに髪型をセットしていた執事たちを見渡すと、皆良い笑顔で頷いた。
「…………分かりました。とりあえず、もう少し胸を張ろうと思います」
「そうだ。今日ぐらいは胸を張れ。お前は今日の主役なんだ。強敵に勝った……その自覚はあるだろ」
「主役と言えば、アラッド兄さんもその通りだと思いますけど」
「はっはっは、そうだったな……まっ、細かい事は良い。美味い飯が、俺らを持ってる」
祝勝会となれば、豪華な料理が待っている。
国王から直接聞いたわけではないが、それはアラッドの中で決定事項だった。
「そちらも終わったのですね」
「おぅ、そっちも丁度終わったみたいだな」
通路でばったりと出会ったアラッドたちとフローレンスたち。
「おっ!!! 良い感じじゃん、アラッド!!!」
「そうか? いや、まぁ俺も鏡を見た時、悪くないとは思ったが、普段からこういう服を決めたり、髪をセットしたりすることはないからな」
「確かにそうだね。でも、普段の服装じゃなくて、こんな感じでビシッとした礼服を着たら……これはこれで魅力的な感じだよ」
「そうか? そう言ってくれると肩の力が少しは抜ける。っと、ガルーレも似合ってると思うぜ」
アラッドたちと同じく髪がセット……結まれており、赤を基調としたドレスを着ていた。
「っ……へ~~~? ふふ、ありがとね」
パーティーメンバーの服装を褒めることに、特に意図はなかった。
だからこそ、本当に自分の服装を褒められるのは予想外だった。
「アッシュとスティームも似合ってるじゃん! 祝勝会にどんな人たちが来るかは知らないけど、令嬢たちがいれば、モテモテ間違いなしよ!!!」
モテモテ間違いなし。
基本的に喜ばない男はいないが……それに当て嵌まらない例外が、この場に三人いる。
「は、ははは。そうかな」
「……ガルーレさん。褒めてくれるのは嬉しいですけど、正直遠慮したいです」
「あっはっは!!! 良いじゃん良いじゃん、相変わらずだね~」
相変わらずな態度、スタンスのアッシュが面白く、つい笑いが零れてしまう。
「ガルーレさんの言う通り、本当に似合ってますよ、アラッド」
「そりゃどうも」
「あら、疑ってるのですか?」
「つっても、俺より良い男なんて、いくらでも見てきただろ」
自分で口にした良い男たちに対し、嫉妬の感情などは欠片もない。
ただ、アラッドは思った事をそのまま口にしただけ。
「……どうやら、やはりアラッドは自分の価値をまだ理解出来ていないようですね」
「自分の価値、ねぇ…………基本的に強くなる為、面白いと興味を持ったことだけに集中して生きるって人生を送って来たんだ。己の価値云々なんてあまり考えたことないな」
「あなたらしいですね。そうですね……例えるなら、未知の宝石、でしょうか」
未知の宝石、それが誰を指してるのか、アラッドはじっくり十秒ほど考え……自分を指してるのだと、ようやく理解した。
「まて、それは俺の事を言ってるのか?」
「あなた以外に、誰がいるのですか」
「スティームやアッシュがいるだろ」
理解はしても、基本的に自身の評価はどうでも良く、身内を持ち上げるアラッド。
それもまたアラッドらしいと思いつつも、フローレンスは首を横に振った。
「それは否定しません。しかし、三人の中で一番未知なのは誰かと問われれば、間違いなくアラッドですよ」
アラッドが二人の方に顔を向けると、当然と言った表情を浮かべながら頷かれてしまった。
「……とても有難い。俺一人では、とても……」
アラッドは執事たちに似合う礼服を用意された、だけではなく髪型までビシッとセットされていた。
(とはいえ、俺の場合は相変わらず強面というか……いや、執事さんたちがあれこれ悩んで礼服を選び、セットしてくれたからこそ、多少は和らいでいるのか)
お世辞ではなく、アラッドは鏡に映る自身の姿に、非常に満足していた。
「兄さん……」
「どうした、アッシュ。そんな顔して」
「……この人たちが選んでくれたのは嬉しいけど、僕には……」
似合ってない、とは言えなかった。
それは彼等の努力を無駄にする言葉であると、アッシュも解っていた。
「気にするな、アッシュ。俺もこういった服が俺に本当に似合ってるのか、という疑問は持つ。ただ……プロが選んでくれたこともあって、鏡を見ればやはり悪くはないと思う」
本当にピッタリの服を選び、髪も最高のスタイルにセットしてくれた。
だからこそ……本当に自分がここまで豪華な服を着て、洒落た髪型にして似合っているのかと思っしまう。
「アラッドの言う通りだと思うよ」
「スティームさん……」
「ちなみに、僕は二人の服装、髪型はとても似合ってると思うよ」
「俺は、自分は置いといて二人はとても似合ってる……普段より、カッコ良さ三割増しにはなってるな」
「僕も自分はともかく……アラッド兄さんやスティームさんの格好は、とても似合ってると思う」
「はは!! ありがとよ、アッシュ。でも、これで最低でも二人……いや、ここに居るプロの人たちは、俺たちの格好を最高だと思ってくれてるんだ」
周囲を見渡すと、礼服選びに髪型をセットしていた執事たちを見渡すと、皆良い笑顔で頷いた。
「…………分かりました。とりあえず、もう少し胸を張ろうと思います」
「そうだ。今日ぐらいは胸を張れ。お前は今日の主役なんだ。強敵に勝った……その自覚はあるだろ」
「主役と言えば、アラッド兄さんもその通りだと思いますけど」
「はっはっは、そうだったな……まっ、細かい事は良い。美味い飯が、俺らを持ってる」
祝勝会となれば、豪華な料理が待っている。
国王から直接聞いたわけではないが、それはアラッドの中で決定事項だった。
「そちらも終わったのですね」
「おぅ、そっちも丁度終わったみたいだな」
通路でばったりと出会ったアラッドたちとフローレンスたち。
「おっ!!! 良い感じじゃん、アラッド!!!」
「そうか? いや、まぁ俺も鏡を見た時、悪くないとは思ったが、普段からこういう服を決めたり、髪をセットしたりすることはないからな」
「確かにそうだね。でも、普段の服装じゃなくて、こんな感じでビシッとした礼服を着たら……これはこれで魅力的な感じだよ」
「そうか? そう言ってくれると肩の力が少しは抜ける。っと、ガルーレも似合ってると思うぜ」
アラッドたちと同じく髪がセット……結まれており、赤を基調としたドレスを着ていた。
「っ……へ~~~? ふふ、ありがとね」
パーティーメンバーの服装を褒めることに、特に意図はなかった。
だからこそ、本当に自分の服装を褒められるのは予想外だった。
「アッシュとスティームも似合ってるじゃん! 祝勝会にどんな人たちが来るかは知らないけど、令嬢たちがいれば、モテモテ間違いなしよ!!!」
モテモテ間違いなし。
基本的に喜ばない男はいないが……それに当て嵌まらない例外が、この場に三人いる。
「は、ははは。そうかな」
「……ガルーレさん。褒めてくれるのは嬉しいですけど、正直遠慮したいです」
「あっはっは!!! 良いじゃん良いじゃん、相変わらずだね~」
相変わらずな態度、スタンスのアッシュが面白く、つい笑いが零れてしまう。
「ガルーレさんの言う通り、本当に似合ってますよ、アラッド」
「そりゃどうも」
「あら、疑ってるのですか?」
「つっても、俺より良い男なんて、いくらでも見てきただろ」
自分で口にした良い男たちに対し、嫉妬の感情などは欠片もない。
ただ、アラッドは思った事をそのまま口にしただけ。
「……どうやら、やはりアラッドは自分の価値をまだ理解出来ていないようですね」
「自分の価値、ねぇ…………基本的に強くなる為、面白いと興味を持ったことだけに集中して生きるって人生を送って来たんだ。己の価値云々なんてあまり考えたことないな」
「あなたらしいですね。そうですね……例えるなら、未知の宝石、でしょうか」
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「まて、それは俺の事を言ってるのか?」
「あなた以外に、誰がいるのですか」
「スティームやアッシュがいるだろ」
理解はしても、基本的に自身の評価はどうでも良く、身内を持ち上げるアラッド。
それもまたアラッドらしいと思いつつも、フローレンスは首を横に振った。
「それは否定しません。しかし、三人の中で一番未知なのは誰かと問われれば、間違いなくアラッドですよ」
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