728 / 992
七百二十七話 男も女も関係無い
しおりを挟む
「だが、最後……あの岩男の斬撃に拳をかますのは、漢気があって良かったと思うぞ」
「っ……ふふ、そうですか」
「アラッド、解ってるとは思うけど、フローレンスさんは女性だよ」
「バカだな~、スティーム。漢気ってのに、性別は関係無いんだよ」
漢気に性別は関係無い。
そんな友人の言葉に……スティームは解る様な解らないような顔になる。
アッシュもいまいち解っておらず、三人の中ではガルーレだけがアラッドの言葉を理解しており、何度もうんうんと頷いていた。
「何はともあれ、良い試合だった」
「……あなたにそう言われるのは、騎士として……一人の戦いを生業とする者として、心の底から嬉しいと感じますね」
「…………アホか、大袈裟過ぎだ。そういうのは、陛下から言われたりした場合の話だろ」
フローレンスが心の底から嬉しいと思っていると、本心を顔に出していることで、アラッドは顔を背けながらそれは違うだろと否定した。
「そうですね。しかしそれはそれ、これはこれというものです。アラッド、あなたは自身が騎士の爵位を得ていることを忘れてしまっていませんか」
「……確かに忘れていたな。だが、それがどうした」
「同じ騎士として、上に居る者に褒められるのは、誰だって嬉しいものですよ」
フローレンスが序列、地位ではなく実力を指しているのは解る。
それは解るが、アラッドとしては色々と勘弁してほしいという思いが顔に表れていた。
「看板してくれ。お前がどう思うが、それはお前の自由だが、あまり大きな声で口に出すなよ」
「えぇ、解っていますよ」
古い友人、腐れ縁。
そんな雰囲気を醸し出す二人を見て……ソルとルーナは嫉妬の視線を向けることしか出来なかった。
(……やっぱり、割と合ってるのかな)
アッシュは基本的に恋愛云々に興味はない。
自分の恋愛にも、他人の恋愛にも興味がない。
唯一興味があるとすれば、一番身近な人物である双子のシルフィーぐらいなもの。
だが、自分が敬意を持つ兄、アラッドがいったい誰と結ばれるのか……それはそれで気になる恋愛だった。
パッと見ではアラッドが一方的に避けている、好いていないように見えるが、外から観ていると、決して悪い雰囲気とは思えない。
「三人とも、見事であった!!!!!!」
「「「「「「「っ!!??」」」」」」
いつの間にか特別観客席から移動していたアルバース国王。
直ぐにアラッドたちは膝を付こうとするが、直ぐに立ったままで構わないと制する。
「よいよい、今はただお前たちの活躍を祝いたいだけだ。三人とも……良く戦ってくれた」
アッシュが先程口にした通り、結果だけ見れば三戦三勝……完勝と言える結果である。
しかし、アッシュはリエラが騎士としてのプライドを捨て、負けを認めなければ破れた可能性は十分あり得る。
アラッドとフローレンスも……死の危機を感じた瞬間はあった。
内容を見れば、とても完勝とは言えず、それをアルバース国王も解っていたからこそ、心の底から三人を労いたかった。
「アラッド兄さんとフローレンスさんは圧倒に近かったですが、僕なんかは本当にギリギリでしたが」
「何を言うか、アッシュよ。お前はまだ十三だったか。対戦相手のリエラ・カルバトラは十八。通常、その差は才に溢れる者であっても容易に埋められるものではない。だが、お前はその差を粉砕した……思うところはあるだろう。しかし、紛れもない偉業を果たしたことに変わりはない」
「……有難きお言葉です」
国王という、国のトップからここまで褒められては、素直に受け入れるしかない。
それが解らない程、アッシュは一般常識が抜けてはいなかった。
(本当に、素晴らしき偉業を果たした…………この少年は、おそらくその価値を解っていないだろう。それはそれでアラッドの弟らしくはあるが)
アルバース国王が思う通り、アッシュは国王からの褒め言葉を受け入れるも、とりあえず高価なモンスターの素材を手に入れることが出来て嬉しい!! としか思っていなかった。
中等部の二年生が、他国の学生最強である高等部の三年生をタイマン勝負で倒した。
その価値を、衝撃を……正確に理解出来ていなかった。
仮にアッシュがアラッドの弟であり、フールの息子でなければ……各騎士団が、なんとしてでも自分の団に入団してもらおうと動く。
それほどの価値が……アッシュの才に、力にはある。
だが、よほどのバカでなければ、無理矢理動こうとすればAランクモンスターという怪物をほぼソロで倒したスーパーユーティリティーファイターのアラッドと、烈火の剣豪であるフールが本気で潰しに来ると解る。
「これより数時間後には祝勝会を開く。それまでゆっくり休んでいてくれ」
勝者たちにそう伝えると、アルバース国王は何処かに行ってしまった。
「休む、ねぇ……どうする、お前ら」
「アラッド兄さん、僕はもう少し王都のマジックアイテムが売っている店が見たいです」
「そうか。なら、少しだけ出掛けるか」
激闘を終えた後だというのに、怪物兄弟は驚くほど元気だった。
「っ……ふふ、そうですか」
「アラッド、解ってるとは思うけど、フローレンスさんは女性だよ」
「バカだな~、スティーム。漢気ってのに、性別は関係無いんだよ」
漢気に性別は関係無い。
そんな友人の言葉に……スティームは解る様な解らないような顔になる。
アッシュもいまいち解っておらず、三人の中ではガルーレだけがアラッドの言葉を理解しており、何度もうんうんと頷いていた。
「何はともあれ、良い試合だった」
「……あなたにそう言われるのは、騎士として……一人の戦いを生業とする者として、心の底から嬉しいと感じますね」
「…………アホか、大袈裟過ぎだ。そういうのは、陛下から言われたりした場合の話だろ」
フローレンスが心の底から嬉しいと思っていると、本心を顔に出していることで、アラッドは顔を背けながらそれは違うだろと否定した。
「そうですね。しかしそれはそれ、これはこれというものです。アラッド、あなたは自身が騎士の爵位を得ていることを忘れてしまっていませんか」
「……確かに忘れていたな。だが、それがどうした」
「同じ騎士として、上に居る者に褒められるのは、誰だって嬉しいものですよ」
フローレンスが序列、地位ではなく実力を指しているのは解る。
それは解るが、アラッドとしては色々と勘弁してほしいという思いが顔に表れていた。
「看板してくれ。お前がどう思うが、それはお前の自由だが、あまり大きな声で口に出すなよ」
「えぇ、解っていますよ」
古い友人、腐れ縁。
そんな雰囲気を醸し出す二人を見て……ソルとルーナは嫉妬の視線を向けることしか出来なかった。
(……やっぱり、割と合ってるのかな)
アッシュは基本的に恋愛云々に興味はない。
自分の恋愛にも、他人の恋愛にも興味がない。
唯一興味があるとすれば、一番身近な人物である双子のシルフィーぐらいなもの。
だが、自分が敬意を持つ兄、アラッドがいったい誰と結ばれるのか……それはそれで気になる恋愛だった。
パッと見ではアラッドが一方的に避けている、好いていないように見えるが、外から観ていると、決して悪い雰囲気とは思えない。
「三人とも、見事であった!!!!!!」
「「「「「「「っ!!??」」」」」」
いつの間にか特別観客席から移動していたアルバース国王。
直ぐにアラッドたちは膝を付こうとするが、直ぐに立ったままで構わないと制する。
「よいよい、今はただお前たちの活躍を祝いたいだけだ。三人とも……良く戦ってくれた」
アッシュが先程口にした通り、結果だけ見れば三戦三勝……完勝と言える結果である。
しかし、アッシュはリエラが騎士としてのプライドを捨て、負けを認めなければ破れた可能性は十分あり得る。
アラッドとフローレンスも……死の危機を感じた瞬間はあった。
内容を見れば、とても完勝とは言えず、それをアルバース国王も解っていたからこそ、心の底から三人を労いたかった。
「アラッド兄さんとフローレンスさんは圧倒に近かったですが、僕なんかは本当にギリギリでしたが」
「何を言うか、アッシュよ。お前はまだ十三だったか。対戦相手のリエラ・カルバトラは十八。通常、その差は才に溢れる者であっても容易に埋められるものではない。だが、お前はその差を粉砕した……思うところはあるだろう。しかし、紛れもない偉業を果たしたことに変わりはない」
「……有難きお言葉です」
国王という、国のトップからここまで褒められては、素直に受け入れるしかない。
それが解らない程、アッシュは一般常識が抜けてはいなかった。
(本当に、素晴らしき偉業を果たした…………この少年は、おそらくその価値を解っていないだろう。それはそれでアラッドの弟らしくはあるが)
アルバース国王が思う通り、アッシュは国王からの褒め言葉を受け入れるも、とりあえず高価なモンスターの素材を手に入れることが出来て嬉しい!! としか思っていなかった。
中等部の二年生が、他国の学生最強である高等部の三年生をタイマン勝負で倒した。
その価値を、衝撃を……正確に理解出来ていなかった。
仮にアッシュがアラッドの弟であり、フールの息子でなければ……各騎士団が、なんとしてでも自分の団に入団してもらおうと動く。
それほどの価値が……アッシュの才に、力にはある。
だが、よほどのバカでなければ、無理矢理動こうとすればAランクモンスターという怪物をほぼソロで倒したスーパーユーティリティーファイターのアラッドと、烈火の剣豪であるフールが本気で潰しに来ると解る。
「これより数時間後には祝勝会を開く。それまでゆっくり休んでいてくれ」
勝者たちにそう伝えると、アルバース国王は何処かに行ってしまった。
「休む、ねぇ……どうする、お前ら」
「アラッド兄さん、僕はもう少し王都のマジックアイテムが売っている店が見たいです」
「そうか。なら、少しだけ出掛けるか」
激闘を終えた後だというのに、怪物兄弟は驚くほど元気だった。
151
お気に入りに追加
6,090
あなたにおすすめの小説
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる